113 / 711
第六章 黒竜、王都へ行く
第十九話 小さな波紋
しおりを挟む
時間はかかったが、パフェット革細工店から友親の鞄が竜騎兵団の拠点に届いた。
(黒竜シェーラと青竜エルハルトの生活用魔道具も同じように竜騎兵団の拠点に届いていた。さすがに山間の竜の棲む巣に直接荷物を届けることは出来なかったからだ)
明るい肌色の鞄には、小さく友親の名が刻まれている。今は革も新しくて固い感触だったが、使っている内に柔らかくなるだろう。
ルーシェがその鞄が気に入った理由は、肩から斜めに掛ける薄くて四角いその鞄の形が、前世の時、友親が使っていた鞄の形に良く似ていたからだ。きっと友親も、鞄を見ればすぐにそのことに気が付くはずだ。
鞄の中には手紙を入れて、再度、箱に入れて友親が共同経営しているというカルフィー魔道具店宛に送る。
(友親、喜んでくれるといいな)
この世界で再会した時、友親は随分と大きくなっていた。
二十代後半から三十代頭というところか。
背も伸びて、顔も大人の男のものになっていた。
でも痩せて、足も不自由になっていた。杖をついて歩いていた。
(あいつはこの世界で、苦労したんだろう)
会った時には、本当ならもっと色々と話を聞きたかった。
魔道具店を経営して、生活用魔道具を作って、カタログにあの校章を印刷したのは、自分のことを探していたからなのか。いや、自分だけじゃないかも知れない。
あの時、トラックに突っ込まれた歩道には、自分と同じような高校生が何人もいたからだ。
その時いた彼らは、みんな自分と同じようにこの異世界に転生しているのだろうか。
それとも、友親と同じように転移しているのか?
そこでルーシェは再び考え込む。
(友親は、あの日本人の姿のまま年齢を重ねている様子だと、異世界転移だ)
トラックに突っ込まれた時、十五歳の高校一年生の友親は、その姿のままで異世界にやって来た。そして時間が経過している。
(でも、俺は異世界の竜に転生している。違いがあるのは何故なんだろう)
首を傾げる。
しかし、いくら考えてもルーシェには、その違いの理由が思い浮かばなかった。
だから、彼は友親宛の手紙にこう書いた。
『また、会いたいです。会っていろいろと友親から話を聞きたいです』
どうして友親は異世界に転移して、自分は転生しているのか。
どうして友親は足が不自由になっているのか。
他に、異世界に転移・転生している仲間はいるのか。
きっと友親は知っているだろう。
そのことを教えて欲しかった。
そしてまた素直に、元の世界では親友であった友親とたくさん話をしたかった。
友親の魔道具店がある西南地域は、今自分がいる王国の北方地方から結構距離のある場所だ。間にある幾つもの国を越えていかないと辿り着けない。竜騎兵団の騎竜である自分には仕事がある。思い立ったからといって、友親に会いに西南地域まで飛んでいくことは出来ない。
(かといって、手紙でやりとりする内容じゃあないんだよな)
別れ際、友親もこう言っていたではないか。
『いいか。それが使えることは決して誰にも話すな。そもそも、お前が別の世界からの転生者だということもバレないようにしろ。分かったな。そうでなければ、お前は狩られる対象になる』
友親は“魔素”を使えることを知っていた。
そして転生者であることも隠すように言った。
(結構物騒なことを言っていた気がする。そもそも、誰が狩るんだ?)
それが分からない。
(異世界人だと分かると、狩られるの?)
