1,028 / 1,375
後日譚
後日譚216事なかれ主義者は大食いでもない
しおりを挟む
オクタビアさんとファマリアを見て回った。視察というよりはこれはデートな気がする。
午前中は町の子たちの様子を見るために町中を歩き回る予定だったけど、流石に時間がかかりすぎるので魔道具『浮遊台車』を押している子を適当に呼び止めて乗せてもらう事になった。
「一緒に乗りましょう」
「いや、たぶん乗れるけど狭くない?」
「大丈夫です。私は小柄ですから」
「そういう問題かなぁ」
以前、ラオさんやルウさんと二人で乗った時があったのでできなくはないけど、それでもやっぱり快適とは言えないんじゃないかなぁ。
いっその事、僕が浮遊台車を押してオクタビアさんを運ぶのもアリかなって思ったけれど、オクタビアさんには却下され、呼び止めた子には残念そうな顔をされたので二人で乗る事にした。
「では、駆け足程度の速さでお願いします」
「ハイッ!」
背後から元気な返事がすると同時に僕たちが乗った浮遊台車が動き始めた。
僕が背もたれのようなところにもたれていて、オクタビアさんは僕の足と足の間に座るようにピタッとくっついている。
そしてオクタビアさんの膝の上にはレモンちゃんがいた。流石に肩車した状態だと浮遊台車を押してくれている子の背丈的に視界の邪魔だろうから退いてもらった。
最初は僕が抱っこする感じで浮遊台車に乗ったんだけど、オクタビアさんがレモンちゃんを引き取って今の態勢になった。
抗議の髪の毛うねうねをしていたレモンちゃんだったけど、浮遊台車から降りる時は定位置に戻すから、と言ったのを覚えているのか、それ以上の事は特に何もしなかった。
しばらく全員無言で町の様子を見ていたんだけど、ふいに僕の後ろから声が聞こえた。
「ガ、ガイドはいりますカ?」
「ガイド?」
振り返ると、浮遊台車を押してくれている子が随分と緊張している様子だった。アンジェラよりも年上……この世界基準で成人するくらいの歳に見える女の子だ。
首にはごつい首輪が着けられているけど、ガリガリに痩せている感じはしないのでちゃんとご飯を食べているのだろう。
服は町の子たちに支給されている真っ白なワンピースを着ていて、服には汚れ一つない。汚れてもいいように複数枚用意しておいたのをちゃんと使ってくれている様だった。
僕と視線が合うと顔が真っ赤になったけれど「人を乗せる時はガイドをする時もあります!」とはっきりした口調で答えてくれた。人力車的な感じで町の外からやってきた人を乗せては町の説明をしているらしい。
「どうする?」
「えっと……それじゃあお願いしたいです」
「町の子たちの事を知りたいからそこら辺も含めて教えてくれると嬉しいな」
「分かりました! えっと、今いるのは北区です。ここは私たちが暮らしている建物がたくさん並んでいて、屋台は私たち向けの物が多いです。何かしら功績をあげた子は一人部屋も許されるらしいんですけど、結局寂しくて相部屋に戻る事が多いらしいです」
「皆でルームシェアって楽しそうだよね。ほら、学校の寮みたいな感じで」
「なるほど、学園物の寮生活をイメージすればいいんですね」
「それよりも快適かもしれないです。毎月、お小遣いが貰えますし、着る物は支給されて住む場所は無料、尚且つご飯はある程度食材が支給されますから」
「……エンジェリアですべてを真似をするのは難しいですね」
「食料に関してはそうだろうね。世界樹やドライアド、魔道具の影響とかいろんなものが影響を与えているのか作物ができるの早くってね。食べきれない量は町の子たちに卸してるし、転移門の利用料とかで各国から入ってくるお金が貯まりすぎるといけないだろうから足りない分の食料はそのお金で買ってもらってるんだ。お小遣いもその一環だね」
「なるほど。エンジェリアであれば、住む場所と服は真似できそうです。……他はどのような物があるんでしょうか?」
オクタビアさんが尋ねると後ろから元気な声が返ってくる。
「特にありません! 『居住区』と呼ばれるくらい集合住宅ばかりです。屋台も私たち向けなので、その……シ、シズトさまたちをご満足させられるようなところはないかもしれません」
「そんな事ないと思うよ? ……でも、集合住宅と屋台くらいしかないし、最近人気の屋台だけ教えてもらって次に行く?」
「そうしましょう」
「分かりました! では、最近人気の所を巡る感じで行きます!」
そう言って女の子が案内してくれた場所はどこも僕が食べた事がある場所だったので、念のため新しく出展された露店も案内してもらった。
町の子たちが食べている物を知りたいだろうオクタビアさんに気を使って、気になる物は一緒に食べる……つもりだったけど、流石に毒見役とかいないと問題かな。
そう思ってどうしたものかと悩んでいたらいつの間にかジュリウスがいて毒見をしてくれた。
この世界にもあるんだぁ、なんて事を思いながら担々麺のような物を二人で分けて食べた後、再び浮遊台車に乗った。
「残りのものは余裕があったら食べようか」
「はい!」
元気よく返事をしてくれたオクタビアさんには申し訳ないけれど、時間はあるけど胃袋の容量的に全て回る事は難しいだろうなぁ。
午前中は町の子たちの様子を見るために町中を歩き回る予定だったけど、流石に時間がかかりすぎるので魔道具『浮遊台車』を押している子を適当に呼び止めて乗せてもらう事になった。
「一緒に乗りましょう」
「いや、たぶん乗れるけど狭くない?」
「大丈夫です。私は小柄ですから」
「そういう問題かなぁ」
以前、ラオさんやルウさんと二人で乗った時があったのでできなくはないけど、それでもやっぱり快適とは言えないんじゃないかなぁ。
いっその事、僕が浮遊台車を押してオクタビアさんを運ぶのもアリかなって思ったけれど、オクタビアさんには却下され、呼び止めた子には残念そうな顔をされたので二人で乗る事にした。
「では、駆け足程度の速さでお願いします」
「ハイッ!」
背後から元気な返事がすると同時に僕たちが乗った浮遊台車が動き始めた。
僕が背もたれのようなところにもたれていて、オクタビアさんは僕の足と足の間に座るようにピタッとくっついている。
