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第三章 黄昏旅団所属『死神』のラムエルテ
黄昏旅団所属『死神』ラムエルテ②
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シャドウは内心、本気で焦っていた。
(くそ!! 先手を打たれた。影世界? 影? 外が暗い……夜じゃない。魔法による何かが寮を覆った? 自分を倒せば解除される? ラムエルテはどこかにいる? クラスメイト……今は一学年が揃って領内待機。一人一人が標的になっている。俺だけじゃカバーできない。ヒナタ、ルクレ……ダメだ、無理だ!!)
「シャドウくん」
と、冷や汗を流しているシャドウに、ラウラが言う。
「状況を把握しないと。見て、外」
「あ、ああ」
落ち着いていた。
この落ち着き、とても十六歳の子供ではない。
ヒナタは改めてラウラを警戒。とりあえず、シャドウは窓に近づく。
「窓は……開くな。外は……黒い。でも、夜の闇というよりは、黒いモヤみたいなのが寮全体を覆っている……のか?」
「さすがに触るのは危険かと……」
「わかってる。問題は、このモヤが魔法によるもので、ラムエルテとかいうヤツが仕掛けた何かってことだ」
一応、ラムエルテの名を始めて知ったように言う。
ラウラも近づき、影をジッと見た。
「魔法、だね。この魔力の色は、どこかで見た記憶あるかも」
「……魔力の、色?」
「うん」
猛烈に嫌な予感がしたシャドウは、思わず目を開いてラウラを見る。
そして、シャドウにだけ聞こえるような声で、ポソッと言った。
「わたし、生まれつき『魔水晶の瞳』……魔力を色で判別することができる目を持っているの。このことは、わたしと死んだお母様しか知らない……ふふ、シャドウくんで三人目だね」
「なっ……」
「だから、知ってるの。授業で見たシャドウくんの魔力と、ハンゾウの魔力。全く同じだったから」
完全に、シャドウは油断していた。
魔水晶の瞳。魔力を判別することのできる目。
数世代に一人出るという異能。師であるハンゾウから聞いていたが、『出会う確率はゼロに近い』と言っていたし、ハンゾウの残した手紙にも黄昏旅団のメンバーに魔水晶の瞳を持つ者がいるとは書かれていなかった。
「シャドウくんのこと、ずっと気になってた。少し前……クオルデン王国からアルマス王国に戻る途中、盗賊たちの死体があった。最初は同士討ちか何かってソニアが言ってたんだけど……そこに残っていた魔力がシャドウくんと同じだと思ったの」
「…………」
「それで、シャドウくんに聞こうと思ってお話したんだけど……あの襲撃で、やっぱりそうなんだな、って」
「…………」
もう、誤魔化せない。
後ろを確認すると、ヒナタがルクレと一緒にソニアと話をし、ヒナタが小さく頷くのが見えた。どうやら、ソニアを引き付けているようだ。
シャドウは小さく息を吐く。
「それで、目的は」
自然と、敵対するような声になった。
ラウラは慌てて手を振る。
「ち、違うの。わたしはただ、助けてくれたお礼がしたかっただけなの」
「……悪いが、俺のことを知った以上、お前もこれから監視下に置く」
「ま、待って。おねがい、そういうのじゃないの。シャドウくんがどんな目的があるのか気にはなるけど……でも、助けてくれた恩人に変わりはないの」
「何も知らなければ、お前とは友達でいれた。でも、もう無理だ。俺、ヒナタの目的の邪魔となる可能性は潰しておきたい」
「えっと……」
「お前が敵に捕まって拷問を受け、俺の正体が『ハンゾウ』だって漏らす可能性がある時点で、お前はもう友達じゃない。俺の監視対象だ。俺に関する情報を流した時点で始末しなくちゃいけない」
「……そっか」
「忘れろとは言わない。これからは言動に気を付けるんだな」
シャドウは窓を閉じ、ラウラに言う。
「今は、この状況を打破することが優先だ。それと……この敵、ラムエルテがお前に対して『ハンゾウ』についての情報を引き出そうとした時、お前を殺す」
