転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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第八章 黄金竜の卵

第十話 雛竜と共に旅立つ

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 黒竜シェーラも青竜エルハルトも、二人とも時が止まったかのように凍りつき、そしてその目は大きく見開かれて、テーブルの上に載せられた小さな金色の竜を凝視していた。

 シェーラが震える声で言う。

「御名をお聞かせください」

 それに小さな竜の雛は「キュルキュキュ」と鳴いた。
 どうやら自身の名を名乗ったらしい。
 エルハルトは頭を下げ、そしてシェーラも一度頭を下げた後に、恐る恐るといった様子で顔を上げた。
 
 常日頃、高慢といってもよいほど、態度のデカいシェーラとは思えぬほど殊勝な態度であった。

「ありがとうございます。私はシェーラ、この者はエルハルトです」

「キュッキュキュルルルルルル」

 黄金竜ウェイズリーは、どこか誇らしげにユーリスに視線を走らせて鳴いている。
 それにシェーラとエルハルトはまた驚きつつ声を上げた。

「人間の雄を、番とされるのですか」

 どうやら、ユーリスを番だと紹介したらしい。
 そしてそれを聞いたユーリスは即座に首を振った。

「私はこの竜の番ではない。この子が勝手にそう言っているけど、そうじゃないから」

 ユーリスの言葉に、黄金竜ウェイズリーは「キュルキュルキュキュキュ!!!!」と言い返している。
 なんとなく「ユーリスは私の番だ!!!!」と強く言い張っているような声だった。
 だが、ユーリスはあくまで拒絶していた。

「違う。あまりそのことを言うのなら、私は君をこの山へ置いていくからな!!!!」

 そのユーリスの言葉に、ウェイズリーは文字通りテーブルの上から飛びあがって、ユーリスの胸に飛びついてビタンと張りついた。

「キューキューキュキュキュルルルルルルキュルルルルルル」

 慌ててとりなすように言うその鳴き声は、さしずめ「もう言わないから、置いていかないで」だろう。
 なんとなしに、ユーリスやリヨンネ、キースもこの黄金竜の雛が何を言いたいのか、理解できるようになっていた。

 ユーリスと黄金竜の雛のやりとりを、シェーラもエルハルトもどこか呆然と見つめている。
 リヨンネは笑いながら言った。

「ウェイズリーは、ユーリスのことを番だと言い張っているんだ。シェーラ、エルハルト、この子をユーリスがこの国から連れ出しても、何か竜達にとって問題はないだろうか」

 それにすかさず、シェーラは答えた。

「問題ありません」

「そうか。じゃあ、ユーリス、その子を連れて行けばいい」

「竜の一頭もいない遠い国へ、黄金竜の雛を連れていって、本当にいいのでしょうか」

 未だユーリスは、そのことを迷っている。
 生まれたばかりの小さな雛なのである。竜達のいる国で育つ方がいいとユーリスは思っていた。
 しかし、黄金竜ウェイズリーは、ユーリスから離れないと懸命に言い張るのだ。

「黄金竜の望みは、全て叶えられてしかるべきです」

 シェーラは静かに答える。

「それは、どういうことですか?」

 いつものシェーラと違い、淡々と紡がれる女の言葉に、リヨンネもキースもなんとなく奇妙なものを感じた。リヨンネが聞き返すと、シェーラは言う。

「そのままの意味です。どうせ、誰も……」

 黄金竜ウェイズリーはピッタリとユーリスの胸に張りつき、ぐりぐりとその小さな頭を押し付けている。
 その一人と一頭の様子を見ながら、シェーラは言った。

「誰も逆らうことを許されないのですから」


 それから、ユーリスは青竜エルハルトに雛竜を育てるにあたって注意すべきことなど話を聞いたのだった。竜騎兵団の拠点で話を聞くと、ユーリスが小さな竜の雛を育てることがバレてしまう。黄金竜の雛を育てることは秘密にしなければならない。だから、ユーリスが雛竜を連れている姿はあまり人目にさらさない方が良い。ユーリスは上着の下に布袋をしまって、そこに雛竜がいることが分からないようにしていた。
 すでに、ルーシェとアルバート王子、護衛騎士バンナムとレネには、ウェイズリーが黄金竜であることも、ユーリスが竜の卵を孵して、その雛を育てることも、秘密にするように頼んでいる。彼らは快く、その頼みを聞き入れてくれた。
 そもそも紫竜ルーシェが、誰よりも美しい人の姿に変われることも秘密にしている彼らにとって、ウェイズリーが黄金竜であることを隠すことも、負担になることではなかった。

 王家にとって、新たな黄金竜が王国に誕生したことは重大な事実である。
 しかし、アルバート王子は、そのことを知らせることによって、王家に、ユーリスとウェイズリーの身が囲い込まれることを心配した。彼らには、自分達のように自由に生きて欲しかった。そのために、ウェイズリーのことを秘密にする必要があるのなら、自分はそうしようと言った。

 それを聞いた紫竜ルーシェは嬉しく思った。
 後に、ルーシェはアルバート王子にこう言った。

「俺は王子のそういうところが好きだ。人のことを、自分のことのように考えてくれるところが、大好きだ」

 アルバート王子は、ルーシェの紫色の髪をすくい上げて口づける。
 誰よりも綺麗で美しいルーシェは、人前にその姿を現わした瞬間、人々の心を鷲掴むだろう。
 でもそれを隠し、アルバート王子の前だけで真の姿を見せてくれる。こうして山間のほら穴の中で二人だけで愛し合う。
 ルーシェは、自分だけに優しく愛を囁いてくれる。
 その細身を抱きしめ、王子は心に思う。

(そのように、赤の他人にまで思えるのは)

 きっと彼がそばにいて、自分を愛してくれるからだ。
 だから同じように、優しく出来るのだ。





 数日間、ユーリスは山間の観察拠点の建物に滞在した後、出立し、王都を経由してアレドリア王国へ向けて旅立つことにした。
 ユーリスは上着の下の胸元に、布袋を斜めに掛けていたが、その布袋の中に、小さな黄金色の雛竜がいることは誰にも気づかれなかった。時に、その小さな雛竜は甘えるように「キュルキュルキュー」と小さく鳴く。するとユーリスは、その雛竜の入った布の膨らみを優しく撫でるのだった。
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