転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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第一章 幼少期の王宮での暮らし

第六話 竜騎兵団長からの招待状(上)

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 王宮内で紫竜ルーシェが養育されることになったため、定期的に竜騎兵がその手伝いに来ることになった。そしてそれには、学舎の竜の生態に詳しい学者リヨンネもたびたび同行するようになった。というかリヨンネが同行をねじこんだのであった。彼は紫竜の賢さに異常を感じていたためである。
 
 そして、王宮にやって来たリヨンネは、その光景を見て、驚きの余り口を開けていた。

 アルバートが家庭教師の教えを受けるため、長机につき、本を広げているその横に、ちょこんと座っていたのが紫竜のルーシェだった。紫竜はまだ身体が小さく、机に手が届かないため、尻の下にクッションを何個も重ねられていて、それで手がテーブルにようやく届く様子だった。ルーシェはふんふんと言いながら、アルバートと一緒に本を読んでいる。傍から見るとそれはとても可愛らしい光景で、事実、王宮の侍従や女官達の目はどこか和やかだった。
 だが、リヨンネは信じられない思いだった。

 紫竜が、アルバートと一緒に本を読んでいるのだ!!

 リヨンネは眩暈すら覚えた。

 まだ生まれて一月が過ぎたばかりの生まれたてホヤホヤの竜である。
 いくら竜の中では、賢いと言われている紫竜であっても、これはない。
 これはない。

 だが、アルバートの横で大人しくその小さな竜は椅子に座り、大きな黒い目を本に向けていた。
 
 先日、紫竜のルーシェが孵化した孵化交流会で、同じく孵化した子供の竜達は、今はドタバタと竜舎で走り回り、ギャーギャーと騒ぎまくって暴れまくっている。これからビシバシと鍛えられ、立派な騎竜に育て上げられる。とても、ルーシェが同じ時期に生まれた竜とは思えない。

 授業が終わった後、アルバートの家庭教師に声をかけると、その家庭教師の老人は笑いながら教えてくれた。

「いやはや、あの紫竜は賢いですね。アルバート殿下が紫竜のための文字の絵本を持って来て欲しいと頼まれてから、たったの一週間で文字をマスターし、今ではアルバート殿下とご一緒に御本も読まれているようです」

 アルバートの膝の上が、あの紫竜の定位置なようで、アルバートがソファに座ると、すぐに紫竜も小さな身体を膝にのせる。そしてアルバートが本を読むと、紫竜も本に目を走らせる。
 とても大人しく、アルバートが本を読み上げる声を聞いている。
 
「意味が分からずに、ただ聞いているふりをしているだけということではなく、きちんと内容を理解しているのですか」

 くどいようだが聞いてみると、家庭教師の老人は顎に生えている白い髭に手をやって、答えた。

「言葉は理解できているのですが、今の紫竜は話すことは出来ません。自分が疑問に思っていることをどう相手に伝えればいいのか、非常に困っているようですが、アルバート殿下が紫竜の手に筆をくくりつけて」

 筆をくくりつけて…………

「ええ、絵筆です。妹姫のマリアンヌ殿下の細い絵筆を紐で、竜の手にくくりつけています。授業が終わった後に、あの紫竜はアルバート殿下と絵筆による筆記で、授業の分からなかった点を伝えているようですね」

「文字を……あの紫竜が書くことが出来るというのですか」

「はい。今もそうなさろうとしていますよ」

 家庭教師の老人の言葉に、リヨンネがハッと顔を上げると、実際今、テーブルの上に置かれた紙に、紫竜が手を伸ばし、その手にくくりつけられた絵筆で文字を書いていた。
 手に絵筆をくくりつけるという乱暴な措置のため、せいぜい、単語の一つ二つ、書くのが限界のようであった。書かれたその単語の意味が分からないというのだろう。
 アルバートはそれを察してすぐに説明を始める。

「紫竜のために、殿下は授業をきちんと聞こうという気持ちが強くなり、以前にも増してよく私の授業を聞いて下さるようになりました。それに、紫竜の質問に答えることも良い復習になっております」

 最初は、紫竜を授業の場に同席させることには、渋い顔をしていた家庭教師であったが、今では紫竜が同席することで、殿下が非常に熱心に授業に取り組むようになったことを歓迎している。

(生まれてまだ一月ほどだぞ)

