勇者の野郎と元婚約者、あいつら全員ぶっ潰す

さとう

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第143話・弱っちい復讐対象

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 第五階梯・『咀嚼する悪魔の左手ヴァイト・オブ・ディアボロス』を巨大化させ、リリカをぶん殴ったライトは、追撃を加えるべく吹っ飛ばされたリリカに向け発砲した。
 二発同時発射された弾丸は正確にリリカの頭部へ向かう。だが、リリカの聖剣『鬼太刀』によって弾かれた。

「お、もい……っ!!」

 チュインと、剣で弾丸を弾くが、口径が上がり二発同時発射に進化したカドゥケウスの弾丸を受け止めるのは、リリカでもやっとだった。
 明らかに、以前よりも強い。
 そして何より、ライトから感じる重圧が尋常ではない。

「……リリカ、弱くなったな」
「なっ……なんですって!?」

 左手を普通のサイズに戻し、カドゥケウス・セカンドを構えたままのライトは、つまらなそうに呟いた。
 その目は、明らかに失望していた。

「殺し方はいくつも考えた。お前の抵抗も考えていくつかプランを用意したけど……どれも無駄になりそうだ。ハッキリ言って、今のお前程度に使うには上等すぎる」
「……ッ!!」
「今日は、お前を殺す。セエレみたいにな」
「ら、イトォォォォォォォォォッ!!」

 リリカは『鬼太刀』の真の力を解放し、自らが鬼になる。
 二メートルを越える身長、筋骨隆々の肉体、長く伸びた頭部のツノなど、人外の姿となって戦闘力を向上させる。
 鬼に変貌したリリカを見ても、ライトの表情は変わらなかった。
 リリカ、こんなに弱かったのか……という失望。そして自分が強くなっていたことに対する自信が、ライトの精神的な部分を支えていた。

「クイックシルバー」

 リリカの変身が終わる前に、ライトは動いた。
 変身中のリリカは隙だらけ……最初から変身すればいいものを、なぜ目の前で、隙だらけになってまでするのか。
 
「…………」

 不思議だった。
 殺す気が起きない。狙ったのは右腕の肘……変身が終わる前にリリカの腕は肘から吹っ飛んだ。

「え……」
「はぁ……弱い、弱いぞリリカ」
「え? え?……あれ? うで」

 リリカは、自分の腕が消失していることにようやく気付き、変身が解けてしまった。
 パチパチと瞬きし、冷や汗を一気に流し……やっと絶叫した。

「ぎぃ、やぁぁっぁぁぁぁっぁぁっぁぁっ!!!!」

 剣を投げ捨て、消失した腕を押さえるリリカ。
 完全に無防備だった。
 今なら、頭を撃ち抜けば終わる。

「終わりましたわ」
「おわったー」
「ん……ああ」

 マリアとシンクだ。
 マリアの百足鱗に四肢を拘束され、歪羽で皮膚をズタズタに引き裂かれて宙に浮くアンジェラと、腕と足のないアルシェが地面に転がっていた。シンクは満足したのか、アルシェの四肢をポンポン投げて遊んでいる。

「はぁ……」
「どうしましたの? あなたの獲物、殺してはいませんけど」

 血まみれのアンジェラは気を失い、マリアによって完全拘束されている。ポタポタと血が滴り、まるで磔台に晒される罪人のようだった。
 ライトは、アンジェラを見ずに言う。

「いや、もっとこう……苦戦するかと思ったけど、こんなに雑魚だったなんて……」
「まぁ。まるで血みどろの戦いを望んでいるように聞こえますわ」
「……そうかもな」

 シンクはアルシェの四肢を一瞬で焼き尽くし、骨だけにして遊んでいた。
 アルシェも、四肢を切断されながら生きている。どうやらシンクが、切断面を焼き止血したようだ。
 
「復讐のために戦ってきた……でも、こんなもんか」
「あなた……復讐を忘れたのかしら?」
「そうじゃない。きっと……」

 復讐より、大事な物ができた。
 リンとマリア、そしてシンク……守りたい、大事な仲間。
 出会いは最悪だった。でも、今はとても愛おしい仲間。かつてのレグルス、ウィネのような存在で、肩を並べて戦う仲間。

「……ま、いいや」
「?……と、それより、これらをどうします?」

 呻く勇者レイジ、磔のアンジェラ姫、四肢を失ったアルシェ、右腕消失を必死にこらえるリリカ……セエレの時みたいに、どす黒い復讐心が湧いてこない。
 そんなときだった。



「て……てん、い」



 レイジ、アンジェラ、リリカが……消えた。
 四肢を失ったアルシェが嗤っている。
 異なる空間を繋ぐことができる『壊刃』の能力で、レイジたちを逃がしたのだ。

「…………」

 これを見たライトは、冷たい目をアルシェに向ける。
 カドゥケウス・セカンドを構え、四肢を失い転がるアルシェの頭に狙いを定めた。

「さよならレイジ……負けないで」
「言っとくけど、レイジは俺の両親と親友を殺した。レイジのせいでお前は死ぬだけだ」
「…………死ね、クソ野郎」

 次の瞬間、アルシェの頭が吹っ飛んだ。
 脳、骨、肉が飛び散り、地面を汚す。
 リンは目を背け……涙を流していた。
 アルシェとはあまり話さなかったが、それでもかつての仲間だった。

「カドゥケウス」
『いいのか? 苦しいぜぇ?』
「ああ。覚悟の上だ」

 ライトの左手が、アルシェを飲み込み……。

「っぐ、うっぐぁ、っぐぃあっ……ッ!!」

 セエレの時と同じく、『聖剣』のギフトがライトを苦しめる。
 リンとシンクが寄り添い、ライトを支え……ライトの手には『壊刃』の祝福弾が握られていた。痛みでライトは祝福弾を落とし、リンが拾う。

「二人目、完了……っくそ、逃がした」
「慢心ですわね……わたしも油断しました」
「ごめん。ライト」
「いいさ。あんな雑魚三匹、すぐに始末してやる」
「…………」

 リンは、思っていた。
 レイジの状況が、ライトにそっくりになりつつあることを。
 レイジは、復讐鬼となり、挑んでくるかもしれないということを。
 
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