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第113話・決して仲間ではない
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「……どういうこと?」
「どういうことか、説明をお願いしますわ」
「…………」
ライトは、村に戻るなりジト目で睨まれ、説明を求められた。
原因はもちろん、ライトのベッドを占領してゴロゴロ転がる少女・シンクのことである。
「あの子、S級賞金首『四肢狩り』のシンクよね?」
「あの子、大罪神器【嫉妬】のシンクですわよね?」
「…………あ、ああ」
無傷でダイアウルフを狩り、この村に届けたリンとマリアは、一人で盗賊団を全滅させて戻って来たライトが、とんだ土産を持って帰り、なおかつ宿の部屋に普通に上げていることに怒っていた……当然だが。
宿の外では、マリアとリンが狩ったダイアウルフの解体が行われている。
二人に素材の代金を払おうと村長が出てきたが、『散歩の邪魔をした犬を躾けただけ、お金は十分にあるし素材も邪魔だから村に寄付する』と言ったらしい。そのおかげで、二人は『散歩する狩人』とか呼ばれているのを、ライトは聞いた。
せめてものお礼として、今夜の食事はダイアウルフの肉を使った鍋が振る舞われるとか……。
「で、どういうこと?」
「どういうことですの?」
「ぅ……その、強いから利用できそうだ。あいつも俺たちを利用するみたいだし、俺もアイツを利用する。それに、いがみ合う理由もないし……」
「あのねー、あの子はS級賞金首よ? 一緒にいたら私たちも犯罪者よ……って、ライトと一緒にいる時点で犯罪者か……」
「理由はわかりましたわ。それで、あの子の目的とは?」
リンは渋っているが、マリアは意外に早く受け入れた。
「あいつの目的は「第二相、あと第三相と戦う」……だとさ」
ライトの背から覆い被さるように、シンクが言う。
今の四肢は巨大なゴテゴテした爪ではなく、薄い黒いヴェールを纏ったような、しなやかな五指のある手足だった。とても義手義足には見えない。
ライトは、覆い被さるシンクを鬱陶しそうに引きはがすと、シンクはライトたちの座るテーブルに着く。
「ボク、強いのと戦いたい。あなたたちは弱そうだし興味ない」
「……なかなか面白いことを言う餓鬼ですわね」
「事実だよ? あなたの四肢、なんだか不味そう」
「…………♪」
「おい、やめろマリア。シンク、お前もだ」
「んー」
「チッ……命拾いしましたわね」
たぶん、マリアとシンクは決して相容れないだろう。以前はマリアの四肢を美味そうとか言ってたのに、とライトは思ったが、そんなことはどうでもいい。
それより、今の状況は利害関係が一致しているからこその関係だ。
「第二相と第三相に関しては俺も賛成だ。シンクは『八相』と戦いたい、俺たちはそいつを見つけてシンクに戦わせて、倒した『八相』を祝福弾にする。楽に力を得るチャンスかもな」
「うーん……なんかあんまりいい手じゃないけど、本人がそれでいいなら」
「いいよ? よくわかんないけど、探すの手伝ってくれるなら」
「よし、二人ともいいか?」
「はぁ……仕方ないわね」
「…………胸糞悪いけど構いませんわ」
「ありがと。あ、ボクはシンク。あなたたちは?」
「私はリン。とりあえずよろしくね」
「……マリアですわ」
「リンとマリア、覚えた」
こうして、異色のパーティーが結成された。
◇◇◇◇◇◇
「ふぉぉぉぉ~~~…………」
「さぁさぁ、いっぱい食べておくれ! 遠慮なんかしたら許さないからね!」
宿屋一階に移動し、夕食を食べることになった。
メニューはダイアウルフの肉鍋。しかも超大盛り。酒も準備され、この辺りでは貴重なデザートまで準備してある。
シンクを含めた4人で鍋を囲み、それぞれのグラスに酒を注ぐ。
「おい、お前酒は飲めるのか?」
「のんだことない」
「じゃあ果実水にしとけ」
「ん」
シンクは、ライトの言うことはよく聞く。なぜかリンとマリアが不機嫌そうにしているが、ライトは敢えて無視した。
そんなつもりは全くないが、奇しくもシンクの歓迎会という形になった気がする。
ライトはなんとなくグラスを掲げた。
「じゃ、乾杯」
「「乾杯」」
「かん、ぱい?」
グラスを合わせることなく、飲み物を口へ。
シンクはフォークを掴むと、いきなり鍋に突っ込んで肉を強奪した。
「あーむっ………お、おいひい!!」
「なんと礼儀のなっていない……」
「まぁいいだろ。ってか、今までどんな生活してたんだよ、お前」
「あむ、いままでは、あむ、狩った魔獣とか、んっぐ、適当に焼いて、むぐ、たべてた」
「もう、口に入れながら喋らないの! ほら零れてる!」
「むぐぐ」
「んー……よく見るとあなた、髪も埃っぽいし服も汚れてるわね……よし、食事が終わったら綺麗にしてあげる」
「むぐむぐ……」
「むぅぅぅぅっ!! リン、そんな子に構わないでわたしを!!」
シンクが肉をがっつき、リンがシンクの世話をして、マリアがシンクに噛みつきリンの気を引こうとしている。
ライトは、シンクが一人じめしている鍋を食べる気になれず、サイドメニューのホットサンドに手を伸ばしてワインと一緒に食べる。
「面倒くさくなりそうだなぁ……」
シンクを加え、ライトたちの旅はまた騒がしくなった。
目的は、第二相と第三相の討伐。
