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番外編【狼の牙】
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イオル率いる【狼の牙】一行は、ジュネル村を目指して駆け出していく。
緊急クエストとして、ジュネル村に家族が居る者達が出した依頼である。
ギルドはそれを良くは思っていないが、依頼を無下にして騒動の関与を疑われるのを避ける為に受諾した。
当然ながら、ギルドからの追加報酬はなく、数名のジュネル村出身者達が持ち寄った僅かな報酬の為、誰も依頼を受け取らないだろうと、ギルドも考えていたのだ。
クエストが依頼された経緯は、ガレルの町で、奴隷商人の手下と、一人の冒険者が些細な事から、揉め事になった処から始まる。
町の居酒屋【星のしずく亭】で事件は起こる。
その日、奴隷商人として、裏でその名を知られていたベギンは、部下を数人連れて【星のしずく亭】で酒を楽しんでいた。
「あはは、最高の酒だな。これだから、この仕事は辞められんよ」
大声で騒ぎ、一般客は店を後にする。【星のしずく亭】の女将であるメリッサは、毎回の事ながら、ベギン一行に対して、不満と、苛立ちを感じながらも、客商売である事から、プロ意識を持って必死に耐えていた。
しかし、その日の【星のしずく亭】にいた客はベギン一行だけではなかったのだ。
店の奥にある六人用のテーブルに、二人の女性が座っていた。
女性と言うにはまだ幼く、少女と言うには確りとした雰囲気の二人は、片方が白、もう片方が黒のローブを身にまとい。顔を隠すように食事をしていた。
二人は双子の姉妹だ。
白いローブが姉のリアであり、黒いローブが妹のシアである。
リアは、白属性魔法と光属性魔法の才能があり、回復から攻撃まで幅広く、その才能を発揮するパーティーの要である。
シア、リアとは違い、妨害や能力ダウンを得意とする。足止めの為に地形を利用する事も得意としている。
双子の見た目は、発育がいいとは言えない幼さの残る二人であるが、肩までの銀色の髪、しかし、残念なボディーラインは爪先まで、真っ平らに見通せる。
青い瞳が印象的な美しい顔なだけに残念だとすら言われる事もある。
この双子が【狼の牙】のバランスを保っている存在と言える。
しかし、その日は、いつもと違っていた。
普段ならば【狼の牙】のメンバー皆で食事をする為、二人きりになる事はなかったが、この日、他のメンバーは武器の整備や薬品の調達と別れて行動しており、合流地点を【星のしずく亭】に決めて別行動をしていた。
最初に目的を果たした二人は、一足早く【星のしずく亭】に戻り、仲間を待つ間に軽く飲み物を頼み、ゆっくりとした時間を過ごしていた。
そんな二人の少女を見つけたベギンの部下が酒を片手に声を掛ける。
「よう、良かったら飲もうぜ! ガキでも酌くらいはできるだろ?」
最初こそ無視を決めていた二人だったが、次第に男も、苛立ち声を大きくする。
「シカトしてんじゃねぇぞ! 優しく声を掛けてるんだからよ」
二人の座る席に、男が力強く酒瓶を叩きつける。
その瞬間、リアの我慢が限界を迎える。
「……五月蝿いわね! アンタ達なんかと飲むわけないでしょ! 顔みてから出直しなさいよ!」
「うんだと! ふざけやがって」
男が腰からナイフを取り出し、手に握ると一瞬、場が静まり返る。
「もう、お姉ちゃんも、オジサンもさ、五月蝿いから、静かにしてよ"無音魔法"」
二人に対して、魔法を軽く使うシア。
その光景に、パチパチと手を叩く音がベギンのテーブルから響く。
「悪かったな、お嬢さん方、此方の馬鹿者がやり過ぎた。許してくれ」
ベギンであった。堂々とそう語りながらも、目は笑わず、引かなければ一触即発を無言で語って見せたのである。
それを理解して、シアがリアを宥めて、座らせる。
「此方も、慌てたので、いきなり魔法を発動して申し訳なかったわ」
