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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です 第二章 黄金竜の雛の番
第十一話 五年ぶりの再会
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数日かけて王都へ戻ったユーリスは、そこからアレドリア王国へ向かうことにしていた。
北方地方の山間の観察拠点から竜騎兵団の拠点に戻り、それから麓の村まで出た後に、王都へ向かったため、連日の移動続きに、ユーリスも少し疲れた表情をしていた。
胸元の布袋に入れている小さな雛竜は、ユーリスのことを少し心配そうにしていて「キュイキュイキュイィィ」と鳴いている。どうやら大丈夫かと聞いているようだ。なんとなしにだが、小さな竜の鳴き声も、何を伝えたいのか分かるようになってきた。
北方の竜騎兵団にいたアルバート王子と紫竜ルーシェ。二人はとても仲が良く通じ合っていた。
竜ルーシェの鳴き声を、人間であるアルバート王子が完璧に理解していることには驚かされた。
いつか、この小さな黄金竜ウェイズリーの鳴き声も、アルバート王子と同じように自分に理解できる日が来るのだろうか。この小さな竜の声の意味が分かるようになればもっと上手く交流も図れるだろうと思う。
胸元のウェイズリーに向かって、ユーリスは小声で話しかけた。
「大丈夫だよ。宿に行こう」
王都の定宿にしている宿へ向かって歩き出す。
そして宿の扉をくぐった時、そこにいた男を見てユーリスは驚いた。
「クラリオネ」
宿の一階にある飲食店で、ずっと入口方向を見て座っていた男は、かつて少年だった頃のユーリスに仕えていた従者のクラリオネだった。六歳であったユーリスに仕えたクラリオネは、それから十年以上の時が過ぎて、大人の男にその姿を変えていた。
「ユーリス様、ご無沙汰しております」
そう言って、クラリオネは深々と頭を下げる。
そして彼は、ユーリスが十六歳でアレドリア王国に渡る時、ユーリスの従者としてついてくることはなかった。たぶん、彼は父親のジャクセンによってユーリスの側付きから外されたのだろう。
クラリオネは、ユーリスがシルヴェスター王子と親しくなることを見逃していたからだ。ジャクセンは、その後はそうさせないために、別の人間を護衛としてユーリスの周りに付けさせた。
ユーリスはアレドリア王国へ渡った後もクラリオネのことを心配していた。
バンクール商会で働き続けているという話は聞いていたが、ユーリスとシルヴェスターの関係を見逃していたが故に、そのことで彼が不利な立場になっていないかと気にしていたのだ。
「クラリオネ、元気そうでよかった」
「はい。ユーリス様もお元気そうで安心致しました」
クラリオネは優しく微笑んでいる。王立学園にいる時は、何かとよく気が付くクラリオネにとても助けられていた。シルヴェスター共々、彼にはお世話になった感がある。
「立ち話も何でしょうから。これから宿の部屋を取る予定です。部屋で少し話しませんか」
久しぶりにクラリオネと再会したのだ。彼とも五年ぶりの再会になる。
せっかくだから、クラリオネの近況の話を聞きたい。
なんとなしに声を弾ませてそう言うユーリスに、クラリオネは首を振った。
「ユーリス様、ジャクセン様がお待ちです。どうか私とご同行下さい」
そう言って、彼は再度深々と頭を下げた。
「………………」
ユーリスの胸元で、小さな黄金竜の雛が「キュイキュルルルルルル」と心配そうに、とても小さな小さな声で鳴いている。
ユーリスは、そのまま頭を下げたままのクラリオネに言った。
「頭を上げてよ、クラリオネ」
「ユーリス様、どうかご一緒に」
「父上に、私を連れて来いと命じられたのか?」
父ならやりかねない。
クラリオネなら、自分を連れて来ることが出来る。そう考えて、ジャクセンはクラリオネに命令したのか。
「私が是非、ユーリス様にお会いしたいとお頼みしたのです。ジャクセン様ではございません」
そこでようやく、クラリオネは顔を上げ、ユーリスの青い目をじっと見つめた。
「ずっとお会いしたいと思っておりました。ユーリス様」
ユーリスは深くため息をついた。
そして旅の荷物を宿の受付で預けようとすると、クラリオネが制止した。
「…………お荷物は私がお持ちします。本日はお屋敷に戻られて下さい」
そう言って、クラリオネはユーリスの手から旅の荷物を取り上げる。
そして宿の入口の扉を開けた。
「馬車も待たせております」
「…………クラリオネ、お前はずっとここで私が北方地方から戻って来るのを待っていたのかい」
宿の入口を見ながら、座って待つクラリオネを見てそんなことを思ったユーリスが尋ねると、クラリオネは小さく笑った。
「もう五年もユーリス様にお会いしていなかったのです。数日間あそこで待つことくらい、どうってことはございません」
その言葉に、ユーリスは何とも言えない表情でもう一度ため息をついた。
馬車に乗せられたユーリスは、クラリオネと共に、王都のバンクールの屋敷に到着した。
(父とは会わずに、アレドリアへ戻ろうと思っていた)
