最強スキル『忍術』で始めるアサシン教団生活

さとう

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第四章 ライザー・グランドアクシス

ライザー・グランドアクシス①

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「深夜、第七訓練場にある廃棄された小道具置き場に仲間と来い」

 ライザーはそう言い、シャドウを離す。
 ライザーはシャドウの肩を叩き、ギムレットに言う。

「先生、障壁魔法!!」
「わかったわかった。障壁魔法は、魔法式もテンプレートも関係ない。ただ、硬質化させた魔力を放出し盾を形成するだけだ。大事なのはイメージだ。いいか、イメージ……」
「イメージ……」

 ライザーが手を突き出し数秒……すると、薄い黄色の小さな盾が現れた。
 盾といっても立派な物ではない。丸い、顔と同じくらいの大きさの盾だ。
 ギムレットはその盾をコンコンと叩く。

「まあ、最初にしては上出来だ。熟練者は一瞬で、しかも複数同時に作り出したり、自分を覆ったりと様々な形状に変化させられる。こればかりは経験だな」
「おお~……じゃあ、色が黄色いのは?」
「魔法式に影響している。ライザー、お前は『地』の魔法式を刻んでいるだろう?」
「あ、そういうことか」
「よし。わかったなら、やってみろ」

 ギムレットが言うと、前に整列したユアン、シェリア、ルクレ、ライザー、そしてユアンの従者の少女と、もう一人の男子生徒、ラウラにもやらせてみる。
 シャドウは「俺、前にいていいのかな……」と思いつつ、ライザーの展開した障壁魔法を見た。

「よし!! さっそく魔法を撃ってみろ。盾の強さを確かめる!!」
「……いいけど」

 シャドウは杖を取り出し、わざと地面に落とす……そして、拾うフリをしながら印を結び、ライザーの盾めがけて『火槍の術』を放った。
 すると、盾と槍が正面からぶつかり相殺される。

「おお、すっげぇ!!」
「これが障壁魔法だ。こいつの素晴らしい点は、習得こそ簡単だが奥が深く、どんな攻撃魔法でも防げるってところだ。しかしデメリットもある……こいつは魔力の消費が激しく、さらに瞬時に展開できなきゃ意味がない。相手の魔法を視認してから発動させるのは難しい」
「む……」
「今回この魔法を教えたのは、こういう魔法があるってことを教えたかったからだ。さて、お前たち……それぞれ並んで教えてやるように」

 ギムレットが言うと、座っていた生徒たちがゾロゾロと立ち上がり、ライザーたちの前に並ぶ。
 数が多いので、優秀な生徒を先に指導し、その後で生徒が生徒を教えている。
 シャドウはライザーから離れ、周囲の様子を見た。

「……」

 ライザー。
 グランドアクシス公爵家の三男。兄が二人、妹が一人いる。
 兄は優秀な魔法師であり、長兄は次期公爵として今はクオルデン王国の実戦魔法師部隊の分団長を務めている。弟も、兄の部下として次期分団長の地位が約束されている。
 グランドアクシス公爵家。王家から『グランド』の二つ名を賜った戦闘貴族。
 
(そこの三男……そいつが、なんで俺のことを)

 周りを見ると、ライザーは集まったクラスメイトたちに障壁魔法を教えている。
 ユアン、ラウラの周りが特に人気で、シェリアは三番目、ユアンの従者ともう一人の男子がその次……そして、ルクレの傍にはヒナタしかいなかった。
 あまり接点がないので、ルクレに近づいて「頑張れ」というわけにもいかないので、シャドウは様子を見る。
 そして、ここで接点のないユアンの従者ともう一人の男子を見た。

(ユアンの従者……アルトアイネス騎士爵家の騎士、レスティア)

 レスティア・アルトアイネス。
 十六歳、しかも女でありながらアルトアイネス騎士爵家の誇る最強の身体強化テンプレート『聖騎士化パラディン』を使いこなす天才少女。
 無属性ゆえに他の魔法は使えないが、その剣技は王国騎士を凌駕する。

(そしてもう一人の男子……『風』のウィングボルト公爵家の異端児ヨシュア)

 ウィングボルト公爵家の異端児ヨシュア。
 十六歳。現伯爵の妾の子であり疎まれていたが、ヨシュアが伯爵の子供たちをまとめて相手し、軽く薙ぎ払ってしまう強さを見せつけた『風』の異端児。
 『ストーム』の二つ名を持つスラッシア伯爵家の次期当主。
 その性格は軽く、十六歳ながら女遊びが大好きというお調子もの。
 ヨシュアは現在、女の子ばかり集めて障壁魔法を教えていた。見てくれもかなりいいので、女子たちは楽しそうに会話している。

(……敵は大人だけとは限らない。警戒はしておかないとな)
 
