小説探偵

夕凪ヨウ

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Case189.追求⑤

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「本人の動向、ね。アテはあるの?私の実家に殴り込むわけじゃないでしょ?」
「当然だろ。暴力団じゃあるまいし。もっと簡単な方法だ。テロリストの一味でありながら、逮捕された人間に話を聞く。」
「・・・ああ、なるほどね。賢明な判断だわ。」
                    
         ※

「それでここに来たのか。」
「ああ。お前なら知ってるだろ?天宮和豊。」
「知らないと言えば嘘になるな。」

 和豊は息を吐き、腕を組んだ。

「西園寺茂・克幸親子は、研究で結果を出すためなら何でもする人間と言っておこうか。とにかく、不気味な親子だよ。」
「お前が言うか?」
「根本から違うのさ。私たちは金を中心とした利己主義で動くが、あの親子は違う。奴らは、己の目的のために科学者になった。そのためなら、立場以外の全てを捨てて来たんだ。裏社会に染まったところで、何も感じていないだろうな。」
「罪悪感は求めてない。初めからそんなものがないことは理解しているからな。お前も同じだろう?」
「ああ。罪悪感のある人間が、裏社会に染まれるわけがない。」

 “兄を想った早乙女佑月は滑稽だ”とでも言いたいのだろう、と龍は思った。取調べ中も終始このような態度だった和豊は、あまりに多すぎる余罪と反省のなさから、既に死刑が確定している。今更改める気などないことは分かりきっていた。

「質問を変えよう。お前や西園寺茂がいるテロ組織の目的は何だ?」
「・・・・警察組織の壊滅、と聞いているが。」

(聞いている?この男、テロリストの幹部じゃないのか?なぜこんな曖昧な表現になるんだ?ボスとやらの考えは、幹部に行き渡っていないとでも?)

「ボスは私や西園寺親子を信頼しているわけじゃない。力として利用しているに過ぎない存在だよ。お互いに、な。」
「・・・なぜ、こんな回りくどいやり方をした?直接何かするのはもうやめたのか?」
「回りくどくても、警察に傷を負わせるのは十分だと判断したんだ。例え無実でも、“警視総監の息子がテロリストと通じている”なんてこと、警察の信頼が落ちて当然だろう。」
「確かにそうだが、今回の一件は甘すぎる。明確な証拠なくして警察官を逮捕できるはずがない。こんな隙だらけの計画、すぐに崩れるぞ。」
「だろうな。だが、ボスにとっては構わないんだ。この計画は序章に過ぎない。奴らの目的は別にある。」

 和豊の言葉に、龍は眉を顰めた。

「お前、何か知っているのか?」
「いくら私たちでも拘置所内でやりとりなど無理だ。これは私の推測でしかない。これから起こりうることへの、な。」
「・・・・先見の明?」
「そうだ。かつて私が小夜にも教えた。」
「“も”?他に教えた人間がいるのか?」
「誰かは言わないでおこう。今話しても分からないだろうからな。」

 龍は一層不信感を募らせた。和豊は笑っているだけで何も言わない。

「親子二代で同じことをするとは面白い話だ。互いののことを否定していても、血は争えないな。」
「は?お前、何を言って・・・・」

 その時だった。ノックなしに1人の刑務官が部屋に飛び込んで来たのだ。龍は驚いて振り返る。すると、必死な顔をした刑務官は龍にこう告げた。

「至急、警視庁にお戻りください!襲撃されています!」
「どういうことだ?一体、誰が!」
「分かりません!とにかくお急ぎください!」

 龍は内心舌打ちをした。踵を返して部屋から出て行こうとすると、和豊が言った。

「最後に1つだけ教えておこう。」
「え?」
「お前が現在接触した人間の中には、根岸以外の裏切り者がいる。ただ警察ではない。」
「何だと・・・?」

 怪訝な顔をする龍に対し、和豊はなおも笑っていた。

「内側から食い破られるか、見破って食い殺すか・・・楽しみだよ。」

         ※

 警視庁では、突然の襲撃に大騒ぎになっていた。

「九重警視長の時と同じだ・・・。磯井君、龍に連絡は?」
「しました。すぐに向かうとのことです。」
「OK。じゃあそれまでは、彼らの相手をしようか。」

 玲央は警視庁の外にいる軍服を着た男たちを見た。以前、襲撃事件でいた者たちと同じだろう。

「でも、どうして急に?」
「・・・何となく、想像はつくけどね。」

(奴らの狙いは俺か小夜・・かな。拉致されたっておかしくない情報を持っているのは小夜だし、容疑者が逃走したって筋書きが成り立つから、俺の可能性もある。どちらにしても、危険だ。
でも・・・この違和感はなんだろう?事態の進みがあまりに早過ぎる。第一、なぜメディアに今回の事件がバレた?西園寺茂が通告したら正体が知られる危険があるのに・・・。)

 そんなことを考えながら、玲央はテロリストたちを薙ぎ倒した。見たところ幹部の姿はなく、構成員が駆り出されているようだった。

(やっぱり、妙だ。奴らの狙いは一体何だ・・・?)
                     
         ※

「直接来るとは恐れ入ったよ、テロリスト君。」

 武虎は、背後にいる構成員たちを見ながらそう言った。全員が拳銃を所持しており、足にはナイフが仕込まれている。

「三下・・・じゃないね。軍事訓練を受けたのかな?」

 テロリストの1人が発砲した。武虎はそれを避け、発砲した男の腕を捻る。彼は周囲の武器など目に入っていないかのように冷静に尋ねた。

「狙いは何だい?見たところ幹部がいないけれど、どういうことかな?」
「・・・・我々、には・・・別の目的がある。その目的のための手段として・・ここに来たまでだ。そのために、命は惜しまん。」

 その瞬間、武虎は妙な胸騒ぎを覚えた。以前、浩史がここを襲撃した際のことを思い返したのだ。

(待てよ・・・?あの時、浩史の狙いは何だった?警視庁を占拠したり、警察官を殺したりすることじゃない。あの日、あいつは死ぬ気だったんだ。でも最後に言い残したいことが、託したい物があった。そしてその結果、浩史は・・・)

「あ・・・⁉︎」

(そうだ。あの時、浩史が遺言を、2人の無罪を証明する証拠を託したのは、誰だった?玲央たちや、俺や、家族じゃなかった。警察でもない人間・・・江本君に託したじゃないか!構成員が死んだことと、その理由を奴らも知っているとすれば・・・!)

 武虎は全てを理解し、テロリストたちを蹴り飛ばした。すぐにスマートフォンを取り出し、龍に電話をかける。

「龍、警視庁には来るな!奴らの目的は江本君だ!」
『はあ⁉︎何でそう思うんだよ⁉︎』
「浩史の時とやり方が全く同じなんだよ!あいつは最期の話をするため、君たちの無実を証明するために江本君を拐った。もしあの日の出来事がテロリストから正式に下されたものなら、幹部の1人や2人やって来て、俺たちを本気で殺しに来たはずだ!でも、あの2人はそれをしなかった!つまりあれは、2人が考え出した策だ‼︎
そしてあの日の一部始終を知っている奴らが今、同じやり方で江本君を狙っている!でもそれは、話がしたいなんて甘いことじゃない。彼の命を奪うためだ!」

 父親の言葉に、龍は心の底から納得した。彼は急いで進路を変え、以前聞いた海里の家へ向かった。

「どうにかできる?」
『さあな。だが、今あいつを殺されるわけにはいかない・・・何とかする。兄貴にも連絡してくれ!』
「分かった!後は任せる!」
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