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私達……C級になっちゃいました!①
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「うむ……ここがD級ダンジョン「オークアイランド」か」
クミ達「金の亡者」は、学校からの帰宅途中にあるダンジョンの前へと来ていた。
「そうだよ。この前、私たちも昇級したから、いつでも挑戦できるよ」
「ふーむ……」
学校から配られた手下げ鞄の中から一冊の手書きで「意外と稼げるダンジョンマップ」とタイトルが記載された冊子を取り出す。
「こんな時はサキさんお手製ガイドブック!」
総ページ数50からなる冒険者の階級別にダンジョンの評判、お金になるモンスター、
相手にするだけ無駄、宝箱の出現位置、モンスターの弱点の5項目から記載されている。
「へぇ。一冊金貨五枚とか言って渋ってたのに結局買ったんだ」
「背に腹は変えられんからね……でも、ギルドでは教えてくれない情報とか乗ってるから勉強になる!」
冊子を読み込んでいるようで特にお金の稼げるダンジョンのページはすぐに読める端を折りたたんである。
「珍しい……人の話を聞く時やカンタ達に本を読み聞かせようするとすぐに眠っちゃうのに……凄まじいお金への執念……」
ユリはお金が絡むととてつもない力を発揮するクミに少しだけ尊敬の眼差しを向ける。
「さすがは「金の亡者」のリーダーにして、元気の家食堂のオーナー……執念が違うわ」
そうなのだ。2週間前にスタートしたばかりのパン屋「元気の家」だったが、ハンナとクルミの可愛さが話題となりファンが家に押しかけるようになった。
ハンナの料理の腕はパンによって実証済み。ハンナのパンを食べたホテルのおっちゃんシェフも味を保証していた。
「いける!我らがハンナさんならやれる!」
ギャンブルによって資金を稼いできたクミによってボロボロの平家だった元気の家は新築の二階建てへと進化した。
工事も材料とお金に困る人たち、全てクミ1人で用意して改装は2日で終わった。
手伝ってくれた子供や高齢の方には人件費として金貨十枚ずつと言う破格の給料っぷり。
一般人の平均年収分をポンと支払ってしまった。
「あの人達はほとんどただ働きさせられてばかりだからあれくらいもらっていいんだよ」
クミは笑って言っていた。
その後も改装を手伝ってくれた人達を雇い入れ給料も払っている。
子供や高齢者といった穏やかなお店で殺伐とした日常を忘れられると一気に人気店へと上り詰めた。
サキさんやハンナ達もお金は入るし人は笑顔で帰っていくから大喜びとなった。
「お!やっぱりそうだ!」
クミの声がこだまする。
「「歩く豚が気持ち悪い」と不人気のダンジョン!しかし!オークの肉は最も食べられている肉として需要がなくなることはなく値段も下がることはない!さらに魔石も一般家庭の魔道具に最も使われる!消費の割に供給が間に合っていない状況が続いている!」
クミは冊子の内容を口早に読み上げていく。
「私がかつてオークを50体持ち帰った時は金貨五枚を稼いだ!その割に人気は低くライバルが少ない!D級で狙うならここ!」
読み上げたクミの目が黄金に輝く。
日没が始まり影が濃くなっていく時間帯だが、ダンジョンの前はクミの光によってとても明るい。
「……どう?ちょっと稼いでかない?」
そんなクミの視線を向けられて眩しいのか下を向くエマ。
しばらくして頭を上げる。
「……がっぽり行きますかぁ!」
ダンジョンの前に灯りが一つ増える。
「ユリは……ん?どこいった?」
輝く目線をエマの隣にいたはずのユリに向けるがおらず、当たりを見る。
「もう暗いから早く行かないと!ご飯になっちゃう!」
クミの背後からユリの声がした。
「だから、その前に早くダンジョンの中へ行くわよ!」
誰よりも輝くユリの目……
うお!まぶし!
