最強スキル『忍術』で始めるアサシン教団生活

さとう

文字の大きさ
34 / 62
第三章 黄昏旅団所属『死神』のラムエルテ

黄昏旅団所属『死神』ラムエルテ②

しおりを挟む
 シャドウは内心、本気で焦っていた。

(くそ!! 先手を打たれた。影世界? 影? 外が暗い……夜じゃない。魔法による何かが寮を覆った? 自分を倒せば解除される? ラムエルテはどこかにいる? クラスメイト……今は一学年が揃って領内待機。一人一人が標的になっている。俺だけじゃカバーできない。ヒナタ、ルクレ……ダメだ、無理だ!!)
「シャドウくん」

 と、冷や汗を流しているシャドウに、ラウラが言う。

「状況を把握しないと。見て、外」
「あ、ああ」

 落ち着いていた。
 この落ち着き、とても十六歳の子供ではない。
 ヒナタは改めてラウラを警戒。とりあえず、シャドウは窓に近づく。

「窓は……開くな。外は……黒い。でも、夜の闇というよりは、黒いモヤみたいなのが寮全体を覆っている……のか?」
「さすがに触るのは危険かと……」
「わかってる。問題は、このモヤが魔法によるもので、ラムエルテとかいうヤツ・・・・・・が仕掛けた何かってことだ」

 一応、ラムエルテの名を始めて知ったように言う。
 ラウラも近づき、影をジッと見た。

「魔法、だね。この魔力の色・・・・・・は、どこかで見た記憶あるかも」
「……魔力の、色?」
「うん」

 猛烈に嫌な予感がしたシャドウは、思わず目を開いてラウラを見る。
 そして、シャドウにだけ聞こえるような声で、ポソッと言った。

「わたし、生まれつき『魔水晶の瞳マクォーツアイ』……魔力を色で判別することができる目を持っているの。このことは、わたしと死んだお母様しか知らない……ふふ、シャドウくんで三人目だね」
「なっ……」
「だから、知ってるの。授業で見たシャドウくんの魔力と、ハンゾウの魔力。全く同じだったから」

 完全に、シャドウは油断していた。
 魔水晶の瞳。魔力を判別することのできる目。
 数世代に一人出るという異能。師であるハンゾウから聞いていたが、『出会う確率はゼロに近い』と言っていたし、ハンゾウの残した手紙にも黄昏旅団のメンバーに魔水晶の瞳を持つ者がいるとは書かれていなかった。

「シャドウくんのこと、ずっと気になってた。少し前……クオルデン王国からアルマス王国に戻る途中、盗賊たちの死体があった。最初は同士討ちか何かってソニアが言ってたんだけど……そこに残っていた魔力がシャドウくんと同じだと思ったの」
「…………」
「それで、シャドウくんに聞こうと思ってお話したんだけど……あの襲撃で、やっぱりそうなんだな、って」
「…………」

 もう、誤魔化せない。
 後ろを確認すると、ヒナタがルクレと一緒にソニアと話をし、ヒナタが小さく頷くのが見えた。どうやら、ソニアを引き付けているようだ。
 シャドウは小さく息を吐く。

「それで、目的は」

 自然と、敵対するような声になった。
 ラウラは慌てて手を振る。

「ち、違うの。わたしはただ、助けてくれたお礼がしたかっただけなの」
「……悪いが、俺のことを知った以上、お前もこれから監視下に置く」
「ま、待って。おねがい、そういうのじゃないの。シャドウくんがどんな目的があるのか気にはなるけど……でも、助けてくれた恩人に変わりはないの」
「何も知らなければ、お前とは友達でいれた。でも、もう無理だ。俺、ヒナタの目的の邪魔となる可能性は潰しておきたい」
「えっと……」
「お前が敵に捕まって拷問を受け、俺の正体が『ハンゾウ』だって漏らす可能性がある時点で、お前はもう友達じゃない。俺の監視対象だ。俺に関する情報を流した時点で始末しなくちゃいけない」
「……そっか」
「忘れろとは言わない。これからは言動に気を付けるんだな」

