転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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外伝 はじまりの物語  第一章 召喚された少年達と勇者の試練

第八話 勇者の思い ~彼との出会いについて

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 大型トラックに跳ね飛ばされた。
 その時、(ああ、短い人生だった。面白くもなんともない人生だった)と思った。
 鈴木陸、十五歳。青陵学園高等学校の一年生だった。
 剣道部に在籍し、その腕前はインターハイ上位入賞者クラス。勉強においても、当然のように学園トップを維持していた。
 父や家族達は、自分がそうあるべきことを当然のように望んでいたし、そして自分は当然のようにそれを果たすことが出来た。
 
 自覚していた。自分が非常に優秀であることに。

 それなのに、避けることも出来ず大型トラックに跳ね飛ばされて、おそらく鈴木陸という人間は一瞬で死んだ。意識を失い、目を醒ました時には真っ白い世界に一人佇んでいた。
 
 そこに、何かがいた。







 女のようだった。

 その女は、自分を女神だと名乗った。

 そして彼に、異世界で命じたのだった。





 正直、こんな状態でなければ、戯言を言うこの女は正気ではない、気が触れていると思っただろう。
 女はこう言った。

「異世界で勇者をやって、試練を果たせば、元の世界に戻ることが出来る」

 どうやって元の世界へ戻ることが出来るのだと問いかけると、女は言った。

「試練を果たした後、貴方の望みを叶える。その時、元の世界へ帰りたいと望みを言えば良い」



 正直、元の世界にはそれほど執着はなかった。
 飽きていたのかも知れない。
 淡々とした毎日、当然のように繰り返される毎日、称賛を受け続け、苦労も何もない世界に。

 だが、このまま真っ白い世界に一人取り残されても困る。だから、女神だという女の言葉に従った。
 その女は女神だと最初名乗ったが、直感的にどうにも、怪しいものがあった。

 信用ならなかった。







 それから異世界に転移した。
 転移した後に気が付いた。
 自分が勇者として召喚されることで、巻き込まれた者達がいることに。
 青陵学園の三人のことは知っていた。
 同じ学園で、同じクラスだったからだ。
 特に佐藤優斗は、自分のことを非常にライバル視していた。
 青陵学園に入学して以来、彼は試験で一位を獲ったことはない。
 常に、鈴木が一位を獲っていたからだ。

 そして長野京子と清瀬千春。二人は友人関係にある。
 常に姉妹のように一緒にいる二人は、トラックに跳ねられた時も一緒にいて、二人して跳ねられてしまったのだろう。
 佐藤のことはつくづく運が悪いと思う。
 もし、鈴木だけがトラックに跳ねられて、佐藤がトラックに跳ねられていなければ、鈴木の存在しない世界でようやく、佐藤は学年一位を獲ることが出来たはずだからだ。

 それから、山際高等学校の三人。この三人こそ本当の意味での犠牲者だろう。
 学校も違う、鈴木が顔も姿も見たことの無い生徒達である。

 青陵学園の生徒達の中には、偏差値が自分達の高校よりも低い山際高等学校の生徒達を下に見る者もいた。
 だが、山際高等学校の生徒達は、非常にのびのびとして楽しそうに見えることがあった。
 実際、自己紹介をした彼らは、皆、異世界にやって来たことで悲しみに打ちひしがれることもなく、どこか明るくあっけらかんとしていた。
 
 沢谷雪也、三橋友親、石野凛と名乗った三人。裏も表も無さそうな、単純で素直で明るい人々だった。







 試練の旅にいよいよ出立することになり、王は鈴木に対して、勇者を助けるためにと騎士達を付け、更に二人の王女と冒険者達を付けた。
 わざわざ王女を付けたことに驚いたが、内心、見張りの意味があるのだろうと思っていた。
 ラーマ王女は試練の旅に出る間、異世界に巻き込まれてやって来た者達を預かると言った。
 勇者の旅は過酷で、一般人はついていけないからだ。

 城の残留希望者としてすぐに佐藤が手を挙げ、次いで青陵学園の女子二人も手を挙げた。
 期待していなかったので、それについては何とも思っていなかった。
 だが驚いたのは、山際高等学校の三人の生徒達が、なんと一緒に試練の旅へついて行くと述べたことだった。
 うち一人の、沢谷雪也は率先して手を挙げていた。

 彼の言うところ、こうだった。

「鈴木が旅の最中、お腹を壊して試練を果たせないと困るからな!!」

 その台詞を聞いた時、正直、こいつは一体何なんだと思った。
 それが初めて、沢谷雪也に感じた感情だった。

 ただ、それでも沢谷雪也が旅に同行してくれて助かったのは確かだった。
 彼が食事に気を付けてくれたから、その部分については全く考え悩む必要はなかった。
 この異世界に来た当初、食べ物でお腹を壊す者達が多かった。
 やはり異世界。何も考えずにナマモノなど口にすると、危ないのだ。
 雪也の言葉通り、お腹を壊して勇者の試練を果たせなくなる事態も充分に考えられた。

 
 雪也は下手な女子よりも料理が上手かった。
 聞けば、母親が怪我をした時に、料理を習ったらしい。それから料理を作ることが好きになったと言っていた。今ではクッキーやパンまで焼けると聞いて驚いた。
 同行した者達は、例外なく雪也の料理に胃袋を掴まれ、雪也の言うことをよく聞くようになっていた。
 そしてそれは、勇者鈴木も例外ではなかった。

 彼の焼いた甘辛肉を挟んだパンは最高に美味しかった。
 雪也は「蜂蜜も入れて、照り焼きにしているから旨いだろう」と言っていた。
 確かに美味しい。
 騎士達も、雪也の親友の三橋友親も、そして委員長と呼ばれる石野凛という女子生徒も目の色変えて貪り食っていた(二人の王女達も絶賛していた)。
 雪也は、勇者鈴木のパンだけに、肉を五枚も入れてくれた。

「鈴木はすごく頑張っているからな。特別だぞ」

 友親が「俺も俺も」と真横に切れ目を入れたパンを開いて甘辛肉をたくさん入れて欲しがったが、雪也は彼を蹴っ飛ばしていた。

 正直、嬉しかった。

 それから雪也は、疲れが取れるからといって、小袋に入れたクッキーを持たせてくれた(ただぶつけると粉々にクッキーが砕けるので注意するようにと言っていた。それなのにそうしてしまったコリーヌ王女はそれが入った袋を持って泣いていた)。疲れた時には温かな飲み物もすぐに用意してくれる。ささやかだけど、ほっと安心するような雪也の料理。彼は出来ることを精一杯果たして、勇者と仲間達を応援してくれた。
 雪也がいてくれると助かったし、それに彼の作るものは美味しく、彼と一緒にいると気を遣う必要も無くて、気が楽だった。
 
 だから、「ユキのような人をお嫁さんにすることが出来たら、きっと幸せだろうね」と言ってしまったのは本心だった。
 本当に、雪也のような人がいてくれたら、もっと自由に息が出来た気がする。
 そして元の世界でも、彼が傍らにいてくれたら、あのつまらない世界でも幸せな気持ちで生きていくことが出来たかも知れない。
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