転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

文字の大きさ
136 / 711
第七章 ある護衛騎士の災難

第二十話 激烈なる恋の呪い(上)

しおりを挟む
 翌日の夕方近く、一匹の小さな黒い竜が空を飛び、王国の王宮のそばまでやって来ていた。
 空には夜のとばりがゆっくりと拡げられ、星々も瞬き始めている頃合いだった。
 パタパタと空を飛ぶ小さな竜は、艶やかな黒い鱗を持ち、その両眼は鳶色をしていた。
 黒竜シェーラの、幼竜化した姿であった。




 初めてシェーラの幼竜化した姿を見た時、幼い子供姿のルーシェは大きな瞳を更に大きく見開いてびっくりしていた。

「シェーラもちっちゃくなれるんだ!!」

 黒竜シェーラは「当然よ!!」と小さな姿でありながらも、偉そうに胸を張っていた。
 彼女のそばに立つ青竜エルハルトが「千年も生きているからな……」と相変わらずそう言って、最早シェーラにお約束のように睨まれている。
 普通の竜なら、紫竜がするような魔法を使うことはできない(自身の成長を操ることなどできない)。やはり腐っても古竜の一角、黒竜ということだろう。
 わざわざ幼竜の姿になったのは、こっそり王宮まで行くには大きな成竜の姿では人目についてしまうからだ。

「しゅごいしゅごい!!」

 ルーシェは小さな竜の姿をとった黒竜シェーラを抱き上げてぎゅーと抱き締める。
 その様子にリヨンネはどこかうっとりとしていた。

「ルーシェが、小さな竜を抱っこするなんて。なんて尊いんだ!!」

 そのリヨンネの肩を掴んでグラグラとキースが揺すって言っている。

「リヨンネ先生、そんなことを言っている場合じゃないでしょう!!」 

 それから、ルーシェはいつものように紫色の成竜の姿に変わると、すぐさまその背にアルバート王子が跨り、小さな竜の姿に変わった黒竜シェーラもアルバート王子の前に跨って座っている。
 彼らはすぐに北方地方の山間の観察地の離着陸場から飛び立ち、王都目指してまっしぐらに飛んで行ったのだった。

 アンリ王子に“激烈なる恋の呪い”をかけるため。



 なんとなしに予感があったのか、アルバート王子は翌日も休暇を申請した上で、この観察地の拠点に足を運んでいた。だから、「アンリ王子殿下が竜騎兵団の拠点へ視察に来られる前に、さっさと魔法を掛けてしまいましょう」というリヨンネの言葉にもすぐに頷き、実行に移すことができた。
 竜騎兵団一の速さを誇る紫竜ルーシェの背に跨り、最大限の速さで王都を目指す。そしてシェーラの魔法を掛けたらまたとんぼ返りするのだ。そうすれば休暇中に事を終えることができる。
 少しだけ、アルバート王子の中には、兄アンリ王子の感情を操ることに対して罪悪感もあった。しかし、本来の妻であるアビゲイル妃に恋をさせれば問題ない。むしろ、夫婦仲が深まるのならいいことだと、どこか単純な黒竜シェーラは言っていた。

 そして放たれた矢のように空をただひたすら真っ直ぐに飛んできたルーシェは、王都の森に到着した。そしてアルバート王子が黒竜シェーラと“同調”するのを見守る。滅多にないことだが、“同調”から戻れなくなる竜騎兵もいるという話のため、心配そうに見守る中、小さな竜シェーラの双眸が開いた。そこにはアルバート王子と同じ鳶色の瞳があった。
 どういう仕組みなのか分からないが、必ず“同調”すると、“同調”した者の瞳の色合いが現れる。日頃金色のシェーラの瞳が、今やアルバート王子と同じ鳶色になっているのがそのあかしであった。

 ルーシェは森の中で、人形にように力を無くしたアルバート王子の体を守る。そして小さな黒い竜が空へと勢いよく飛び立ち、飛んで行くのを見上げていた。



 そして冒頭のシーンに至る。王宮付近まで小さな竜の姿をとった黒竜シェーラは飛んで行った。
 黒竜シェーラは夜が近づくにつれ、その姿は闇の中に溶けるように見えにくくなっていた。彼女の中の思考は今、シェーラが主となって占めていた。アルバート王子は彼女の中で大人しく、彼女の行動を眺めているような状態である。
 ただ、アルバート王子が心の中で、指示をしていた。

(アンリ王子の宮は、あちらです)

 王宮の上を飛ぶ小さな竜は、アルバート王子の言葉に従って飛んで行く。
 そして王宮の茂みの一つに降り立つ。そしてガサガサと茂みから茂みの中を移動していく。
 
(もうすぐなのかしら)

 シェーラの問いかけに、アルバート王子が同意した。
 王族の一員たるアルバート王子は、当然兄王子の住む宮の位置も把握しており、的確に指示することができた。
 やがてシェーラは、アンリ王子の宮に到着し、彼のいるであろう部屋の窓の近くまで近寄ることができた。

