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第114話・シンクと一緒
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お腹いっぱいになったシンク。
リンに連行されて二階の部屋に向かい、着ている服を全て脱がされ、身体をゴシゴシ擦られていた。
シンクは気持ちいいのか、猫のように目を細めている。アカスリのようなマッサージも兼ねているようだが、リンとしては身体の垢を落としているにすぎない。
マリアとライトは、まだ一階で酒を飲んでいる。最初こそ殺し合いに発展しそうなくらい険悪だったが、互いを認め合ってからいい飲み仲間になったようだ。
「んん~♪ きもちいい」
「まったく、女の子なんだから綺麗にしないと!」
「ん~♪」
シンクは聞いていないのか、ただ気持ちよさそうに唸る。
リンは、桶に入れた水を魔術で蒸発させ、パチンと指を慣らす。すると、桶には新しい人肌のお湯が並々と注がれた。
「おぉ~。リンって魔術得意なの?」
「水属性はね。一応、全属性使えるけど、こういう日常的な使い方ができるから、水属性を重点的に鍛えたのよ」
リンの魔術適性は『水』だが、魔力量はこの世界最高最量のため、他の属性の魔術を使ってもかなりの規模になる。だが、リンは得意の水属性だけを戦闘で使っていた。
それに、旅をするなら水は何よりも重要だ。飲料はもちろん、こうやって身体を拭いたり、女の子なら髪だって洗いたい。
そんなリンが考えた、オリジナルの魔術がある。
「さ、髪を洗うわよ。動かないでね」
「んー……おぉっ!?」
「ほら、動かないの」
リンは、人間の頭より少し大きな水球を生み出し、シンクの頭に乗せる。まるで帽子のようにすっぽりと水球が頭を覆い、リンは水球の中にシンクの髪を全て入れる。
「じゃ、始めるわ。ここに液体せっけんを入れて……」
水球の中に、植物から作られた天然の高級シャンプーを混ぜ合わせる。そして、リンがパチッと指を鳴らすと、シンクの頭を覆う水球の中がジャバジャバと高速で回転を始めたのだ。
「わわわぁぁ~……なにこれ、きもちいい」
「これぞオリジナル魔術『シャンプー洗濯』よ。水球内を洗濯機のように回して、髪を綺麗に洗ってくれるの」
「ふわぁぁ~……」
ただ回るだけじゃない。緩急を付けたり、水圧を変えて頭皮をマッサージしたり、リンの操作ひとつで水球内の環境は変化する。
洗髪を終え、水球を蒸発させると、シンクの赤い髪はキラキラ輝いていた。
上質なルビーみたいに輝く髪をタオルでゴシゴシ拭いていると、ライトとマリアが戻ってきた。
「ふぅ……けっこう飲みすぎた」
「ですわね……」
「ちょ、待って待って、まだシンクが着替えてない!」
シンクは素っ裸のままだ。
服を『シャンプー洗濯』で洗おうとしていたリンは、慌てて自分の着替えをシンクに渡す。だがライトは無感情に言った。
「そいつの裸に興味ない。それより、明日は出発だ。早く寝るぞ」
「? ライト、女の子の裸に興味ないの?」
「話聞いてたか? お前のに興味ないって言ったんだ」
「女の立場で聞くと最低最悪の言葉ですわね……」
「そうかい。明日は近くの町で『八相』の情報収集だ、早めに休めよ」
ライトは、裸のシンクの横を平然と通りすぎ、自分のベッドのカーテンを引いた。
服を脱いで寝間着に着替えると、大きな欠伸をする。
「ふぁ……久しぶりにいい気分だ」
『相棒、けっこう飲んでたよなぁ』
「ああ。シンクのことはともかく、悪いことばかりじゃない」
ベッドに横になると、そのまま睡魔が襲ってくる。
大きく欠伸をして、そのまま目を閉じた。
◇◇◇◇◇◇
「ライトってば……」