「いやいや、まあ、いきなり魔法を一般人に向ければ、犯罪者になりかねないしな、お嬢さん方、気をつけてください」
そう語るとベギンは、絡みに行った男を席に戻し飲み直す。
そして、男を突然、殴り出す。
「恥をかかせやがって? お前みたいな奴がオレは一番嫌いなんだよ! お嬢さん方に土下座して、死ぬ程、デコを叩きつけて、誠意を見せてこい……いいな?」
「ふぁい、わがりました」
男は言われるがまま、リアとシアの前に移動すると、床に額を打ち付けだす。
「どうが、ゆるじてくだはい、おねはいじまふ」
なんでも、頭を擦りつける姿に、リアとシアは異常だと、恐怖を感じる。
その時だった。静まり返った【星のしずく亭】に数名の男達が雪崩込む。
男達の招待は、冒険者ギルドの者達であった。
「これは、一体? 説明してもらいおうか!」
それに対して、ベギンが口を開く。
「いえいえ、其方のお嬢さん方に私達の部下が謝罪しているんですよ。いきなり魔法を撃つ程、怒らせてしまったようなのでね」
ベギンがニヤリと微笑む。
それを見て直ぐに冒険者ギルドの男達がリアとシアを取り囲む。
「こんな場所で本当に魔法を発動したのか?」
「それは、間違いない、でも私が発動したのはサイレントだぞ!」
「話は、本部で聞く、いいから来い!」
二人がまるで犯罪者のように、ギルド本部に連れて行かれようとしたその時、三人の男が声を掛ける。
「よう? ウチの仲間がなんかしたのか?」
それはイオルと【狼の牙】の残り二人のメンバーであった。
「なんだお前ら! 我等は冒険者ギルドにこいつ等を連れてくだけだ! 話は本部でしろ」
強行して、その場を後にしようとする男達に対して、イオル達は道を塞ぐ。
「おいおい、話はついてないだろ? その男の傷もだが、気になる処ばかりだ」
イオルがベギンを睨みつける。
視線に気づくと、ベギンが金を取り出し、女将のメリッサに支払うと、口を開く。
「ギルド員の方、すみません。確かに危害を加えられてません。穏便に済ませたいので、その方達を解放しては頂けないかな?」
「それで、構わないなら、我々は構わない。ふん、でわ、失礼する」
冒険者ギルドの男達がイオルの横を通り、その場を後にする。
そして、その後にベギン一行も続くように、その場から歩き出す。
「お互いに、いいタイミングだったな……怖い怖い、ははは」
ベギンはそう語り、消えていく。
一段落すると、イオル達がリアとシアに駆け寄る。
「大丈夫か?」
「ヒデェな、まったく」
「許せねぇぞ」
イオルと共に心配する二人。
レンジャーのガドとシーフのラムロである。
ガドは、探索や探知を基本とする弓の名手で遠距離からの支援や薬草などの採取と自然に強く、野宿の際なども、ガドの指示で場所等は決められる。
見た目は、お世辞にも頼りになるとは言えないが、長年、弓を武器としているその腕は立派で体力もイオルの次に位置している。
シーフのラムロ。 元盗賊だったが、冒険者の方が自分らしいと、盗賊団を抜けた存在。
罠の発見や解除を基本の役目としており、情報収集なども行う。体力では三番手だが、足の速さはメンバー1である。
ナイフを武器としているが、クナイや、爆弾といった武器も持ち歩く戦闘員である。
五人は、その場での食事を諦め、別の店に移動するとリアとシアから何があったのかを質問する。
当然ながら、話の内容は笑って許せるモノではなかった。
イオルは拳を握り、苛立ちに震える。
「イオル、とりあえず、落ち着けよ。先ずはオレが見て来てやるからよ」
そう語るとラムロが一人店を後にする。
その晩、夜中一時が過ぎようとしていた時、【狼の牙】の宿に、ラムロが戻る。
「奴らのアジト、分かったぜ。ついでに、奴らかなり金ヅルだわ」
ニヤつきながら、ラムロがイオル達に報告する。
報告内容は、予想しえない物だった。
ベギン一行の使っていたアジトは、レガルの街中から少し離れた古い屋敷であり、地下室が存在している。
地下室の真横には地下水路が存在しており、屋敷から逃げる為の隠し通路が存在しており、水路側からも開封が可能であった。
