転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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外伝 ある護衛騎士の災難  第一章

第十話 領域侵犯

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 そうして、その日の夜、私はアンリ王子の寝台で休むことになった。
 私は周囲の護衛騎士達に何度も言ったのだ。

 左足首を骨折している
  ↓
 部屋の長椅子で眠るのは大変
  ↓
 アンリ王子の寝台で眠らせる

 ではなく、せめて別室に寝台を用意してそこで眠らせて欲しいと。
 だが、護衛騎士達は「アンリ王子は呪いのせいで、卿が視界の中にいなければ騒ぐのだ。別室はあり得ない」と全員が首を振った。
 彼ら全員、アンリ王子から何か握らせられているんじゃないかと私は疑ったくらいであった。

 そしてアンリ王子は、私が同じ寝台の上で横になっていることに、過去最高に嬉しそうな顔をしつつも、その左足首を骨折している状況に顔をしかめていた。

「ハヴリエルは足がひどく痛むであろう。済まない、私のせいで」

 アンリ王子が私を労わり、そして謝罪まですることに驚いた。
 護衛の騎士としてもう少し気を配れば、私はこの足首の骨折という怪我もしなかったのではないかと反省する思いもあったから、私は彼の謝罪に首を振る。
 それに、これは私がきちんと仕事を果たしたことによる結果だった。

「殿下、先ほども申し上げましたが、私は殿下をお守りすることが仕事なのです。謝罪は必要ございません。むしろ、よくやったと褒めて下さい」

「…………ハヴリエル」

 アンリ王子の碧い目は、それでもどこか悲しそうな切ない光を浮かべて私を見つめていた。

「卿が私の前で傷つく姿を見ることが辛い」

「殿下、それに明日、治癒魔法を使える術者を呼んで頂けることになっております」

 治癒魔法を使える魔術師は貴重なのだ。
 それをわざわざ呼んでもらえるだけでも有難い。

「それで、今の痛みも腫れもだいぶなくなると思います。ご心配は無用です」

 自然治癒に任せるには時間がかかってしまう。
 そうなれば王子の警護を務められない。だから、さっさと治癒魔法を使って動ける状態に持っていきたかった。
 ところがそこに、同室で警護を務める護衛騎士が話の途中に割り込んできた。

「ハヴリエル卿、治癒魔法の術者を呼ぶことは断ったぞ」

「………………何故ですか」

「足の骨折を治癒魔法で強引に治そうとすると、変な付き方をして足首に癖が付く場合がある。卿のその骨折は、ずれてもいない綺麗なものであるから、自然治癒に任せた方が良い」

「…………そうなると、私は殿下の警護につくことができません」

「そもそも卿は、殿下の護衛任務から外されているはずだ。特別任務中であろう」

 近衛騎士団長からもそう言われていた。
 実際、交渉の末、報酬も三倍に引き上げられている。

 そしてアンリ王子も重ねるようにこう言った。

「騎士たるもの、足に癖がついてしまうのはマズイであろう。自然治癒に任せた方が良い。お前は優秀な護衛騎士だ。是非、回復には万全を期して欲しい」

「…………殿下」

 殿下のその優しさに、一瞬私は絆されそうになったが、彼がポンポンと寝台を叩いたことで、ハッと気が付いたのだ。

「完治するまでは、私と同じ寝台だな!! ハヴリエル」

 殿下と周囲の護衛騎士がグルになっている。
 そんな疑心暗鬼の思いに捕らわれそうになった。

 だから、私は殿下にこう申し上げた。

「…………分かりました。それでは寝台の中央部から上下縦に線を引いたここを境界線と致します。ここから殿下は一歩も入ってはなりませぬ」

「ハヴリエル……」

「お分かりですね、殿下」

 私が寝台の中心を指さすと、アンリ王子はひどく苦渋の表情で頷いた。

「分かった。ハヴリエルの言葉に従おう」

「ご承諾頂けて幸いです」

 その夜も私は殿下の方を向いて眠った。殿下は「足は痛まぬか」「辛かったらすぐに言うのだぞ」「足首を冷やす氷は足りているか」と非常に甲斐甲斐しかった。

 そして翌朝目を覚ました時、何故かアンリ王子は私に抱きついて眠っていた。
 寝台の境界線を越えてきている。
 
 だが、スヤスヤと幸せそうな表情で眠っている彼を見ていると、「侵犯しましたね!!」と目くじら立てて怒る気になれず、ため息をついてもうひと眠りするために、目を伏せたのだった。

 そんな私とアンリ王子の二人を、周囲の護衛騎士達は何故か温かく見守っていた。
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