リンは、少し不機嫌だった。
シンクを女の子扱いしないことはもちろんだが、マリアやシンクには優しいのに、自分には事務的な会話しかしてこないのだ。
シンクの髪を梳かしているのを見ていたマリアは、ポツリと呟く。
「美しい髪……磨かれたルビーのような、血のように赤い真紅……」
「……♪」
「な、なんですの?」
「マリア、ありがとう」
「なっ……」
シンクは、とても嬉しそうな笑顔を作り、マリアに礼を言った。
あまりにも素直だったので、マリアの方が驚いた。
「ボク、生まれつき手足がないし、両親の顔も知らないまま生きてきたけど、この赤い髪は好き。血の色みたいに真っ赤で、返り血を浴びてキラキラ輝くの……」
「……返り血はともかく、綺麗だよね」
「ええ。素敵ですわ」
シンクは、髪を褒められ上機嫌だった。
未だ下着すら履かずにいるシンクだが、こうしてみると普通の女の子にしか見えない。
成り行きで同行することになったが、もしかしたら上手くやれるのではないかとリンは考えた。
「シンク、そういえばあなた、荷物とかないの?」
「ない」
「え……じゃあ、服とか下着は?」
「ない。これだけ」
「……うそ」
シンクは、リンの『シャンプー洗濯』で洗われている服を指さした。
たった一枚に下着に、水着のような胸当て、そして短パンと黒いコートにブーツだけ。お金も持っていないし、今までどういう生活をしてきたのか。
「……替えの下着と服、次の町で買いましょう」
「そうですわね。大罪神器や賞金首以前に、女として放っておけませんわ……」
「???」
『……お手数、お掛けします』
『ぷくくっ、イルククゥってば、この子にそんなことも教えないなんてねぇ』
『……仕方ないでしょう。私にだってできないことはあります』
シャルティナに嗤われ、イルククゥは歯噛みした。
女子三人は、いつの間にか打ち解けていた。
だが、忘れてはいけない。
シンクは賞金首、その本性は別のところにある。
リンに連行されて二階の部屋に向かい、着ている服を全て脱がされ、身体をゴシゴシ擦られていた。
シンクは気持ちいいのか、猫のように目を細めている。アカスリのようなマッサージも兼ねているようだが、リンとしては身体の垢を落としているにすぎない。
マリアとライトは、まだ一階で酒を飲んでいる。最初こそ殺し合いに発展しそうなくらい険悪だったが、互いを認め合ってからいい飲み仲間になったようだ。
「んん~♪ きもちいい」
「まったく、女の子なんだから綺麗にしないと!」
「ん~♪」
シンクは聞いていないのか、ただ気持ちよさそうに唸る。
リンは、桶に入れた水を魔術で蒸発させ、パチンと指を慣らす。すると、桶には新しい人肌のお湯が並々と注がれた。
「おぉ~。リンって魔術得意なの?」
「水属性はね。一応、全属性使えるけど、こういう日常的な使い方ができるから、水属性を重点的に鍛えたのよ」
リンの魔術適性は『水』だが、魔力量はこの世界最高最量のため、他の属性の魔術を使ってもかなりの規模になる。だが、リンは得意の水属性だけを戦闘で使っていた。
それに、旅をするなら水は何よりも重要だ。飲料はもちろん、こうやって身体を拭いたり、女の子なら髪だって洗いたい。
そんなリンが考えた、オリジナルの魔術がある。
「さ、髪を洗うわよ。動かないでね」
「んー……おぉっ!?」
「ほら、動かないの」
リンは、人間の頭より少し大きな水球を生み出し、シンクの頭に乗せる。まるで帽子のようにすっぽりと水球が頭を覆い、リンは水球の中にシンクの髪を全て入れる。
「じゃ、始めるわ。ここに液体せっけんを入れて……」
水球の中に、植物から作られた天然の高級シャンプーを混ぜ合わせる。そして、リンがパチッと指を鳴らすと、シンクの頭を覆う水球の中がジャバジャバと高速で回転を始めたのだ。
