転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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第十章 亡国の姫君

第二十話 皇宮の皇女達(下)

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 その後、アルバート王子がフィアと共に案内されたのは、皇宮の中でも随分と奥まった部屋であった。
 アルバート王子は王国の竜騎兵団の一兵卒としてウラノス騎兵団長の命令を受けてやって来ており、ここでは自身がラウデシア王国の王族である身分を明らかにしていない。しかし、名を偽っているわけではないために、分かるものには、アルバート王子の名や容姿からして、彼がラウデシア王国の七番目の王子であることが分かるだろう。王国の七番目の王子が竜騎兵になったことは、あまりにも有名な話であったからだ。

 イスフェラ皇国はこの西方諸国の大国であり、皇宮の威容もさすがといって良いものであった。
 入場の際にくぐった皇宮の大門も見上げるほどの大きさであったし、建物は正面から入って左右均等のシンメトリーを為している。高い尖塔を幾つも擁しており、どこか丸く先端が尖った屋根をいずれの塔の上にものせている(ルーシェは「玉ねぎみたいだ」と感想を述べていた)。
 素晴らしい彫刻が施された壁に、青を基調としたモザイクが床に花の形をモチーフに、細かく施されている。天井からは鉄製の飾り灯が黒い鉄の鎖で下ろされ、幾何学的な模様の影を床に落としていた。

 アルバート王子とフィアを案内する女官は、一際立派な部屋の扉の前で足を止めた。扉の左右には甲冑を身に付けた騎士が立っている。

 その部屋の扉の前で、副クラン長フィアは立ち止まり、声を潜めてアルバート王子に教えた。

「皇帝陛下に謁見することになりそうです」

 それにアルバート王子はやや目を開いた。
 情報収集のためにやってきた一兵卒が、皇帝に謁見するという事態は想定していなかった。ウラノス騎兵団長の信書もあくまで皇帝陛下に向けて書かれたものではなく、近衛騎士団長宛のものであった(すでに近衛騎士団長に信書は渡している)。

 兄王子シルヴェスターの「皇女方はラウデシアの王族を取り込みたいと思って、非常に積極的だ」という言葉が蘇る。

 案内の女官の指示の元、大きな扉が開かれる。
 扉の向こうで、一段高い場所にしつらえた席に座る、浅黒い肌に黒髪の四十代ほどの男が入場してきたアルバート王子達を出迎えるように立ち上がった。赤と金を基調とした立派な服を身に付けている。冠は被っていないが、場の雰囲気と男の持つ迫力からすぐに分かった。彼がこのイスフェラ皇国の皇帝ミラバス=カーンであると。
 そして彼の周りには五人の美しい娘達が立っていた。五人の娘達はそれぞれ髪の色や瞳の色が異なっていた。ある娘は金髪であり、ある娘は赤毛であり、ある娘は黒髪であった。肌の色も様々で、雪のように白い肌のものもいれば、浅黒い肌のものもいる。だが、いずれの娘も素晴らしい美貌と、豊かに大きくせり出した胸を持ち、それを強調するように腰をきゅっと締め上げた美しくもどこか煽情的な衣をまとっていた。赤く口紅を塗り、耳には金の飾りを下げ、手首にもジャラジャラと金の輪の腕輪をたくさん下げている。

「よくぞいらした、アルバート王子」

 フィア共々、アルバート王子は毛足の長い絨毯の上に片膝をつき頭を下げる。

「陛下に拝謁でき、恐悦至極であります」

「ここは私的な場所だ。そうかしこまることはない。わざわざ遠い、ラウデシアの国の王子が皇国へやって来てくれたのだ。是非とも、歓迎しなければならないと思ったのだ。我が娘達も会いたいとせがんでな」



(娘!!!!!!)

 アルバート王子の胸元で、小さな竜の姿のルーシェは驚愕している。
 王様がおっぱいのデカい若い娘達を侍らせているだけかと思っていたら、その若い娘達がどうやらこの王様の娘らしい。
 
(全部髪色が違うじゃん!!)