隠し通路は、地下室の床に繋がり、レンガの床の一部が通路の入口になっている。
「ここからが、重要な情報だ、地下室の床から確認出来たが、奴隷が繋がれてぜ」
「奴隷? しかし、本当なのか」
ラムロの言葉にイオルが反応する。
奴隷はガレルだけでなく、ケストア王国は許していない。
奴隷を売買していなくとも、所持しているだけで、ケストア王国に対する国家犯罪になるのだ。
「こいつは、やばいだろ? つまり、奴らの奴隷がいると分かれば、奴らを潰せるぜ。仲間をバカにされたら、やり返さないとな」
ラムロがニッと笑みを浮かべる。
「やるなら、急がないとな」
「任せろよイオル。ちゃんと撮影用の魔道具は仕入れてあるからよ」
ラムロの言葉にイオルが他のメンバーを見る。
メンバー全員が頷くと、イオルは覚悟を決め、作戦を話し合う。
ベギンのアジトには、日の出と共に攻撃を開始する事に決まる。
夜中の内に水路に移動し、地下水路から地下通路を確認し、奴隷達が床上に存在する事実を確認する。
全てを確認し終わり、夜明けを待つ【狼の牙】は、正面から突撃する部隊と地下通路から奴隷を逃がす為の二手に別れる。
地下通路には、レンジャーのガドと黒魔導士のシアが奴隷を逃がす役割となる。
正面からは、戦闘員であるリーダーのイオル、シーフのラムロ、白魔導師のリアが攻撃を仕掛ける。
数は少ないが、上級クエストを幾つもクリアしてきた【狼の牙】からすれば、数十人の一般人など、恐れるに足らないのだ。
そして、時は来る。
「朝日だ、仕掛けるぞ!」
イオルが正面から、一気に駆け出していく。
朝の静けさが一瞬で消え去りると、屋敷からは、見張りをしていたベギンの部下達が武器を握り、イオル達を迎え撃つ。
「うらァっ! いくぞ!」
イオルの巨大な大剣を一振する、凄まじい風圧が巻き起こり、ベギンの部下達が一気に吹き飛ばされていく。
「な、うわぁぁぁ!」
怯んだ一瞬の隙をラムロが敵に向けて切りつけ、腕などに痺れ薬の塗られたナイフの刃を切りつけていく。
二人の戦いの背後から、リアの白魔法が放たれ、白い閃光が屋敷に撃ち放たれる。
裏で有名であろうが、実際の冒険者であり、実力を持つ【狼の牙】を前に、まともに戦闘が可能な者は屋敷内部には存在しなかった。
騒ぎを聞きつけ、慌てたベギンは、口封じに奴隷を繋いでいた地下室へと急ぐ。
「はぁはぁ、急げ、奴等が来るまでに、奴らを始末しないと!」
ベギン自身が、地下室に辿り着いた時、見張りをしていた部下達は床に倒れており、地下室内には、奴隷達の姿は存在していなかった。
「な、なんだ、なにが?」
当然ながら、地下通路への入口は、通路側から閉ざされている。その為、ベギンからすれば、奴隷だけが消え去った密室となっていた。
「起きろ! 役立たずが!」
部下を殴り起こそうとするベギンの元に、イオル達が辿り着く。
「よう、奴隷商人だったんだな?」
イオルの声に慌てて振り向くベギン。
「な、何の話だ! いきなり、攻撃してきやがって! ギルドにこの事実を伝えたら、お前らは終わりなんだぞ!」
「そう吠えるなよ? 余裕がないじゃないか、まあ、奴隷達が消えたから焦るよな?」
ラムロの発言にベギンは、口を閉じる。
「アンタの奴隷達は、逃させて貰ったし、全て魔道具で記録させて貰ったぜ」
外では、奴隷達を連れて、ガドとシアが、ギルド本部の信頼できる職員の一人に全てを報告する。
職員の名はバド、ケストア王国に存在する全ギルドを束ねる王国ギルドに連絡することの出来る通信魔法を扱える存在である。
ガレルにある冒険者ギルド本部の不正の証拠を集める為に送られた王国ギルドと冒険者ギルドの、両方に所属する特別な立場の職員である。
「これは、手柄だな。朝を選んだのは正解だな。今すぐ、王国ギルドに通信魔法を飛ばす」
その時点で、全てが王国ギルドに知らされ、イオル率いる【狼の牙】の名は、王国ギルドにも知れ渡る事となる。
ベギンは、冒険者ギルド本部は動かないと、考えていたが、王国ギルドに知られた時点で、チャルドは、ベギン殺害を考え動き出す。
