最強スキル『忍術』で始めるアサシン教団生活

さとう

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第五章 ダンジョン実習

ダンジョン実習①

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 ダンジョン実習。
 新入生の魔法師は、学園から配布されたマントを着てダンジョン前に集まっていた。
 マントには『参』という古代文字が刺繍されている。誰も読むことができなかったが、シャドウとヒナタはハンゾウが持っていた本の中で、こういう文字が使われていることを知っていた。
 教師のクーデリアが言う。

「そのマントは三等魔法師の証。魔力を流すことで硬化する特別製で、魔獣の攻撃程度なら受けることができる。まあ、防護として使え……それと、ここから先は遊びではない。気を引き締めるように」

 ちなみに、マントを着ているのは貴族だけ。
 従者枠の生徒は鎧を着たり、剣を装備したりしている。それぞれが最も得意とする装備品を身に付けていた。
 ヒナタはアサシン衣装……ではなく、皮の鎧に剣、腰には杖を装備していた。

「今回入るのはこの『クヌート遺跡』だ。すでに調査を終えた低級ダンジョンで、最下層は地下五階。半日もあれば踏破可能な、まさに初心者向けダンジョンである」

 クーデリアの説明はわかりやすい。
 シャドウは生徒たちを確認。

(一年一組だけじゃない。二組、三組と合わせて九十人か……)

 一年生は全部で十クラス。さすがに全クラスを一気にダンジョンに投入することはしないようだ。
 クーデリアは続ける。

「それと注意事項だ。ダンジョンに踏み込んだ瞬間、全ては自己責任になる。怪我をするのも、死ぬのも自己責任。何かあったからと学園に責任を押し付けたりしても無駄だぞ。それともう一つ、ダンジョンには心臓となる『核』が存在する。その核を見つけても絶対に破壊しないように……昔、ダンジョンの核を面白半分で破壊した生徒がいたが、王国の年間予算数十年分の罰金を支払うことになり爵位剝奪の上に家族ともども死ぬまで強制労働の身となった者がいたからな」

 ゾッとするような注意事項だった。
 
「ダンジョン内では魔獣が出る。ダンジョンの最下層に置いてある証を手にし、再び地上へ戻ってくるように。チームを組むのも、従者と二人で進むも自由だ。説明は以上……では、スタートだ」

 クーデリアは説明を終えると、近くの壁に寄りかかる。
 そして、待っていましたとばかりにダンジョンに飛び込んでいく生徒たち。
 すぐに飛び込まない生徒は、周囲を見渡し仲間を探しているようだ。
 するとシェリア。

「ユアン様~!! 一緒に行きませんか?」
「いいよ。シェリアさんみたいな実力者と一緒なら心強い」
「嬉しい!! ふふ、では一緒に!!」

 シェリアは、ユアンの腕を取る。
 取り巻きもいたが、あまりに大所帯なので、適当にグループ分けし、ぞろぞろとダンジョンに入って行った。
 他にも、有力そうな魔法師たちは仲間を組み、ダンジョンに入って行く。
 残ったのはシャドウ、ヒナタ、ルクレ、ライザー。

「じゃ、オレら四人で行くか」
「ああ、よろしく」
「……よろしくお願いします」
「お、お願いしますっ!!」

 残り者同士……特に怪しい組み合わせではない。
 クーデリアは、シャドウたちをチラッと見て言う。

「一番最後か。ふふ……そういえば、去年も、一昨年も、初めてのダンジョン実習で最も優秀な成績を残したのは、一番最後にダンジョンに踏み込んだ生徒たちだったな」
「お、マジっすか!! あれ……あの先生、いいっすか?」
「なんだ、ライザー」
「最も成績優秀って……これ、最下層にある『証』を取りに行くだけっすよね? 成績優秀とか関係ありますか?」
「……くくっ、その質問も懐かしい。去年全く同じことを聞かれた」

 クーデリアは楽しそうに言う。

「先ほどは『全て自己責任』と言ったが、さすがに未来の魔法師を見殺しにするような真似はしない。ダンジョン内には上等魔法師が数名待機して、生徒たちを観察している」
「……マジですか」
「ああ。判断力、魔法力、戦闘力などを分析して、成績を付けるのさ。さて、話は終わりだ……行きなさい」

 シャドウたちは顔を見合わせ、ダンジョンに踏み込んだ。

 ◇◇◇◇◇◇

 遺跡型ダンジョン『クヌート遺跡』
 難易度は低級。現れる魔獣の平均討伐レートはE。
 初心者のために存在するようなダンジョンであり、今は学園が管理しているダンジョンだ。
 シャドウは杖を片手にヒナタに確認する。

