転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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第十章 亡国の姫君

第十一話 元婚約者との面会

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 アルバート王子は、竜騎兵団の拠点へ帰還する準備を進めた。
 リヨンネの元へ預けた妹のマリアンヌのことが気になったのだ。ザナルカンドから連れ帰ってから、そのままにしている。様子を見に行かなければならないと思っていた。着の身着のまま城から連れ出した。ろくな荷物がなかった彼女は、リヨンネやよく気が付くキースがそばにいるとしてもおそらく不便しているだろうと思った。

 ウラノス騎兵団長は未だ、王や第一王子達への説得に当たっていたが、それがうまくいっている様子はなかった。彼はアルバート王子が竜騎兵団へ帰還したい旨を聞くと、「それがいい」と疲れた表情で頷いていた。
 バルトロメオ辺境伯共々、王達への説得に疲れているようだった。

 帰還の許しを得たアルバート王子が、母妃から預かったたくさんのマリアンヌ宛の荷物をまとめているところで、来客の知らせを受けた。
 一体誰だろうと、アルバート王子が荷支度を手伝うバンナムと顔を見合わせていると、取り次ぎした侍従がこう伝えた。

「ヴィシュー侯爵家レイモンド様です」

 それは、マリアンヌのかつての婚約者の令息であった。



 二年前、マリアンヌとの婚約を解消させられたレイモンド。
 彼は最後まで、マリアンヌとの婚約解消を拒否していた。しかし王命には逆らえず、父侯爵の説得を受け、泣く泣くマリアンヌの手を離した。幼い頃、将来の結婚を約束し合ったレイモンドとマリアンヌは、相愛であった。その二人の仲を裂いて為したザナルカンドの王子との結婚が、このような形で破綻することになろうとは、当時のアルバートは元より、誰も想像していなかったことだった。
 二年前、十五歳の少年であったレイモンドは、改めて対面した時には背も伸び、十七歳の若者になっていた。

「会って頂きありがとうございます。殿下」

 部屋の隅にたくさんの荷物がまとめて置かれている様子をチラリと見て、レイモンドは言った。

「まるでお引越しのような荷物ですね」

 母であるマルグリッド妃は、マリアンヌが北方で匿われていることを知ってから、彼女の為の荷物を猛然と揃えだしていた。服は勿論のこと、家具までも用意しようとしていたので、必死にアルバートはそれを止めなければならなかった(小柄な竜のルーシェもたくさんの木箱は運べないと困った様子だった。マルグリッドは「では、送ります」と途中から方針を変えて、送ることを前提に荷物を揃えだしていた)。

「…………そうですね」

 内心、アルバートはギクリとしていた。
 たくさんの荷物を用意したり、それを運ぶからといって、そこにマリアンヌの存在が嗅ぎつかれることはないと思っている。

 レイモンドはアルバート王子の対面の椅子に座った。彼にお茶を用意した侍従が一礼して退室した後、口を開いた。

「マリアンヌ姫はご無事でしょうか」



 その言葉に、アルバート王子は動揺する感情を急ぎ飲み込んだ。
 静かに問い返す。

「何を仰っているのでしょうか」

「先に申し上げます。私は殿下の味方です。マリアンヌ姫がご無事なら、それでいいと思っています。殿下が、この王宮に到着してからすぐに人目を避けて飛び立ち、そのまましばらくの間、王宮へ戻って来なかったことを知っております」

 どこから情報が漏れたのだと、内心アルバート王子は思っていた。
 母妃周辺の女官や侍女であろうか。口の固い者を選んでいるという話であったが。

「それから、マルグリッド妃が若い女性向けのドレスや服を随分と急いで用意させている話を聞きました」

 内心、アルバート王子はため息をついていた。

(…………母上)

 そんなところから足がつくとは思ってもみなかった。

「繰り返しますが、私は殿下の味方です。この情報を得てからも一切他言しておりません。今後も誓って他言は致しません」

 赤毛の貴公子は、アルバート王子の鳶色の瞳を見据えて言った。

「姫は、ご無事なのでしょうか」

 その真っ直ぐな視線と声に、王子は答えた。

「ああ、無事だ」

 アルバート王子の言葉に、みるからに赤毛の若者はホッとした表情をしていた。

「良かった。ご無事なのですね」

 
『お兄様、お願い致します。どうか、私とレイモンドの為にも、ザナルカンド王国へ婿入りなさって下さい』

 二年前、妹のマリアンヌはこの若者との恋を成就させるために懸命だった。
 同じように真っ直ぐな瞳で兄王子を見つめてそう言ったのだ。
 でも結局その恋は実ることはなく、二人は引き裂かれた。

 レイモンドは、両親達から新たな婚約者を迎えるように言われていたが、彼は決して首を振らなかったという。ずっと、彼は幼い頃からの、彼の姫君のことを想っていた。

「怪我の一つもしていない」

「そうですか。殿下、本当に有難うございます。もし、叶うことなら」

 レイモンドは胸元からそっと一通の手紙を取り出して、アルバート王子の前のテーブルの上に置いた。

「手紙を彼女に渡して頂きたい」
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