転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

文字の大きさ
300 / 711
第十五章 この世界で君と共に

第十一話 水場での話(上)

しおりを挟む
 カルフィーの屋敷の地下にある“水場”。
 最近ではそこへ毎日のように、リン王太子妃は三橋友親に頼んで連れてきてもらっていた。友親に頼んではいるが、実際に、リン王太子妃のいるハルヴェラ王国まで彼女を迎えに来て、ここまで“転移”して連れてきてくれるのはカルフィー魔術師だった。
 リン王太子妃は、護衛の女騎士ガヴリエラだけを伴ってやってくる。人数が増えると、“転移”の際の魔術師への負担が大きくなる。カルフィーは「友親に頼まれたから、仕方なく送迎しているのだからな。気を遣って同行者は一人にするように」とリン王太子妃に向かって言うものだから、女官メリッサは鬼のような形相でカルフィーを睨みつけ、女騎士ガヴリエラは、腰の剣の柄に手をやって「この無礼者を叩き斬ってもよろしいでしょうか、妃殿下」とリン王太子妃に確認するよう言ったので、リン王太子妃は慌てて「手出しは無用です」と頭を振らないといけなかった。

 カルフィーは全方面に敵を作る男だった。

 とはいえ、“転移”魔法が使えるカルフィーは極めて優秀な魔術師だった。
 “転移”魔法が使える魔術師など、そうそういない。それだけ術が難しく、また魔力の消費が極めて大きい魔法だった。カルフィーも友親から“魔素”を提供されているからこそ、これほど容易に“転移”魔法が使えるのである。友親がいなければ使えない魔法である。

 そして「同伴者は一人にするように」と言われていたのに、時々、ルーシェもリン王太子妃の背中にぺったりとくっついてカルフィーの屋敷にやって来ていた。アルバート王子がバンナムと訓練している間、手持ち無沙汰な時もあったし、友親にも会いたかったし、自身も来たるべき戦いに備えて“魔素”を蓄えておくことが必要だったからだ。

 今、リン王太子妃は朝も早い時間にカルフィーの屋敷の地下へやって来て、ドレスの裾を持ち上げて、素足を水場の水に浸している。冷たい水の中に長時間足を浸けておくことは出来ない。感覚がなくなるから、適当な頃合いで水から引き上げ、温めた後、また足を入れるという動作を繰り返していた。
 
 リン王太子妃のそばには、ガヴリエラが控えており、すぐに彼女の足を拭けるようにタオルを手にしている。そして少し離れた場所で、友親がカルフィーと帳簿などを手に頭を悩ましていた(そしてその近くに護衛のケイオスもいる)。一応、リン王太子妃をこの場所で一人にしてはならないと友親は考えているようなのだ。かといって仕事をしないわけにもいかず、友親とカルフィーは小さな机を持ち込んで、二人で帳簿やら書類やらを手にして額を突き合わせ、話し合っている様子だった。

「どこかで魔術師を調達しないと厳しいぞ」

 “遠話魔道具”はカルフィー魔道具店に莫大な富をもたらしたが、同時に、魔術師不足を露呈していた。今のペースで生産していっても、増大し続ける需要には応えられない。

「そうは言っても、魔術師をスカウトすることは難しい」

 友親がそう答える。
 そもそも魔術師の絶対数が少ないのである。
 北方のラウデシア王国でも見習い竜騎兵達に指導する魔術師が来ないことに困っていたが、どこの場所でも腕の良い魔術師は不足しているのだ。

 二人は眉間に皺を寄せて話し合っている。かなり困っているような様子だ。その姿を見て、気軽な部外者の立場にあるリン王太子妃は声をかけた。

「“遠話魔道具”の中には、“転移”魔法を刻んだ魔法陣の描かれた紙が入っているのでしょう?」

「そうだ」

 注文を断ってしまえばいいのだが、断り切れない先もある。そして一つを立てれば、もう一つも立てないといけない状況もあったりする。結果的に膨大な注文を請けざるを得ない状況に陥っている。