そしてオクタビアさんの膝の上にはレモンちゃんがいた。流石に肩車した状態だと浮遊台車を押してくれている子の背丈的に視界の邪魔だろうから退いてもらった。
最初は僕が抱っこする感じで浮遊台車に乗ったんだけど、オクタビアさんがレモンちゃんを引き取って今の態勢になった。
抗議の髪の毛うねうねをしていたレモンちゃんだったけど、浮遊台車から降りる時は定位置に戻すから、と言ったのを覚えているのか、それ以上の事は特に何もしなかった。
しばらく全員無言で町の様子を見ていたんだけど、ふいに僕の後ろから声が聞こえた。
「ガ、ガイドはいりますカ?」
「ガイド?」
振り返ると、浮遊台車を押してくれている子が随分と緊張している様子だった。アンジェラよりも年上……この世界基準で成人するくらいの歳に見える女の子だ。
首にはごつい首輪が着けられているけど、ガリガリに痩せている感じはしないのでちゃんとご飯を食べているのだろう。
服は町の子たちに支給されている真っ白なワンピースを着ていて、服には汚れ一つない。汚れてもいいように複数枚用意しておいたのをちゃんと使ってくれている様だった。
僕と視線が合うと顔が真っ赤になったけれど「人を乗せる時はガイドをする時もあります!」とはっきりした口調で答えてくれた。人力車的な感じで町の外からやってきた人を乗せては町の説明をしているらしい。
「どうする?」
「えっと……それじゃあお願いしたいです」
「町の子たちの事を知りたいからそこら辺も含めて教えてくれると嬉しいな」
「分かりました! えっと、今いるのは北区です。ここは私たちが暮らしている建物がたくさん並んでいて、屋台は私たち向けの物が多いです。何かしら功績をあげた子は一人部屋も許されるらしいんですけど、結局寂しくて相部屋に戻る事が多いらしいです」
「皆でルームシェアって楽しそうだよね。ほら、学校の寮みたいな感じで」
「なるほど、学園物の寮生活をイメージすればいいんですね」
「それよりも快適かもしれないです。毎月、お小遣いが貰えますし、着る物は支給されて住む場所は無料、尚且つご飯はある程度食材が支給されますから」
「……エンジェリアですべてを真似をするのは難しいですね」
「食料に関してはそうだろうね。世界樹やドライアド、魔道具の影響とかいろんなものが影響を与えているのか作物ができるの早くってね。食べきれない量は町の子たちに卸してるし、転移門の利用料とかで各国から入ってくるお金が貯まりすぎるといけないだろうから足りない分の食料はそのお金で買ってもらってるんだ。お小遣いもその一環だね」
「なるほど。エンジェリアであれば、住む場所と服は真似できそうです。……他はどのような物があるんでしょうか?」
オクタビアさんが尋ねると後ろから元気な声が返ってくる。
「特にありません! 『居住区』と呼ばれるくらい集合住宅ばかりです。屋台も私たち向けなので、その……シ、シズトさまたちをご満足させられるようなところはないかもしれません」
「そんな事ないと思うよ? ……でも、集合住宅と屋台くらいしかないし、最近人気の屋台だけ教えてもらって次に行く?」
「そうしましょう」
「分かりました! では、最近人気の所を巡る感じで行きます!」
そう言って女の子が案内してくれた場所はどこも僕が食べた事がある場所だったので、念のため新しく出展された露店も案内してもらった。
町の子たちが食べている物を知りたいだろうオクタビアさんに気を使って、気になる物は一緒に食べる……つもりだったけど、流石に毒見役とかいないと問題かな。
そう思ってどうしたものかと悩んでいたらいつの間にかジュリウスがいて毒見をしてくれた。
この世界にもあるんだぁ、なんて事を思いながら担々麺のような物を二人で分けて食べた後、再び浮遊台車に乗った。
「残りのものは余裕があったら食べようか」
「はい!」
元気よく返事をしてくれたオクタビアさんには申し訳ないけれど、時間はあるけど胃袋の容量的に全て回る事は難しいだろうなぁ。
33
あなたにおすすめの小説
異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜
九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます!
って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。
ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。
転移初日からゴブリンの群れが襲来する。
和也はどうやって生き残るのだろうか。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
俺と異世界とチャットアプリ
山田 武
ファンタジー
異世界召喚された主人公──朝政は与えられるチートとして異世界でのチャットアプリの使用許可を得た。
右も左も分からない異世界を、友人たち(異世界経験者)の助言を元に乗り越えていく。
頼れるモノはチートなスマホ(チャットアプリ限定)、そして友人から習った技術や知恵のみ。
レベルアップ不可、通常方法でのスキル習得・成長不可、異世界語翻訳スキル剥奪などなど……襲い掛かるはデメリットの数々(ほとんど無自覚)。
絶対不変な業を背負う少年が送る、それ故に異常な異世界ライフの始まりです。
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。
だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。
そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。
異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。
チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!?
“真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる