転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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第五章 懐かしい友との再会

第六話 竜騎兵団長への報告

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 再び王都からリヨンネが竜騎兵団の拠点へやって来た。その傍らには、七年が経ち十七歳になったキースを伴っている。
 先日王都へ戻ってから、こちらに来るまでの時間は一週間も経っていない。
 リヨンネがこの竜騎兵団の拠点までやって来るには、本来、最寄りの村へ竜騎兵と竜が迎えに行く必要があった。
 しかし、このリヨンネは、しばらく前から野生竜の青竜エルハルトを手なづけていて、勝手に青竜エルハルトの背に、供のキースと二人跨ってやって来てしまうのだ。
 青竜エルハルトの往来については、特別にウラノス騎兵団長の許可が与えられている。だから今も青竜エルハルトはリヨンネとキースの二人を運び、堂々と竜騎兵団の離着陸場に降り立つ。
 二人は風で肌が切れぬようにしっかりと帽子や手袋、ゴーグルをはめ、持ち込んだ荷物も厳重に梱包していた(梱包を厳重にしなければ、風でよく吹っ飛んでしまうのだ)。
 リヨンネが感謝するように青竜にの身体に手をやり、「あとで酒を持っていく」と言うと、当然だといった様子でうなずき、青竜は羽ばたいて山に向かって飛んで行った。

 リヨンネの到着を知った紫竜が建物の窓から飛び出してきて、パタパタパタと飛んでリヨンネの胸に向かって飛び込んでくる。
 ドンと胸にぶつかる紫竜。なんとか倒れないで踏ん張ったリヨンネは笑い声を上げていた。

「ルー、久しぶりだね」

「ピルピルピルピルルルルルルル(先生も元気そうで何よりだよ!!)」

 昼食時だったのだろう。
 ルーシェの口には、スープが少しついている。

 それを拭ってやると、小さな竜はパタパタとリヨンネの周囲を飛んでいた。

「ピュルピルピルピル?(今度はいつまでここにいられるの?)」

 そう尋ねてくるルーシェに、なんとなしにそんなことを聞かれているのかなと思ったリヨンネは答えていた。

「一週間くらいだな。ルー、また後でね。私はウラノス騎兵団長に呼ばれているんだ。君達にはお土産もあるから、また後でゆっくりと話そう」

 窓からアルバート王子が顔を覗かせて、紫竜の名を呼ぶ。
 紫竜はピンと尻尾を立たせると、慌てふためいて自分の主の元へと飛んでいった。
 まさしくまっしぐらといった様子だった。

 その様子を、リヨンネがどこか羨ましそうな眼差しで見つめているのを、キースは黙って眺めていた。

 リヨンネはキースに対して、「青竜寮のいつもの部屋で待っているように」と指示をする。
 自分一人でウラノス騎兵団長と会うようだ。
 
「分かりました」

 本当は一緒にいて、リヨンネを手助けしたかったが、ここしばらくの間、リヨンネがキースを伴ってあの騎兵団長の部屋に行くことはなかった。
 二人の間で内密の話があるのだろうとキースは思っている。

 青竜の元から引き取られたキースは、十七歳になり、最初の頃のあのガリガリとした痩せ細った様子はすっかりと影を潜めていた。
 肉付きもよくなってはいるが、幼少期の食糧事情がその後の成長に影響したのは明らかで、同い年のアルバート王子が体格も良く、すっかり鍛えられた肢体を持ち、男らしく育っているのと対照的に、キースは小柄で華奢だった。
 リヨンネもひょろりと細い男であったが、キースは輪を掛けて細いのである。どんなに食べても太ることが出来なかった。
 リヨンネやレネから餌付けされるように、十歳の頃からキースは肉を勧められ、時に甘いお菓子も山のように差し出されたが「もう食べられません」と断るしかなかったのである。
 悲しいかな、胃袋が小さいのだ。

 薄汚れた孤児の子供は七年かけて細身の少年となっている。
 青竜エルハルトが運んでくれた荷物の山を、「何回かに分けて持っていくしかないか」と思って眺めていると、その様子に気が付いた見習いの竜騎兵の少年達が四、五人近づいてきた。
 彼らは「お手伝いします」「任せて下さい」と言って、重そうな荷物をヒョイヒョイと手に持って運んで行く。
 自分よりも年下であろう見習い竜騎兵達なのに、その腕にはすでに筋肉がしっかりとついており、重い荷物もまったく苦でもないような様子だった。

