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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です 第一章 五番目の王子との学園時代
第五話 王子と王立図書館へ行く
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十歳になったユーリスは、十歳の誕生日を迎えるや否や、すぐさま王立図書館へ足を運んだ。
以前から父親に、入館証明のための保証人になってくれることを頼んでおり、彼の手にはその父親の名が書かれた紙と、保証金が握られていた。
一緒に王立図書館へついてきてくれたシルヴェスター王子は、五番目の王子といえども、王家の者である。王立図書館入館のための保証人も保証金も当然必要がなく、その身分を表す指輪を提示し、名前を入口で記帳するだけで入館を許されていた。
ユーリスはそれが羨ましくて、シルヴェスターをじっと見つめていた。
「殿下が羨ましいです。もしや、殿下には入館の年齢制限も関係無かったのではありませんか」
「そうだ」
「…………私が殿下のお立場でしたら、歩き始めると同時に、図書館の扉を叩いていましたね」
そうユーリスに言われ、シルヴェスターは吹き出した。
「さすがに、歩き出すと同時に図書館の扉をくぐっても意味はないだろう。文字も読めないはずだ」
赤子の歩き始めは大体一歳前後である。その年齢では言葉も覚束ず、文字も当然読めない。
ユーリスは、入館証の札を入口で受け取っていた。
今後はこの札を提示すれば、王立図書館への入館が許される。
彼はそれをひどく大切そうに、懐に仕舞っていた。
その様子を見て、ユーリスは、バンクール商会の後継ぎとして将来を定められているが、学者の道へ進む方が向いているのではないかとシルヴェスターは思った。すらすらと古い書物も読むことができるユーリスは、その昔の人々の生活を、シルヴェスターに本を読みながら教えてくれる。その時の彼の声は弾み、その瞳も輝いている。
ただ、そう思っていてもシルヴェスターはそのことをユーリスに言うことはなかった。
ユーリスもシルヴェスターも、自分ではない誰かに決められた道が、各々の前に敷かれている。その道を外れることなど許されないのだ。
ユーリスは王立図書館の中を進んで行った。
壁には木製の書棚が天井近くまで組んで置かれており、そこには本がビッシリと入っていた。大きな窓から、光が建物内部まで差し込んできている。王立図書館は入館の際の保証金が高いこともあり、また保証人が必要なこともあり、そうそう気軽に立ち入ることが出来ない、庶民にとっては敷居の高い場所であった。
しかし、幼い頃からこの図書館へ来ることを夢見ていたユーリスにとって、この図書館の中に足を踏み入れた今日のこの日は、彼にとってまさに生涯の記念となる日であった。
古書の置かれている棚にふらふらと近づくと、彼は頬を紅潮させてその古書のズラリと並んでいる棚をどこかうっとりと眺めている。
それから、そっと手を伸ばし、古い本を棚から一冊取り出した。
彼は本を手に、長机の椅子の一つに座ると、黙って本の頁をめくり始めていた。
シルヴェスターは、シルヴェスターの存在を忘れたかのように、本に没頭しているユーリスの様子を見た後、小さく「仕方ないな」と口元に笑みを浮かべながら呟き、彼もまた書棚から本を取り出して、椅子に座って読み始めた。
それはその日の陽が暮れ始め、夜を迎えんとする時まで続いた。シルヴェスターは寮の閉門時間にはさすがに間に合うように帰らなければならないと、ユーリスの肩を揺すった。
それでようやくユーリスは我を取り戻したようで、「ああ、申し訳ありません。もう時間なのですね」と謝罪を口にして、手にしていた本を名残惜し気に棚の中へ戻し、シルヴェスターの手を掴んで、王立図書館を後にしたのだった。
それからユーリスは、時間さえあれば王立図書館へ足を運び、よく古書を読み耽っていた。
図書館の司書たちが、ユーリスの存在を覚えてしまうほど、彼は頻繁に王立図書館に出入りしていた。
