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心が泣いている。
「貴様とは婚約破棄だ!」
人の集まるパーティー会場でわざわざそう叫ぶのは私の婚約者であるダメンズ・ショーモナー侯爵家長男。私は決して彼が好きなわけではなかったし、彼もまたそうなのだろう。
彼はいつだって私とは違う女性を横に携えていた。今日もまた私をひとりにして知らぬ女をエスコートしていた変わらぬ場……なのに私は何故彼から婚約破棄をこんな大勢の場で言われなきゃならないのだろう?
「婚約破棄……ですか。婚約の解消なら受け付けます。ですが、この場で話すべきことではないと思いますよ?」
多くの視線に晒されるのは怖い。せめてボロを出さないようにと強く出る。伯爵家の令嬢として弱みを見せるものかと震える手を抑えて。しかし、そんな私の気持ちに反して私の婚約者は告げる。
「婚約の解消など生ぬるい!破棄だ!破棄!貴様みたいな陰湿な女には婚約を破棄されたというレッテルはお似合いだからな」
「どういう……意味でしょう?」
この貴族界の厳しい世界で婚約を破棄される女性は粗悪品として、ろくな縁談が来ないことは確実。だからこそなんとかせねばと焦る自分がいる。自分の未来は自分で守らねばと。
「ふん、知らぬふりをするか。ならば言ってやろう!貴様はここにいるリリー・リリリーリを虐めたことは既に知っている!だからそんな陰湿な貴様とは婚約破棄だと言ったんだ!」
「り……?お言葉ですが私はその人を知りません」
リが多すぎて名前がわからなかったが、そんなに特徴的な名前なら覚えていても不思議はない。だからこそ自信を持って言えた。
「酷いですわ!名前も知らずに私に……っあぁぁっ」
「リリリー!」
さっきと発音が違うような?そう思いながらこの人がそのリの多い人なのだろうと知る。やっぱり見たことはない。だが、婚約者は全く私を信じる様子はないし、周囲もひそひそとこちらを見て話すだけで助けようとする様子はなかった。
当然だ。私を庇ったところで誰も得はしないし、仲のいい人もいない。私が何をしたというんだろう?ただ、ただ好きな人と結婚できなくたって、家族と仲良くできなくたってちょっとした幸せと思える日があればそれだけでよかったのに。
「もう、死にたい……」
こんなの今より酷い未来しか思い浮かばない。思わず呟いた声は小さく誰にも聞こえなかっただろう。
だけど、そんな私に希望を与えるように助けに立ち上がった人がいた。
「彼女はそんなことしていないはずだが。その泣いてる女性の勘違いではないか?」
突如隣から聞こえた声にびっくりして流れかけた涙を引っ込めて横を見ればそこには誰もが知る有名な第二王子。何に置いても動じない立派な精神を持つと言われるその人だった。
「貴様とは婚約破棄だ!」
人の集まるパーティー会場でわざわざそう叫ぶのは私の婚約者であるダメンズ・ショーモナー侯爵家長男。私は決して彼が好きなわけではなかったし、彼もまたそうなのだろう。
彼はいつだって私とは違う女性を横に携えていた。今日もまた私をひとりにして知らぬ女をエスコートしていた変わらぬ場……なのに私は何故彼から婚約破棄をこんな大勢の場で言われなきゃならないのだろう?
「婚約破棄……ですか。婚約の解消なら受け付けます。ですが、この場で話すべきことではないと思いますよ?」
多くの視線に晒されるのは怖い。せめてボロを出さないようにと強く出る。伯爵家の令嬢として弱みを見せるものかと震える手を抑えて。しかし、そんな私の気持ちに反して私の婚約者は告げる。
「婚約の解消など生ぬるい!破棄だ!破棄!貴様みたいな陰湿な女には婚約を破棄されたというレッテルはお似合いだからな」
「どういう……意味でしょう?」
この貴族界の厳しい世界で婚約を破棄される女性は粗悪品として、ろくな縁談が来ないことは確実。だからこそなんとかせねばと焦る自分がいる。自分の未来は自分で守らねばと。
「ふん、知らぬふりをするか。ならば言ってやろう!貴様はここにいるリリー・リリリーリを虐めたことは既に知っている!だからそんな陰湿な貴様とは婚約破棄だと言ったんだ!」
「り……?お言葉ですが私はその人を知りません」
リが多すぎて名前がわからなかったが、そんなに特徴的な名前なら覚えていても不思議はない。だからこそ自信を持って言えた。
「酷いですわ!名前も知らずに私に……っあぁぁっ」
「リリリー!」
さっきと発音が違うような?そう思いながらこの人がそのリの多い人なのだろうと知る。やっぱり見たことはない。だが、婚約者は全く私を信じる様子はないし、周囲もひそひそとこちらを見て話すだけで助けようとする様子はなかった。
当然だ。私を庇ったところで誰も得はしないし、仲のいい人もいない。私が何をしたというんだろう?ただ、ただ好きな人と結婚できなくたって、家族と仲良くできなくたってちょっとした幸せと思える日があればそれだけでよかったのに。
「もう、死にたい……」
こんなの今より酷い未来しか思い浮かばない。思わず呟いた声は小さく誰にも聞こえなかっただろう。
だけど、そんな私に希望を与えるように助けに立ち上がった人がいた。
「彼女はそんなことしていないはずだが。その泣いてる女性の勘違いではないか?」
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