「わわわぁぁ~……なにこれ、きもちいい」
「これぞオリジナル魔術『シャンプー洗濯』よ。水球内を洗濯機のように回して、髪を綺麗に洗ってくれるの」
「ふわぁぁ~……」
ただ回るだけじゃない。緩急を付けたり、水圧を変えて頭皮をマッサージしたり、リンの操作ひとつで水球内の環境は変化する。
洗髪を終え、水球を蒸発させると、シンクの赤い髪はキラキラ輝いていた。
上質なルビーみたいに輝く髪をタオルでゴシゴシ拭いていると、ライトとマリアが戻ってきた。
「ふぅ……けっこう飲みすぎた」
「ですわね……」
「ちょ、待って待って、まだシンクが着替えてない!」
シンクは素っ裸のままだ。
服を『シャンプー洗濯』で洗おうとしていたリンは、慌てて自分の着替えをシンクに渡す。だがライトは無感情に言った。
「そいつの裸に興味ない。それより、明日は出発だ。早く寝るぞ」
「? ライト、女の子の裸に興味ないの?」
「話聞いてたか? お前のに興味ないって言ったんだ」
「女の立場で聞くと最低最悪の言葉ですわね……」
「そうかい。明日は近くの町で『八相』の情報収集だ、早めに休めよ」
ライトは、裸のシンクの横を平然と通りすぎ、自分のベッドのカーテンを引いた。
服を脱いで寝間着に着替えると、大きな欠伸をする。
「ふぁ……久しぶりにいい気分だ」
『相棒、けっこう飲んでたよなぁ』
「ああ。シンクのことはともかく、悪いことばかりじゃない」
ベッドに横になると、そのまま睡魔が襲ってくる。
大きく欠伸をして、そのまま目を閉じた。
◇◇◇◇◇◇
「ライトってば……」
リンは、少し不機嫌だった。
シンクを女の子扱いしないことはもちろんだが、マリアやシンクには優しいのに、自分には事務的な会話しかしてこないのだ。
シンクの髪を梳かしているのを見ていたマリアは、ポツリと呟く。
「美しい髪……磨かれたルビーのような、血のように赤い真紅……」
「……♪」
「な、なんですの?」
「マリア、ありがとう」
「なっ……」
シンクは、とても嬉しそうな笑顔を作り、マリアに礼を言った。
あまりにも素直だったので、マリアの方が驚いた。
「ボク、生まれつき手足がないし、両親の顔も知らないまま生きてきたけど、この赤い髪は好き。血の色みたいに真っ赤で、返り血を浴びてキラキラ輝くの……」
「……返り血はともかく、綺麗だよね」
「ええ。素敵ですわ」
シンクは、髪を褒められ上機嫌だった。
未だ下着すら履かずにいるシンクだが、こうしてみると普通の女の子にしか見えない。
成り行きで同行することになったが、もしかしたら上手くやれるのではないかとリンは考えた。
「シンク、そういえばあなた、荷物とかないの?」
「ない」
「え……じゃあ、服とか下着は?」
「ない。これだけ」
「……うそ」
シンクは、リンの『シャンプー洗濯』で洗われている服を指さした。
たった一枚に下着に、水着のような胸当て、そして短パンと黒いコートにブーツだけ。お金も持っていないし、今までどういう生活をしてきたのか。
「……替えの下着と服、次の町で買いましょう」
「そうですわね。大罪神器や賞金首以前に、女として放っておけませんわ……」
「???」
『……お手数、お掛けします』
『ぷくくっ、イルククゥってば、この子にそんなことも教えないなんてねぇ』
『……仕方ないでしょう。私にだってできないことはあります』
シャルティナに嗤われ、イルククゥは歯噛みした。
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だが、忘れてはいけない。
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