「……シャドウくん」
シャドウは冷たい目でルクレを見据え、窓から離れるのだった。
◇◇◇◇◇◇
少し経過すると、寮内の廊下で騒ぎ声がした。
「ハンゾウ!! 出てこいや!!」
「お前の責任だ!!」「くそ、なんでこんな!!」
「敵はどこだ!!」「正々堂々勝負しろ!!」
恐怖し叫ぶ者、この事態を収拾し『英雄』を目指す者、責任をハンゾウに取らせるため捜索する者……それらが動き出したのである。
そんな中、聞き覚えのある声が。
「ハンゾウ様~!! あなたのシェリアがここに!! どうか姿をお見せになってぇ~!!」
シェリアの声。
シャドウはその甘ったるい猫なで声に怖気がしたが、ラウラが「あはは」と笑ってシャドウを見る。そして、ドアを開けると同時に、ドアの前を通ろうとしていたシェリアを引っ張り込んだ。
「きゃあ!? な、何を……って、あなた」
「シェリアちゃん、そんな叫んでもハンゾウは来ないって。それより、この状況をみんなで何とかしなきゃ!! 私たちクラス委員で!!」
「はあ? って……まさかここ」
「……俺の部屋だよ」
「……うう、初めての異性の部屋が、血の繋がっていないお兄ちゃんの部屋なんて!!」
「うるさい。というかお前、廊下で馬鹿みたいに騒ぐな」
「はあああ!? バカですって!? あなた、ハンゾウ様を呼ぶ私を馬鹿と!? ふん!! わたくしの婚約者を侮辱するような発言は、わたくしへの挑戦と捉えますからね!!」
「……頭痛してきた」
シャドウは今日一番のデカため息を吐く。
ラウラは苦笑して言う。
「あとは、ユアンくんがいればだけど……」
「殿下は寮にいませんわよ。指の骨折で医務室に泊まっていますわ」
「そっかー……じゃあ、ここにいる五人で何とかしなきゃ、だね!!」
気合を入れるラウラ。シェリアは半眼でラウラを見て、つまらなそうに言う。
「悪いけど、勝手にやってくださる? わたくしはハンゾウ様をお迎えするために着替えて参りますわ。ふふ、新しい下着を用意した甲斐があったわ!!」
シャドウは吐き気がした。血は繋がっていないが、こんなにも馬鹿なな妹だとは思っていなかった。
するとラウラ。
「ふふふ、シェリアちゃん……ハンゾウ様を待つなら、ただおめかしして待つより、ハンゾウ様の役に立つよう頑張って待つ方がよくない?」
「……む」
「ハンゾウ様もきっと喜ぶよ? この事態を何とかするのはハンゾウ様には楽勝だけど、その手助けをすればハンゾウ様はシェリアちゃんのこと見直す……ううん、惚れ直すんじゃないかな?」
「───!!」
シェリアはフッと微笑み、髪をぱさっとかき上げた。
「いいでしょう。リーダーはこのわたくしが務めますわ!! さあ、敵を倒しますわよ!!」
(こいつマジの馬鹿だ)
シェリアには多少の恨みはあったが……今はその恨みが消え、どこか憎めない馬鹿と思えるようになったシャドウであった。
◇◇◇◇◇◇
状況確認。
現在、男子寮と女子寮の周辺に漆黒のモヤがまとわりついている。
生徒何人かが魔法でモヤを攻撃したが、全て弾かれた。
土属性の魔法師が地面を掘っての脱出を試みたが、少し地面を掘ると地面からもモヤが現れた。
そして領内に、黒いフードを被った何者かが現れ、煙のように消え去った。
「以上、私が集めた情報です」
シェリアが協力することになってから三十分。
ヒナタが「すぐ戻ります」と出て戻ってくると、これだけの情報を持ってきた。
ルクレが興奮したように言う。
「ひ、ヒナタちゃん、すごい……!!」
「生徒たちに話を聞いただけですよ」
情報収集にかけて、ヒナタの右に出る者はいない。
ヒナタを仕込んだハンゾウですら、その情報収集能力に驚いていた。
「問題は、教師が誰もいないことです。今の状況では、生徒同士の内乱に発展しかねません……誰か、この状況を打破することのできる者が必要かと」
「それなら「私がやるよ」……は?」
シェリアが立とうとしたが、ラウラが立つ。
「本当なら、第二王子のユアンくんがいればいいんだけどね。私はアルマス王国の王女だけど、いちおうは王族だしね。私が、みんなをまとめてみる」
