転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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第十二章 黒竜、再び王都へ行く

第十六話 想定外の事態(下)

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 場所は変わり、大陸の遥か西方に位置する広大なサトー王国の版図。
 アルダンテという王国から始まったその国は、貪欲に領土を広げ、今や大陸の三分の一の面積を国土としていた。巨大な王国の主が、十八年前異世界から“転移”してきた異世界人であることはよく知られていた。その異世界人、サトーこと佐藤優斗は、三公という魔族を配下に、王国を支配していた。
 
 魔のやんごとなき三公が、サトー王国の佐藤優斗を気に入っていたのは、彼があまりにも普通では考えつかない突拍子もないことを、人間の身でありながらもしでかすところであった。
 それはこの世界ではない、異世界からやってきた人間だからこそ、できることなのだろうか。
 サトー王国の佐藤優斗は、この大陸の統一を求めている。
 そしてその統一を成し遂げた後は、三公に、この世界に在るものすべて、何でも捧げると約束していた。
 佐藤優斗にとって、この大陸の統一こそが生きる目的であった。
 そして大陸の統一を果たした後、彼はこの世界から元の世界へ戻れると信じていた。

 理由は簡単で、ゲームがエンドを迎えるからだ。

 この世界は、大陸統一を目的としたゲームで、それを成し遂げた後、ゲームは終わる。異世界からゲームのために呼び出された自分は元の世界へ戻ることができる。
 彼はそうなることを信じていた。

 おそらく、そう信じなければやっていけなかったのだろうと、三公は思っていた。

 数多くの人の死体を見ても、彼が何も感じないのは、おそらくここが“本物”の世界ではないと考えているからだ。早く元の世界に戻りたい。それだけが彼を動かす原動力になっていた。

 

 黄金竜の“金色の芽”が、王都目指して飛ばした佐藤の“星弾”を粉々に砕いたと知った時、佐藤は困った顔をしていた。いつもやっていた国潰しの作業がうまくいかないからだ。
 バーズワース王国、ザナルカンド王国と順調に潰していき、北方のラウデシア王国を制圧する。
 それが成功すれば、今度はラウデシア王国から西進して大陸中央へ攻めていく方法がとれる。
 西方諸国での戦闘では、現在、イスフェラ皇国で足踏みしているがそこへ向かって西進することも出来る。しぶといイスフェラ皇国も幾つもの戦端が広い範囲で開かれれば、耐えられまい。
 そう思ってラウデシア王国の王都に“星弾”を飛ばしたのだ。なのにそれが落とされた。

 佐藤は三公の一人、“最も力強き”ヴィータ公に尋ねた。
 ヴィータ公は、獣の姿を取らず、人の男の姿をとっていた。黒髪の長身の男だった。
 彼は非常に佐藤のことを気に入っており、佐藤が望むまま情報を与えた。

 “金色の芽”を操る黄金竜は神に近い存在で、今の佐藤の力ではとても敵わないこと。何度“星弾”を飛ばしても、あの竜の“金色の芽”で防がれてしまうだろうということを教えると、佐藤はどこにその黄金竜がいるのか尋ねてきた。

 ヴィータ公は、王国を守る黄金竜が眠る地を知っていたので、それを佐藤に教えた。
 遠い北方の、大森林地帯に眠っていると教えたのだ。



「私の力で、戦って勝てないというのなら、そいつをどけてしまうしかない」

 佐藤は言った。
 ヴィータ公は興味を抱いてその方法を聞いた。
 佐藤は「ここは踏ん張り処だから、長野さんと清瀬さんを使」となんてことはないように告げた。

 十八年前、佐藤は、長野京子と清瀬千春という、一緒に“転移”してきた少女達二人を手許に置いて、魔法で眠らせ続けていた。佐藤は少女二人に眠りながらも“魔素”を集めるように命じていた。その二人が十八年もの間、毎日集め続けてきた“魔素”の量はそら恐ろしいほど膨大な量になっていた。

「私は“召喚魔法”を調べた。“召喚魔法”は大きく分けて三つの段階がある。一つ目の段階は召喚の対象物を見つけること、二つ目の段階はその召喚の対象物を別の次元へ移動させて、“待機状態”にすること、そして三つ目の段階は、その召喚の対象物を予定された場所に“到着”させることだ」

「はい」

 過去、佐藤が“召喚魔法”を調べたのは、勿論、元の世界へ戻るためであった。
 しかし、佐藤は魔法を使って元の世界へ戻ることは出来なかった。何度自分や長野、清瀬達を対象とした呪文を唱えても、原因は分からなかったが、効果が掻き消されてしまう。だから、佐藤は魔法を使って元の世界へ戻ることは諦めた。
 ただし、自分達を対象としない魔法は発動する。

 ヴィータは、突然、召喚魔法の仕組みを佐藤が朗々と話し始めた理由が分からない。
 佐藤は頭の良い男だった。
 
「“召喚魔法”は攻撃魔法ではない。掛けられた対象物も掛けられることを攻撃と認識することはないだろう」

「そうなります」

 それに、ヴィータ公は驚いたように目を開いていた。

「陛下、まさか」

「私は黄金竜のいる場所を北方地方の大森林地帯としか知らない。だから、広範囲を“召喚”するしかないだろう。だが、先ほど言った三段階目の“到着”までする必要はない」

「“待機状態”のままにしておくというのですか」

「そうだ。そうすれば、黄金竜はいなくなる。“待機状態”のままどこへ行くこともできず、時を止めて漂い続けることになるのかな。一体どういう状態なのだろうね。機会があれば調べてみたいものだ」

 佐藤は笑った。
 ひどく無邪気な笑みだった。
 今年三十三歳になる彼は、童顔ということもあって、まだ二十代にしか見えない。
 子供のような笑みだった。

「意外といい考えだろう?」





 そうして佐藤は、膨大な“魔素”を抱えながら眠りに就いていたかつての仲間、長野京子と清瀬千春の二人を“使い切った”。彼女達二人の“魔素”はおろか、その生命力まで使い切り、命を落とした二人を、佐藤は配下に命じて、サトー王国の王城に用意していた墓に埋めてやった。

 彼女達二人は、元の世界にその魂を生まれ変わらせることが出来るだろう。
 二人は一足先にこのゲームの世界から退場したのだ。
 目が覚めていた時はずっと、「こんな世界にいたくない」「元の世界に帰りたい」と泣いていた二人だ。
 今、この世界を抜け出せて、きっと二人は、幸せに思っているだろう。
 それが羨ましく思う。

 でも佐藤優斗は、最後まできちんとゲームを終わらせるつもりだった。



 北方地方の黄金竜ごと、あの地方一帯を別次元へ移して“待機状態”にさせることには、佐藤自身の持つ“魔素”のほとんど全てを持っていかれてしまった。しばらくの間、佐藤が直接動くことは出来ない。
 本当なら、さっさと“星弾”をラウデシア王国に撃ち込みたかった。
 ラウデシア王国を落とした後は、東から順番に国々を落としていこうと思っている。皆、そうした侵攻進路を想定していないはずだ。

 北の国に眠る黄金竜がこの世界から消失したことを教えられた三公の一人、リヨン公がラウデシア王国を滅ぼしに行くと手を挙げた。北方地方の黄金竜は元より、竜騎兵団をも消失させた今、ラウデシア王国は赤子の首をひねるよりも簡単に国を落とせるはずであった。
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