【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

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第6章 亡者の巣窟を探索して生きていこう

80.事なかれ主義者は見張りをしてみたい

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 浮遊台車に少し改良を加えて水陸両用にしてから目で見て沼だな、って分かる所で試してみようとしたんだけど、ルウさんに取り上げられた。

「そういう実験はお姉ちゃんに任せて、シズトくんは危ない事をしちゃだめよ? それで、これで何をすればいいのかしら?」
「魔力を流すと浮くから、それに乗って沼の上を進めるか試したいんだけど」
「ああ、子どもたちが街中を走ってるようにやればいいのね? やってみるわ」
「魔物も進行方向にいなさそうだから今のうちにパパッて試しちゃって」

 ルウさんは頷くと、浮遊台車に足をかけて、地面に接している片足で踏み切った。スーッと水の上だろうと地面の上だろうと関わらず一定の高さで浮いたまままっすぐに進んでいく。
  ルウさんは軽く蹴ったように見えたんだけど、結構なスピードで遠くまで進んでしまったので慌てて戻ってくるように伝えた。

「これで最短距離で行けそうだね」
「時短」
「そうと決まれば浮遊台車人数分作っちゃうね」
「いや、人数分じゃなくていいだろ。むしろ魔物との戦闘をする事も考えたら二人一組くらいになって移動役と攻撃役に分かれた方がいいと思うぞ?」

 まあ、浮遊台車に追加で神聖魔法の何かを付与するのもいいんだけど、そうなると魔石を使うタイプにしないと魔力消費がえぐいからラオさんの対応方法が無難だよね。
 そうと決まればとりあえず浮遊台車を追加で三つ【加工】と【付与】を活用して作った。二台は魔物に壊されてしまった場合用で事前に作っておいたけど、アイテムバッグにしまっておく。
 戻ってきたルウさんを加えて話し合って、ルウさんの押す台車に小柄なドーラさんと僕が同乗し、ラオさんが押す浮遊台車にホムラが乗る事になった。ホムラは既に台車に座っていて、チョキの形の右手をじっと見つめている。
 ルウさんはニコニコしながら取っ手のすぐ近くにある僕の頭を撫でていてご満悦だ。ドーラさんは僕の前に座っている。全身鎧じゃなかったら役得だったんだろうけど……。

「それじゃあ出発するからね?」
「お願いします~。ホムラ、浮遊台車壊れちゃったらアイテムバッグに予備が入ってるからそれ使ってね」
「分かりました、マスター」
「ドーラさん、近くに寄ってきた敵はよろしくね」
「分かってる。シズトは索敵」
「オッケー。それじゃ、あっちにまっすぐ進んでいこうか」

 僕が指をさした先に向けて、最初にルウさんが先行し、ラオさんがその後を追う。
 道中、進行方向に魔物が出たら止まれたらその場で止まってから戦闘し、沼の上で止まれない状況だったらドーラさんが大きな盾を構え、その後ろから僕が神聖ライトを照射して倒すだけだった。
 ちょっとゾンビの場合だと燃えてるゾンビに突っ込んだことがあってめちゃくちゃ心臓に悪かったけど、ドーラさんが盾で弾き飛ばしていた。
 車みたいなものを作ってしまえばいい気はするんだけど、作ってもダンジョンの階段は横幅的に通れないだろうし、アイテムバッグにしまう事も大きすぎて無理。転移陣でその都度次の階層に持ち込むことも考えたけど魔力とか魔石の消費が激しくなるからとりあえずこのままでいいか、という事になった。
 結局その後、一時間程度で次の階層に続く階段に問題なくついたし。



 浮遊台車で十二階層から十五階層まで文字通り駆け抜けたからダンジョンに入って八時間ほどが経過した。
 小休憩はあったがのんびりお昼ご飯を食べる事無く突き進んだおかげで今日も日帰りができるかもしれない。そんな事を思いつつ降り立った十六階層は変わらず沼地だったが、出てくる魔物が上位種が多くなるらしい。

「今の所、活発期の兆候とかはない感じだよね?」
「そうですね、マスター。事前情報で仕入れておいた魔物の変化は特にありません」
「油断はダメ」
「そうよ~? もしかしたらこの階層に異変があるかもしれないんだし」
「そうだね。……今までの階層も最短距離で突き進んじゃったけど、もしかしたら端っこの方で異変が出始めてたとかもあったのかな? それだと戻らなきゃいけないし面倒なんだけど……」
「いや、特定の階層だけで起きる事はあったらしいが、一部分だけから起こったってのは聞いた事ねぇな。それもあって、冒険者ギルドで活発期になっていないか監視する常駐の冒険者たちや、臨時依頼された冒険者も決められた巡回ルートしか確認しねぇし」
「それならいいけどさ……あとから確認不足で被害に遭った、とか言われないといいんだけど」
「心配不要。最短距離でいいって言われてる」
「そっか。それじゃ、この階層も最短距離で進もうか。ルウさん、ドーラさん、よろしくね」
「わかったわ~」

 会話中ずっと僕の頭を撫でていたルウさんは撫でるのをやめて地面を蹴った。
 結局、魔物の密集地を避けたためこれ以上無理矢理進んでも、という話になって二十階層に続く階段のすぐそばで野営をする事になった。嗅覚を遮断する結界の中で食事をササッと済ませると、そのまま交代で見張りをしつつ休む事になる。
 十メートル四方を聖域の魔道具でサクッと囲い込んでその真ん中にテントを二つ設営する。
 テントをそのままアイテムバッグから出し入れできれば楽なんだけど、残念ながらバッグの口よりも大きなものは出し入れできないのであきらめるしかない。
 設営の準備を終わらせると、既に休憩の準備を皆終えているようで、ラオさんがテントのすぐ近くで焚火をしていた。他はテント内で何かしているようだ。

「ねぇ、ラオさん。僕まだいつから見張りするか言われてないんだけど?」
「おめぇは寝とけ。ホムラ」
「マスター、失礼します」
「ちょ、無理矢理しなくても寝――」

 ……目が覚めるとテントの中でした。ちょっとホムラー? 近くにいるんだったら来てもらってもいいですかねー??
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