 そう、たった一月で、あの紫竜は人語を解し、文字を理解し、文字を書こうとしている。
 王子と共に、授業を大人しく聞く。
 異常だ。
 
 “魔術の王”と呼ばれる紫竜は、滅多に生まれぬ竜だ。
 知的で、膨大な魔力を持ち、やすやすと上位魔法を操る竜。
 賢いと言われる紫竜であるが、今のこの状態を見るに、ルーシェが成長した暁には恐ろしいことになろう。

 ただ、一つだけ安心できるのが、不気味なほど賢く成長しつつあるルーシェであるが、主人のアルバートには絶対服従の様子だった。
 アルバートのそばにぴったりと張り付き、彼の行く先には必ずついていく。
 アルバートの手ずからに食べ物を食べ、寝台で共に眠りにつく。
 二人はまるで兄弟のように仲が良かった。

 紫竜は、アルバートの言葉には絶対に逆らわない。

 それだけがこの不安の救いのように思えた。





 紫竜ルーシェの養育のために送り込まれてくる竜騎兵達は、あまりの紫竜の賢さに愕然としていた。
 自分の知る子竜達とは大違いである。
 餌を求めてギャーギャーうるさく泣き喚く子竜。ドタバタといつも走り回り、竜同士で喧嘩ばかりしている。
 知恵もまだなく、言うことを聞かせることも一苦労であるのに、アルバートの紫竜は聞き分けもよく、お行儀もよくアルバートの横で授業を聞いていたりする。

 授業を大人しく聞くということが、まずあり得ない。

「本当にアレは、竜の子供なのですか」

 王宮に派遣される竜騎兵達の皆が、そう口にする。
 それに、リヨンネは元より、アルバート付きの護衛騎士バンナムも頷く。

「そうです」

 そして派遣される竜騎兵は、自分達が養育のアドバイスをすることになっていたが、実際来てみると、アドバイスすることもなく(彼らの頭の中では、子竜が暴れまくって大変な状況であるかと思っていた)、侍従や女官らにお茶を供されて、暇を持て余して帰るばかりだった。
 そうした紫竜ルーシェの、どうも他の子竜達とは違い過ぎる成長ぶりを耳にした竜騎兵団の騎兵団長が、ルーシェに会いたいと言い出すのも当然のことであった。

 その日もいつものように、竜騎兵の一人が、紫竜の養育の手伝いのために王宮にやって来た。やって来た竜騎兵の若者は、懐から一通の手紙を差し出した。

「アルバート殿下に、ウラノス騎兵団長からの面会の申し出であります」
 
 その手紙を、アルバートは驚いて受け取っていた。





 竜騎兵団の本拠地にて、アルバート殿下とお会いしたいという内容だった。
 紫竜ルーシェも同行されたしとある。

 アルバートは、護衛騎士のバンナムに尋ねた。

「紫竜に会いたいのだよね」

「そうでしょう」

 バンナムは頷いた。
 やって来る竜騎兵達のいずれもが、紫竜ルーシェの大人しさと賢さ、聞き分けの良さに仰天して帰って行く。
 それを聞けば、上官であるウラノス騎兵団長が、紫竜ルーシェに会って確かめてみたいと思うのも当然のことだった。

「殿下は、紫竜ルーシェのマスターですから、ルーシェに会いたいというのなら、殿下の許可が必要です」

「……そうなの?」

「そうです。それだけ、主とは竜にとって大事なものです」

 誰よりも、何よりも親しい友であり、時に友以上の無二の存在。
 バンナムの弟は竜騎兵であり、弟もまた自分の竜をこよなく愛していた。
 人化した竜を愛し、竜を恋人にしている。
 そうなってしまえば、誰も二人の間に割って入ることは許されない。
 世界は二人のために存在しているかのような、そんな様子に、バンナムは呆れつつも、少しばかり羨ましいとも思う。
 そうまで誰かを想う、強い気持ちを持てることが羨ましい。
 羨ましくもあるが、それはずっと永遠に続く熱病のようにも思える。
 相手を求め、求め尽くして、いく。
 時に病のように、傍から見るとおかしいと思うくらいの熱量で求めるのだ。
 
 弟とその竜のことを思い、考えに耽るバンナムに、アルバートは怪訝そうに声をかけた。

「大丈夫か、バンナム」

「……失礼致しました。ですので、ルーシェがウラノス騎兵団長に会うならば、当然、殿下は同席なさることになります」

「分かった。騎兵団長にお会いしよう」

 アルバートは、早速、ウラノス騎兵団長への返信をしたため、竜騎兵の若者に持たせたのだった。
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