最強スキル『忍術』で始めるアサシン教団生活

さとう

文字の大きさ
58 / 62
第六章 学園社交界

黄昏旅団所属『悪魔』ヴィーネ②

しおりを挟む
 社交界専用の建物、もといパーティー会場はかなりの広さだった。
 それだけじゃない。学園関係者だろうか、男女の使用人も壁に並んでおり、さらにはドレス姿の女性が数名、生徒たちを待っていた。
 ライザーの空気が一瞬だけ変わったのを、シャドウ、ルクレ、ヒナタは気付いた。
 そして、ヒナタが言う。

「あそこにいるのがアリアル夫人。そして……その隣にいるのが」
「……クピド。オレの義母だ」

 ライザーが言う。
 ライザーの本当の母親を殺した、黄昏旅団『恋人』にして、ハンゾウの元弟子。
 シャドウは小さく言う。

「アリアル夫人……あっちも警戒しないとな」

 改めて、周囲を警戒する。
 生徒全員が会場に入るとドアが閉まり、アリアルが言う。

「新入生諸君。まずは入学おめでとう……今日は授業の一環として、毎年恒例である『新入生社交界』を開催する。礼儀作法に始まり、パーティーに関する知識を覚えてもらう」

 授業の説明が始まった……そう、あくまで社交界は授業なのだ。
 
「こちらは、グランドアクシス公爵夫人。今日の補佐をしてもらう。いいか、何度も言うがこれは授業の一環だ。きちんと学び、貴族であり魔法師であることを自覚するように」

 すると、使用人たちがグラスを配り始める。
 中身は果実水。乾杯をするようだ。
 シャドウたちもグラスを受け取り、アリアルがグラスを掲げた。

「それでは、乾杯」

 こうして、新入生社交界が始まった。

 ◇◇◇◇◇◇

 始まったはいいが、何をすればいいのか……と、社交界が初めてな男女は困惑する。
 だが、シェリアやラウラなどは慣れているのか、飲み物を飲んだり、近くの生徒とおしゃべりをする。
 意外にも、ルクレは緊張していないようだ。

「お前、大丈夫か?」
「うん。社交界……こういうパーティーには、何度か参加したことあるから」

 シェリアは、自分の派閥の女子を集めて自慢話、ラウラも友達と楽しそうに話している。
 ラウラの隣にはユアン。そして騎士のような礼服を着たレスティア。楽しそうに会話に混ざっているが、レスティアの表情は晴れなかった。
 そして、ライザー。

「……お久しぶりです。義母上」
「久しぶり。どう、学園には馴染めたかしら?」
「……なんとか」

 クピドと話をしている。
 ここでシャドウが近づくのは不自然。ライザーとヒナタに任せ、シャドウとルクレはテーブルに近づくフリをして、アリアルの元へ近付く。
 すると、テーブルに近づいたとたん、アリアルの方から近づいてきた。

「緊張しているか、クサナギ男爵」
「え、ええまあ……」
「ははは。若くして爵位を継承したと聞いたが、こういうパーティーには参加したことがないようだな」
「は、はい。クサナギ男爵は、社交界には参加しない方でしたので」
 
 余計なことは言えない……シャドウは曖昧に笑う。
 ルクレも、ボロを出さないよう笑うだけだった。

「どうした、緊張……だけではないな。何か不安でもあるのか? 表情がこわばっているぞ」

 シャドウは冷や汗が流れた……アリアル、勘がいいと。
 緊張だけじゃない心の動きを察知された気がした。

「い、いえ……その、こういうイベントだと、また何か起きるんじゃないかと不安で」
「ああ、身体測定の時みたいにか。今回は大丈夫だろう。二学年の優秀な生徒たちと、準特等級の魔法師が何名か護衛に回っている。『デロス』のような組織では手が出せんよ」
「よかった……」
「とりあえず、今は社交界を楽しむといい。ああ、授業の一環だから、相応しくない行動を取れば指摘させてもらうからな」

 そう言い、アリアルは別のところへ。
 シャドウ、ルクレは深く息を吐く。

「び、びっくりしました……」
「ああ。俺も……でも、今回は何も起きないかもな。護衛はちゃんといるみたいだ」
「安心ですね……ほっ」

 ルクレが胸をなで下ろすると、お腹がグ~ッと鳴る。

「…………」
「~~~っ!! え、えと」
「メシ、食うか」
「……はい」

 シャドウとルクレは、近くのテーブルにあった食事に手を伸ばし始めた。

 ◇◇◇◇◇◇

 ライザーは、俯いていた。

「あらあら、どうしたのかしら? せっかくの再会なのだから、お顔を上げて?」
「……はい」

 知っているのだ。
 ライザーが兄姉にいたぶられてここまで強くなったことも。そして指示を出したのが目の前にいる義母であることも、ライザーが知っているということを。
 知っていれば、間違いなく恨まれる。だが、義母クピドはわかっていて、ライザーを愛するようなそぶりを見せている。
 クピドにとってライザーは、いてもいなくてもいい存在。
 グランドアクシス公爵家の夫人と言う立場の付属品であり、退屈凌ぎのオモチャ程度。
 だから、久しぶりに見るオモチャを見て、少しだけ機嫌がいい。

「お小遣いは足りている? その礼服とっても素敵。そちらの子は? 可愛い子ねぇ」
「…………」
(……押さえてください)

 ヒナタは視線だけでライザーに言う。緊張しているフリをしているが、クピドはヒナタにもずっとなめまわすような視線を送っていた。
 ただ者じゃない。目の前にいるのは、黄昏旅団『恋人』のクピド。
 シャドウは気取られないようにしているが、間近にいるヒナタはそれどころじゃない。

「あなた、お名前は?」
「……ヒナタと申します。クサナギ男爵の、従者でして」
「クサナギ男爵? ああ、アルマス王国の貴族だったかしら。若くして爵位を受け継いだ子がいるって聞いたけれど」
「……義母上。そろそろ失礼します。友人たちと友好を深めたいので」
「あらそう? ふふ、じゃあ楽しんでいらっしゃい」

 ライザーは一礼、ヒナタとその場を去る。

「……よく耐えましたね」
「殺してやりたいぜ。今でも……」

 ライザーは歯を食いしばり、拳を強く握るのだった。

 ◇◇◇◇◇◇

 パーティー会場の隅では、ヴィーネが退屈そうにしていた。
 急病人などが出た場合に備えて医師であるヴィーネが待機しているのだが……今は違う。

「聞こえるかな、ルソルちゃん」
(はい、先生)
「リスターちゃん、エルナちゃん」
((はい、先生))

 どこからか聞こえてくるのは、可愛い三人の弟子。
 そして、もう一人。

「ユアンくん」
(はい、先生)
「ホムンクルス、馴染んだかな?」
(はい。完璧です)
「うんうん。じゃあ……あと少ししたら、始めよっか」

 まもなく始まる。
 黄昏旅団所属『悪魔』ヴィーネの、最悪な『お遊び』が。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム 前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した 記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた 村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた 私は捨てられたので村をすてる

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

婚約破棄された上に、追放された伯爵家三男カールは、実は剣聖だった!これからしっかり復讐します!婚約破棄から始まる追放生活!!

山田 バルス
ファンタジー
カールは学園の卒業式を終え、心の中で晴れやかな気持ちを抱えていた。長年の努力が実を結び、婚約者リリスとの結婚式の日が近づいていたからだ。しかし、その期待は一瞬で裏切られた。 「カール、私たちの婚約は解消するわ。」 リリスの冷たい声がカール…

処理中です...