転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

文字の大きさ
329 / 711
第十六章 心地良い場所

第十七話 捕獲作戦(中)

しおりを挟む
 銀色のスライムを捕獲するための準備が急いで進められた。
 作戦では、スライムを捕獲するといっているが、近衛騎士団長やウラノス騎兵団長は、捕獲と同時に銀色のスライムをすぐさま殺害して処分するつもりである。
 分裂を繰り返して簡単に増殖するスライムは、それが人をたやすく殺す方法を知ったスライムであればこそ、非常に危険な存在である。その小さな欠片だけでも生き残り、再び増殖してしまえば延々と脅威が続くことになる。後の憂いが無きよう、存在全てを欠片も残さずにこの世から消してしまう方が良いと述べていた。

 しかし、そのことに内心不満を感じていた者達が、王宮副魔術師長をはじめとする王宮内の魔術師達であった。騎士団長らに処分すると言われているのは、これまでに見たことのない、貴重な銀色のスライムなのである。
 近衛騎士二人を殺害したスライムを産み出した者が、どうやら王宮魔術師長だと知られ、王宮内では「スライムの処分一択」に意見が傾いているが、管理できる大きさに保ち、研究を続けていった方が国防上良いのではないのかと話す魔術師達もいた。

 もし銀色のスライムを、意のままに操ることが出来るなら、あれは魔術師達にとっての天敵にすることができる。魔力の全てを抜き取ることのできる銀色のスライムは、サトー王国のサトーのような大規模魔術を使う敵の前に差し出してやれば良い。魔力の全てを失った魔法使いはただの人になってしまう。サトーでさえも簡単に倒せるはずだ。

 そんな意見を耳にしながらも、近衛騎士団長とウラノス騎兵団長は、銀色のスライムを処分するという意見を変えることはなかった。
 そしていよいよ、作戦の決行の日がやってきた。




 作戦の決行の日、紫竜ルーシェは小さな竜の姿のまま、王宮の裏手に広がる森の中を一頭でポテポテと歩いていた。大きな竜の姿に変わって銀色スライムの前に出てしまうと、すぐさまその体に触れられて魔力を吸い出されてしまうかも知れない。スライムから捕まえにくいように小さな竜の姿のまま、囮になる方が良いだろうと言われたからだ。

 もし銀色スライムを見つけたら、すぐさま“心話”でアルバート王子を呼ぶように言われていた。
 紫竜ルーシェがポテポテと歩く少し離れた場所には、アルバート王子はもとより、近衛騎士団長やウラノス騎兵団長、多くの騎士騎兵が後をつけていた。

 ルーシェに何かあれば、騎士騎兵達がすぐさま駆け寄っていく話になっている。
 自分がポテポテと歩くその後ろを、大勢の騎士騎兵達が、自分を守るために後をつけていることに、ルーシェはくすぐったいような気がしていた。

 近衛騎士団長などは「殿下の大切にされている貴重な紫竜ですから、我々も全力を挙げてお守りします」と言っていた。それに加えて頼りになるウラノス騎兵団長や、自分の伴侶のアルバート王子もそばにいるのだ。銀色のスライムの存在は不気味な気はしたけれど、ルーシェには不安はあまりなかった。

 王宮の森は広い。

 王宮で整備されている庭園を抜けた先にあるその森の中には、細い小道が整備されていて、ルーシェはポテポテとその小路を歩き続けていた。背の高い木々の上から細く光が差し込み、柔らかな木漏れ日の中を小さな紫色の竜は歩いていく。
 小さな竜の姿をしているため、歩幅が小さい。一生懸命に歩いても、進む距離は長くはならない。後をつけている騎士騎兵達にとっては楽な追跡対象だろう。そして王宮内のどこかに潜んでいる銀色のスライムにとっても、楽に見つけることができる存在だ。

 ルーシェは不思議に思って、元王宮魔術師のレネに話を聞いていた。
 子供姿のルーシェは、アルバート王子の膝の上に座りながら「どうしてスライムは、俺がたくさんの魔力を持っていると分かるの?」と尋ねると、魔術についての教師を務めていたレネは優しく教えてくれた。

「おそらく、あの銀色のスライムは魔力器官を備えているのでしょう。成長していく中で、それの感度が研ぎ澄まされていったのかも知れません」

「魔力器官?」

「魔力を持っている者達は皆、それを持っていると言われていますね。魔力を感知することができる体内にある器官です。あのスライムは、魔力を持っているものを獲物とするので、当然、魔力器官もあるのでしょう。それによって他人が持つ魔力も感知できるのですよ」

「ふぅん」

「昔、王宮でレネ先生に教わっただろう」

 アルバート王子がそう言うのに対して、ルーシェがあっけらかんと「忘れた!!」と答えて、その場にいた者達を笑わせていた。



 
 小さな竜姿のルーシェは、ポテポテと木の間の小路を歩いて行く。このまま行けば、森を抜けた先にあるひらけた草原くさはらに辿りつくはずだ。ウラノス騎兵団長からは、その草原をぐるりと一回りした後、またこの小道に戻って、道を往復するように言われていた。

 朝から歩き始めて、もう昼近くになってきている。

 ルーシェは自分のぽこんと出ている腹を小さな手で触った。

(お昼ご飯をどうするのか聞いてなかったな)

 さすがに昼ご飯を食べずに、囮として歩き続けろなんて言われないだろうと思っている。
 
(お昼ご飯も持ってくれば良かった。背中に背負って)

 リン王太子妃から、風呂敷をもらっていたので、そこにパンとフルーツを入れて背中に背負ってくれば良かった。そうすれば、森を抜けた先にある草原でピクニックも出来たのに!!