(一体、誰に、どうして)
考えても考えても分からないので、途中からルーシェは考えることを諦めた。
(とりあえず、誰にもバレなければいいってことだよな。今まで通りじゃん)
紫色の竜の姿で、王子を背中に乗せて、無害な騎竜の振りを続ければいい。
今まで通り、王子との生活は変わらない。
そうルーシェは信じていた。
その頃、第二王子アンリは、妻の弟コリンに「お前の絵を描かせて欲しい」とますます頻繁にくどくようになっていた。
金色の巻き毛を持つその少年は、アンリが自分と同じような美しい少年に強い興味を抱いていることを知っていた。
だからコリンは、頻繁なそのアンリのお願い事を避けるため、ついこんなことを口にしてしまったのだ。
「アルバート王子殿下が連れていたあの小さな子供は、びっくりするくらい綺麗だったよ」
そう、二番目の王子が興味を抱くように、コリンは言ったのだ。
その言葉の投げかける波紋の大きさも知らずして。
(黒竜シェーラと青竜エルハルトの生活用魔道具も同じように竜騎兵団の拠点に届いていた。さすがに山間の竜の棲む巣に直接荷物を届けることは出来なかったからだ)
明るい肌色の鞄には、小さく友親の名が刻まれている。今は革も新しくて固い感触だったが、使っている内に柔らかくなるだろう。
ルーシェがその鞄が気に入った理由は、肩から斜めに掛ける薄くて四角いその鞄の形が、前世の時、友親が使っていた鞄の形に良く似ていたからだ。きっと友親も、鞄を見ればすぐにそのことに気が付くはずだ。
鞄の中には手紙を入れて、再度、箱に入れて友親が共同経営しているというカルフィー魔道具店宛に送る。
(友親、喜んでくれるといいな)
この世界で再会した時、友親は随分と大きくなっていた。
二十代後半から三十代頭というところか。
背も伸びて、顔も大人の男のものになっていた。
でも痩せて、足も不自由になっていた。杖をついて歩いていた。
(あいつはこの世界で、苦労したんだろう)
会った時には、本当ならもっと色々と話を聞きたかった。
魔道具店を経営して、生活用魔道具を作って、カタログにあの校章を印刷したのは、自分のことを探していたからなのか。いや、自分だけじゃないかも知れない。
あの時、トラックに突っ込まれた歩道には、自分と同じような高校生が何人もいたからだ。
その時いた彼らは、みんな自分と同じようにこの異世界に転生しているのだろうか。
それとも、友親と同じように転移しているのか?
そこでルーシェは再び考え込む。
(友親は、あの日本人の姿のまま年齢を重ねている様子だと、異世界転移だ)
トラックに突っ込まれた時、十五歳の高校一年生の友親は、その姿のままで異世界にやって来た。そして時間が経過している。
(でも、俺は異世界の竜に転生している。違いがあるのは何故なんだろう)
首を傾げる。
しかし、いくら考えてもルーシェには、その違いの理由が思い浮かばなかった。
だから、彼は友親宛の手紙にこう書いた。
『また、会いたいです。会っていろいろと友親から話を聞きたいです』
どうして友親は異世界に転移して、自分は転生しているのか。
どうして友親は足が不自由になっているのか。
他に、異世界に転移・転生している仲間はいるのか。
きっと友親は知っているだろう。
そのことを教えて欲しかった。
そしてまた素直に、元の世界では親友であった友親とたくさん話をしたかった。
友親の魔道具店がある西南地域は、今自分がいる王国の北方地方から結構距離のある場所だ。間にある幾つもの国を越えていかないと辿り着けない。竜騎兵団の騎竜である自分には仕事がある。思い立ったからといって、友親に会いに西南地域まで飛んでいくことは出来ない。
(かといって、手紙でやりとりする内容じゃあないんだよな)
別れ際、友親もこう言っていたではないか。
『いいか。それが使えることは決して誰にも話すな。そもそも、お前が別の世界からの転生者だということもバレないようにしろ。分かったな。そうでなければ、お前は狩られる対象になる』
友親は“魔素”を使えることを知っていた。
そして転生者であることも隠すように言った。
(結構物騒なことを言っていた気がする。そもそも、誰が狩るんだ?)
それが分からない。
(異世界人だと分かると、狩られるの?)
