転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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第十四章 招かれざる客人

第六話 朝食の席にて

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 翌日には、魔力を大量に失ったことによる体調不良もだいぶ落ち着いたようで、リン王太子妃も、朝食の席にやって来た。彼女はバルトロメオ辺境伯とウラノス騎兵団長と同じ席につき、彼らに饗応されていた。リン王太子妃はピンと背筋を伸ばし、礼儀正しく微笑みを浮かべて応対していた。こうして傍から見ると立派な威厳のある王太子妃にふさわしい姿に見えた。
 ルティ魔術師と三橋友親、その伴侶達に対しては、エイベル副騎兵団長とアルバート王子が朝食の席に一緒について会話を交わしながら食事をしていた。ルーシェは小さな竜の姿になって、アルバート王子の膝に座り、王子の手からパンなどを渡され、ムシャムシャとそれを食べている。それを見て、友親が「お前、すごく可愛いな!!」と言って、友親もまた自分のパン籠から小さな丸パンを取ってルーシェに手渡そうとしていた。

「ピルルゥ!!」

 口いっぱいにパンを入れているルーシェが、「もう無理!!」と言うと、友親が今度はハムをフォークに刺して差し出そうとする。

「ちょっと食べてみてよ。小さな竜って可愛いな!!」

 仕方なしにパンがいっぱい入っている口を開けて、友親からハムの切れ端を口に入れてもらう。
 口いっぱいに入っていながらも、モグモグと一生懸命食べている小さな竜の姿が可愛くて、友親はどこかウットリとしていた。

「いや、本当に可愛いな」

「トモチカ、私の口に入れてくれてもいいのだぞ」

 そう言って、友親の隣に座るカルフィー魔術師が真顔でパンとハムの載っている皿を差し出すので、友親はすぐさま頭を振っていた。

「お前は可愛くないからいい」

 それにまたショックを受けたような顔をするカルフィー魔術師。

「お前の伴侶じゃないか!!」

「鏡を見てから出直して来い」

「おい、トモチカ。あまりカルフィーを苛めるな」

「こいつが朝から馬鹿なことを言っているからだ」

 そう友親とカルフィーとケイオスが掛け合いのように言い合っている様子を、ルーシェはもぐもぐとパンとハムを食べながらじっと見つめていた。

 あの水場で、冷たい水の中に横たわっていた三橋友親の姿は、ルーシェにひどい衝撃を与えた。
 それからそこで聞いたカルフィー魔術師からの友親の過去の話も、今もルーシェの胸に深く突き刺さっている。

(もし友親が不幸なら、友親には俺達の国に残ってもらおうかと思っていたけど)

 でも、カルフィーやケイオスと気安く言葉を交わしている友親の姿は、不幸には見えない。楽しそうにも見える。でも、分からない。
 友親の本心は分からない。
 その楽しそうな姿とは裏腹に、本当は今も伴侶の二人の男から逃げたいと望んでいるのかも知れない。

 だから、直接、どうにか友親から話を聞きたかった。

「これから王宮へ行くということですが、殿下は私共と同行して下さるのですか?」

 ルティ魔術師がそうアルバート王子に尋ねる。
 アルバート王子は頭を振った。

「いえ、まだ化け物が残っている話を聞いています。私も駆除に加わる予定です」

「そうですか。確かに殿下の持つ魔剣があれば、あの化け物の駆除も捗りますね。一緒に王宮へ同行して頂けないのは残念ですが」

 そう、ルティ魔術師は言っている。
 しかし、アルバート王子としてはこのルティ魔術師のそばから出来るだけ離れたい気持ちであった。
 すでに、ルーシェが体内の魔力を使わずに魔法を駆使したことをこの魔術師は知っているのだ。
 異世界からの転移者、三橋友親やリン王太子妃が、“魔素”による魔力を提供したことをルティ魔術師は知っているはずだ。なれば、ルーシェも“魔素”を使っているのではないかと考え始めるのも時間の問題のような気がしていた。
 だからこそ、王宮への同行もせずに、彼の視界から静かにフェードアウトするつもりであった。

 その話を小耳に挟んだ友親が、ひどくがっかりした顔をして、小さな竜を見つめた。

「そうか。お前は王宮にはついて来てくれないのか。これでお別れなのか」

「ピルルゥゥゥゥゥ」

 ルーシェも切なげに黒い瞳を潤ませて、友親の茶色の目を見つめている。
 それからアルバート王子の顔を見つめて、身振り手振りをして懸命に何かを言っている。
 その言葉に、アルバート王子は厳しい顔をして頭を振っていた。

「だめだ、ルー」

「ピルピルルルピルピルルピルルル!!(友親を王宮まで送りたい。もっとこいつと話したいんだ!!)」

 アルバート王子が心話に切り替えて伝える。

(ルティ魔術師がいる。彼とは出来るだけ距離を置いた方がいい。分かるだろう)

「ピルルゥゥゥゥ」

 ルーシェはひどくしょんぼりとして、頭を垂れ、尻尾も下がっていた。
 その様子を見て、友親が手を伸ばして、ルーシェの頭を優しく撫でた。

「いいよ。お前には大事な仕事があるんだろう? また会いに来るよ。カルフィーが“転移”魔法使えるし。今後はもっと気軽に会えるだろう」

「……“転移魔法”をセヴァンから使ったのですか」

 ルティ魔術師が驚いたような声を上げていた。
 セヴァンとは、カルフィー魔道具店の本店がある都市の名前である。

「カルフィーは上級魔術師だからな」

「上級魔術師だからといって、長距離の“転移魔法”をそう簡単に使うことはできません。あの後に、貴方は“召喚”魔法のために魔力も提供している。どれほどの魔力を貴方はストックしていたのですか……」

 ルティ魔術師の目が信じられないように友親の姿を見つめている。
 その視線に居心地が悪いような様子を見せる友親。そしてカルフィー魔術師は、ルティ魔術師を威嚇するようにこう言った。

「トモチカは私の伴侶だ。あまり、不躾な目で見ないでくれ」

「貴方はただの魔道具店の店主の座に収まっておくにはあまりにも勿体ないです。どうでしょう。私と一緒にアレドリア王国へ……」

(こいつ、友親まで誘っているよ!!!!!!)

 アルバート王子の膝の上で、ルーシェは王子からフルーツを口に入れてもらいながら、唖然としてルティ魔術師を見つめていた。
 ルーシェを誘ったかと思えば、今度は三橋友親までスカウトしようとしているのである。
 だが、それにはケイオスがルティ魔術師を睨みつけ、冷ややかに言った。

「貴方はあまりにも無礼だ。友親には金輪際、話し掛けないでくれ」

「…………」

「確かに、ただの魔道具店と言われていい気はしない」

 友親はそう言って頷く。そして友親もキッパリと言ったのだ。

「カルフィー魔道具店は、俺達の大事な店なんだ。お誘いは有難いが、貴方の求めに応じることはない」
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