そんな奴隷とされていた者達の中に、ジュネル村の村人が含まれており、その事実が広まり出す。
そして、ジュネル村出身の者から、調査依頼が出される。さらに冒険者ギルド内でも、派遣していた筈の冒険者が連絡が付かなくなった事実が明らかになる。
イオルは悩む事無く、クエストを受諾すると、ジュネル村へと駆け出して行くのだった。
パンドラ達と出会った後、イオル達はジュネル村が存在していた場所に辿り着く。
しかし、そこには、何も存在していなかったのだ。
土と草に包まれ、最初から村など存在していなかったんじゃないのかとすら感じさせる貢献にイオル達一行は、同様を露にする。
「どうなってるんだよ……確かにこの場所にあった筈なのに」
「落ち着け、イオル! リーダーが慌てんな」
ラムロが周囲を探索を開始する。
レンジャーのガドが、ジュネル村の薪置き場を離れた岩穴に発見する。
「間違いないな……綺麗に村が無くなっちまったな」
リアとシアも、有り得ない事実を前に同様する。
「お姉ちゃん、有り得るのかな、こんな事」
「わからないよ、たださ、本当に村をこんな風に消せる奴がいるなら、会いたくないわね」
全員の明らかな同様にイオルが声をあげる。
「調査は四日、まあ、帰還を考えれば、三日となるが、生存者を探すのがオレ達の仕事だ。気を引き締めろよ!」
皆が頷くと、調査が開始される。
緊急クエストとして、ジュネル村に家族が居る者達が出した依頼である。
ギルドはそれを良くは思っていないが、依頼を無下にして騒動の関与を疑われるのを避ける為に受諾した。
当然ながら、ギルドからの追加報酬はなく、数名のジュネル村出身者達が持ち寄った僅かな報酬の為、誰も依頼を受け取らないだろうと、ギルドも考えていたのだ。
クエストが依頼された経緯は、ガレルの町で、奴隷商人の手下と、一人の冒険者が些細な事から、揉め事になった処から始まる。
町の居酒屋【星のしずく亭】で事件は起こる。
その日、奴隷商人として、裏でその名を知られていたベギンは、部下を数人連れて【星のしずく亭】で酒を楽しんでいた。
「あはは、最高の酒だな。これだから、この仕事は辞められんよ」
大声で騒ぎ、一般客は店を後にする。【星のしずく亭】の女将であるメリッサは、毎回の事ながら、ベギン一行に対して、不満と、苛立ちを感じながらも、客商売である事から、プロ意識を持って必死に耐えていた。
しかし、その日の【星のしずく亭】にいた客はベギン一行だけではなかったのだ。
店の奥にある六人用のテーブルに、二人の女性が座っていた。
女性と言うにはまだ幼く、少女と言うには確りとした雰囲気の二人は、片方が白、もう片方が黒のローブを身にまとい。顔を隠すように食事をしていた。
二人は双子の姉妹だ。
白いローブが姉のリアであり、黒いローブが妹のシアである。
リアは、白属性魔法と光属性魔法の才能があり、回復から攻撃まで幅広く、その才能を発揮するパーティーの要である。
シア、リアとは違い、妨害や能力ダウンを得意とする。足止めの為に地形を利用する事も得意としている。
双子の見た目は、発育がいいとは言えない幼さの残る二人であるが、肩までの銀色の髪、しかし、残念なボディーラインは爪先まで、真っ平らに見通せる。
青い瞳が印象的な美しい顔なだけに残念だとすら言われる事もある。
この双子が【狼の牙】のバランスを保っている存在と言える。
しかし、その日は、いつもと違っていた。
普段ならば【狼の牙】のメンバー皆で食事をする為、二人きりになる事はなかったが、この日、他のメンバーは武器の整備や薬品の調達と別れて行動しており、合流地点を【星のしずく亭】に決めて別行動をしていた。
最初に目的を果たした二人は、一足早く【星のしずく亭】に戻り、仲間を待つ間に軽く飲み物を頼み、ゆっくりとした時間を過ごしていた。
そんな二人の少女を見つけたベギンの部下が酒を片手に声を掛ける。
「よう、良かったら飲もうぜ! ガキでも酌くらいはできるだろ?」
最初こそ無視を決めていた二人だったが、次第に男も、苛立ち声を大きくする。