その輝きはクミが思わず視線を逸らしてしまうほど。
「く!金貨で見慣れた黄金色のはずなのに!」
謎の敗北感に私の手が震える。
「ほら、行こうぜ」
優しく肩に手を置いて励ましてくれるエマ。
「ふ……そうだな!行こう!」
「ああ!がっぽり!」
「かせーぐ!」
「金の亡者」がダンジョンに入る前に必ず言う合言葉で気合を入れる。
「開け!ごま!」
すっかり羞恥心のなくなった堂々としたクミの声が響き渡る。
クミ達「金の亡者」は、学校からの帰宅途中にあるダンジョンの前へと来ていた。
「そうだよ。この前、私たちも昇級したから、いつでも挑戦できるよ」
「ふーむ……」
学校から配られた手下げ鞄の中から一冊の手書きで「意外と稼げるダンジョンマップ」とタイトルが記載された冊子を取り出す。
「こんな時はサキさんお手製ガイドブック!」
総ページ数50からなる冒険者の階級別にダンジョンの評判、お金になるモンスター、
相手にするだけ無駄、宝箱の出現位置、モンスターの弱点の5項目から記載されている。
「へぇ。一冊金貨五枚とか言って渋ってたのに結局買ったんだ」
「背に腹は変えられんからね……でも、ギルドでは教えてくれない情報とか乗ってるから勉強になる!」
冊子を読み込んでいるようで特にお金の稼げるダンジョンのページはすぐに読める端を折りたたんである。
「珍しい……人の話を聞く時やカンタ達に本を読み聞かせようするとすぐに眠っちゃうのに……凄まじいお金への執念……」
ユリはお金が絡むととてつもない力を発揮するクミに少しだけ尊敬の眼差しを向ける。
「さすがは「金の亡者」のリーダーにして、元気の家食堂のオーナー……執念が違うわ」
そうなのだ。2週間前にスタートしたばかりのパン屋「元気の家」だったが、ハンナとクルミの可愛さが話題となりファンが家に押しかけるようになった。
ハンナの料理の腕はパンによって実証済み。ハンナのパンを食べたホテルのおっちゃんシェフも味を保証していた。
「いける!我らがハンナさんならやれる!」
ギャンブルによって資金を稼いできたクミによってボロボロの平家だった元気の家は新築の二階建てへと進化した。
工事も材料とお金に困る人たち、全てクミ1人で用意して改装は2日で終わった。
手伝ってくれた子供や高齢の方には人件費として金貨十枚ずつと言う破格の給料っぷり。
一般人の平均年収分をポンと支払ってしまった。
「あの人達はほとんどただ働きさせられてばかりだからあれくらいもらっていいんだよ」
クミは笑って言っていた。
その後も改装を手伝ってくれた人達を雇い入れ給料も払っている。
子供や高齢者といった穏やかなお店で殺伐とした日常を忘れられると一気に人気店へと上り詰めた。
サキさんやハンナ達もお金は入るし人は笑顔で帰っていくから大喜びとなった。
「お!やっぱりそうだ!」
クミの声がこだまする。
「「歩く豚が気持ち悪い」と不人気のダンジョン!しかし!オークの肉は最も食べられている肉として需要がなくなることはなく値段も下がることはない!さらに魔石も一般家庭の魔道具に最も使われる!消費の割に供給が間に合っていない状況が続いている!」
クミは冊子の内容を口早に読み上げていく。
「私がかつてオークを50体持ち帰った時は金貨五枚を稼いだ!その割に人気は低くライバルが少ない!D級で狙うならここ!」
読み上げたクミの目が黄金に輝く。
日没が始まり影が濃くなっていく時間帯だが、ダンジョンの前はクミの光によってとても明るい。
「……どう?ちょっと稼いでかない?」
そんなクミの視線を向けられて眩しいのか下を向くエマ。
しばらくして頭を上げる。
「……がっぽり行きますかぁ!」
ダンジョンの前に灯りが一つ増える。
「ユリは……ん?どこいった?」
輝く目線をエマの隣にいたはずのユリに向けるがおらず、当たりを見る。
「もう暗いから早く行かないと!ご飯になっちゃう!」
クミの背後からユリの声がした。
「だから、その前に早くダンジョンの中へ行くわよ!」
誰よりも輝くユリの目……
うお!まぶし!
その輝きはクミが思わず視線を逸らしてしまうほど。
「く!金貨で見慣れた黄金色のはずなのに!」
謎の敗北感に私の手が震える。
「ほら、行こうぜ」
優しく肩に手を置いて励ましてくれるエマ。
「ふ……そうだな!行こう!」
「ああ!がっぽり!」
「かせーぐ!」
「金の亡者」がダンジョンに入る前に必ず言う合言葉で気合を入れる。
「開け!ごま!」
すっかり羞恥心のなくなった堂々としたクミの声が響き渡る。
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