【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華

文字の大きさ
30 / 35

28】いっそのこと聞いてみたら?

しおりを挟む
28】いっそのこと聞いてみたら?

 「美味い……」

味気なく感じたが、美味かった寿司を食べた。最後に飲み込んだお茶は、パックを浸けすぎてしまったのか苦く感じたが、あの寿司には丁度良いくらいだったのは、もう数日前のこと。

(月日が経つのは早いと言うけど、本当に早いな)

「……」

カタッ……とキーボードを叩く指を止める。
口説かれてるんじゃない? と言われてから、変に意識してしまうと海野食堂へ行かなかった日から、何と一週間も経ってしまった。理由は同じく簡単だ。海野さんの弁当は食べたいが、やっぱりまだ何だか意識してしまう。

(海野さん、ごめん!)

海野さんが俺のことを待っている前提なのも、何だか上から目線みたいで申し訳ないが、念のため心の中で謝っておく。海野さんが悪いわけじゃ全然ないんだ。俺がただ、気まずいだけで。

(あー……今日も、もうすぐ終わっちゃうな)

そうこうしている今も、パソコン画面の隅に表示されている時間は、定時に近い。今日も残業なしで帰れるぞ半分、どうしよう半分。俺ってチョロイうえに、優柔不断だ。

「こーら。また険しい顔してるわよ」

「田中さん……! いや、田中お姉ちゃん!」

「その様子だと、何かあるわね」

「実は……」

こそっと、斯く斯く云々。

「はぁ~!? 私が口説かれてるっていったことが気になって、言った人と会ってない?」

大きいようで、気を使って小さな声で答える田中さん。流石だ。俺と散って、コンプラ関係がしっかりしている。俺は、しょげっ……とまた顔から元気がなくなるのが分かった。

「もう気になるなら、いっそのこと水野君から聞いてみたら? 俺のこと口説いてます? とかさ」

「え!? いや、ちょっ」

「もう一週間も様子が変よ? それに、そんな悶々スッキリしないと解決しないわよ」

「ぐぅぅっ……」

ぐうの音も出ない。正論過ぎる。

「それと」

「それと?」

「私が言う事じゃないけど、そんなに悩んだり意識してるってことは、田中君も意識してるし実は好きなんじゃないの? その人のこと」

「ぇ、え、ぇ゛っ……!?」

だって、俺も男ですよ!? と言葉です。ヒュッ、と喉が窄まる気がした。

******
更新しました。今回少し短くてすみません><
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

前世が飼い猫だったので、今世もちゃんと飼って下さい

夜鳥すぱり
BL
黒猫のニャリスは、騎士のラクロア(20)の家の飼い猫。とってもとっても、飼い主のラクロアのことが大好きで、いつも一緒に過ごしていました。ある寒い日、メイドが何か怪しげな液体をラクロアが飲むワインへ入れています。ニャリスは、ラクロアに飲まないように訴えるが…… ◆いつもハート、エール、しおりをありがとうございます。冒頭暗いのに耐えて読んでくれてありがとうございました。いつもながら感謝です。 ◆お友達の花々緒(https://x.com/cacaotic)さんが、表紙絵描いて下さりました。可愛いニャリスと、悩ましげなラクロア様。 ◆これもいつか続きを書きたいです、猫の日にちょっとだけ続きを書いたのだけど、また直して投稿します。

災厄の魔導士と呼ばれた男は、転生後静かに暮らしたいので失業勇者を紐にしている場合ではない!

椿谷あずる
BL
かつて“災厄の魔導士”と呼ばれ恐れられたゼルファス・クロードは、転生後、平穏に暮らすことだけを望んでいた。 ある日、夜の森で倒れている銀髪の勇者、リアン・アルディナを見つける。かつて自分にとどめを刺した相手だが、今は仲間から見限られ孤独だった。 平穏を乱されたくないゼルファスだったが、森に現れた魔物の襲撃により、仕方なく勇者を連れ帰ることに。 天然でのんびりした勇者と、達観し皮肉屋の魔導士。 「……いや、回復したら帰れよ」「えーっ」 平穏には程遠い、なんかゆるっとした日常のおはなし。

初恋ミントラヴァーズ

卯藤ローレン
BL
私立の中高一貫校に通う八坂シオンは、乗り物酔いの激しい体質だ。 飛行機もバスも船も人力車もダメ、時々通学で使う電車でも酔う。 ある朝、学校の最寄り駅でしゃがみこんでいた彼は金髪の男子生徒に助けられる。 眼鏡をぶん投げていたため気がつかなかったし何なら存在自体も知らなかったのだが、それは学校一モテる男子、上森藍央だった(らしい)。 知り合いになれば不思議なもので、それまで面識がなかったことが嘘のように急速に距離を縮めるふたり。 藍央の優しいところに惹かれるシオンだけれど、優しいからこそその本心が掴みきれなくて。 でも想いは勝手に加速して……。 彩り豊かな学校生活と夏休みのイベントを通して、恋心は芽生え、弾んで、時にじれる。 果たしてふたりは、恋人になれるのか――? /金髪顔整い×黒髪元気時々病弱/ じれたり悩んだりもするけれど、王道満載のウキウキハッピハッピハッピーBLです。 集まると『動物園』と称されるハイテンションな友人たちも登場して、基本騒がしい。 ◆毎日2回更新。11時と20時◆

ギャルゲー主人公に狙われてます

一寸光陰
BL
前世の記憶がある秋人は、ここが前世に遊んでいたギャルゲームの世界だと気づく。 自分の役割は主人公の親友ポジ ゲームファンの自分には特等席だと大喜びするが、、、

ちっちゃな婚約者に婚約破棄されたので気が触れた振りをして近衛騎士に告白してみた

BL
第3王子の俺(5歳)を振ったのは同じく5歳の隣国のお姫様。 「だって、お義兄様の方がずっと素敵なんですもの!」 俺は彼女を応援しつつ、ここぞとばかりに片思いの相手、近衛騎士のナハトに告白するのだった……。

悪役Ωは高嶺に咲く

菫城 珪
BL
溺愛α×悪役Ωの創作BL短編です。1話読切。 ※8/10 本編の後に弟ルネとアルフォンソの攻防の話を追加しました。

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

処理中です...