「む、むむぅ……理にかなっていますが、ちょっと癪ですわね」
「ソニア。手を貸しなさい」
「はっ!! お嬢……いえ、姫様は私が守ります」
ソニアが跪き、騎士としての顔になる。
「では、私は引き続き情報収集をします。ルクレ、あなたも手伝ってください」
「わ、わたしも?」
「一人では難しいこともあるので。では……」
ヒナタはルクレを連れ、シャドウに会釈して出て行った。
その会釈には「ラムエルテをお願いします」という意味も込められている。
「じゃあ私も行くね。生徒は……中央食堂に集めるから。シャドウくんたちも後から来て」
「ああ、わかった」
ラウラ、ソニアも部屋を出ようとして……ラウラはシャドウを見た。
「私、精一杯頑張るから。シャドウくん……信じて」
「…………」
それだけ言い、ラウラは部屋を出るのだった。
残されたのは、シャドウとソフィア。
ソフィアはシャドウをチラッと見て、からかうように言う。
「ふふん。お兄ちゃん、お姫様と何かあったのかしら?」
「……まあな。というか、お兄ちゃんって言うな」
「ふん、誰をどう呼ぼうとわたくしの勝手。血は半分しか繋がっていないけど、あなたは私の兄なんだから……魔法を使えるようになったのなら、ハーフィンクス家に戻れるよう、わたくしが口添えしてもいいのですよ?」
「…………」
言ったことを後悔するような、そんな声だった。
でも、シェリアは言った。その言葉は間違いなく、シャドウを気遣ったような言い方だ。
シャドウは笑った。
「ははっ……悪いけど、ハーフィンクス家に未練はない。そもそも知ってるのか? 俺は追放されたんじゃなくて、殺されかけたんだぞ」
「……え? アルマス王国に送られたんじゃ」
「…………まあいいか」
どうやらシェリアは『真実』を知らない。シャドウにはそれだけでよかった。
「そういえばお前、従者は?」
「メイドなら部屋に待機していますわ」
「そうか。よし……行動開始するか」
「ええ!! ハンゾウ様のために!!」
どこか嬉しそうに部屋を出るシェリアを見て、シャドウはため息を吐くのだった。
(くそ!! 先手を打たれた。影世界? 影? 外が暗い……夜じゃない。魔法による何かが寮を覆った? 自分を倒せば解除される? ラムエルテはどこかにいる? クラスメイト……今は一学年が揃って領内待機。一人一人が標的になっている。俺だけじゃカバーできない。ヒナタ、ルクレ……ダメだ、無理だ!!)
「シャドウくん」
と、冷や汗を流しているシャドウに、ラウラが言う。
「状況を把握しないと。見て、外」
「あ、ああ」
落ち着いていた。
この落ち着き、とても十六歳の子供ではない。
ヒナタは改めてラウラを警戒。とりあえず、シャドウは窓に近づく。
「窓は……開くな。外は……黒い。でも、夜の闇というよりは、黒いモヤみたいなのが寮全体を覆っている……のか?」
「さすがに触るのは危険かと……」
「わかってる。問題は、このモヤが魔法によるもので、ラムエルテとかいうヤツが仕掛けた何かってことだ」
一応、ラムエルテの名を始めて知ったように言う。
ラウラも近づき、影をジッと見た。
「魔法、だね。この魔力の色は、どこかで見た記憶あるかも」
「……魔力の、色?」
「うん」
猛烈に嫌な予感がしたシャドウは、思わず目を開いてラウラを見る。
そして、シャドウにだけ聞こえるような声で、ポソッと言った。
「わたし、生まれつき『魔水晶の瞳』……魔力を色で判別することができる目を持っているの。このことは、わたしと死んだお母様しか知らない……ふふ、シャドウくんで三人目だね」
「なっ……」
「だから、知ってるの。授業で見たシャドウくんの魔力と、ハンゾウの魔力。全く同じだったから」
完全に、シャドウは油断していた。
魔水晶の瞳。魔力を判別することのできる目。
数世代に一人出るという異能。師であるハンゾウから聞いていたが、『出会う確率はゼロに近い』と言っていたし、ハンゾウの残した手紙にも黄昏旅団のメンバーに魔水晶の瞳を持つ者がいるとは書かれていなかった。