(どうやって呪いを掛けるんですか)

 アルバート王子の問いかけに、シェーラは答える。

(私の視界に入ればいいのよ。一目でも姿が見えれば、呪いがかけられるわ)

 つまり、シェーラは相手を見ない限りは呪いをかけることができないのだ。以前、ウラノス騎兵団長にも呪いをかけたことがあるという話だが、その時も、ウラノス騎兵団長を見て呪いをかけたのだろう(どうにかこっそりと見て呪ったのか?)。同じことが竜達に対してトカゲにする呪いをかけたことにも言えるはずだ。竜達を見ることで、呪いをかける。

 誰に対しても呪いがかけられるわけではない。そうした制約があるのだ。

 そして黒竜シェーラは、なんとアンリ王子の部屋の窓の下でパタパタと飛んで、窓の下から頭だけぴょこんと出して、強引に居室の中を覗き込んだのだ。

(!!)

 そのシェーラの行動に驚くアルバート王子。慌ててシェーラを制止しようとしたが間に合わない。
 当然のように部屋の中にいた護衛騎士達が窓の外の異変に気が付いて、不審なモノを捕らえようと部屋の外へ飛び出して来ようとする。

 だが、すでにアンリ王子を見ていたシェーラは、即座に呪いを放ったのだった。
 王国の七番目の王子であるアルバート王子と同調しているシェーラは、“黄金竜の加護”をくぐり抜け、呪いをアンリ王子にかけることが出来た。





 アンリ王子の護衛騎士達が駆け付けるよりも先に、目的を達したシェーラはさっさと空へと飛び立っていた。護衛騎士達がその場に辿り着いた時には、そこには何もおらず、もぬけの殻であった。同時に、室内ではアンリ王子が突然倒れ込み、騒動となっていたのだった。
しおりを挟む
感想 276

あなたにおすすめの小説

腐男子♥異世界転生

よしの と こひな
BL
ある日、腐男子で新卒サラリーマン・伊丹トキヤの自室にトラックが突っ込む。 目覚めたトキヤがそこで目にしたのは、彼が長年追い続けていたBL小説の世界――。しかも、なんとトキヤは彼が最推しするスパダリ攻め『黒の騎士』ことアルチュール・ド・シルエットの文武のライバルであり、恋のライバルでもあるサブキャラの「当て馬」セレスタン・ギレヌ・コルベールに転生してしまっていた。 トキヤは、「すぐそばで推しの2人を愛でられる!」と思っていたのに、次々と原作とは異なる展開が……。 ※なろうさん、カクヨムさん、Caitaさんでも掲載しています。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!

モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。 その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。 魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。 その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?! ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

「隠れ有能主人公が勇者パーティから追放される話」(作者:オレ)の無能勇者に転生しました

湖町はの
BL
バスの事故で亡くなった高校生、赤谷蓮。 蓮は自らの理想を詰め込んだ“追放もの“の自作小説『勇者パーティーから追放された俺はチートスキル【皇帝】で全てを手に入れる〜後悔してももう遅い〜』の世界に転生していた。 だが、蓮が転生したのは自分の名前を付けた“隠れチート主人公“グレンではなく、グレンを追放する“無能勇者“ベルンハルト。 しかもなぜかグレンがベルンハルトに執着していて……。 「好きです。命に変えても貴方を守ります。だから、これから先の未来も、ずっと貴方の傍にいさせて」 ――オレが書いてたのはBLじゃないんですけど⁈ __________ 追放ものチート主人公×当て馬勇者のラブコメ 一部暗いシーンがありますが基本的には頭ゆるゆる (主人公たちの倫理観もけっこうゆるゆるです) ※R成分薄めです __________ 小説家になろう(ムーンライトノベルズ)にも掲載中です o,+:。☆.*・+。 お気に入り、ハート、エール、コメントとても嬉しいです\( ´ω` )/ ありがとうございます!! BL大賞ありがとうございましたm(_ _)m

死に戻りした僕を待っていたのは兄たちによる溺愛モードでした

液体猫(299)
BL
*諸々の事情により第四章の十魔編以降は一旦非公開にします。十魔編の内容を諸々と変更いたします。 【主人公(クリス)に冷たかった兄たち。だけど巻き戻した世界では、なぜかクリスを取り合う溺愛モードに豹変してしまいました】  アルバディア王国の第五皇子クリスが目を覚ましたとき、十三年前へと戻っていた。  前世でクリスに罪を着せた者への復讐は『ついで。』二度目の人生の目的はただ一つ。前の世界で愛し合った四男、シュナイディルと幸せに暮らすこと。  けれど予想外なことに、待っていたのは過保護すぎる兄たちからの重たい溺愛で……  やり直し皇子、クリスが愛を掴みとって生きていくコミカル&ハッピーエンド確定物語。  第三章より成長後の🔞展開があります。 ※濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭、ちょっとだけ重い展開あり。 ※若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...