 そう思い、シャドウは気を引き締めるのだった。

 ◇◇◇◇◇◇

 その日の夜。
 シャドウはアサシン服に着替える。そして、ヒナタもアサシン衣装を着て部屋から出てきた。
 
「……ヒナタ。戦いになる可能性が高い、ルクレを任せる」
「わかりました」

 二人は部屋の窓から出てルクレの部屋へ。
 女子寮の一階にある窓をヒナタがノックすると、着替えをしたルクレが窓を開けた……の、だが。

「あ、シャドウくん。行くんだね?」
「……なんでお前が」
「ご、ごめんなさい。その……私のせいです」

 ルクレだけではなく、なぜかラウラもいた。
 ヒナタが警戒をすると、ラウラが言う。

「私、協力者だから手伝うよ!! あ、ソニアは今夜いないから安心して。街にあるアルマス王国騎士の詰所で報告書を出して、そのままお泊りするから。帰ってくるのは明日になるって」
「いや、そういうことじゃなくて……ああもう、めんどくさい。ルクレ、行くぞ」
「う、うん」
「ルクレちゃんから聞いたけど、ライザーくんに会うんだよね……ライザーくん、どういうつもりなのかな」
「こっちからすれば、お前も『どういうつもりなのか』って聞きたいけどな」

 やや呆れるシャドウに、ラウラが「あはは」と笑った。
 ヒナタはルクレに言う。

「ルクレ。今後このようなことがあれば、あなたを罰します。外部協力員とはいえ、あなたは今夜の秘密をラウラ様に漏らしたことに変わりありません」
「う……ご、ごめんなさい」
「まって、悪いのは私で」
「そう思うなら、今後このようなことはなさらないように。勘違いしているから言っておきますが……これは遊びではありません。外部協力員であるあなたは、我々が求めた時に手を貸せばいいだけ。必要のない接触は本来避けるべきなのですから」
「う……」

 ヒナタは、ラウラに厳しい。
 ルクレもヒナタも縮こまってしまう。
 これから戦闘の可能性もあるので、シャドウは言った。

「とりあえずいい。ラウラも、このまま残しておくよりは連れて行けば安心だ」
「……わかりました」
「やった。シャドウくん、ありがと!!」
「……はあ」

 こうして、四人は第七訓練場にある廃棄された小屋へ向かうのだった。

 ◇◇◇◇◇◇

 第七訓練場は、学園の敷地でもかなりはずれの方にある場所だ。
 大がかりな魔法訓練などで使うが、移動に時間がかかるのと、本校舎にある第一~第四訓練場の方が利便性が高いということで、あまり使われていない。
 訓練場内に入り、ヒナタに聞く。

「廃棄された小道具置き場ってのは?」
「こちらです……案内します」

 小道具置き場。
 その名の通り、魔法用の的や掃除道具、古い道具が入った小屋だ。
 廃棄されており、今は訓練場の隅にあるだけ。存在すら知らない者も多いだろう。
 シャドウは首をコキコキ鳴らし、藪から小屋を覗く。
 すると、ラウラが言う。

「……いる」
「わかるのか?」
「うん。前にも言ったけど、私は『魔水晶の眼マクォーツアイ』を持つから。魔力の痕跡や、誰の魔力かはわかるんだ」
「……相手は、ライザーか?」
「うん。小屋の中にいる」
「……よし。俺が先に行く。ヒナタ、周囲の警戒を……それとルクレにラウラ。第七訓練場周囲に人はいないけど、デカい声とか出して目立つような真似するなよ」
「し、しないから!!」
「き、気を付けるね」

 シャドウは藪から出て小屋に近づく。
 そして、ドアを静かに開け……腰から苦無を抜き、滑り込むように部屋へ。
 苦無を構えつつ周囲を確認する。

「来たか、ハンゾウ」
「…………」

 ライザー・グランドアクシス。
 逆立った赤い髪、鋭い目つきの少年だ。
 座っているのは使い古されたロッカーで、横倒しにされ今はライザーの椅子と化している。
 薄暗く、見づらいが……シャドウは気付いた。

「……ッ」
「驚いたか?」

 ライザー・グランドアクシスは、アサシン衣装を・・・・・・・身に纏っていた・・・・・・・
 上半身裸で肩が剥き出しの黒いコートを着ている。所々に黄色いラインが入り、さらに両手に装備された籠手にはシャドウと同じリストブレードが装備されている。
 ライザーは立ち上がる。

「見ての通り、オレもお前と同じアサシンだ」
「…………」
「おいおい、会話くらいしてくれよ。こっちはお前の正体に気付いてるんだからよ」
「……お前、黄昏旅団か。なぜ俺に気付いた」
「ははっ、黄昏旅団ね……そうだと言ったら?」
「…………」

 シャドウは右手の人差し指、中指を合わせて立てる。
 ライザーはシャドウを手で制する。

「待て。忍術は使うな……深夜だし、派手にしたくねぇだろ? 素手だ……素手でやろう。魔法と武器はなし、男らしく素手の勝負だ」
「…………」
「安心しろ。お前が勝てば、お前の知りたいこと何でも答えてやる。その代わり……お前が負けたら、死んでもらうぜ」
「…………」

 ライザーはゆっくり前に出て構えを取る。
 シャドウは少しだけ考え、苦無をしまい、ゆっくりライザーに近づいた。

「嬉しいね。じゃあ───始めるぜ!!」

 使い古された小道具置き場にて、魔法も忍術もない、純粋な体術だけの戦いが始まった。
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