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第十六章 心地良い場所
第九話 戦勝会(下)
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第一王子リチャードは、七番目の弟アルバート王子が父王の手から褒美を渡され、公爵の地位を与えられるやりとりを黙って眺めていた。
その彼のそばには、彼の身を守るように竜騎兵団長ウラノスや、副騎兵団長エイベル、バルトロメオ辺境伯がおり、仲間の竜騎兵達も控えている。
このめでたい席に、本来ならアルバート王子の伴侶たるシアンもいるべきであったが、彼は体調不良という理由で欠席していた。
リチャード王子は、もしかして、戦勝会の場ならばシアンに会うことが出来るかも知れないと考えていた。何度も王宮へ招くための手紙を出しても、彼は北方の竜騎兵団の拠点から一歩も出ることなく、あの極寒の僻地に閉じこもっていた。
シアン。
艶やかな黒髪に濡れたような輝きを放つ黒曜石のような大きな瞳に、真っ白の膚、折れそうなほどに華奢な美しいこの少年に、七番目の王子アルバートは一目で恋をした。アルバートはシアンを平民の座から引き上げて婚姻した。そうまでして望んだ少年を、アルバートは掌中の珠のように慈しんでいるらしい。
その少年は、非常に残念なことにこの戦勝会には来ていない。
リチャード王子の内心は、ひどくガックリと来ていたが、外見ではその想いを窺わせずに、微笑を浮かべて父王のそばに座っていた。
熱心に弟の伴侶に対して、手紙や贈り物をするリチャード王子を、リチャードの妃であるカミラ妃は何度もたしなめた。それでも一方通行の手紙を出し続けるリチャードに、呆れているようだ。
そして周囲の臣達も、「お相手が悪すぎます、殿下」と言って制止する。
そう。
シアンの伴侶アルバート王子は、リチャードの弟王子というだけでなく、今をときめく“勇者”なのである。サトー王国のサトーをその手で討ち取ったこの若者の機嫌を損ない、ラウデシア王国から出奔されてはたまらない。シアンとアルバート王子との間に、割り込むようなことをしてはならない。
リチャードの父王や母妃からも、リチャードは厳重に注意を受けるような有様だった。
その場は「……わかっております」と大人しく引き下がったリチャード王子だったが、内心は別だった。
未だに思ってしまう。
(弟のアルバートよりも先に、あの人に会うことが出来ていたら)
そう。
弟アルバートも、北方の竜騎兵団の拠点近くの村で、あの人を見つけ、たちどころに恋に落ちたという。
(もし弟よりも先に、あの人と会うことが出来ていたのなら、きっと私も彼をすぐに妃に迎えようとしていただろう)
そんな、たらればを考えても仕方のないことだと分かっている。
でも、もし自分が彼を妃に迎えることが出来たのなら、あんな極寒の地である竜騎兵団の拠点に、愛しい人を留めることなどせず、この王宮の温かな部屋で、美しい花と美しい衣を彼のために用意して、居心地の良いように過ごさせるだろう。そうすれば、病弱な彼とてきっと、その身は健やかになる。
そんな想像をいつもしてしまうのだ。
アルバート王子の肩に留まった小さな紫色の竜は、ふいにブルリと身を震わせた。
それからキョロキョロと辺りを見回した後、王子の胸元にビタンと張り付く。
突然の行動に、アルバート王子は少し笑いながら「どうしたんだ、ルー」と尋ねると、小さな竜は「……ピルゥピル(……悪寒がした)」と言って、王子の胸元にいつまでも張り付いていたのだった。
その彼のそばには、彼の身を守るように竜騎兵団長ウラノスや、副騎兵団長エイベル、バルトロメオ辺境伯がおり、仲間の竜騎兵達も控えている。
このめでたい席に、本来ならアルバート王子の伴侶たるシアンもいるべきであったが、彼は体調不良という理由で欠席していた。
リチャード王子は、もしかして、戦勝会の場ならばシアンに会うことが出来るかも知れないと考えていた。何度も王宮へ招くための手紙を出しても、彼は北方の竜騎兵団の拠点から一歩も出ることなく、あの極寒の僻地に閉じこもっていた。
シアン。
艶やかな黒髪に濡れたような輝きを放つ黒曜石のような大きな瞳に、真っ白の膚、折れそうなほどに華奢な美しいこの少年に、七番目の王子アルバートは一目で恋をした。アルバートはシアンを平民の座から引き上げて婚姻した。そうまでして望んだ少年を、アルバートは掌中の珠のように慈しんでいるらしい。
その少年は、非常に残念なことにこの戦勝会には来ていない。
リチャード王子の内心は、ひどくガックリと来ていたが、外見ではその想いを窺わせずに、微笑を浮かべて父王のそばに座っていた。
熱心に弟の伴侶に対して、手紙や贈り物をするリチャード王子を、リチャードの妃であるカミラ妃は何度もたしなめた。それでも一方通行の手紙を出し続けるリチャードに、呆れているようだ。
そして周囲の臣達も、「お相手が悪すぎます、殿下」と言って制止する。
そう。
シアンの伴侶アルバート王子は、リチャードの弟王子というだけでなく、今をときめく“勇者”なのである。サトー王国のサトーをその手で討ち取ったこの若者の機嫌を損ない、ラウデシア王国から出奔されてはたまらない。シアンとアルバート王子との間に、割り込むようなことをしてはならない。
リチャードの父王や母妃からも、リチャードは厳重に注意を受けるような有様だった。
その場は「……わかっております」と大人しく引き下がったリチャード王子だったが、内心は別だった。
未だに思ってしまう。
(弟のアルバートよりも先に、あの人に会うことが出来ていたら)
そう。
弟アルバートも、北方の竜騎兵団の拠点近くの村で、あの人を見つけ、たちどころに恋に落ちたという。
(もし弟よりも先に、あの人と会うことが出来ていたのなら、きっと私も彼をすぐに妃に迎えようとしていただろう)
そんな、たらればを考えても仕方のないことだと分かっている。
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