転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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第十章 亡国の姫君

第十八話 五番目の兄王子と会う(下)

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 その日、アルバート王子はクランの建物内の客室に泊めてもらうことになった。
 実はあの後、一度は部屋から連れ出されたシルヴェスター王子が部屋へ戻ってきた。シルヴェスター王子は「もう少しアルバートと話をしたい」と頼んできた。
 それに「ご迷惑でなければ……」と恐縮しきりのクラン長に頼まれ、元からその日の宿泊場所が決まっていなかったアルバート王子は、クランの建物の客室に泊めてもらうことにしたのだった。

 その頃になって、クラン長は、自分の本当の名はダンカン=アデナウアーであると名乗り、副クラン長も、自身の本当の名はフィアであると名乗った。事情があり、名を偽っているらしい。

 シルヴェスター王子は、アルバート王子に彼の知るユーリスの情報を教えてくれるようにせがんできた。彼が自分を引き留めた理由が分かって、アルバート王子は苦笑していた。
 夕食時、シルヴェスターとアルバートは同じテーブルの席で食事を取った。じっくりと内々に話がしたいと言うことで、個室で二人だけの食事である。といっても、小さな竜の姿のルーシェも共にいて、ルーシェは珍しい西方地域の食を見て、尻尾をピンと立たせて喜んでいた。

「ピルルピルピルルルル!!(見て、王子。ワニの姿焼きなんてあるよ!!)」

 おそらくそれは贅沢な料理なのだろう。小さな一頭のワニがこんがりとその姿のまま焼き上げられ、白い花で飾られてテーブルの上にドンと大皿で出されている。それをルーシェは、フォークを両手で持って恐々と突っついている。

「もう動かない。死んでいる」

 アルバート王子が言う。

「ピルルピルピルル!!(分かっているよ!!)」

 ルーシェはそう言いながらも、焼き上げられたワニがガバッと口を開けてこられるのを恐れているようで、少し離れた場所からつんつんとフォークで突っついていた。小さな竜のそうした様子を、シルヴェスター王子は「可愛い竜ですね」と褒めていた。

「ええ、目が離せないです」

 実際、今もルーシェは「ピルルルゥゥ(すげぇ)」と言いながら、少し怖くなくなったのか、ワニの上顎を今度は両手でグイと持ち上げて、自分の頭をその口の中に入れてみようとしていた。それには慌ててアルバート王子が止めていた。

「ルー、よせ」

 吹き出しそうになりながら、アルバート王子が小さな竜を止めて、その首根っこを持ち上げていた。
 目を離すと、本当に何をやらかすか分からない。

「ピルルゥピルピルルルピルピルルル(ええ、この中はどんな風なのかなと思ったのに)」

 口を開けたワニの中に入ってみようと思っていたようだ。

「ダメだ。何を考えている」

 小さな竜とアルバート王子のそのやりとりに、シルヴェスター王子は笑い声を上げながら「アルバートとルーシェは本当に仲が良いのだな」と言っていた。
 まさか、仲が良いどころか、この小さな竜と既に自分が婚姻まで為しているとは思ってもみないだろうと、内心アルバート王子は思っていた。

 そしてアルバート王子は請われるままに、自分がこの春に出会ったユーリスの話をシルヴェスター王子に伝えた。父親であるバンクール商会長ジャクセンとも面識があるのだろう。ユーリスが父親のジャクセンそっくりの美男子に成長していると聞くと、シルヴェスターは頷きながらも、少しだけ複雑そうな様子を見せていた。

 そして彼は内情を吐露した。

「私は、ユーリスとの交際を、ジャクセン殿から認められていない」

「…………」

「ジャクセン殿に認められるためにも……」

 その言葉で疑問の一つが氷解した。
 言葉の最後までシルヴェスター王子は口にすることはなかったが、シルヴェスター王子が戦争状態のこの西方諸国へ渡った理由が理解できた。ここでいさおを立て、それで認められなければならないということだ。
 それは、母国では為し得なかったことなのだろう。五番目の王子という境遇では。
 何かを得ることもできず、あの場所では燻っているしかない。燻っているどころではなく、最悪駒のようにどこかへやられてしまう恐れもあった。それは、かつてのアルバート王子にも経験があった。
 アルバート王子も竜騎兵を辞めさせられ、外国へ婿としてやられようとしていたのだから。

「……ユーリス殿に会った時、何かお伝えしましょうか」

 アルバート王子は、これからアレドリア王国へも渡り、ユーリスに直接手紙を渡す予定なのである。そんなに好意を寄せている相手なら、何か伝えたいことがあるだろうと、アルバート王子はシルヴェスター王子に尋ねた。

「いつか、必ず会いに行くと」

 シルヴェスター王子はそう、少しだけ耳を赤く染めながら言った。

「それだけ、伝えて欲しい」


 

 クランの客室に案内され、後は寝るだけとなった時、小さな竜の姿のルーシェは、王子の膝の上に座って王子を見上げて言った。

「ピルピルルルピルルピルピルルルピルルルゥ(お兄さんだというシルヴェスター王子は、アルバート王子に似ている気がする)」

「そうか」

「ピルゥ(うん)」

 一人の相手をずっと想い続ける。
 一途な想い。
 胸が痛くなるほどの切ない想いをずっとずっと抱えている。

「ピルピルルピルルピルピルピルピルル(それと、シルヴェスター王子もすごくハンサムだけど)」

 そう言った後、小さな竜は照れながらこう言った。

「ピルピルピルー!!(俺の王子が一番だ!!)」

 そう言ったルーシェの小さな頭に、王子もまた優しく口づけを落として、二人は眠りについたのだった。
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