「シャドウくんのこと、ずっと気になってた。少し前……クオルデン王国からアルマス王国に戻る途中、盗賊たちの死体があった。最初は同士討ちか何かってソニアが言ってたんだけど……そこに残っていた魔力がシャドウくんと同じだと思ったの」
「…………」
「それで、シャドウくんに聞こうと思ってお話したんだけど……あの襲撃で、やっぱりそうなんだな、って」
「…………」
もう、誤魔化せない。
後ろを確認すると、ヒナタがルクレと一緒にソニアと話をし、ヒナタが小さく頷くのが見えた。どうやら、ソニアを引き付けているようだ。
シャドウは小さく息を吐く。
「それで、目的は」
自然と、敵対するような声になった。
ラウラは慌てて手を振る。
「ち、違うの。わたしはただ、助けてくれたお礼がしたかっただけなの」
「……悪いが、俺のことを知った以上、お前もこれから監視下に置く」
「ま、待って。おねがい、そういうのじゃないの。シャドウくんがどんな目的があるのか気にはなるけど……でも、助けてくれた恩人に変わりはないの」
「何も知らなければ、お前とは友達でいれた。でも、もう無理だ。俺、ヒナタの目的の邪魔となる可能性は潰しておきたい」
「えっと……」
「お前が敵に捕まって拷問を受け、俺の正体が『ハンゾウ』だって漏らす可能性がある時点で、お前はもう友達じゃない。俺の監視対象だ。俺に関する情報を流した時点で始末しなくちゃいけない」
「……そっか」
「忘れろとは言わない。これからは言動に気を付けるんだな」
シャドウは窓を閉じ、ラウラに言う。
「今は、この状況を打破することが優先だ。それと……この敵、ラムエルテがお前に対して『ハンゾウ』についての情報を引き出そうとした時、お前を殺す」
「……シャドウくん」
シャドウは冷たい目でルクレを見据え、窓から離れるのだった。
◇◇◇◇◇◇
少し経過すると、寮内の廊下で騒ぎ声がした。
「ハンゾウ!! 出てこいや!!」
「お前の責任だ!!」「くそ、なんでこんな!!」
「敵はどこだ!!」「正々堂々勝負しろ!!」
恐怖し叫ぶ者、この事態を収拾し『英雄』を目指す者、責任をハンゾウに取らせるため捜索する者……それらが動き出したのである。
そんな中、聞き覚えのある声が。
「ハンゾウ様~!! あなたのシェリアがここに!! どうか姿をお見せになってぇ~!!」
シェリアの声。
シャドウはその甘ったるい猫なで声に怖気がしたが、ラウラが「あはは」と笑ってシャドウを見る。そして、ドアを開けると同時に、ドアの前を通ろうとしていたシェリアを引っ張り込んだ。
「きゃあ!? な、何を……って、あなた」
「シェリアちゃん、そんな叫んでもハンゾウは来ないって。それより、この状況をみんなで何とかしなきゃ!! 私たちクラス委員で!!」
「はあ? って……まさかここ」
「……俺の部屋だよ」
「……うう、初めての異性の部屋が、血の繋がっていないお兄ちゃんの部屋なんて!!」
「うるさい。というかお前、廊下で馬鹿みたいに騒ぐな」
「はあああ!? バカですって!? あなた、ハンゾウ様を呼ぶ私を馬鹿と!? ふん!! わたくしの婚約者を侮辱するような発言は、わたくしへの挑戦と捉えますからね!!」
「……頭痛してきた」
シャドウは今日一番のデカため息を吐く。
ラウラは苦笑して言う。
「あとは、ユアンくんがいればだけど……」
「殿下は寮にいませんわよ。指の骨折で医務室に泊まっていますわ」
「そっかー……じゃあ、ここにいる五人で何とかしなきゃ、だね!!」
気合を入れるラウラ。シェリアは半眼でラウラを見て、つまらなそうに言う。
「悪いけど、勝手にやってくださる? わたくしはハンゾウ様をお迎えするために着替えて参りますわ。ふふ、新しい下着を用意した甲斐があったわ!!」
シャドウは吐き気がした。血は繋がっていないが、こんなにも馬鹿なな妹だとは思っていなかった。
するとラウラ。
「ふふふ、シェリアちゃん……ハンゾウ様を待つなら、ただおめかしして待つより、ハンゾウ様の役に立つよう頑張って待つ方がよくない?」
