転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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第六章 黒竜、王都へ行く

第五話 愚王子にまつわる話(下)

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「第三王子殿下と仰られると、ハウル王子殿下ですか」

 ハウル王子は、この王国の王都よりさらに南に位置するエレバンという地域を治めるルパート伯爵家に婿入りしていた。

「そうなんですか、ハウル兄上が……」

 第三王子が再び王城に戻っていることは、アルバート王子も初耳であったようで、王子は考え込む様子を見せている。

 第三王子ハウルは、現在、二十三歳。
 彼は十八歳で、ルパート伯爵家の長女イザドラの元へ婿入りした。
 ハウルは少年であった時分から、女癖男癖が大層悪く、乱痴気騒動を常に起こしていた。
 最南のルパート伯爵家に婿入りさせられたのも、ルパート伯爵の祖父イシターが厳格な元騎士であり、その女癖男癖の激しさをイシターなら抑え込めるだろうと、願うような気持ちで王家が押し付けたようなものだった。だが、イシターが元気なうちは、彼が目を光らせて、ハウル王子を押さえ付けていられたが、今年の春、イシターは意識を失って倒れた。
 その後、イシターは幸いにも意識を取り戻したが、右半身が不自由になってしまっている。そしてそれ以来、誰も止められなくなったハウル王子は、領地内の若い娘や少年達に手を出しまくり、ルパート伯爵は元より領民達も「もうハウル王子殿下は我々の手に負えません」と白旗を上げ、ハウル王子を王城へ送り届けたのだった。
 ハウル王子の手にはしっかりと、その妻イザドラからの離縁状が握られていた。
 王家は慌てて使者をエレバンに差し向け、なんとかイザドラに離縁を思いとどまるように説得しているらしい。

(…………もっと前にハウル王子を王城に送り届けてくれていたら)

 内心、思ってはいけないことであるが、アルバート王子の護衛騎士バンナムはそう思う。
 
(そうしたら、王家はハウル王子をザナルカンド王国へ婿入りさせていただろう)

 アルバート王子の妹姫マリアンヌが、ザナルカンド王国へ輿入れしなくて済んだだろう。
 侯爵家令息のレイモンドと婚約破棄をすることもなく、愛し合っていた二人は引き裂かれることもなく、収まるところに皆、収まっていたはずだ。

(だが、ハウル王子は愚王子だ。アレは他国へ婿入りさせることはこの王国の恥になると重臣たちから反対される可能性があったか)

 結局、アルバート王子かマリアンヌ姫をという二人を推す声は消せなかったかもしれない。

(今更、思っても仕方のないことだ)

 そう内心、思いを断ち切るようにしていたバンナムであったが、ウラノス騎兵団長は淡々と話を続けた。

「ハウル王子殿下は王城にお戻りになられて以来、連日、綺麗な若い娘や少年達に手を出している。第二妃ボーナ様はハウル王子殿下を溺愛なさっていることは聞いたことがあるだろう。陛下や王子殿下方、重臣たちが諫めても『殿下のご寵愛を受けることを誇りに思うことです』と話にならん。ボーナ様のご実家の侯爵家も後ろについているものだから、タチが悪い。綺麗な娘達を身内に持つ貴族達は、王城にその者を連れて来ないようになり、すっかりむさい、爺婆王宮になっているとバルトロメオ辺境伯は話している」

 その言葉を聞いて、ようやく、リヨンネは理解した。
 バルトロメオ辺境伯の城で開かれた内覧会で、バルトロメオ辺境伯がウラノス騎兵団長に言った言葉。

『もう、王城へは連れていかない方がいいぞ』

 あれはエイベル副騎兵団長のことを心配して漏らした言葉なのだ。
 美しすぎる副騎兵団長を王城に連れていけば、ハウル王子は必ず手を出そうとするはずだ。

「それで、本題だ。王都にはどうしても行きたいとエイベルは言っている。何度も止めたのだが、言うことを聞かん」

(貴方のお誕生日の贈り物を買うために、どうしても王都に行きたいんでしょうね……)

 なんとなしに、リヨンネもアルバート王子も、バンナムも生温かな視線でウラノス騎兵団長を眺めていた。

(お幸せそうで何よりです)

 ウラノス騎兵団長は頭を下げた。

「王都に行くのであって、王城に行くのではない。そのことは分かっている。だが、心配なのだ。エイベルに気を付けてやってくれ」

「分かりました、お任せ下さい」

 アルバート王子もバンナムも、リヨンネもしっかりとした返事をした。

(そう、王都に行くのであって王城に行くわけじゃない。王都といっても広いんだ。ハウル王子が王城に来ているといってもまさか広い王都の中でかち合うなんてことはない)

 その時の三人は、ハウル王子になんぞ、会うことなどないだろうと高をくくっていたのであった。
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