勇者レイジたちもこの国にいる……そのことに気付くのは、もう少し先のこと。
「どういうことか、説明をお願いしますわ」
「…………」
ライトは、村に戻るなりジト目で睨まれ、説明を求められた。
原因はもちろん、ライトのベッドを占領してゴロゴロ転がる少女・シンクのことである。
「あの子、S級賞金首『四肢狩り』のシンクよね?」
「あの子、大罪神器【嫉妬】のシンクですわよね?」
「…………あ、ああ」
無傷でダイアウルフを狩り、この村に届けたリンとマリアは、一人で盗賊団を全滅させて戻って来たライトが、とんだ土産を持って帰り、なおかつ宿の部屋に普通に上げていることに怒っていた……当然だが。
宿の外では、マリアとリンが狩ったダイアウルフの解体が行われている。
二人に素材の代金を払おうと村長が出てきたが、『散歩の邪魔をした犬を躾けただけ、お金は十分にあるし素材も邪魔だから村に寄付する』と言ったらしい。そのおかげで、二人は『散歩する狩人』とか呼ばれているのを、ライトは聞いた。
せめてものお礼として、今夜の食事はダイアウルフの肉を使った鍋が振る舞われるとか……。
「で、どういうこと?」
「どういうことですの?」
「ぅ……その、強いから利用できそうだ。あいつも俺たちを利用するみたいだし、俺もアイツを利用する。それに、いがみ合う理由もないし……」
「あのねー、あの子はS級賞金首よ? 一緒にいたら私たちも犯罪者よ……って、ライトと一緒にいる時点で犯罪者か……」
「理由はわかりましたわ。それで、あの子の目的とは?」
リンは渋っているが、マリアは意外に早く受け入れた。
「あいつの目的は「第二相、あと第三相と戦う」……だとさ」
ライトの背から覆い被さるように、シンクが言う。
今の四肢は巨大なゴテゴテした爪ではなく、薄い黒いヴェールを纏ったような、しなやかな五指のある手足だった。とても義手義足には見えない。
ライトは、覆い被さるシンクを鬱陶しそうに引きはがすと、シンクはライトたちの座るテーブルに着く。
「ボク、強いのと戦いたい。あなたたちは弱そうだし興味ない」
「……なかなか面白いことを言う餓鬼ですわね」
「事実だよ? あなたの四肢、なんだか不味そう」
「…………♪」
「おい、やめろマリア。シンク、お前もだ」
「んー」
「チッ……命拾いしましたわね」
たぶん、マリアとシンクは決して相容れないだろう。以前はマリアの四肢を美味そうとか言ってたのに、とライトは思ったが、そんなことはどうでもいい。
それより、今の状況は利害関係が一致しているからこその関係だ。
「第二相と第三相に関しては俺も賛成だ。シンクは『八相』と戦いたい、俺たちはそいつを見つけてシンクに戦わせて、倒した『八相』を祝福弾にする。楽に力を得るチャンスかもな」
「うーん……なんかあんまりいい手じゃないけど、本人がそれでいいなら」
「いいよ? よくわかんないけど、探すの手伝ってくれるなら」
「よし、二人ともいいか?」
「はぁ……仕方ないわね」
「…………胸糞悪いけど構いませんわ」
「ありがと。あ、ボクはシンク。あなたたちは?」
「私はリン。とりあえずよろしくね」
「……マリアですわ」
「リンとマリア、覚えた」
こうして、異色のパーティーが結成された。
◇◇◇◇◇◇
「ふぉぉぉぉ~~~…………」
「さぁさぁ、いっぱい食べておくれ! 遠慮なんかしたら許さないからね!」
宿屋一階に移動し、夕食を食べることになった。
メニューはダイアウルフの肉鍋。しかも超大盛り。酒も準備され、この辺りでは貴重なデザートまで準備してある。
シンクを含めた4人で鍋を囲み、それぞれのグラスに酒を注ぐ。
「おい、お前酒は飲めるのか?」
「のんだことない」
「じゃあ果実水にしとけ」
「ん」
シンクは、ライトの言うことはよく聞く。なぜかリンとマリアが不機嫌そうにしているが、ライトは敢えて無視した。
そんなつもりは全くないが、奇しくもシンクの歓迎会という形になった気がする。
ライトはなんとなくグラスを掲げた。
「じゃ、乾杯」
「「乾杯」」
「かん、ぱい?」
グラスを合わせることなく、飲み物を口へ。
シンクはフォークを掴むと、いきなり鍋に突っ込んで肉を強奪した。
「あーむっ………お、おいひい!!」
「なんと礼儀のなっていない……」
「まぁいいだろ。ってか、今までどんな生活してたんだよ、お前」
「あむ、いままでは、あむ、狩った魔獣とか、んっぐ、適当に焼いて、むぐ、たべてた」
「もう、口に入れながら喋らないの! ほら零れてる!」
「むぐぐ」
「んー……よく見るとあなた、髪も埃っぽいし服も汚れてるわね……よし、食事が終わったら綺麗にしてあげる」
「むぐむぐ……」
「むぅぅぅぅっ!! リン、そんな子に構わないでわたしを!!」
シンクが肉をがっつき、リンがシンクの世話をして、マリアがシンクに噛みつきリンの気を引こうとしている。
ライトは、シンクが一人じめしている鍋を食べる気になれず、サイドメニューのホットサンドに手を伸ばしてワインと一緒に食べる。
「面倒くさくなりそうだなぁ……」
シンクを加え、ライトたちの旅はまた騒がしくなった。
目的は、第二相と第三相の討伐。
勇者レイジたちもこの国にいる……そのことに気付くのは、もう少し先のこと。
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