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第六章 学園社交界
黄昏旅団所属『悪魔』ヴィーネ①
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「よし……」
シャドウは、自室にある姿見で自分の姿を確認する。
ラウラに言われて買った礼服だ。髪もそれなりにセットし、貴族っぽく見えなくもない。
シャドウは首元を確認しながら呟く。
「礼儀作法は覚えているし、何とかなるか……」
すると、ドアがノックされ、返事をする前に開いた。
「よ、準備できたか?」
「ああ。って……お前」
「あ?」
入ってきたのはライザーだ。
グランドアクシス公爵家の紋章が入ったカフスを付け、黄色のラインが入った礼服を着ている。髪も丁寧にセットされ、いつもの適当な感じが消えていた。
はっきり言って、かなり美形である。シャドウは普通に驚いた。
「すごいなお前……」
「何がだよ。こっちは堅苦しくてしょうがねぇ……首元がきついぜ」
「お前、ちゃんとすれば貴族なんだな」
「ンだよそれ。その言葉、そっくり返してやる。とにかく、ヒナタたちと合流するぞ」
「ああ。女子は化粧とかあるから、学園の更衣室で着替えてるんだよな」
「ああ。男子はパートナーの女子を迎えて、会場まで行くって流れだ」
「おう。社交界か……こんな授業、役に立つのかね」
「貴族はわかんねーな」
「はは、お前も貴族だろ」
「お前もだろうが」
適当な会話をしながら、二人は女子が用意をしている専用の更衣室へ。
更衣室と言っても、建物は学園の校舎のように立派だ。ドレスルーム、化粧室などが全て揃った、『学園社交界』だけの専用更衣室である。
そこまで行くと、大勢の男子がソワソワしながらパートナーの女子を待っていた。
やや微笑ましい光景……シャドウは少しだけ気を抜いてしまい……油断した。
「あら、久しぶりじゃない」
「───……!!」
そこにいたのは、久しぶりに見る『女』だった。
シャドウの姉セレーナ。血のつながりのないシェリアとは違い正真正銘の姉。シャドウの実姉である。
学園の制服を着て、腕に腕章を付けている。
そこには、『生徒会』と書かれていた。
「数年ぶりなのに、どうして会いに来てくれないのかしら。私、シェリアから聞いてずっと待っていたのに……ねえ、シャドウ」
「……お久しぶりです。姉さん」
シャドウは一度だけ、『弟』として一礼。
そして、挨拶を終えるとすぐに前を向く。この間、ライザーは一切の口出しをしなかった。
「あらあら、それで終わり? 久しぶりの再会なのよ? 驚いたわ、クサナギ男爵ですって……わが弟ながら、実に優秀ね。それに……魔法も使えるようになってるなんて」
「…………」
「ふふ、無視? 子供っぽいのねえ。シェリアはあなたのこと気にしていたけど……」
「これから新入生社交界だ。悪いが、話はあとにしてくれ。ハーフィンクス公爵令嬢」
シャドウは、何の感情も籠っていない声で、セレーナを見もせずに言う。
すると、セレーナの眉がピクリと動いた。
「実の姉に向かって、随分と生意気なこと」
「すでに縁は切った。俺はシャドウ・クサナギ男爵。学園内で爵位を盾に偉ぶるつもりはないが、あなたは貴族である俺に対し、随分と無礼だな……ハーフィンクス家の品位を疑う」
「…………」
スッと、セレーナの目が冷たくなる。
ライザーは絶対に口にしないが、眼つきがシャドウそっくりだと思った。
そして、シャドウはセレーナより冷たい目をして言う。
「話があるなら後にしてくれ。ああ、ちゃんと言わなきゃわかんないか? ───……失せろ」
殺気を込め、セレーナを睨む。
セレーナは殺気を受けて息を飲むと、そのまま無言でその場を後にした。
そして、冷や汗を拭うライザーが言う。
「殺気、ヤバいぞ」
「……やっちまった」
もし『黄昏旅団』がいるなら、今の殺気を察知したかもしれない。