「ヒナタ、俺たち以外の気配はあるか」
「……恐らくないかと。ですが、魔法を使って隠蔽している可能性はあります」
「そうか……参ったな。ダンジョン内なら忍術を普通に使えると思ったんだけど」

 シャドウは杖をフラフラさせる。
 するとライザーが、ゴテゴテしてグローブを装備し拳をガツンと合わせた。

「ちょうどいい。シャドウ、オレの本来の戦い方を見てもらうぜ!!」
「お、それは興味ある」

 その時、通路の陰からゴブリンが飛び出してきた。

『キキッ!!』『ギャッ!!』『ケケケ!!』
「わわ、ご、ゴブリン……!!」

 驚くルクレ。ライザーが前に出ると、拳に魔力が集中する。

「行くぜ、『地爆拳』!!」

 地面を殴ると、石畳が砕け砲弾のように飛んだ。
 そして、ゴブリンたちに命中すると爆散する。
 ヒナタはすぐに気づいた。

「土魔法……そうか、グランドアクシス家は土属性でしたね」
「ハハッ!! そういうこった。オレは才能ねえし、兄貴や姉貴みたいに土を自在に操るなんてできねえ。オレにできるのは魔力を流して地面を爆破することだけ!!オレが殴った大地は爆破する!!」

 土魔法は本来、魔力を流して土を泥に変えたり、石を砂に変えたり、砂から鉄を生み出したりと用途が広い。だがライザーは才能がなく、殴った大地に魔力を流し、爆破作用を与えることしかできない。
 最初は、爆破と言っても破裂に近い、小規模なものだった。
 だが、ハンゾウと出会い改良したテンプレートを与えられ、教えられた体術と組み合わせることで、独自の戦闘手段として確立……近接、そして地面のある場所では、準特等魔法師レベルの強さを発揮する。

「さあ、まだまだ来やがれぇ!!」

 ゴブリンが大量に現れる───だが、どこまでも楽しそうに、そしてド派手に戦うライザーだった。

 ◇◇◇◇◇◇

 一方、シェリアは。

「はぁ~……ゴブリンゴブリン、ゴブリンばっかり」

 シェリア本来の赤いクリスタルを加工して作られたハーフィンクス家秘伝の杖を軽く振り、炭化したゴブリンの死骸をつまらなそうに眺めていた。
 そして、その様子をユアンの従者であり、七大貴族アルトアイネス家の剣士レスティアが見ていた。

(……強い)

 『炎』のハーフィンクス家。
 姉であるセレーナは四属性を操る天才であるが、シェリアは火属性の天才だった。
 間違いなく、新入生最強の炎。
 普通の炎ではなく、ルビーのように輝くシェリアだけの炎、『紅炎ルヴィア』の火力は、通常の火魔法の数百倍の熱量を持つ。
 ハーフィンクス家時期当主に相応しい炎と言えた。

「お疲れ様、シェリアさん」
「は~い。えへへ、楽勝でしたっ!!」
「レスティア、そっちも終わったかい?」
「はい、滞りなく」

 レスティアは身体強化魔法をオフにする。そして、剣を鞘に納めた。
 シェリアを評価したが、レスティアもまた学園最強レベルの身体強化魔法の使い手だ。当然、実戦経験は豊富であり、ゴブリン程度なら百匹いようが問題ない。
 ユアンも、三属性……光、水、風属性の天才と呼ぶに相応しい実力でゴブリンを殲滅した。

「さて、先に進もうか。ああそうだ、この先に監視の魔法師がいるみたいだ……うん、ちょっと挨拶しようか」
「え?」
「監視? ユアンさま、なにそれ?」

 首を傾げるシェリア。レスティアも知らなかった。
 すると、壁と同化していたように、突如としてにゅるっとした《何か》が現れ、ずむずむと人の形になり、ユアンたちの前に現れた。

「ひっ……」
「なっ……」

 シェリアは息を飲み、レスティアは反射的に剣を抜こうとする。
 だがユアンは静かに頭を下げた。

「お疲れ様です、リスター先輩」

 白い髪、白い肌、赤い瞳……生気の感じられないやや年上の少女は頷いた。
 そして、シェリアとレスティアをジロッと見る。

「……素体、必要なの。集めて」
「わかりました。ああ、彼女たちはボクの仲間なので、それ以外でよければ」
「うん。先生も待ってる……じゃ」

 リスターと呼ばれた少女は、再び全身を粘土のような材質に変え、近くの壁に同化……そのまま消えてしまった。
 ユアンは、何事もなかったように言う。

「じゃあ、行こうか」
「……は、はい」
「…………」

 シェリアは恐る恐る、レスティアは返事ができず硬直。
 そして、レスティアは思った。

(ゆ、ユアン様の瞳が……桃色に変わったような)

 すでに、ダンジョン実習の中で《何か》が始まっていた。
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