「全部手書きなの?」

「当然そうだ」

 何を聞いているのだと、カルフィーが答える。

「手書きじゃないといけないの?」

「手書き以外の何があるというのだ」

 それにリン王太子妃は答える。

「いえ、この世界にも簡単な印刷機があるでしょう。それを使ってコピーしてみたらいいのじゃないかしら」

「「…………」」

 友親とカルフィーが沈黙する。

「全部手書きじゃないといけない理由があるの?」

 リン王太子妃が尋ねる。するとカルフィーは顎に手を当てて考え込みながら言った。

「途中で魔力を込めて、神への祝福の祝詞を捧げる箇所がある。そこは手書きじゃないとまずいだろう。あと、通話先も手書きであることが必要だ」

「だけど、それ以外の定形文は、コピーでやれるかも知れないな」

「しかし、印刷が薄れたり掠れたりしたら発動しないだろう」

「精密に印刷する技術があれば、いけるはずだ。いっそのこと、印刷機も開発を進めたらどうだ」

「これ以上仕事を増やすのか、友親。店の者が死んでしまうぞ!!!!」

「………………………………………そうだな」

 実際、カルフィー魔道具店の店員は、“遠話魔道具”のせいで、皆、疲労困憊している。朝から晩までフルに働いている状況だった。これ以上、仕事を増やすことは難しい。

 リン王太子妃は、ちゃぷんと素足で、冷たい水を跳ねさせながら言った。

「うちの国にね、アレドリア王国から逃げてきた人達が結構いるの。魔術師もいるし、もしかしたら探せば印刷工もいるかも知れない」

 多くの学校を抱えた学術都市でもあったアレドリアの王都は陥落した。
 そこから逃げ出した者達も相応に多くいたのだ。
 ハルヴェラ王国は門戸を開けて、避難民を受け入れていたが、それも数が膨れ上がって来ている。

 その話を聞いて、カルフィーと三橋友親は同時にリン王太子妃の方に振り返り、同時に言った。

「「それだ!!!!」」

 こうして、カルフィー魔道具店は、アレドリア王国から逃げてきた魔術師や印刷工を、高給で次々とスカウトしていった。これにより、カルフィー魔道具店の“遠話魔道具”の増産も少しだけ目途がついたのだった。印刷による魔法陣の作成はまだ出来ていないが、それが可能となれば、相当増産も弾みがつくだろうと思われる。友親はリン王太子妃に感謝して、「委員長のおかげで上手くいきそうだ。お礼に、委員長のところに納品した“遠話魔道具”はタダにしておくな」と随分と気前が良いところを見せていたのだった。
しおりを挟む
感想 276

あなたにおすすめの小説

腐男子♥異世界転生

よしの と こひな
BL
ある日、腐男子で新卒サラリーマン・伊丹トキヤの自室にトラックが突っ込む。 目覚めたトキヤがそこで目にしたのは、彼が長年追い続けていたBL小説の世界――。しかも、なんとトキヤは彼が最推しするスパダリ攻め『黒の騎士』ことアルチュール・ド・シルエットの文武のライバルであり、恋のライバルでもあるサブキャラの「当て馬」セレスタン・ギレヌ・コルベールに転生してしまっていた。 トキヤは、「すぐそばで推しの2人を愛でられる!」と思っていたのに、次々と原作とは異なる展開が……。 ※なろうさん、カクヨムさん、Caitaさんでも掲載しています。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!

モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。 その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。 魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。 その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?! ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

死に戻りした僕を待っていたのは兄たちによる溺愛モードでした

液体猫(299)
BL
*諸々の事情により第四章の十魔編以降は一旦非公開にします。十魔編の内容を諸々と変更いたします。 【主人公(クリス)に冷たかった兄たち。だけど巻き戻した世界では、なぜかクリスを取り合う溺愛モードに豹変してしまいました】  アルバディア王国の第五皇子クリスが目を覚ましたとき、十三年前へと戻っていた。  前世でクリスに罪を着せた者への復讐は『ついで。』二度目の人生の目的はただ一つ。前の世界で愛し合った四男、シュナイディルと幸せに暮らすこと。  けれど予想外なことに、待っていたのは過保護すぎる兄たちからの重たい溺愛で……  やり直し皇子、クリスが愛を掴みとって生きていくコミカル&ハッピーエンド確定物語。  第三章より成長後の🔞展開があります。 ※濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭、ちょっとだけ重い展開あり。 ※若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です!

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

魔王に転生したら、イケメンたちから溺愛されてます

トモモト ヨシユキ
BL
気がつくと、なぜか、魔王になっていた俺。 魔王の手下たちと、俺の本体に入っている魔王を取り戻すべく旅立つが・・ なんで、俺の体に入った魔王様が、俺の幼馴染みの勇者とできちゃってるの⁉️ エブリスタにも、掲載しています。

処理中です...