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第二章 そして王子は逃亡する
第二章 そして王子は逃亡する2
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与えられた騎士の制服に身を包み、腰に剣を差して、城の廊下を慣れた様子で進んでいくカメリアに周囲にいる者達からの視線が一斉に集まってくる。
その視線の多くは決して好意的なものではない。御前試合がおこなわれ、カメリアが勝ち抜いた時にも不正があったのではないかなど、その結果に異議があったことは知っている。
カメリアの父親は代々城に仕えてきた家の出身ではあるが、亡き母親は庶民の出で母親に惚れた父親が諦めずに何度も母親の元に通い詰めて結婚できたのだと何度も父親から聞かされた。
そのため、カメリアには家の力などないに等しく、大勢の目の前でおこなわれた試合に不正があったなどカメリアの試合相手の侮辱にもつながる。
カメリアの御前試合に不正などは一切なく、カメリアは紅の騎士として認められはしたものの、あくまでもそれは形だけに過ぎない。それはカメリア自身が理解していた。
カメリアが近づいてくるとカメリアを見ていた兵達は渋々頭を下げた。
中にはカメリアに聞こえよがしに舌打ちをする者もいるが、カメリアはなにも聞こえなかったように前を見据えて先に進んでいく。
――「紅の騎士」の拝命。
それはカメリアが自らの手で勝ち取った結果である。
しかし、女でありながら「紅の騎士」となったカメリアのことを快く思っていない者達がいることも事実であった。
あからさまな拒絶の態度をとられることや視線を向けられることには慣れているはずのカメリアだったが、今日ばかりはひどく居心地が悪い。
その原因はカメリアの隣を悠然と歩いているセロイスの存在だった。
あの後、カメリアのいる部屋がセロイスの屋敷にある部屋であることがわかり、カメリアはセロイスと一緒に登城することになったのだ。
そんなことをすれば目立つ上になにを言われるかわかったものではないと抵抗を見せたカメリアだったが、セロイスに約束のことを持ち出されては何も言えなかった。
そんなカメリアになにを思ったのか。セロイスはカメリアの生活に必要なものはすべて屋敷に移されていると言い始めたのだ。
セロイスは安心しろと言ったが、カメリアから言わせてもらえばなにを安心すればいいのかわからない。むしろなにひとつとして安心できることがないのが逆にすごい。
文句のひとつでも言わなければ気がすまないとカメリアが思っていたところに、やってきたのはセロイスの家のメイド達だった。
部屋にやってきたメイド達はカメリアにはどうやって使えばいいかまったくわからない化粧道具などを手慣れた様子で使いこなしてカメリアの身だしなみを整えたかと思うと、問答無用でセロイスと共に用意されていた馬車へと押し込まれた。
歩いていくと断ったものの「身体が辛いでしょうから」とメイドから妙な気を使われてしまった。
(そんなふうに思われているのか……)
今すぐにでもメイドの勘違いを訂正したいところだったが、下手に訂正することもできないカメリアは何も言わずに、セロイスと共に馬車に乗り込むことしかできなかった。
そうして仕方なくセロイスと共に城へとやって来たカメリアだったのだが、そんな理由を知らない者達にとって、その光景は不思議なものでしかなかった。
「おい、一体どうなってんだよ、あれ?」
「そんなもん、俺が知るか!」
「どうして、セロイス様が……」
若い兵達はカメリアとセロイスに道をあけながらも、この光景は一体どうなっているのかとささやきあっている。
そんな彼らの声はカメリアにも届いていた。
その視線の多くは決して好意的なものではない。御前試合がおこなわれ、カメリアが勝ち抜いた時にも不正があったのではないかなど、その結果に異議があったことは知っている。
カメリアの父親は代々城に仕えてきた家の出身ではあるが、亡き母親は庶民の出で母親に惚れた父親が諦めずに何度も母親の元に通い詰めて結婚できたのだと何度も父親から聞かされた。
そのため、カメリアには家の力などないに等しく、大勢の目の前でおこなわれた試合に不正があったなどカメリアの試合相手の侮辱にもつながる。
カメリアの御前試合に不正などは一切なく、カメリアは紅の騎士として認められはしたものの、あくまでもそれは形だけに過ぎない。それはカメリア自身が理解していた。
カメリアが近づいてくるとカメリアを見ていた兵達は渋々頭を下げた。
中にはカメリアに聞こえよがしに舌打ちをする者もいるが、カメリアはなにも聞こえなかったように前を見据えて先に進んでいく。
――「紅の騎士」の拝命。
それはカメリアが自らの手で勝ち取った結果である。
しかし、女でありながら「紅の騎士」となったカメリアのことを快く思っていない者達がいることも事実であった。
あからさまな拒絶の態度をとられることや視線を向けられることには慣れているはずのカメリアだったが、今日ばかりはひどく居心地が悪い。
その原因はカメリアの隣を悠然と歩いているセロイスの存在だった。
あの後、カメリアのいる部屋がセロイスの屋敷にある部屋であることがわかり、カメリアはセロイスと一緒に登城することになったのだ。
そんなことをすれば目立つ上になにを言われるかわかったものではないと抵抗を見せたカメリアだったが、セロイスに約束のことを持ち出されては何も言えなかった。
そんなカメリアになにを思ったのか。セロイスはカメリアの生活に必要なものはすべて屋敷に移されていると言い始めたのだ。
セロイスは安心しろと言ったが、カメリアから言わせてもらえばなにを安心すればいいのかわからない。むしろなにひとつとして安心できることがないのが逆にすごい。
文句のひとつでも言わなければ気がすまないとカメリアが思っていたところに、やってきたのはセロイスの家のメイド達だった。
部屋にやってきたメイド達はカメリアにはどうやって使えばいいかまったくわからない化粧道具などを手慣れた様子で使いこなしてカメリアの身だしなみを整えたかと思うと、問答無用でセロイスと共に用意されていた馬車へと押し込まれた。
歩いていくと断ったものの「身体が辛いでしょうから」とメイドから妙な気を使われてしまった。
(そんなふうに思われているのか……)
今すぐにでもメイドの勘違いを訂正したいところだったが、下手に訂正することもできないカメリアは何も言わずに、セロイスと共に馬車に乗り込むことしかできなかった。
そうして仕方なくセロイスと共に城へとやって来たカメリアだったのだが、そんな理由を知らない者達にとって、その光景は不思議なものでしかなかった。
「おい、一体どうなってんだよ、あれ?」
「そんなもん、俺が知るか!」
「どうして、セロイス様が……」
若い兵達はカメリアとセロイスに道をあけながらも、この光景は一体どうなっているのかとささやきあっている。
そんな彼らの声はカメリアにも届いていた。
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