 シャドウは窓を閉じ、ラウラに言う。

「今は、この状況を打破することが優先だ。それと……この敵、ラムエルテがお前に対して『ハンゾウ』についての情報を引き出そうとした時、お前を殺す」
「……シャドウくん」

 シャドウは冷たい目でルクレを見据え、窓から離れるのだった。

 ◇◇◇◇◇◇

 少し経過すると、寮内の廊下で騒ぎ声がした。

「ハンゾウ!! 出てこいや!!」
「お前の責任だ!!」「くそ、なんでこんな!!」
「敵はどこだ!!」「正々堂々勝負しろ!!」

 恐怖し叫ぶ者、この事態を収拾し『英雄』を目指す者、責任をハンゾウに取らせるため捜索する者……それらが動き出したのである。
 そんな中、聞き覚えのある声が。

「ハンゾウ様~!! あなたのシェリアがここに!! どうか姿をお見せになってぇ~!!」

 シェリアの声。
 シャドウはその甘ったるい猫なで声に怖気がしたが、ラウラが「あはは」と笑ってシャドウを見る。そして、ドアを開けると同時に、ドアの前を通ろうとしていたシェリアを引っ張り込んだ。

「きゃあ!? な、何を……って、あなた」
「シェリアちゃん、そんな叫んでもハンゾウは来ないって。それより、この状況をみんなで何とかしなきゃ!! 私たちクラス委員で!!」
「はあ? って……まさかここ」
「……俺の部屋だよ」
「……うう、初めての異性の部屋が、血の繋がっていないお兄ちゃんの部屋なんて!!」
「うるさい。というかお前、廊下で馬鹿みたいに騒ぐな」
「はあああ!? バカですって!? あなた、ハンゾウ様を呼ぶ私を馬鹿と!? ふん!! わたくしの婚約者を侮辱するような発言は、わたくしへの挑戦と捉えますからね!!」
「……頭痛してきた」

 シャドウは今日一番のデカため息を吐く。
 ラウラは苦笑して言う。

「あとは、ユアンくんがいればだけど……」
「殿下は寮にいませんわよ。指の骨折で医務室に泊まっていますわ」
「そっかー……じゃあ、ここにいる五人で何とかしなきゃ、だね!!」

 気合を入れるラウラ。シェリアは半眼でラウラを見て、つまらなそうに言う。

「悪いけど、勝手にやってくださる? わたくしはハンゾウ様をお迎えするために着替えて参りますわ。ふふ、新しい下着を用意した甲斐があったわ!!」

 シャドウは吐き気がした。血は繋がっていないが、こんなにも馬鹿なな妹だとは思っていなかった。
 するとラウラ。

「ふふふ、シェリアちゃん……ハンゾウ様を待つなら、ただおめかしして待つより、ハンゾウ様の役に立つよう頑張って待つ方がよくない?」
「……む」
「ハンゾウ様もきっと喜ぶよ? この事態を何とかするのはハンゾウ様には楽勝だけど、その手助けをすればハンゾウ様はシェリアちゃんのこと見直す……ううん、惚れ直すんじゃないかな?」
「───!!」

 シェリアはフッと微笑み、髪をぱさっとかき上げた。

「いいでしょう。リーダーはこのわたくしが務めますわ!! さあ、敵を倒しますわよ!!」
(こいつマジの馬鹿だ)

 シェリアには多少の恨みはあったが……今はその恨みが消え、どこか憎めない馬鹿と思えるようになったシャドウであった。

 ◇◇◇◇◇◇

 状況確認。
 現在、男子寮と女子寮の周辺に漆黒のモヤがまとわりついている。
 生徒何人かが魔法でモヤを攻撃したが、全て弾かれた。
 土属性の魔法師が地面を掘っての脱出を試みたが、少し地面を掘ると地面からもモヤが現れた。
 そして領内に、黒いフードを被った何者かが現れ、煙のように消え去った。