黒髪の美しいユーリス少年が、熱心に本を読み耽る姿は、まこと絵になるようで、図書館の司書達も、なんとなしに彼が来ることを待っているかのような雰囲気があった。
以前から父親に、入館証明のための保証人になってくれることを頼んでおり、彼の手にはその父親の名が書かれた紙と、保証金が握られていた。
一緒に王立図書館へついてきてくれたシルヴェスター王子は、五番目の王子といえども、王家の者である。王立図書館入館のための保証人も保証金も当然必要がなく、その身分を表す指輪を提示し、名前を入口で記帳するだけで入館を許されていた。
ユーリスはそれが羨ましくて、シルヴェスターをじっと見つめていた。
「殿下が羨ましいです。もしや、殿下には入館の年齢制限も関係無かったのではありませんか」
「そうだ」
「…………私が殿下のお立場でしたら、歩き始めると同時に、図書館の扉を叩いていましたね」
そうユーリスに言われ、シルヴェスターは吹き出した。
「さすがに、歩き出すと同時に図書館の扉をくぐっても意味はないだろう。文字も読めないはずだ」
赤子の歩き始めは大体一歳前後である。その年齢では言葉も覚束ず、文字も当然読めない。
ユーリスは、入館証の札を入口で受け取っていた。
今後はこの札を提示すれば、王立図書館への入館が許される。
彼はそれをひどく大切そうに、懐に仕舞っていた。
その様子を見て、ユーリスは、バンクール商会の後継ぎとして将来を定められているが、学者の道へ進む方が向いているのではないかとシルヴェスターは思った。すらすらと古い書物も読むことができるユーリスは、その昔の人々の生活を、シルヴェスターに本を読みながら教えてくれる。その時の彼の声は弾み、その瞳も輝いている。
ただ、そう思っていてもシルヴェスターはそのことをユーリスに言うことはなかった。
ユーリスもシルヴェスターも、自分ではない誰かに決められた道が、各々の前に敷かれている。その道を外れることなど許されないのだ。
ユーリスは王立図書館の中を進んで行った。
壁には木製の書棚が天井近くまで組んで置かれており、そこには本がビッシリと入っていた。大きな窓から、光が建物内部まで差し込んできている。王立図書館は入館の際の保証金が高いこともあり、また保証人が必要なこともあり、そうそう気軽に立ち入ることが出来ない、庶民にとっては敷居の高い場所であった。
しかし、幼い頃からこの図書館へ来ることを夢見ていたユーリスにとって、この図書館の中に足を踏み入れた今日のこの日は、彼にとってまさに生涯の記念となる日であった。
古書の置かれている棚にふらふらと近づくと、彼は頬を紅潮させてその古書のズラリと並んでいる棚をどこかうっとりと眺めている。
それから、そっと手を伸ばし、古い本を棚から一冊取り出した。
彼は本を手に、長机の椅子の一つに座ると、黙って本の頁をめくり始めていた。
シルヴェスターは、シルヴェスターの存在を忘れたかのように、本に没頭しているユーリスの様子を見た後、小さく「仕方ないな」と口元に笑みを浮かべながら呟き、彼もまた書棚から本を取り出して、椅子に座って読み始めた。
それはその日の陽が暮れ始め、夜を迎えんとする時まで続いた。シルヴェスターは寮の閉門時間にはさすがに間に合うように帰らなければならないと、ユーリスの肩を揺すった。
それでようやくユーリスは我を取り戻したようで、「ああ、申し訳ありません。もう時間なのですね」と謝罪を口にして、手にしていた本を名残惜し気に棚の中へ戻し、シルヴェスターの手を掴んで、王立図書館を後にしたのだった。
それからユーリスは、時間さえあれば王立図書館へ足を運び、よく古書を読み耽っていた。
図書館の司書たちが、ユーリスの存在を覚えてしまうほど、彼は頻繁に王立図書館に出入りしていた。
黒髪の美しいユーリス少年が、熱心に本を読み耽る姿は、まこと絵になるようで、図書館の司書達も、なんとなしに彼が来ることを待っているかのような雰囲気があった。
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