32歳、恋愛未経験の私に彼氏ができました。お相手は次期社長で完璧王子なのに、なぜか可愛い。

さくしゃ

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②沙織視点

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「まさか沙織さんも残ってたなんて」

佐藤瞬くんは、
二つ持ってきたコーヒーの一つを
私に渡すと隣の椅子へ座った。

「ははっ」

コーヒーにミルクを5つ入れて、
カフェラテみたいにしてから飲んだ。
濃厚なミルクと苦いコーヒーの味。

「いつものことだよ」

「ぼくも一緒です」

私の返答に苦笑を浮かべると、
佐藤くんもコーヒーを飲んだ。


………
……



佐藤瞬くんは私の勤める会社の跡取り。
それにイケメン俳優も顔負けのルックスと
細いけどガッシリとした肉体をしている。
そんな佐藤くんに社内の女性陣は

"玉の輿"

"かっこいい……"

やれ告白だ。
やれ食事に誘うだ。

"絶対に結婚する!"

誰が先に佐藤くんをモノにするかの戦いが繰り広げられていた。

でも、周りからの圧が強すぎたためか佐藤くんは社内の女性を見ると逃げるようになった。

「また親父から大事な仕事を任されてしまって……荷が重い」

だから初めて一緒に残業したときは、捨てネコのように私のことを警戒していた。けど、何度も残業をともにするうちに普通に話すようになった。

「跡取りも大変なんだね」

というと

「あはは」

って苦笑いの佐藤くん。

「って、そういう沙織さんも人の仕事を
かわりにやってるじゃないですか」

そんな佐藤くんにツッコまれて

「まあね」

私も苦笑い。

「みんなの便利屋だからしょうがないよ」

しょうがない、と割り切っても

「はぁぁ」

「はぁぁ」

ため息が溢れてしまう。

「クリスマスだっていうのに
なにやってんですかね」

そう佐藤くんが遠い目をしてつぶやいたから

「サビ残」

私も窓の外で舞う粉雪を見つめた。

「……」

そのまましばらくコーヒーを傾けつつ、
静かな時間が過ぎていった。

「ま、沙織さんに会えるから」

すると、佐藤くんがポツリと

「そこまで嫌ってわけでもないんだけど」

小さな声で、独り言のようにつぶやいた。

「……」

聞き間違いだったのか。
まさかこんな32歳になるおばさんを相手に。

「?」

そう思って佐藤くんをチラッと盗み見たけど、
けろっとしてた。逆に目があった私は動揺して慌てて目線を逸らしてしまった。

「何かありました?」

そんな私を佐藤くんは心配そうに見る。

(本当に今のってただの聞き間違い?
それにしてはちゃんと聞こえたような……)

知りたい。
でも、聞き間違いだったら恥ずかしい。

「具合でも悪いんですか?」

ぐぁぁぁ!

「沙織さん?」

くっ!どうにでもなれ!
意を決して私は口を開いた。

「さ、さっきのさ」

考えても、考えても答えなんて出せなくて。
それならいっそ心に従ってしまおうと思った。

「その、私と会えるから」

面と向かって聞くのは恥ずかったから背を向けたままにして、

「ざ、残業をすっ、するのも」

今にも弾けてしまいそうな心臓を抱きしめるようにギュッと抑え込んで、

「わ、悪くないって」

勇気を搾り出した。

「ど、どういうこと?」

ああ!言っちゃった!言っちゃった!
ど、どうしよう!聞き間違いだったら!

(はぅぅぅ)

怖い。恥ずかしい。
もう不安で胸がいっぱいで言ってしまったことを後悔した。でも、しっかりと言った。

「……」

そんな自分が誇らしくもあった。けど、佐藤くんからの返答がなくて気になって振り返ったら

「ど、どういうことって」

顔を真っ赤に染めてオドオドして

「そ、それは」

何かを言いかけて両手で顔を覆ってしまった。

「さ、沙織さんが……す」

そして佐藤くんはそのまま

「好きだから!」

って言った。

「……」

えっ。

「ええええ!!!」

こうして私と佐藤くんは付き合うことになった。
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