「シカトしてんじゃねぇぞ! 優しく声を掛けてるんだからよ」
二人の座る席に、男が力強く酒瓶を叩きつける。
その瞬間、リアの我慢が限界を迎える。
「……五月蝿いわね! アンタ達なんかと飲むわけないでしょ! 顔みてから出直しなさいよ!」
「うんだと! ふざけやがって」
男が腰からナイフを取り出し、手に握ると一瞬、場が静まり返る。
「もう、お姉ちゃんも、オジサンもさ、五月蝿いから、静かにしてよ"無音魔法"」
二人に対して、魔法を軽く使うシア。
その光景に、パチパチと手を叩く音がベギンのテーブルから響く。
「悪かったな、お嬢さん方、此方の馬鹿者がやり過ぎた。許してくれ」
ベギンであった。堂々とそう語りながらも、目は笑わず、引かなければ一触即発を無言で語って見せたのである。
それを理解して、シアがリアを宥めて、座らせる。
「此方も、慌てたので、いきなり魔法を発動して申し訳なかったわ」
「いやいや、まあ、いきなり魔法を一般人に向ければ、犯罪者になりかねないしな、お嬢さん方、気をつけてください」
そう語るとベギンは、絡みに行った男を席に戻し飲み直す。
そして、男を突然、殴り出す。
「恥をかかせやがって? お前みたいな奴がオレは一番嫌いなんだよ! お嬢さん方に土下座して、死ぬ程、デコを叩きつけて、誠意を見せてこい……いいな?」
「ふぁい、わがりました」
男は言われるがまま、リアとシアの前に移動すると、床に額を打ち付けだす。
「どうが、ゆるじてくだはい、おねはいじまふ」
なんでも、頭を擦りつける姿に、リアとシアは異常だと、恐怖を感じる。
その時だった。静まり返った【星のしずく亭】に数名の男達が雪崩込む。
男達の招待は、冒険者ギルドの者達であった。
「これは、一体? 説明してもらいおうか!」
それに対して、ベギンが口を開く。
「いえいえ、其方のお嬢さん方に私達の部下が謝罪しているんですよ。いきなり魔法を撃つ程、怒らせてしまったようなのでね」
ベギンがニヤリと微笑む。
それを見て直ぐに冒険者ギルドの男達がリアとシアを取り囲む。
「こんな場所で本当に魔法を発動したのか?」
「それは、間違いない、でも私が発動したのはサイレントだぞ!」
「話は、本部で聞く、いいから来い!」
二人がまるで犯罪者のように、ギルド本部に連れて行かれようとしたその時、三人の男が声を掛ける。
「よう? ウチの仲間がなんかしたのか?」
それはイオルと【狼の牙】の残り二人のメンバーであった。
「なんだお前ら! 我等は冒険者ギルドにこいつ等を連れてくだけだ! 話は本部でしろ」
強行して、その場を後にしようとする男達に対して、イオル達は道を塞ぐ。
「おいおい、話はついてないだろ? その男の傷もだが、気になる処ばかりだ」
イオルがベギンを睨みつける。
視線に気づくと、ベギンが金を取り出し、女将のメリッサに支払うと、口を開く。
「ギルド員の方、すみません。確かに危害を加えられてません。穏便に済ませたいので、その方達を解放しては頂けないかな?」
「それで、構わないなら、我々は構わない。ふん、でわ、失礼する」
冒険者ギルドの男達がイオルの横を通り、その場を後にする。
そして、その後にベギン一行も続くように、その場から歩き出す。
「お互いに、いいタイミングだったな……怖い怖い、ははは」
ベギンはそう語り、消えていく。
一段落すると、イオル達がリアとシアに駆け寄る。
「大丈夫か?」
「ヒデェな、まったく」
「許せねぇぞ」
イオルと共に心配する二人。
レンジャーのガドとシーフのラムロである。
ガドは、探索や探知を基本とする弓の名手で遠距離からの支援や薬草などの採取と自然に強く、野宿の際なども、ガドの指示で場所等は決められる。
見た目は、お世辞にも頼りになるとは言えないが、長年、弓を武器としているその腕は立派で体力もイオルの次に位置している。
シーフのラムロ。 元盗賊だったが、冒険者の方が自分らしいと、盗賊団を抜けた存在。