屋敷の入口から、出迎えの召使達が現れ、手際よくクラリオネから荷物を受け取って建物の中へと運んでいく。
そして扉から母と妹達、それから自分とよく似た顔立ちの父が現れる。
五年ぶりに会う、父ジャクセンだった。
北方地方の山間の観察拠点から竜騎兵団の拠点に戻り、それから麓の村まで出た後に、王都へ向かったため、連日の移動続きに、ユーリスも少し疲れた表情をしていた。
胸元の布袋に入れている小さな雛竜は、ユーリスのことを少し心配そうにしていて「キュイキュイキュイィィ」と鳴いている。どうやら大丈夫かと聞いているようだ。なんとなしにだが、小さな竜の鳴き声も、何を伝えたいのか分かるようになってきた。
北方の竜騎兵団にいたアルバート王子と紫竜ルーシェ。二人はとても仲が良く通じ合っていた。
竜ルーシェの鳴き声を、人間であるアルバート王子が完璧に理解していることには驚かされた。
いつか、この小さな黄金竜ウェイズリーの鳴き声も、アルバート王子と同じように自分に理解できる日が来るのだろうか。この小さな竜の声の意味が分かるようになればもっと上手く交流も図れるだろうと思う。
胸元のウェイズリーに向かって、ユーリスは小声で話しかけた。
「大丈夫だよ。宿に行こう」
王都の定宿にしている宿へ向かって歩き出す。
そして宿の扉をくぐった時、そこにいた男を見てユーリスは驚いた。
「クラリオネ」
宿の一階にある飲食店で、ずっと入口方向を見て座っていた男は、かつて少年だった頃のユーリスに仕えていた従者のクラリオネだった。六歳であったユーリスに仕えたクラリオネは、それから十年以上の時が過ぎて、大人の男にその姿を変えていた。
「ユーリス様、ご無沙汰しております」
そう言って、クラリオネは深々と頭を下げる。
そして彼は、ユーリスが十六歳でアレドリア王国に渡る時、ユーリスの従者としてついてくることはなかった。たぶん、彼は父親のジャクセンによってユーリスの側付きから外されたのだろう。
クラリオネは、ユーリスがシルヴェスター王子と親しくなることを見逃していたからだ。ジャクセンは、その後はそうさせないために、別の人間を護衛としてユーリスの周りに付けさせた。
ユーリスはアレドリア王国へ渡った後もクラリオネのことを心配していた。
バンクール商会で働き続けているという話は聞いていたが、ユーリスとシルヴェスターの関係を見逃していたが故に、そのことで彼が不利な立場になっていないかと気にしていたのだ。
「クラリオネ、元気そうでよかった」
「はい。ユーリス様もお元気そうで安心致しました」
クラリオネは優しく微笑んでいる。王立学園にいる時は、何かとよく気が付くクラリオネにとても助けられていた。シルヴェスター共々、彼にはお世話になった感がある。
「立ち話も何でしょうから。これから宿の部屋を取る予定です。部屋で少し話しませんか」
久しぶりにクラリオネと再会したのだ。彼とも五年ぶりの再会になる。
せっかくだから、クラリオネの近況の話を聞きたい。
なんとなしに声を弾ませてそう言うユーリスに、クラリオネは首を振った。
「ユーリス様、ジャクセン様がお待ちです。どうか私とご同行下さい」
そう言って、彼は再度深々と頭を下げた。
「………………」
ユーリスの胸元で、小さな黄金竜の雛が「キュイキュルルルルルル」と心配そうに、とても小さな小さな声で鳴いている。
ユーリスは、そのまま頭を下げたままのクラリオネに言った。
「頭を上げてよ、クラリオネ」
「ユーリス様、どうかご一緒に」
「父上に、私を連れて来いと命じられたのか?」
父ならやりかねない。
クラリオネなら、自分を連れて来ることが出来る。そう考えて、ジャクセンはクラリオネに命令したのか。
「私が是非、ユーリス様にお会いしたいとお頼みしたのです。ジャクセン様ではございません」
そこでようやく、クラリオネは顔を上げ、ユーリスの青い目をじっと見つめた。
「ずっとお会いしたいと思っておりました。ユーリス様」
ユーリスは深くため息をついた。
そして旅の荷物を宿の受付で預けようとすると、クラリオネが制止した。
「…………お荷物は私がお持ちします。本日はお屋敷に戻られて下さい」
そう言って、クラリオネはユーリスの手から旅の荷物を取り上げる。
そして宿の入口の扉を開けた。
「馬車も待たせております」
「…………クラリオネ、お前はずっとここで私が北方地方から戻って来るのを待っていたのかい」
宿の入口を見ながら、座って待つクラリオネを見てそんなことを思ったユーリスが尋ねると、クラリオネは小さく笑った。
「もう五年もユーリス様にお会いしていなかったのです。数日間あそこで待つことくらい、どうってことはございません」
その言葉に、ユーリスは何とも言えない表情でもう一度ため息をついた。
馬車に乗せられたユーリスは、クラリオネと共に、王都のバンクールの屋敷に到着した。
(父とは会わずに、アレドリアへ戻ろうと思っていた)
屋敷の入口から、出迎えの召使達が現れ、手際よくクラリオネから荷物を受け取って建物の中へと運んでいく。
そして扉から母と妹達、それから自分とよく似た顔立ちの父が現れる。
五年ぶりに会う、父ジャクセンだった。
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