 彼らはキースに聞かずとも、その荷物を青竜寮の二階にあるレネ魔術師の隣の部屋に入れてくれる。
 もうその部屋は、リヨンネがこの竜騎兵団に来る度に厄介になる常宿のようになっていた。

「どうもありがとうございます。ちょっと待ってください」

 荷物を部屋の中まで入れ、それから整列して待つ見習い竜騎兵の少年達の手に、キースは事前に準備していた小さなお菓子の包みを一つずつ手渡していった。

「助かりました。ありがとうございました」

 王都から遠く離れ、また麓の村へもそうそう行くことの出来ない見習い達は、滅多に甘い物を口にすることは出来ない。リヨンネはそのことを知っていたため、この竜騎兵団に来るたびに、お菓子を綺麗な薄紙で包み、リボンで留めたモノを幾つもキースに作らせていた。その小さな菓子の包みを手伝ってくれた竜騎兵や見習い達に渡すと、彼らが率先してリヨンネ達を手伝うようになることを知っていたからだ。
 王都の大きな商会の末息子というだけあって、リヨンネは如才ないのである。
 見習い達は皆目を輝かせて「ありがとうございます」と綺麗に一礼して部屋から去っていく。階段を下りていく時も、こづきあったりして、彼らは仲が良いようだ。
 リヨンネの部屋は、いつでもリヨンネ達が戻って来ても良いように整えられている。
 そしてキースがリヨンネのそばに仕えるようになってから、キースの寝台もリヨンネの部屋に置かれるようになっていた。

(リヨンネ先生が戻ってくる前に、片付けておきたいな)

 そう思ったキースは、荷を慣れた手つきで解き始めていた。



 そして、ウラノス騎兵団長の団長室へ向かったリヨンネである。
 彼は勝手知った様子で、スタスタと拠点内を歩き、建物の階段を上り、目当ての部屋である建物最上階の騎兵団長の部屋までまでやって来ると、ノックするまでもなく、すぐさま部屋付きの見習いの少年が、騎兵団長の部屋の扉を開けてくれる。
 役職のある竜騎兵達に対しては、見習い達が交代でお世話するシステムになっているらしい。

「ああ、ここはいい」

 見習い竜騎兵がお茶を淹れた後、そう言った騎兵団長の声に見習いの少年は一礼して部屋を出ていく。
 それで部屋の中には、ウラノス騎兵団長、エイベル副騎兵団長、リヨンネの三人が残された。
 テーブルを挟んで座っている。

「お忙しい中、たびたび足を運んでもらうことになり、申し訳ない」

 ウラノス騎兵団長の言葉に、リヨンネは「いえいえ、たいしたことはありません」と答える。
 そして懐から折りたたんだ書類を取り出した。

 この王国を含めた周辺国の地図だった。

「バーズワース王国が落ちたという話です」

「随分と早いですね」

 エイベル副騎兵団長が、柳眉を上げた。
 三十半ば近いこの副騎兵団長は、相変わらず美姫のような美貌を持っていた。
 リヨンネが取り出した地図は、この王国を中心に描かれている。
 そして王国の斜め左上の二つ目、いわば西方寄りの国々の一つがバーズワース王国であった。そのバーズワース王国の隣にはマリアンヌ王女の嫁いだザナルカンド王国がある。
 いずれも王国の四分の一にも満たない小国ばかりである。

 十七年前、この大陸の遥か西方の国で「大陸を統一する」と気勢を上げた国があった。
 その国は、周辺の国々を瞬く間に併合し、なおも貪欲に、湖に面した国々へも攻め込み、西方地域は戦乱の時代となった。
 そして幾つかの国々を破った後は、「しばらく内政に専念する」と宣言して、言葉通り征服した国々の内政にいそしんだようだ。

 征服した国々をまとめるのに時間が掛かっていたようで、それからしばらくの間は他国へ攻め入ることもなかった。この大陸の三分の一ほどの領土で満足してくれればよいのにと、周辺の国々の者達がそう思っていたところで、やはりそうはいかなかったようだ。
 バーズワース王国を落としたという話は、まだその国が「大陸を統一する」野望を捨てていないことに他ならない。
 その野望を抱いている国は「サトー王国」といった。
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