勇者の野郎と元婚約者、あいつら全員ぶっ潰す

さとう

文字の大きさ
111 / 214

第112話・勇者レイジ、フィヨルド王国へ

しおりを挟む
 ここは、フィヨルド王国。
 煉瓦の要塞のような王城に、三人の少女と一人の少年がいた。

「お久しぶりですな、勇者レイジ殿」
「お久しぶりです。アイスノン国王」

 勇者レイジ。
 この世界の脅威であった『魔刃王』を討伐した、異世界から来た勇者であり、今はフィヨルド王国の客人として、国王に謁見していた。
 跪く三人の少女の内一人がレイジの隣に並び、ニッコリと微笑む。

「お久しぶりですわ。アイスノン国王様」
「おお、アンジェラ姫。美しさに磨きをかけられたようで」
「ふふ、ありがとうございます」

 アンジェラと、このフィヨルド王国の王アイスノンは面識がある。最後に見たのは三歳くらいの少女だったが、成長とは早いものだとアイスノンは思い……訝しむ。
 勇者パーティは、五人グループではなかったか?

「ところで、お二人ほど足りないようですな?」

 アイスノンが疑問を口走った瞬間、外の吹雪よりも冷たい冷気が、謁見の間を支配────────。

「やめろ、リリカ」
「…………」
「申し訳ない、アイスノン王。勇者パーティは二人ほど抜けて、今はアンジェラを加えたこのメンバーなんですよ」
「そ、そ、そう、ですか……」

 リリカの殺気は一瞬だった。だが、この場を支配するのに十分な殺気だった。
 セエレの死、リンの裏切り─────そんなこと、言えるはずがない。
 護衛を務めるはずの兵士たちですら、リリカの殺気に当てられて動けなかった。そもそも、魔刃王を討伐した勇者に、騎士や兵士が適うはずがない。
 アイスノンは、重い空気を払拭しようと話題を変える。

「と、ところで、本日はどのような用事ですかな?」
「ああ、実は、お願いしたいことがあるんです」
「……聞きましょう」

 レイジは、徐々に敬語が抜けて行く。
 だが、アイスノンはそれを咎めず、レイジの話を聞くことにした。

「オレたちが魔刃王を討伐したことは知ってますよね」
「もちろん、この世界最高の話題だ」
「なら、魔刃王の復活……いや、新たな魔刃、いや……『魔銃王』の誕生については」
「……ま、じゅう、王?」
「ええ。刃でなく銃。最低最悪のクソ野郎ですよ……っ!!」

 レイジは、怒りをあらわにしていた。
 歯がギリギリと軋み、笑顔なのに怒りに燃えている。

「頼みってのは、魔銃王とその仲間を指名手配してほしい」
「指名手配!? ま、待って下され、新たな魔刃王ということは、魔刃王と同等の脅威ということですか!? そんな人物を指名手配しても、捕まえられるとは……」
「いや、見つけるだけでいい。見つけたら手を出さないで、オレたちに連絡してくれ。後は……『勇者』の仕事だ」
「お、おぉ……」

 アイスノンは聡明な王だ。
 一瞬で『魔刃王クラスの脅威』を見抜き、手を出せば返り討ちに合うということを考え、手を出せないときっぱり言った。この判断力は、同じ王として見習うところがあるとレイジは思う。レイジもまた、王として少しずつ成長していた。

「この国に『模写コピー』のギフト持ちはいるだろ? そいつの人相を教えるから、フィヨルド王国中に指名手配してくれ。頼む」
「……わ、わかりました。ですが、勇者レイジ殿……」
「ん?」
「その、魔刃王と同等の脅威……手に負えるのですかな?」

 アイスノンは、心配していた。
 レイジは、このフィヨルド王国には一度だけ来て謁見し、すぐに帰った。寒かったから、さっさとこんな国を出ようとしか考えていなかったのである。でも、このアイスノン王はなかなかの人格者だ。若き王であるレイジを心配している。
 だから、レイジは答えた。

「大丈夫。オレら、以前より遥かに強くなってるからな」

 愛の女神リリティアのおかげでな……さすがに、そこまでは言わなかった。

 ◇◇◇◇◇◇

 この日、レイジたちは城に泊まることにした。
 上等な客室をそれぞれあてがわれたが、当然のように全員がレイジの部屋に集まる。
 もちろん、夜もここで寝るつもりだろう。

「まぁ、指名手配に期待はできねぇけど、しないよりマシだな」
「うん。ハッキリ言って、ライトを捕まえられるのは私たちだけ。まぁ……見張りくらいなら任せてもいいね。ね、アルシェ」
「そうですね。ところで、魔銃王ライトがこの国にいる可能性は?」
「さーな。まぁ今ならオレたちは負けないぜ。愛の女神様の『愛』があるからな!」
「ふふ、レイジ様ってば子供みたい」
「へへへ、アンジェラだって嬉しそうじゃねぇか」
「そうですか?」

 まだ二十歳になっていない少年少女の会話は、とても無邪気だった。
 新たな力を得て、確かな実力を持った勇者たちは、何気ない会話を弾ませる。

「今日のメシは城下町で食べようぜ。前にフィヨルド王国に来たときに食べた鍋料理が喰いてぇ」
「あ、いいね! ねぇアルシェ、アンジェラ」
「私はかまいません」
「わ、わたくし、ナベ? を食べたことありませんわ」
「じゃあ決定だな。兵士に伝えて外出しようぜ!」

 レイジたちはコートを羽織り、部屋を出る。
 騎士か兵士を探して城を歩くと……。

「聞いたか? 外れの村で攫われた女たちが戻ってきたようだ」
「本当か? 確かあの盗賊団、冒険者ギルドに討伐依頼が出ていたようだが……」
「いや、依頼は受理されていない。女たちの話では、『透き通った小さな何かに触れた盗賊が、泡を吹いて倒れた』って言ってるそうだ」
「なんだそりゃ? ギフトの力か?」
「そうだろうが……わからん。とりあえず、近くの町の常駐騎士が後始末に向かったらしい」
「そうか……まぁ、盗賊を始末できたのならいいだろう」
「ああ。だが、少し気になることが。女たちを助けたのが」
「あ、すんませーん」

 レイジは、騎士たちの話に割り込む。

「これは勇者殿、外出ですか?」
「ああ。みんなで鍋を食ってくる。この国に来たなら鍋を食べないとな!」
「わかりました。夕食は必要ないと伝えておきましょう」
「よろしく。じゃあ!」

 レイジたちは、談笑しながら城を出て行った。
 騎士は敬礼で見送り、話の続きをする。

「で、なんだって?」
「ああ。女たちを助けたのが、少年だったらしい」
「少年?」
「そうだ。しかも────────」

 もし、この会話をレイジたちが聞いていたなら。
 もし、レイジが会話を最後まで聞いていたら。



「その少年、黒い筒から・・・・・何かを発射して・・・・・・・、女たちを閉じ込めていた檻を壊したようだ」



 もし、この会話を最後まで聞いていたら……あんなことには・・・・・・・ならなかったのに・・・・・・・・
しおりを挟む
感想 56

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

処理中です...