(一体、誰に、どうして)
考えても考えても分からないので、途中からルーシェは考えることを諦めた。
(とりあえず、誰にもバレなければいいってことだよな。今まで通りじゃん)
紫色の竜の姿で、王子を背中に乗せて、無害な騎竜の振りを続ければいい。
今まで通り、王子との生活は変わらない。
そうルーシェは信じていた。
その頃、第二王子アンリは、妻の弟コリンに「お前の絵を描かせて欲しい」とますます頻繁にくどくようになっていた。
金色の巻き毛を持つその少年は、アンリが自分と同じような美しい少年に強い興味を抱いていることを知っていた。
だからコリンは、頻繁なそのアンリのお願い事を避けるため、ついこんなことを口にしてしまったのだ。
「アルバート王子殿下が連れていたあの小さな子供は、びっくりするくらい綺麗だったよ」
そう、二番目の王子が興味を抱くように、コリンは言ったのだ。
その言葉の投げかける波紋の大きさも知らずして。
106
あなたにおすすめの小説
腐男子♥異世界転生
よしの と こひな
BL
ある日、腐男子で新卒サラリーマン・伊丹トキヤの自室にトラックが突っ込む。
目覚めたトキヤがそこで目にしたのは、彼が長年追い続けていたBL小説の世界――。しかも、なんとトキヤは彼が最推しするスパダリ攻め『黒の騎士』ことアルチュール・ド・シルエットの文武のライバルであり、恋のライバルでもあるサブキャラの「当て馬」セレスタン・ギレヌ・コルベールに転生してしまっていた。
トキヤは、「すぐそばで推しの2人を愛でられる!」と思っていたのに、次々と原作とは異なる展開が……。 ※なろうさん、カクヨムさん、Caitaさんでも掲載しています。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!
モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。
その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。
魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。
その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?!
ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
「隠れ有能主人公が勇者パーティから追放される話」(作者:オレ)の無能勇者に転生しました
湖町はの
BL
バスの事故で亡くなった高校生、赤谷蓮。
蓮は自らの理想を詰め込んだ“追放もの“の自作小説『勇者パーティーから追放された俺はチートスキル【皇帝】で全てを手に入れる〜後悔してももう遅い〜』の世界に転生していた。
だが、蓮が転生したのは自分の名前を付けた“隠れチート主人公“グレンではなく、グレンを追放する“無能勇者“ベルンハルト。
しかもなぜかグレンがベルンハルトに執着していて……。
「好きです。命に変えても貴方を守ります。だから、これから先の未来も、ずっと貴方の傍にいさせて」
――オレが書いてたのはBLじゃないんですけど⁈
__________
追放ものチート主人公×当て馬勇者のラブコメ
一部暗いシーンがありますが基本的には頭ゆるゆる
(主人公たちの倫理観もけっこうゆるゆるです)
※R成分薄めです
__________
小説家になろう(ムーンライトノベルズ)にも掲載中です
o,+:。☆.*・+。
お気に入り、ハート、エール、コメントとても嬉しいです\( ´ω` )/
ありがとうございます!!
BL大賞ありがとうございましたm(_ _)m
死に戻りした僕を待っていたのは兄たちによる溺愛モードでした
液体猫(299)
BL
*諸々の事情により第四章の十魔編以降は一旦非公開にします。十魔編の内容を諸々と変更いたします。
【主人公(クリス)に冷たかった兄たち。だけど巻き戻した世界では、なぜかクリスを取り合う溺愛モードに豹変してしまいました】
アルバディア王国の第五皇子クリスが目を覚ましたとき、十三年前へと戻っていた。
前世でクリスに罪を着せた者への復讐は『ついで。』二度目の人生の目的はただ一つ。前の世界で愛し合った四男、シュナイディルと幸せに暮らすこと。
けれど予想外なことに、待っていたのは過保護すぎる兄たちからの重たい溺愛で……
やり直し皇子、クリスが愛を掴みとって生きていくコミカル&ハッピーエンド確定物語。
第三章より成長後の🔞展開があります。
※濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭、ちょっとだけ重い展開あり。
※若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です!
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる