最強スキル『忍術』で始めるアサシン教団生活

さとう

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第四章 ライザー・グランドアクシス

外部協力員

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 ラムエルテの討伐から数日。
 学園は未だに、襲撃事件の調査で休校。シャドウは自室で怪我を癒しつつベッドで寝転んでいた。
 本来なら『次の獲物』を探す必要があるのだが……全く、何も手がかりがない。
 すると、部屋のドアがノック。従者室からなのでヒナタとルクレが入ってきた。

「シャドウ様。包帯を交換します」
「ああ、頼む」
「あう……」

 シャドウが上着を脱ぐと、ルクレが顔を赤くしてそっぽ向いてしまう。
 どうも『異性の肌』を見るのに抵抗があるようだ。ヒナタはともかくシャドウも同様なので何も言えないのだが。
 ルクレは言う。

「し、シャドウくんも医務室行ければいいんだけどね……」
「怪我の追求されたら面倒だし、仕方ないよ」
「ご安心ください。医師までとはいきませんが、私も医療の心得がありますので。怪我や病気の判別、薬草の調合、簡単な手術でしたら行えます」
「今更だが、お前ホントに万能だよな……」

 関心するシャドウ。
 ヒナタはあらゆる分野に精通しており、頼りになる。

「ですが……暗殺術では、シャドウ様の足元にも及びません。旅団との戦いは全て、お任せすることに」
「いいよ。師匠もそのために俺を……」

 それだけではないとシャドウは思い、言葉を途中で切った。
 そして、ルクレに言う。

「ルクレ。お前の方はどうだ?」
「え?」
「魔法だよ魔法。『氷』の魔法……使えるようになったか?」
「えっと……コップのお水を離れた位置でも凍らせるくらいはできるけど、威力を上げると狙いが上手く定まらなくて」
「そればかりは感覚だよなあ……俺もよくわからんし」

 ルクレの魔法式は『氷』だ。
 魔法式を刻んだばかりであり、しかも六属性に当てはまらない『氷』属性なので扱いに難儀している。今は『風魔七忍』の一員ではあるが、修行やヒナタの手伝いが主な仕事だ。
 だが、シャドウは言う。

「でも、寮の襲撃事件では魔法を使ったよな」
「う、うん。思わず……ちゃんとできてよかったよ」
「ああ、この調子で頼む」
「う、うん。あ……」
「ん、どうした?」
「……その。実家からお手紙があったの。近く、家に帰らないといけなくなったんだ」
「家に?」
「うん。ブリトラ侯爵家……帰りたくないな。上級生のお兄様、お姉様も帰るし、私も行かないわけにはいかなくて」

 ルクレは俯く……本当に嫌なのだろう。
 シャドウは言う。

「とりあえず、用事済ませて早く帰ってきなよ。俺もヒナタも学園にいるし」
「ええ。教師の話では、あと数日は休校らしいです」

 ヒナタはいつの間にか情報を手に入れていた。
 この話の翌日、ルクレは実家に戻った。
 シャドウの怪我もヒナタの薬草でよくなり、ようやく動けるようになる。
 動けるようになり、情報収集をしようと部屋を出ようとした時だった。
 ドアがノックされ、声が聞こえてくる。

『あの、シャドウくん……いる?』
「───!!」

 ラウラだった。
 部屋にいたヒナタと目配せし、ヒナタは気配を殺し部屋の隅へ。
 シャドウもリストブレードを確認。ドアを開ける。

「き、来ちゃった……あの、お話いいかな?」
「……どうぞ」
「あ、一人だよ。ソニアはまだ怪我が良くならなくて。魔法医師の治癒魔法で骨はくっついたけど、明日までは安静にって」
「どうぞ」

 どうでもいい話を聞き流し、ラウラを部屋に入れた。
 そして、椅子を勧めるとラウラは座り、シャドウはベッドに座る……ラウラは、背後のヒナタに気付いていない。ヒナタならいつでも首を狩れる。

「で、用事は?」
「あはは……やっぱり警戒するよね」
「ああ。こうして会うのでさえリスクだ。お前はアルマス王国のお姫様。しかも学園は二度も襲撃を受けている……アルマス王国からお前の知らない護衛が来て、お前の周囲を常に警戒してても不思議じゃない。もしそいつらが俺らの邪魔になるなら消さなくちゃいけない」
「……」
「わかるか。お前と会うのは学園の中だけ。それ以外では俺らの邪魔するな。お前が俺らに何を求めているか知らんが、こっちはもうお前のことを『監視対象』としか見ていない……お前が今から何を言うか知らんが、どんな言葉ならべても意味はないぞ」
「……ご、ごめん」

 ラウラは謝った。
 善人ぶるつもりはない。学園に来たのは『黄昏旅団の潰滅』のため。仲良しごっこをするつもりなんて毛頭ない。
 シャドウはため息を吐く。

「……で、要件は?」
「あのね……わ、私も、仲間に入れてくれないかな」
「却下」

 即答だった。
 そう言いだす可能性は考えていたので、言葉がスラスラ出た。

「メリットがない。お前は誰からも愛されてるお姫様だ。俺やヒナタ、実家から冷遇されているルクレとは立場が違う」
「……」
「次に言うのは『バラされたくなければ仲間に入れろ』か? その場合、こっちも遠慮しない」

 すると、ヒナタがラウラの腕を掴み、口を無理やり開けた。

「ぁっ……」
「時間差で、証拠も残さずに心臓だけを停止させる毒薬の調合も可能です。この丸薬を飲めば、きっちり一日後に死亡します。睡眠薬も合わせてありますので、突如倒れたあなたは眠るように、静かに息を引き取るという算段です」

 ヒナタが取り出した丸薬を見て、ラウラは顔を青くする。
 シャドウは言う。

「わかったろ。学園以外で、俺たちに関わるな。学園では同じクラス委員として付き合ってくれ」

 ヒナタが手を離すと、ラウラは俯く。
 別世界……深く実感しているようだ。
 事実を知るまで、何の遠慮もなく部屋に遊びに来ていたラウラだったが、今ではこの部屋が暗殺組織の拠点であり、いつでも自分を殺せる人間が二人もいる。
 ラウラは言う。

「……私、思ったんだ」
「……?」
「シャドウくんがすごく気になった理由。最初は、私を助けてくれた魔力の人で、ちゃんとお礼を言いたかったの。でも……シャドウくんと接しているうちに、シャドウくんは常に一歩引いたような、人との付き合いをしない人だって」
「……」
「だから、私がもっと仲良くなろうって思ったの。見ず知らずの私を助けてくれたシャドウくんは優しい人だから……だから、もっと楽しいことしたいって。学園で素敵な思い出を作ってほしいって」
「……」
「いけないことなのかな。私は、シャドウくんにも学園生活を楽しんでほしいだけなの。暗殺者でも……楽しく生きることって、ダメなのかな」
「───……っ」

 ◇◇◇◇◇◇

『いいかシャドウ。人生は一度きりなんだ。思いっきり楽しめよ』

 ◇◇◇◇◇◇

 かつて、修行の合間にハンゾウが言った言葉が胸に蘇る。
 シャドウの顔色が変わったのを、ラウラは見逃さなかった。

「シャドウくん。私はシャドウくんたちの抱えている物の大きさはわからない。どれだけ辛くても、大事なことだから頑張ると思う……でも、学園にいる時は、私の友達として付き合ってほしいの。私と一緒にいる時、シャドウくんが心から笑えるように、頑張るから」
「…………ッ」
「仲間に───……ううん、私と友達になってください」

 ラウラはそっと、シャドウに手を差し伸べた。
 その手は悪意などない。純粋な優しさしか感じない。
 ヒナタも動揺したのか、少しだけ手が震えていた。

「…………」
「…………シャドウくん」
「───……わかったよ」

 シャドウはラウラの手を取り、握手した。
 殺し合いするより厄介な相手。シャドウは負けた気分になった。
 まだ子供。だからこそ、シャドウは負け惜しみのように言う。

「外部協力員だ」
「へ?」
「お前は俺たちの外部協力員になれ。お姫様のお前でしかわからないこともあるだろ。そういう情報を提供してくれ……対価は支払う」
「…………」
「あと、お前の従者の女騎士、そいつには何も言うなよ。ああいう堅そうなのは隠し事できないタイプだし、お前の意思と関係なく俺らのことをアルマス王国に話す。俺たちのことを話すのはこの部屋だけ。いいな。遵守しろよ」
「う、うん!! あ、でも情報って何すればいいの?」
「お前が気になったこと何でもだ。なんでも」
「なんでも……あ、そういえば。シャドウくんが頑張ってみんなを助けたのに、なんかユアンくんのおかげってことになってるの!! もう、ユアンくんもその気になってるしさー」
「どうでもいい。あと、俺のこと匂わせるようなこと言うなよ」

 こうして、風魔七忍の『外部協力員』として、アルマス王国第一王女ラウラが仲間になった。
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