罠の発見や解除を基本の役目としており、情報収集なども行う。体力では三番手だが、足の速さはメンバー1である。
ナイフを武器としているが、クナイや、爆弾といった武器も持ち歩く戦闘員である。
五人は、その場での食事を諦め、別の店に移動するとリアとシアから何があったのかを質問する。
当然ながら、話の内容は笑って許せるモノではなかった。
イオルは拳を握り、苛立ちに震える。
「イオル、とりあえず、落ち着けよ。先ずはオレが見て来てやるからよ」
そう語るとラムロが一人店を後にする。
その晩、夜中一時が過ぎようとしていた時、【狼の牙】の宿に、ラムロが戻る。
「奴らのアジト、分かったぜ。ついでに、奴らかなり金ヅルだわ」
ニヤつきながら、ラムロがイオル達に報告する。
報告内容は、予想しえない物だった。
ベギン一行の使っていたアジトは、レガルの街中から少し離れた古い屋敷であり、地下室が存在している。
地下室の真横には地下水路が存在しており、屋敷から逃げる為の隠し通路が存在しており、水路側からも開封が可能であった。
隠し通路は、地下室の床に繋がり、レンガの床の一部が通路の入口になっている。
「ここからが、重要な情報だ、地下室の床から確認出来たが、奴隷が繋がれてぜ」
「奴隷? しかし、本当なのか」
ラムロの言葉にイオルが反応する。
奴隷はガレルだけでなく、ケストア王国は許していない。
奴隷を売買していなくとも、所持しているだけで、ケストア王国に対する国家犯罪になるのだ。
「こいつは、やばいだろ? つまり、奴らの奴隷がいると分かれば、奴らを潰せるぜ。仲間をバカにされたら、やり返さないとな」
ラムロがニッと笑みを浮かべる。
「やるなら、急がないとな」
「任せろよイオル。ちゃんと撮影用の魔道具は仕入れてあるからよ」
ラムロの言葉にイオルが他のメンバーを見る。
メンバー全員が頷くと、イオルは覚悟を決め、作戦を話し合う。
ベギンのアジトには、日の出と共に攻撃を開始する事に決まる。
夜中の内に水路に移動し、地下水路から地下通路を確認し、奴隷達が床上に存在する事実を確認する。
全てを確認し終わり、夜明けを待つ【狼の牙】は、正面から突撃する部隊と地下通路から奴隷を逃がす為の二手に別れる。
地下通路には、レンジャーのガドと黒魔導士のシアが奴隷を逃がす役割となる。
正面からは、戦闘員であるリーダーのイオル、シーフのラムロ、白魔導師のリアが攻撃を仕掛ける。
数は少ないが、上級クエストを幾つもクリアしてきた【狼の牙】からすれば、数十人の一般人など、恐れるに足らないのだ。
そして、時は来る。
「朝日だ、仕掛けるぞ!」
イオルが正面から、一気に駆け出していく。
朝の静けさが一瞬で消え去りると、屋敷からは、見張りをしていたベギンの部下達が武器を握り、イオル達を迎え撃つ。
「うらァっ! いくぞ!」
イオルの巨大な大剣を一振する、凄まじい風圧が巻き起こり、ベギンの部下達が一気に吹き飛ばされていく。
「な、うわぁぁぁ!」
怯んだ一瞬の隙をラムロが敵に向けて切りつけ、腕などに痺れ薬の塗られたナイフの刃を切りつけていく。
二人の戦いの背後から、リアの白魔法が放たれ、白い閃光が屋敷に撃ち放たれる。
裏で有名であろうが、実際の冒険者であり、実力を持つ【狼の牙】を前に、まともに戦闘が可能な者は屋敷内部には存在しなかった。
騒ぎを聞きつけ、慌てたベギンは、口封じに奴隷を繋いでいた地下室へと急ぐ。
「はぁはぁ、急げ、奴等が来るまでに、奴らを始末しないと!」
ベギン自身が、地下室に辿り着いた時、見張りをしていた部下達は床に倒れており、地下室内には、奴隷達の姿は存在していなかった。
「な、なんだ、なにが?」
当然ながら、地下通路への入口は、通路側から閉ざされている。その為、ベギンからすれば、奴隷だけが消え去った密室となっていた。
「起きろ! 役立たずが!」
部下を殴り起こそうとするベギンの元に、イオル達が辿り着く。
「よう、奴隷商人だったんだな?」
イオルの声に慌てて振り向くベギン。