「……む」
「ハンゾウ様もきっと喜ぶよ? この事態を何とかするのはハンゾウ様には楽勝だけど、その手助けをすればハンゾウ様はシェリアちゃんのこと見直す……ううん、惚れ直すんじゃないかな?」
「───!!」
シェリアはフッと微笑み、髪をぱさっとかき上げた。
「いいでしょう。リーダーはこのわたくしが務めますわ!! さあ、敵を倒しますわよ!!」
(こいつマジの馬鹿だ)
シェリアには多少の恨みはあったが……今はその恨みが消え、どこか憎めない馬鹿と思えるようになったシャドウであった。
◇◇◇◇◇◇
状況確認。
現在、男子寮と女子寮の周辺に漆黒のモヤがまとわりついている。
生徒何人かが魔法でモヤを攻撃したが、全て弾かれた。
土属性の魔法師が地面を掘っての脱出を試みたが、少し地面を掘ると地面からもモヤが現れた。
そして領内に、黒いフードを被った何者かが現れ、煙のように消え去った。
「以上、私が集めた情報です」
シェリアが協力することになってから三十分。
ヒナタが「すぐ戻ります」と出て戻ってくると、これだけの情報を持ってきた。
ルクレが興奮したように言う。
「ひ、ヒナタちゃん、すごい……!!」
「生徒たちに話を聞いただけですよ」
情報収集にかけて、ヒナタの右に出る者はいない。
ヒナタを仕込んだハンゾウですら、その情報収集能力に驚いていた。
「問題は、教師が誰もいないことです。今の状況では、生徒同士の内乱に発展しかねません……誰か、この状況を打破することのできる者が必要かと」
「それなら「私がやるよ」……は?」
シェリアが立とうとしたが、ラウラが立つ。
「本当なら、第二王子のユアンくんがいればいいんだけどね。私はアルマス王国の王女だけど、いちおうは王族だしね。私が、みんなをまとめてみる」
「む、むむぅ……理にかなっていますが、ちょっと癪ですわね」
「ソニア。手を貸しなさい」
「はっ!! お嬢……いえ、姫様は私が守ります」
ソニアが跪き、騎士としての顔になる。
「では、私は引き続き情報収集をします。ルクレ、あなたも手伝ってください」
「わ、わたしも?」
「一人では難しいこともあるので。では……」
ヒナタはルクレを連れ、シャドウに会釈して出て行った。
その会釈には「ラムエルテをお願いします」という意味も込められている。
「じゃあ私も行くね。生徒は……中央食堂に集めるから。シャドウくんたちも後から来て」
「ああ、わかった」
ラウラ、ソニアも部屋を出ようとして……ラウラはシャドウを見た。
「私、精一杯頑張るから。シャドウくん……信じて」
「…………」
それだけ言い、ラウラは部屋を出るのだった。
残されたのは、シャドウとソフィア。
ソフィアはシャドウをチラッと見て、からかうように言う。
「ふふん。お兄ちゃん、お姫様と何かあったのかしら?」
「……まあな。というか、お兄ちゃんって言うな」
「ふん、誰をどう呼ぼうとわたくしの勝手。血は半分しか繋がっていないけど、あなたは私の兄なんだから……魔法を使えるようになったのなら、ハーフィンクス家に戻れるよう、わたくしが口添えしてもいいのですよ?」
「…………」
言ったことを後悔するような、そんな声だった。
でも、シェリアは言った。その言葉は間違いなく、シャドウを気遣ったような言い方だ。
シャドウは笑った。
「ははっ……悪いけど、ハーフィンクス家に未練はない。そもそも知ってるのか? 俺は追放されたんじゃなくて、殺されかけたんだぞ」
「……え? アルマス王国に送られたんじゃ」
「…………まあいいか」
どうやらシェリアは『真実』を知らない。シャドウにはそれだけでよかった。
「そういえばお前、従者は?」
「メイドなら部屋に待機していますわ」
「そうか。よし……行動開始するか」
「ええ!! ハンゾウ様のために!!」
どこか嬉しそうに部屋を出るシェリアを見て、シャドウはため息を吐くのだった。
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