だが、シャドウとハーフィンクス家のことを知っている貴族なら、セレーナとの関係が悪いことを知っているはず。険悪になっても不自然ではない……と、シャドウは納得することにした。
シャドウが深呼吸をすると……更衣室のドアが開き、ドレスを着た女子たちが登場する。
「おお……」「すげえ……」「な、なんか緊張する……」
男子たちは緊張丸出しで、自分のパートナーとなる女子を迎える。
腕を差し出し、その腕を組むだけでカチコチになっている。だが、緊張しているのは女子もなのか、パートナーの男子とならんっ出歩いていると、転びそうになる女子もいた。
そんな様子を眺めながら、シャドウはルクレを探す。
「あ、シャドウくん」
「……ラウラ、さん」
そこにいたのは、ラウラだった。
白銀を基調とした、肩が剥き出しのドレスだ。同じ色の装飾品、薄化粧、そして丁寧に髪をセットした姿は、間違いなく一国の姫君。
その後ろには、騎士の礼服を着て帯剣するソニアがいた。どうやら護衛として参加するようだ。
「ルクレならここにいるよ。ほらほら」
「お、おう……お前、俺より殿下の方行けよ。最初に声かけるの俺とか、また勘違いされるだろ」
「あ、そうだった。えへへ……じゃあ、またね」
ラウラが移動すると、すぐそばに水色のドレスを着たルクレがいた。
同じように、髪もアクセサリーもドレスに合わせた物で、やはり貴族令嬢なんだなとシャドウは思う。
ルクレは恥ずかしがり、何も言わずにシャドウをチラチラ見ていた。
「……じゃ、行くか」
「……あ、うん」
「その、ドレス……似合ってるぞ」
「……っ」
ルクレは顔を赤くし、シャドウの腕を取る。
すると、ヒナタとライザーが腕を組んで登場した。ヒナタはオレンジ色のドレスを着ており、ライザーと腕組みするのを微妙そうな顔でしていた。
「おう、揃ったら行こうぜ」
ライザーは、どこまでもいつも通りだった。
シャドウたちは頷き、シャドウは小声で言う。
「……何が起きるかわからない。みんな、警戒を」
「「「……了解」」」
三人は静かに声をそろえ、アサシンとして、そして学生として歩き出した。
新入生社交界が、間もなく始まる。
シャドウは、自室にある姿見で自分の姿を確認する。
ラウラに言われて買った礼服だ。髪もそれなりにセットし、貴族っぽく見えなくもない。
シャドウは首元を確認しながら呟く。
「礼儀作法は覚えているし、何とかなるか……」
すると、ドアがノックされ、返事をする前に開いた。
「よ、準備できたか?」
「ああ。って……お前」
「あ?」
入ってきたのはライザーだ。
グランドアクシス公爵家の紋章が入ったカフスを付け、黄色のラインが入った礼服を着ている。髪も丁寧にセットされ、いつもの適当な感じが消えていた。
はっきり言って、かなり美形である。シャドウは普通に驚いた。
「すごいなお前……」
「何がだよ。こっちは堅苦しくてしょうがねぇ……首元がきついぜ」
「お前、ちゃんとすれば貴族なんだな」
「ンだよそれ。その言葉、そっくり返してやる。とにかく、ヒナタたちと合流するぞ」
「ああ。女子は化粧とかあるから、学園の更衣室で着替えてるんだよな」
「ああ。男子はパートナーの女子を迎えて、会場まで行くって流れだ」
「おう。社交界か……こんな授業、役に立つのかね」
「貴族はわかんねーな」
「はは、お前も貴族だろ」
「お前もだろうが」
適当な会話をしながら、二人は女子が用意をしている専用の更衣室へ。
更衣室と言っても、建物は学園の校舎のように立派だ。ドレスルーム、化粧室などが全て揃った、『学園社交界』だけの専用更衣室である。
そこまで行くと、大勢の男子がソワソワしながらパートナーの女子を待っていた。
やや微笑ましい光景……シャドウは少しだけ気を抜いてしまい……油断した。
「あら、久しぶりじゃない」
「───……!!」
そこにいたのは、久しぶりに見る『女』だった。
シャドウの姉セレーナ。血のつながりのないシェリアとは違い正真正銘の姉。シャドウの実姉である。
