小説探偵

夕凪ヨウ

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Case165.罠②

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「ちょっと待て・・・冗談だろ?」

 屈強な男たちを見る龍と玲央は歯軋りをしていた。海里は首を傾げる。

「どうしたんですか?お2人とも。警察組織なら、何度も犯人を撃退してきたのでは?」
「そうだね。でも、彼らは少し種類が違うよ。」

 玲央の言葉に龍は同意した。

「こいつらは暴力団やヤクザなんて軽いものじゃない。こいつらは・・・軍人だ。」
「軍人・・・⁉︎」

 男たちは一斉に武器を構えた。同時に玲央が叫ぶ。

「全員戦闘準備!発砲許可!」

 一気に銃声が飛び交った。海里は小夜の腕を引き、銃弾が当たらない死角に隠れる。

「やっぱり、無理か・・・・。」

 銃弾が床に飛び散ると同時に、何人かの警察官が血を流して倒れていた。銃の威力も戦闘経験も警察を上回る彼らとの戦いは、非常に勝算が低いのだ。

「本気でやるしかないね、龍。」
「ああ・・・1ヶ月くらいは寝込む覚悟がいるな。」

 2人は残りの捜査一課とSPたちの先頭に立って飛び出した。乱闘が始まり、殴り合う音がする。龍は戦いながら部下に指示を出した。

「負傷者は一旦退いて警視庁と警察庁に連絡を取れ!それ以外は招待客の避難に努めろ!急げ!」

 玲央は1人の男を蹴り飛ばした。部屋の端まで飛んだが、男はすぐに起き上がり、首をさすっている。

「これが効かないとか・・・あり得ないでしょ。」
「泣き言言ってる場合かよ。」
 
 乱闘の裏で海里は1階に飛び降りれる場所を探していた。

「小夜さん。体の調子は?」
「悪くはないけど、まだ・・・。」
「分かりました。部屋には入れませんから、どこからか下に・・・・」
「江本さん、後ろ!」

 小夜に言われ、海里は振り返った。屈強な男が拳を振り下ろしている。海里は咄嗟にそれを避け、後ろに下がった。

「下がってください。小夜さん。」

(とは言ったものの・・・はっきり言って私じゃ勝てない。東堂さんや玲央さんの強さで倒れない相手が、私の攻撃で倒れるとはとても思えない。)

「Stay out of my way. I'm here for the woman behind you.(邪魔をするな。お前の後ろの女に用がある。)」
「・・・I do not know your circumstances, but I decline.(あなた方の事情は知りませんが、お断りします。)」
「What we are looking for is the key. To obtain it is our job and purpose this time.(我らが探しているのは鍵だ。それを手に入れることこそ、今回の我らの仕事であり目的だ。)」

 男の言葉に海里は首を傾げた。海里の背後で小夜の肩がびくりと震える。

「何のことですか?小夜さん。」
「・・・詳しくは・・言えない。でも、彼らに取られるわけにはいかないの。これ以上、好き勝手させられないから。」

 海里はよく分からなかったが、その鍵が小夜に取って重要な物であると理解した。男に向き直り、真っ直ぐに見据える。

「I will deal with you. I will not let her touch you.(あなたの相手は私がします。彼女に手は出させません。)」

 その言葉と同時に、男が跳躍した。海里は小夜を更に奥へ避難させ、男の拳が当たるか否かの時、男の脇腹に蹴りを叩き込んだ。バルコニーにいたためか、男はバランスを崩し、地面へ落ちた。

「なるほど。ギリギリまで待って、間合いに入った瞬間の攻撃か。中々上手いじゃないか。」

 感心したように茂が言った。海里は彼を睨む。

「西園寺茂・・・。」
「お前は敵味方の区別が口調に出るんだな、江本海里。」
「あなたもでしょう?」

 茂は不敵な笑みを浮かべた。彼は海里の前で立ち止まり、握手を求めるように左腕を出す。

「天宮小夜。“鍵”はお前が持っている・・・。それは確かな情報だ。こちらに渡してもらおうか。厄介なことに、鍵なしではあれは開かないのでな。」
「あれは私が預かった物よ。あなたたちには渡せない・・・!」
「・・・・ならば力づくだ。」

 その瞬間、茂の姿が消えた。2人が驚いて周りを見た時、海里の腹部に強い痛みが走った。気がつくと、茂の膝が海里の腹に叩き込まれている。

「ダメじゃないか。咄嗟の動きにも反応できないと、戦えないぞ?」

 小夜の元へ行こうと踏み出した茂を、海里は力づくで蹴った。

「往生際が悪いな。骨は折ってないが、相当な痛みだろう。しばらくじっとしているがいい。」

 海里は腹部を抑えながら答えた。

「これ以上・・・誰かが不幸になるのを見たくはありません。だから・・・・」
「守る、か?警察でもないくせに、青臭い正義が好きらしいな。」
「どうとでも言ってください。私は自分が思ったことを言ってるだけですから。」

 茂はやれやれと首を振った。海里は痛む腹部を押さえながら体制を立て直す。

「その勇気だけは評価しよう。」

 その言葉と同時に、壁を登ってきた男たちが現れた。海里は2、3人を跳ね除けたが、1人に足を蹴られ、バランスを崩した。

「江本、動くな!」

 割れた窓から龍と玲央が飛び出し、男たちを床に沈めた。

「あの人数を突破するとは・・・。やはり化け物だな。」
「君に言われるとは心外だね。」

 2人はかなり息が切れていた。軽いが怪我も負っており、所々出血している。

「やはりお前たちは危険だな。潰しておくに越したことはない。」

 茂の言葉と同時に、大勢の男たちが会場から飛び出した。2人は持てる限りの力を使って彼らを薙ぎ飛ばし、死なないと踏んで地面に突き落とした。

「江本君、動ける⁉︎動けるなら逃げて!ここは危険だ!他の招待客がいる場所へ行って!」
「はい・・!」

 海里は何とか起き上がり、小夜の腕を掴んで走り出した。男たちが追おうとすると茂はそれを制し、2人の後を追った。

「龍!」
「分かってる!」

 龍は玲央の肩を借りて3人の方へ跳んだ。茂はそれを視界の端で捉え、銃を取り出した。龍も取り出し、2人は同時に発砲した。銃弾がぶつかり合い、軽い火花が出る。

「しつこい男だな。」
「こっちの台詞だ。」

 2人は攻防を繰り返しながら走っていた。茂は龍と同等もしくはそれ以上の体術を有しており、体力を消耗している龍には楽な相手ではなかった。

「いい加減、退け。」

 茂は龍を蹴り飛ばし、加速した。壁にぶつかった龍はすぐに立ち上がって走ろうとしたが、数人の男たちに一気に押さえ込まれた。

「これでしばらくは動けないだろう。さて、とっとと済ますか。」

 圧倒的戦力差。海里と小夜に魔の手が迫る。
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