冤罪見せしめ婚約破棄現場から救ってくれたのはストーカー?の不動の王子様でした

荷居人(にいと)

文字の大きさ
1 / 13

1

しおりを挟む
心が泣いている。

「貴様とは婚約破棄だ!」

人の集まるパーティー会場でわざわざそう叫ぶのは私の婚約者であるダメンズ・ショーモナー侯爵家長男。私は決して彼が好きなわけではなかったし、彼もまたそうなのだろう。

彼はいつだって私とは違う女性を横に携えていた。今日もまた私をひとりにして知らぬ女をエスコートしていた変わらぬ場……なのに私は何故彼から婚約破棄をこんな大勢の場で言われなきゃならないのだろう?

「婚約破棄……ですか。婚約の解消なら受け付けます。ですが、この場で話すべきことではないと思いますよ?」

多くの視線に晒されるのは怖い。せめてボロを出さないようにと強く出る。伯爵家の令嬢として弱みを見せるものかと震える手を抑えて。しかし、そんな私の気持ちに反して私の婚約者は告げる。

「婚約の解消など生ぬるい!破棄だ!破棄!貴様みたいな陰湿な女には婚約を破棄されたというレッテルはお似合いだからな」

「どういう……意味でしょう?」

この貴族界の厳しい世界で婚約を破棄される女性は粗悪品として、ろくな縁談が来ないことは確実。だからこそなんとかせねばと焦る自分がいる。自分の未来は自分で守らねばと。

「ふん、知らぬふりをするか。ならば言ってやろう!貴様はここにいるリリー・リリリーリを虐めたことは既に知っている!だからそんな陰湿な貴様とは婚約破棄だと言ったんだ!」

「り……?お言葉ですが私はその人を知りません」

リが多すぎて名前がわからなかったが、そんなに特徴的な名前なら覚えていても不思議はない。だからこそ自信を持って言えた。

「酷いですわ!名前も知らずに私に……っあぁぁっ」

「リリリー!」

さっきと発音が違うような?そう思いながらこの人がそのリの多い人なのだろうと知る。やっぱり見たことはない。だが、婚約者は全く私を信じる様子はないし、周囲もひそひそとこちらを見て話すだけで助けようとする様子はなかった。

当然だ。私を庇ったところで誰も得はしないし、仲のいい人もいない。私が何をしたというんだろう?ただ、ただ好きな人と結婚できなくたって、家族と仲良くできなくたってちょっとした幸せと思える日があればそれだけでよかったのに。

「もう、死にたい……」

こんなの今より酷い未来しか思い浮かばない。思わず呟いた声は小さく誰にも聞こえなかっただろう。

だけど、そんな私に希望を与えるように助けに立ち上がった人がいた。

「彼女はそんなことしていないはずだが。その泣いてる女性の勘違いではないか?」

突如隣から聞こえた声にびっくりして流れかけた涙を引っ込めて横を見ればそこには誰もが知る有名な第二王子。何に置いても動じない立派な精神を持つと言われるその人だった。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

婚約破棄するのは私

大森蜜柑
恋愛
妹に婚約者を取られ、結婚式ひと月前に婚約破棄されたユーリア。 その日、屋敷に現れた父の命の恩人だという和の国の武士、藤堂清雅に初めて出会う。彼は3年前の別れ際父に言われた「娘を嫁にもらって欲しい」という言葉通りに迎えに来たのだが…… 架空の日本に似た島国を舞台にした戦国武将とユーリアの恋物語です。 登場人物は全て架空の物で、万が一偶然実在する武将名と被っても全然無関係です。 小説家になろうにも掲載してます。

婚約破棄されやけ酒飲んでると軽い男が声かけてきたので張り倒したら、何故か執着されました

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
パシーン キャロラインの張り手が男に飛んでいた。婚約破棄されて友人とやけ酒を飲んでいるところに現れたイケメンの男が「男を立てないから婚約破棄されたんじゃないの?」と言ってくれたから機嫌の悪かったキャロラインは男を張り倒していたのだ。 でも、何故かそれから男がキャロラインに執着しだしてもう大変。 上司や親にまで話をし出して外堀がどんどん埋められていき、最後は…… 執着されたヒロインが王族まで巻き込んでヒーローにがんじがらめにされてしまうお話しです

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

双子令嬢の幸せな婚約破棄

石田空
恋愛
クラウディアは双子の妹のクリスティナに当主の座と婚約者を奪われ、辺境の地に住まう貴族の元に嫁ぐこととなった……。 よくある姉妹格差の問題かと思いきや、クリスティナの結婚式のときにも仲睦まじく祝福の言葉を贈るクラウディア。 どうして双子の姉妹は、当主の座と婚約者を入れ替えてしまったのか。それぞれの婚約者の思惑は。 果たして世間の言うほど、ふたりは仲違いを起こしていたのだろうか。 双子令嬢の幸せな婚約破棄の顛末。 サイトより転載になります。

第五王子の婚約者は、悪役令嬢にはなれません

霜月零
恋愛
 最愛の婚約者に突然婚約破棄を言い渡された。  え、嘘だよね?  絶対誤解を解いて、フローレンスの愛を取り戻すよ! ※他サイトにも掲載中です

私は婚約破棄をされ好い人と巡り会いました。

SHIN
恋愛
忙しい年末年始に現れたのはめったに顔を遭わせない男でした。 来た内容はえっ、婚約破棄ですか? 別に良いですよ。貴方のことは好きではありませんでしたし。 では手続きをしましょう。 あら、お父様。私が欲しいと言う殿方が居ますの?欲しがられるなんて良いですわね。 この話は婚約破棄を快く受け入れた王女が隣国の男に愛される話。 隣国の方はなんと『悪役令嬢をもらい受けます』のあの方と関わりがある人物だったりじゃなかったりの方です。

それを愛とは呼びたくない

有栖紫苑
恋愛
リィアディにはちょっとした前世の記憶があった。 前世のようにはならない!! そう意気込んだものの、夜会で見覚えのある瞳とかち合ってしまい……。 怯えて逃げる公爵令嬢とそれを追いかけ回して愉しむ皇子のラブコメディ。 長期連載用で書いていたものを短くしたものなので、読みづらい部分があるかもしれません。 「小説家になろう」様にも重複投稿しております。

処理中です...