「以上、私が集めた情報です」

 シェリアが協力することになってから三十分。
 ヒナタが「すぐ戻ります」と出て戻ってくると、これだけの情報を持ってきた。  
 ルクレが興奮したように言う。

「ひ、ヒナタちゃん、すごい……!!」
「生徒たちに話を聞いただけですよ」

 情報収集にかけて、ヒナタの右に出る者はいない。
 ヒナタを仕込んだハンゾウですら、その情報収集能力に驚いていた。

「問題は、教師が誰もいないことです。今の状況では、生徒同士の内乱に発展しかねません……誰か、この状況を打破することのできる者が必要かと」
「それなら「私がやるよ」……は?」

 シェリアが立とうとしたが、ラウラが立つ。

「本当なら、第二王子のユアンくんがいればいいんだけどね。私はアルマス王国の王女だけど、いちおうは王族だしね。私が、みんなをまとめてみる」
「む、むむぅ……理にかなっていますが、ちょっと癪ですわね」
「ソニア。手を貸しなさい」
「はっ!! お嬢……いえ、姫様は私が守ります」

 ソニアが跪き、騎士としての顔になる。
 
「では、私は引き続き情報収集をします。ルクレ、あなたも手伝ってください」
「わ、わたしも?」
「一人では難しいこともあるので。では……」

 ヒナタはルクレを連れ、シャドウに会釈して出て行った。
 その会釈には「ラムエルテをお願いします」という意味も込められている。
 
「じゃあ私も行くね。生徒は……中央食堂に集めるから。シャドウくんたちも後から来て」
「ああ、わかった」

 ラウラ、ソニアも部屋を出ようとして……ラウラはシャドウを見た。

「私、精一杯頑張るから。シャドウくん……信じて・・・
「…………」

 それだけ言い、ラウラは部屋を出るのだった。
 残されたのは、シャドウとソフィア。
 ソフィアはシャドウをチラッと見て、からかうように言う。

「ふふん。お兄ちゃん、お姫様と何かあったのかしら?」
「……まあな。というか、お兄ちゃんって言うな」
「ふん、誰をどう呼ぼうとわたくしの勝手。血は半分しか繋がっていないけど、あなたは私の兄なんだから……魔法を使えるようになったのなら、ハーフィンクス家に戻れるよう、わたくしが口添えしてもいいのですよ?」
「…………」

 言ったことを後悔するような、そんな声だった。
 でも、シェリアは言った。その言葉は間違いなく、シャドウを気遣ったような言い方だ。
 シャドウは笑った。

「ははっ……悪いけど、ハーフィンクス家に未練はない。そもそも知ってるのか? 俺は追放されたんじゃなくて、殺されかけたんだぞ」
「……え? アルマス王国に送られたんじゃ」
「…………まあいいか」

 どうやらシェリアは『真実』を知らない。シャドウにはそれだけでよかった。

「そういえばお前、従者は?」
「メイドなら部屋に待機していますわ」
「そうか。よし……行動開始するか」
「ええ!! ハンゾウ様のために!!」

 どこか嬉しそうに部屋を出るシェリアを見て、シャドウはため息を吐くのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム 前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した 記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた 村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた 私は捨てられたので村をすてる

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

婚約破棄された上に、追放された伯爵家三男カールは、実は剣聖だった!これからしっかり復讐します!婚約破棄から始まる追放生活!!

山田 バルス
ファンタジー
カールは学園の卒業式を終え、心の中で晴れやかな気持ちを抱えていた。長年の努力が実を結び、婚約者リリスとの結婚式の日が近づいていたからだ。しかし、その期待は一瞬で裏切られた。 「カール、私たちの婚約は解消するわ。」 リリスの冷たい声がカール…

処理中です...