「な、何の話だ! いきなり、攻撃してきやがって! ギルドにこの事実を伝えたら、お前らは終わりなんだぞ!」
「そう吠えるなよ? 余裕がないじゃないか、まあ、奴隷達が消えたから焦るよな?」
ラムロの発言にベギンは、口を閉じる。
「アンタの奴隷達は、逃させて貰ったし、全て魔道具で記録させて貰ったぜ」
外では、奴隷達を連れて、ガドとシアが、ギルド本部の信頼できる職員の一人に全てを報告する。
職員の名はバド、ケストア王国に存在する全ギルドを束ねる王国ギルドに連絡することの出来る通信魔法を扱える存在である。
ガレルにある冒険者ギルド本部の不正の証拠を集める為に送られた王国ギルドと冒険者ギルドの、両方に所属する特別な立場の職員である。
「これは、手柄だな。朝を選んだのは正解だな。今すぐ、王国ギルドに通信魔法を飛ばす」
その時点で、全てが王国ギルドに知らされ、イオル率いる【狼の牙】の名は、王国ギルドにも知れ渡る事となる。
ベギンは、冒険者ギルド本部は動かないと、考えていたが、王国ギルドに知られた時点で、チャルドは、ベギン殺害を考え動き出す。
そんな奴隷とされていた者達の中に、ジュネル村の村人が含まれており、その事実が広まり出す。
そして、ジュネル村出身の者から、調査依頼が出される。さらに冒険者ギルド内でも、派遣していた筈の冒険者が連絡が付かなくなった事実が明らかになる。
イオルは悩む事無く、クエストを受諾すると、ジュネル村へと駆け出して行くのだった。
パンドラ達と出会った後、イオル達はジュネル村が存在していた場所に辿り着く。
しかし、そこには、何も存在していなかったのだ。
土と草に包まれ、最初から村など存在していなかったんじゃないのかとすら感じさせる貢献にイオル達一行は、同様を露にする。
「どうなってるんだよ……確かにこの場所にあった筈なのに」
「落ち着け、イオル! リーダーが慌てんな」
ラムロが周囲を探索を開始する。
レンジャーのガドが、ジュネル村の薪置き場を離れた岩穴に発見する。
「間違いないな……綺麗に村が無くなっちまったな」
リアとシアも、有り得ない事実を前に同様する。
「お姉ちゃん、有り得るのかな、こんな事」
「わからないよ、たださ、本当に村をこんな風に消せる奴がいるなら、会いたくないわね」
全員の明らかな同様にイオルが声をあげる。
「調査は四日、まあ、帰還を考えれば、三日となるが、生存者を探すのがオレ達の仕事だ。気を引き締めろよ!」
皆が頷くと、調査が開始される。
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剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。
若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。
リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。
風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。
弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。
そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。
「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」
孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。
しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。
最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
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