 イスフェラ皇国の皇帝は代々巨大な後宮を抱え、美妃や美少年達を揃え、放蕩に耽っているという話を聞いたことがあったが、それ相応の規模の後宮ゆえに、皇帝の子供達もたくさんいるらしい。それもバラエティ豊かに。

 すぐさまアルバート王子は、皇帝の娘だという女達に手を取られ、ズラリと並ぶ豪華な食事の席へつかされた。
 それから、娘達は王子の手に金の杯を持たせ、女達は微笑みを浮かべながら酒を酌み、食事を勧めていく。
 アルバート王子も笑みを浮かべながら、勧められた酒を飲み、女達を傍らに侍らせて食事を口にしていた。
 その間、アルバート王子の胸元にいた小さな竜のルーシェは(王子いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ)とギリギリギリギリとずっと歯を軋らせていたのであった。



 その日は、何故か当然のようにアルバート王子は皇宮へ泊まるように言われ、王子もそれを受け入れていた。与えられた立派な客室に入り、王子が室内で一人きりになったことが分かると、王子の胸元にいた小さな紫色の竜は、胸元から飛び出して、そして床の上でピシピシピシピシと尻尾を強く激しく打ち付けながら、王子のことを、黒い目を釣り上げて睨みつけていた。

「ピルルルルルルルピルピルピルピルルル!!(なんだよ、あのデレッとした態度は!!)」

 ピシピシピシピシとずっとルーシェの後ろで尻尾が激しく床を叩いている。
 王子は壁に腕を組んで寄り掛かり、足元で怒り狂っているルーシェを見下ろしている。

「友好的な関係を維持するためだ。仕方ないだろう」

「ピルピルルゥ!!(あの胸のデカさ!!)」

 ルーシェは涙目になっていた。

「ピルピルピルルルピルピルピルルルピルピルピピピルルルルル!!(俺にはあんなデカい乳はないし、王子が喜びそうなことはできないよ!!)」

「いや、私は胸が大きな女性が好きなわけではないぞ」

「ピルピルルピルピルルルピルピルル(でもデレッとしていたじゃないか)」

「言っただろう。任務の一環だ」

「ピルピルルルルルピルル(本当は俺なんかよりも)」

 そう言いかけた小さな竜を、王子はすくい上げるように抱き上げると、その鼻先に口づけた。

「お前とは比べ物にならない」

「…………………………ピルゥ?(本当?)」

「ああ」

「ピルゥピルピルゥ?(本当に本当?)」

「ああ」

 もう一度、疑り深い恋人の鼻先に口づけをしようとしたところで、扉がノックされた。王子が許可を与える前に扉が開き、肌も露わな娘達が部屋の中に入ってくる。
 薄い絹の衣をヒラヒラと揺らし、彼女達は「アルバート殿下」と王子の名を呼んで近づこうとしている。
 どうもこの国では貞操の観念が薄いようだった。
 皇帝の娘ともなると、皇女である。
 しかし、巨大な後宮出身の娘達は、母親達と同様に、男に媚びる手管に長けているようで、シャラシャラと金の飾りを揺らしながら、煽情的な衣装で踊るように入って来る。その娘達の姿を一目見た瞬間、ルーシェは逆上した。




「ピルルルルルルルゥゥゥゥゥゥ!!!!(こんなところに俺の王子は置いておけん!!!!)」

 そう叫ぶや否や、王子に抱き上げられていた小さな竜であったルーシェは、すぐさま成竜の姿を取った。
 部屋いっぱいに突如として現れた紫色の竜の姿に、娘達は悲鳴を上げ、部屋の外にいた兵士達が駆け込んでくる。

「ルー……」

 アルバート王子は額に手をやり頭が痛そうな顔をしている。

「ピルピルルピルピルル!!(さっさとずらかるぞ!!)」

 そうルーシェが言って、王子にその背中に乗るように促したので、アルバート王子は仕方ないように笑って、紫色の竜の背に跨ると、紫竜は、窓から空目掛けて飛びだしたのだった。
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