転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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第六章 黒竜、王都へ行く

第十一話 呪いを和らげる

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 客室の一つに案内された青竜エルハルトは、寝台の上にそっとシェーラを横たえた。
 彼女のそばに座り、その額に手をやる。

「大丈夫か……」

「大丈夫よ。こんなの寝ていれば治るわ」

 そうは言っているが、顔色は悪い。
 そして瞳の色も、魔法で青い瞳を維持することが辛いのか、いつの間にか金色に変わっていた。
 ベットサイドそばのランプを点けているが、薄暗い部屋の中、彼女の金色の瞳がキラキラと輝いて美しく見えた。

「辛いなら、人化を解けばいい」

「この屋敷を壊すわ」

「ルーシェのように、小さくはなれないのか。お前は器用に魔法を使うところがある」

「…………今の状態で、更に魔法を使うのは辛いわ。人化を解いた瞬間に、小さくなる魔法だなんて」

 そこに、扉をノックする音が響いた。
 部屋の中へ入って来たのは、幼い子供姿のルーシェを腕に抱いたアルバート王子と、リヨンネであった(バンナムは部屋の扉の前で立っている)。エイベル副騎兵団長とキースは、この屋敷のご婦人方の相手をしてもらうため、応接室に残している。

「大丈夫? シェーラ」

 ルーシェは王子の腕から下りて、走り、シェーラが横になる寝台のそばへ近づいた。
 今、彼はフードを下ろし、可愛らしいその面を心配そうに曇らせていた。

「俺に何か出来ることはない?」

「ありがとう、ルーシェ。貴方はいい子ね」

 リヨンネが水の入った水差しとグラスを運んで来ていた。

「召使達には、しばらく眠らせて欲しいと伝えて、この部屋には近寄らせないようにしています。安心して横になって下さい」

 リヨンネはグラスに水を注ぎ、シェーラに差し出した。

「大丈夫ですか?」

「……寝ていれば治るから大丈夫」

 そう言って、咳き込むシェーラを見て、アルバート王子は問いかけた。

「先ほど、王家は“黄金竜の加護”を持ち、それに触れた反動でこうなっていると聞きました」

「ああ、そうだ」

 青竜エルハルトは頷き、そのことを初めて聞いたリヨンネは驚いていた。

「“黄金竜の加護”が、まだ生きているのですか……」

 竜の生態学者であるリヨンネは、この王国の、王家に伝わる伝承の類にも詳しかった。
 初代の王が、女王竜と結ばれ、そしてそこで“黄金竜の加護”が王家に下された。その話を聞いたことがあったが、具体的な加護の内容は知られていない。王家の者に金髪の髪色が現れやすいのもその影響という話だが、必ず王家の者が金髪になっているとは限らない(現にアルバート王子は黒髪である)。大体、初代の王と女王竜が結ばれたのも二千年以上前の出来事である。加護が目に見えるハッキリしたものでないこともあり、多くの者達が、王族が加護を受けていること自体、忘れてしまっている。
 先日、リヨンネはこの王国自体が黄金竜のテリトリーとされている話を聞いた。その後の話であったから、考えさせられるものがある。
 初代の王と結ばれた竜の女王は、そこまで、この国の王を深く愛したということなのか。
 子々孫々に渡って、その子らに深く深く、“黄金竜の加護”が生き続けるように。

(だが、その子孫が糞みたいな野郎でも“黄金竜の加護”を受けている)

 リヨンネは、第三王子ハウルのことを思う。
 あんな色狂いの馬鹿王子でも、“黄金竜の加護”を受けていて、黒竜シェーラの呪いを跳ね返すというのか。そのせいで、黒竜はこんなに苦しんでいる。

 シェーラは差し出された水の入ったグラスを両手で持って、ちびちびとその水を飲み込んでいた。
 その彼女のそばにアルバート王子は座り、おもむろに彼女に向かって言った。

「私も王家の者です。私にも“黄金竜の加護”が下されているのでしょう。もし貴方が王家の加護のせいで苦しんでいるのなら、同じ加護を受けている私が、貴方の苦しみを和らげることが出来るのではないでしょうか」

「……………」

 シェーラはじっとアルバート王子の顔を凝視する。それは青竜エルハルトも同じだった。

「どうだろう。やってみる価値はあるのではないか」

 青竜エルハルトは頷き、シェーラの手からグラスを取り上げると、その手をアルバート王子が握るように促した。

「どうか、シェーラの手に触れて、彼女の身が健やかになるように願ってくれ。今はおそらく、跳ね返されてきた呪いを、“黄金竜の加護”が、彼女に押し付けるようにしているはずだ」

(“黄金竜の加護”ってこわっ。そんなことが出来るの!!)

 エルハルトは、跳ね返された呪いを更に第三王子ハウルが持つ“黄金竜の加護”が押さえつけており、そのせいでシェーラは呪いが解けず苦しんでいるのだと言う。

「お前が王家の“黄金竜の加護”持ちなら、することができるかも知れない」


 王子はシェーラの手を両手で握り、祈るように目を伏せる。
 そして長い間、彼は動かずにいた。

 部屋の中の者達は皆、固唾を飲んで様子を見守る。



 やがてシェーラが、ふーと息をついた。
 彼女は言った。金色の瞳がカッと大きく開く。

「スッキリしたわ!!!!」

(スッキリしたって何だよ……)

 リヨンネはちょっと呆れてシェーラを見る。彼女は寝台の上で、ぶんぶんと肩を回していた。

「体も軽くなったわ。あああ、さっきまでこう、胸がすごくモヤモヤしてムカムカして辛かったの。おかげで今はスッキリ爽快だわ!!」

「上手くいったみたいですね」

 アルバート王子はそう言うと、そばにルーシェがやって来て「すごい、王子。やっぱり俺の王子は凄いんだ!!」と嬉しそうに声を上げた。だから王子はルーシェを抱き上げ、その頬に口づけを落とした。
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