 そんなたわいなことを考えて、すっかり気を緩ませていたのが悪かったのか。

 ルーシェが歩いている小道の先に視線をやった時、そこに小さな小さな銀色のスライムがいたのだった。
 最初に大広間で遭遇した時には、猫ほどの大きさだったスライムが、今は赤ん坊の拳ほどの大きさである。大広間での火魔法の攻撃で、銀色のスライムは大きさを減じるほどの被害を受けたのだろう。そして赤ん坊の拳ほどの大きさのものが、床板の隙間から逃げ切ったということだ。

「ピ!!!!」

 驚きのあまり、ルーシェは黒い目を最大限に見開く。

(王子、王子、王子、王子、王子いぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!)

 ルーシェは心話で悲鳴を上げた。
 “心話”でルーシェの悲鳴のような声を聞き取ったアルバート王子はすぐさまルーシェがいる方角へ走っていき、同行している騎士騎兵達も前へと殺到したのだった。
しおりを挟む
感想 276

あなたにおすすめの小説

腐男子♥異世界転生

よしの と こひな
BL
ある日、腐男子で新卒サラリーマン・伊丹トキヤの自室にトラックが突っ込む。 目覚めたトキヤがそこで目にしたのは、彼が長年追い続けていたBL小説の世界――。しかも、なんとトキヤは彼が最推しするスパダリ攻め『黒の騎士』ことアルチュール・ド・シルエットの文武のライバルであり、恋のライバルでもあるサブキャラの「当て馬」セレスタン・ギレヌ・コルベールに転生してしまっていた。 トキヤは、「すぐそばで推しの2人を愛でられる!」と思っていたのに、次々と原作とは異なる展開が……。 ※なろうさん、カクヨムさん、Caitaさんでも掲載しています。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

「隠れ有能主人公が勇者パーティから追放される話」(作者:オレ)の無能勇者に転生しました

湖町はの
BL
バスの事故で亡くなった高校生、赤谷蓮。 蓮は自らの理想を詰め込んだ“追放もの“の自作小説『勇者パーティーから追放された俺はチートスキル【皇帝】で全てを手に入れる〜後悔してももう遅い〜』の世界に転生していた。 だが、蓮が転生したのは自分の名前を付けた“隠れチート主人公“グレンではなく、グレンを追放する“無能勇者“ベルンハルト。 しかもなぜかグレンがベルンハルトに執着していて……。 「好きです。命に変えても貴方を守ります。だから、これから先の未来も、ずっと貴方の傍にいさせて」 ――オレが書いてたのはBLじゃないんですけど⁈ __________ 追放ものチート主人公×当て馬勇者のラブコメ 一部暗いシーンがありますが基本的には頭ゆるゆる (主人公たちの倫理観もけっこうゆるゆるです) ※R成分薄めです __________ 小説家になろう(ムーンライトノベルズ)にも掲載中です o,+:。☆.*・+。 お気に入り、ハート、エール、コメントとても嬉しいです\( ´ω` )/ ありがとうございます!! BL大賞ありがとうございましたm(_ _)m

死に戻りした僕を待っていたのは兄たちによる溺愛モードでした

液体猫(299)
BL
*諸々の事情により第四章の十魔編以降は一旦非公開にします。十魔編の内容を諸々と変更いたします。 【主人公(クリス)に冷たかった兄たち。だけど巻き戻した世界では、なぜかクリスを取り合う溺愛モードに豹変してしまいました】  アルバディア王国の第五皇子クリスが目を覚ましたとき、十三年前へと戻っていた。  前世でクリスに罪を着せた者への復讐は『ついで。』二度目の人生の目的はただ一つ。前の世界で愛し合った四男、シュナイディルと幸せに暮らすこと。  けれど予想外なことに、待っていたのは過保護すぎる兄たちからの重たい溺愛で……  やり直し皇子、クリスが愛を掴みとって生きていくコミカル&ハッピーエンド確定物語。  第三章より成長後の🔞展開があります。 ※濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭、ちょっとだけ重い展開あり。 ※若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

魔王に転生したら、イケメンたちから溺愛されてます

トモモト ヨシユキ
BL
気がつくと、なぜか、魔王になっていた俺。 魔王の手下たちと、俺の本体に入っている魔王を取り戻すべく旅立つが・・ なんで、俺の体に入った魔王様が、俺の幼馴染みの勇者とできちゃってるの⁉️ エブリスタにも、掲載しています。

処理中です...