転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です  第一章 五番目の王子との学園時代

第十一話 お邪魔虫であることを理解していた王子(下)

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 王都の広場にある大きな噴水の前で、赤毛の少女アンジェラが日傘を手にしてベンチに座っている。白い石像の竜の口から、水が吹き上げられ、虹を作っていた。
 広場にいる子供達がキャッキャッと声を上げて、噴水の水に触れて喜んでいる。
 空は快晴。
 まさしくデート日和だった。

 彼女は、片手を挙げて近寄って来るユーリスに気が付いて、嬉しそうな顔を見せたが、その顔が露骨に(ウゲッ)と言うようにしかめられる。ユーリスが、王子シルヴェスターを連れて現れたことに気が付いたからだ。

「ご機嫌よう、ユーリス様、シルヴェスター様」

 シルヴェスターは、アンジェラが嫌そうな顔をしたことに気が付いていたが、素知らぬふりをして頷いた。

「ああ、今回同行させて頂く」

 外では、シルヴェスターは王子殿下と仰々しく呼ばぬように、ユーリスにもアンジェラにも命じていた。
 「今回」という言葉に、(分かっているならついてくるな、このお邪魔虫)とでも言うようにアンジェラは凄い目でシルヴェスターを少しばかり睨みつけていたが、シルヴェスターは涼しい顔をしている。

 ユーリスは、シルヴェスターが一人寮に籠っているとつい声を掛けたくなるようで、アンジェラとのデートにも連れてくるのだ(それも何度も!!)。それに、この王子は自分が二人のお邪魔虫であることを理解した上で、付いてきている。そのことがアンジェラには癪に障る。

 非常に頭の良いユーリスであるのに、アンジェラの気持ちやシルヴェスターの図々しさ(?)に気が付いていないのだろうか。気が付いていて、そうやるような意地の悪さはユーリスにはないから、多分、彼は無意識だ。
 
「どこへ行く予定だ」

 シルヴェスターの問いに、ユーリスは答えた。

「セランの川沿いの公園が、今は花盛りだと聞いています。そこに行きましょう。中央広場の店で、軽い食べ物を買いましょう」

 ユーリス達から少し離れた所に、気付かれぬよう護衛が数人ついてきていた。バンクール家とフェルプス家の護衛だろう。ユーリスもアンジェラも、共に十五歳のまだ少年少女の年齢である。かどわかしにあってはならないと、従者のクラリオネが依頼していたものだ。
 相変わらず、シルヴェスターは王家の五番目の王子であるのに、従者も護衛も一人もついていない。実際は、ユーリスと共にいることでシルヴェスターの身の安全が計られているために、問題なく過ごしているが、シルヴェスターが誘拐されたり、危害を加えられたりすることに対して、王家の者はまったく痛痒を感じないのだろうか。
 ユーリスはふとそんなことを考えるが、シルヴェスター王子を貴族寮に入れなかったり、放置に近いような彼への扱いを見るに、そうなっても構わない、そうなって欲しいと願っているような、誰かが抱いているであろう、気味の悪い黒々とした悪意を感じてしまう。
 幼い頃から孤立無援の生活をしているシルヴェスターの、力になってやりたいと純粋にユーリスは考えていた。

 広場に面した飲食を営む店の幾つかを覗いて、美味しそうなパンや果物、肉を焼いたものを買って三人はセラン川沿いを歩いて行く。
 美しい花の季節だった。
 風に薄桃色の花が揺れ、新緑の瑞々しい葉が陽の光に煌めく。
 街を歩く者達も軽やかな薄衣を身に付け、どこか涼し気である。アンジェラも赤毛を結い上げ、首元を露わにしていた。
 最初はシルヴェスターの存在に少しばかり苛々としていたアンジェラであったが、元から根に持つことの無いカラリとした性格をしている。彼女は途中から、自分が美形の少年達二人を連れ歩いていることにハッと気が付くと、むしろ今度はその立場にあることを楽しみ出した。
 二人の腕を取って、真ん中に位置して堂々と歩き始める。
 白い日傘はユーリスに持たせ、シルヴェスターには買い求めた食べ物を手に持たせている。殿下にそのようなものを持たせるのはと、少しばかりユーリスが声を上げそうになったのをシルヴェスターは手で制し、彼は面白がって進んでその荷物を手に下げた。

 赤毛の少女が、身なりの良い美しい少年達に囲まれている様子は目立つのだろう。
 皆が振り返って見ている。
 アンジェラは鼻高々の様子で、気持ちよさげに吹いてくる風に赤い髪を揺らしていた。

 やがて到着した公園で、ユーリスは用意していた敷物を木の下に敷く。
 そこにシルヴェスターが買ってきた食べ物を袋から取り出して並べ始め、三人は敷物に腰を下ろして、見事な白い花や桃色の花を、鈴のように実らせている川沿いの木々に目をやっていた。
 パンの一つを口にしながら、アンジェラが言う。

「平和ねぇ」

「そうですね」

 ユーリスの答えに、今度はシルヴェスターが言う。

「大陸の西の方では、戦争が続いているという話だぞ」

「お父様からその話を聞いたことがあるわ。確か、サトー王国って変な名前の国が起こしているのでしょう?」

「変な名前だな」

「そうよね」

 だが、それはあくまで遠い国で起きている出来事に過ぎなかった。だから彼らは変な名前だと好き勝手に言って、他人事のようにパンを口にしてお喋りすることが出来ていた。
 途中からアンジェラが立ち上がって、追加で何か飲み物を買ってくると言って席を離れた。
 ユーリスとシルヴェスターは敷物の上でゴロリと横になり、風に花が揺れる光景を、眺めていた。

「綺麗ですね」

 そう言って、花が散る様子を目を細めて眺めるユーリスの整った顔立ちを見て、シルヴェスターは思う。

 ユーリスの方がずっと綺麗だと。

 睫毛も長く、肌も滑らかに白い。
 だが、女のような女々しさがあるわけではない。切れ長の瞳には彼特有の鋭さもあったし、その肢体もすらりと伸びて、豹のようなしなやかさがあった。彼の見目形は確かに誰よりも整っていることを知っている。でも、それだけじゃないのだ。いつも真面目な表情で話す彼が、笑うと可愛い様子になることをシルヴェスターは知っていた。そしてそんな笑顔を見ていると、胸の中が温かくなる。ずっと彼と言葉を交わし、その顔をただ眺めていたいほどだ。
 なんとなしにシルヴェスターは頬を赤く染めていた。

 綺麗だ。
 本当に、見惚れてしまうほどに。

 ユーリスの黒髪に、花びらが何枚か落ちて引っかかる。
 それに気が付いたシルヴェスターが手を伸ばして、花びらの一枚を取り上げているところに、アンジェラが飲み物を手に帰って来た。

 なんとなしに、シルヴェスターはビクリと身を震わせた。
 ちょっかいを出していた間男が夫に見つかったかのような気分になっていた。

 少しばかりあたふたとしているシルヴェスターを横目で見た後、アンジェラは二人に飲み物を差し出す。
 そして二人の間に割り込むように座って言った。

「本当に、ここはいいところね。綺麗で、美味しいものもたくさんあるし。いつまでもこうして見ていたいわ」

 それにはシルヴェスターも内心同意した。
 いつまでも、この花の散る美しい景色の中で、ユーリスと共に過ごしていたかった。
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