学園の制服を着て、腕に腕章を付けている。
そこには、『生徒会』と書かれていた。
「数年ぶりなのに、どうして会いに来てくれないのかしら。私、シェリアから聞いてずっと待っていたのに……ねえ、シャドウ」
「……お久しぶりです。姉さん」
シャドウは一度だけ、『弟』として一礼。
そして、挨拶を終えるとすぐに前を向く。この間、ライザーは一切の口出しをしなかった。
「あらあら、それで終わり? 久しぶりの再会なのよ? 驚いたわ、クサナギ男爵ですって……わが弟ながら、実に優秀ね。それに……魔法も使えるようになってるなんて」
「…………」
「ふふ、無視? 子供っぽいのねえ。シェリアはあなたのこと気にしていたけど……」
「これから新入生社交界だ。悪いが、話はあとにしてくれ。ハーフィンクス公爵令嬢」
シャドウは、何の感情も籠っていない声で、セレーナを見もせずに言う。
すると、セレーナの眉がピクリと動いた。
「実の姉に向かって、随分と生意気なこと」
「すでに縁は切った。俺はシャドウ・クサナギ男爵。学園内で爵位を盾に偉ぶるつもりはないが、あなたは貴族である俺に対し、随分と無礼だな……ハーフィンクス家の品位を疑う」
「…………」
スッと、セレーナの目が冷たくなる。
ライザーは絶対に口にしないが、眼つきがシャドウそっくりだと思った。
そして、シャドウはセレーナより冷たい目をして言う。
「話があるなら後にしてくれ。ああ、ちゃんと言わなきゃわかんないか? ───……失せろ」
殺気を込め、セレーナを睨む。
セレーナは殺気を受けて息を飲むと、そのまま無言でその場を後にした。
そして、冷や汗を拭うライザーが言う。
「殺気、ヤバいぞ」
「……やっちまった」
もし『黄昏旅団』がいるなら、今の殺気を察知したかもしれない。
だが、シャドウとハーフィンクス家のことを知っている貴族なら、セレーナとの関係が悪いことを知っているはず。険悪になっても不自然ではない……と、シャドウは納得することにした。
シャドウが深呼吸をすると……更衣室のドアが開き、ドレスを着た女子たちが登場する。
「おお……」「すげえ……」「な、なんか緊張する……」
男子たちは緊張丸出しで、自分のパートナーとなる女子を迎える。
腕を差し出し、その腕を組むだけでカチコチになっている。だが、緊張しているのは女子もなのか、パートナーの男子とならんっ出歩いていると、転びそうになる女子もいた。
そんな様子を眺めながら、シャドウはルクレを探す。
「あ、シャドウくん」
「……ラウラ、さん」
そこにいたのは、ラウラだった。
白銀を基調とした、肩が剥き出しのドレスだ。同じ色の装飾品、薄化粧、そして丁寧に髪をセットした姿は、間違いなく一国の姫君。
その後ろには、騎士の礼服を着て帯剣するソニアがいた。どうやら護衛として参加するようだ。
「ルクレならここにいるよ。ほらほら」
「お、おう……お前、俺より殿下の方行けよ。最初に声かけるの俺とか、また勘違いされるだろ」
「あ、そうだった。えへへ……じゃあ、またね」
ラウラが移動すると、すぐそばに水色のドレスを着たルクレがいた。
同じように、髪もアクセサリーもドレスに合わせた物で、やはり貴族令嬢なんだなとシャドウは思う。
ルクレは恥ずかしがり、何も言わずにシャドウをチラチラ見ていた。
「……じゃ、行くか」
「……あ、うん」
「その、ドレス……似合ってるぞ」
「……っ」
ルクレは顔を赤くし、シャドウの腕を取る。
すると、ヒナタとライザーが腕を組んで登場した。ヒナタはオレンジ色のドレスを着ており、ライザーと腕組みするのを微妙そうな顔でしていた。
「おう、揃ったら行こうぜ」
ライザーは、どこまでもいつも通りだった。
シャドウたちは頷き、シャドウは小声で言う。
「……何が起きるかわからない。みんな、警戒を」
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