転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です  第二章 黄金竜の雛の番

第二十二話 挨拶

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 目を覚ますと、真近に五歳くらいの子供の姿をしたウェイズリーの顔があった。
 彼はユーリスが目を覚ましたことがわかると、笑顔を浮かべてユーリスの頬に口づけする。
 ユーリスから「唇に口付けするのは止めなさい」と注意されたので、ウェイズリーはユーリスが起きている時は頬に口づけすることにしたのだ(眠っている時は勝手にチュッチュ唇に口づけていた)。非常に残念な思いだったが、番の希望を出来るだけ聞いてあげることが、伴侶の務めでもあるとウェイズリーは考えていた。

 チュッと頬に口づけ、ウェイズリーは子供とは思えぬような台詞を口にする。

「おはよう、私のユーリス。今日もとても可愛くて素敵だね。愛しているよ」

 子供姿のウェイズリーに朝からぴったりと身体にくっつかれている。
 ユーリスは内心ため息をつきながら、寝台の上から起き上がった。
 朝からの愛の言葉をそのままスルーするユーリス。もはやイチイチ注意する気も起こらない。

「今日は、君の挨拶のために、大学へその姿のままの君を連れていくから」

「分かった」

「いいかい、大学のナウマン教授やその他の人達に会っても、君は『はい、そうです』以外口にしたらダメだからね」

 口を開けばすぐに甘い言葉を口にする子供姿のウェイズリーである。ナウマン教授や助手のミアの前で自分の事を「可愛い」とか「愛している」とか言われた日には、ユーリスは困ってしまう。
 ウェイズリーは不満を少しだけ漂わせながらも「……分かった」と言った。

 そしていつものように下宿の一階で食事を取り、迎えに来た護衛のゲランと共に大学へ向かう。
 昨日、ゲランの、ユーリスに馴れ馴れしく声を掛けてきた相手への壁となっている行動を見て、ウェイズリーはゲランのことを、とても“役に立つ人間”だとみなしていた。
 だから、ユーリスが子供姿のウェイズリーを、「昨日話していた黄金竜の雛ウェイズリーが人に変わった姿です」と紹介した時も、大人しく挨拶することが出来た。
 ゲランは「本当にあの小さな金色の竜が変身した姿なのか?」と半信半疑の様子で尋ねられたが、ウェイズリーは大人しく「はい、そうです」と答えていた。

「いつも一緒にいるゲランには、君の正体を明かすけど、ナウマン教授やその他の人には内緒にするように。ちゃんと正体を隠しておくれよ」

 ユーリスの言葉にウェイズリーは了解する。

「分かった」

 だが、ゲランはこう言ってきた。

「ナウマン教授達には話しておいてもいいんじゃないか?」

「古代史が専門の人間には、黄金竜の話はしない方がいいんだ。彼らの研究対象だから」

「そうなのか!!」

「ウェイズリーのことを知ったら、絶対に放っておかない」

 黄金竜。
 それは、大陸の北方の竜の生息地に棲み、全ての竜達の頂点に立つと言われる竜である。
 その姿は遥か昔の古代史の中にも散見される。
 特に、ユーリスの生まれた国では、竜の女王が、すなわち黄金竜の雌が初代の国王と結ばれ、国が開かれたと言われている。絶大なる力を持っていた竜の女王は、伴侶である若者を王として国の頂点に立たせるために、多大な貢献をした。彼女の弟の黄金竜は“神の高み”に至った竜と言われていたが、彼女もまたそうした神に等しい力を持っていたのだろうと考えられている。一時期、王国は版図をこの大陸の半ばまで広げていた。しかしその後、後退し、今の国の大きさに収めたという。
 最大に広げた版図の時の、戦いの痕跡が大陸の国々には未だ、至るところに残されている。二千年前の古代史を学ぶ際には、黄金竜であった竜の女王の話は外せないのだ。


「じゃあ、俺も何も言わないように気を付ける」

 ゲランは余計な事を言わないように、ユーリスがウェイズリーのことを紹介する時は黙っていようと思った。

「そうしてくれると助かります」

 そしてユーリスはウェイズリーの手を引きながら大学を訪れた。
 昨日と同様、今日もユーリスは大学を行きかう学生や教師達から声を掛けられ、ユーリスも気安く挨拶を返している。馴れ馴れしすぎる相手に関しては、護衛のゲランが間に割って入ってくれる。その様子を見てウェイズリーは本当にゲランは役に立つと彼のことを見直していた。

(私の番に悪い虫がつかないようにしてくれる素晴らしい人間だ)

 そう感心してゲランのことを眺めているウェイズリー。出会ったばかりの時は思わずユーリスを取られまいと威嚇したものだった。ゲランがこんなに役立つ人間だとは思ってもみなかった。
 そんな風にウェイズリーから思われていることなど知らず、ゲランは大学のナウマン教授の研究室へ続く扉を開けた。その扉をくぐって、ユーリスは小さな子供の手を引きながら、教授とその助手のミアの前に姿を現わした。

「ナウマン先生、ミア、おはようございます」

「おはよう」
「おはようございます」

 ナウマン教授は、昨日の約束通りユーリスが世話をする子供を連れて現れたことに、本当に子供を連れてきたのだと驚いていた。そしてミアは、五歳くらいのかわいい子供の登場に、「まぁ、可愛らしい」と嬉しそうに声を上げ、いそいそとユーリスとウェイズリーの座る席を用意し始めた。そして尋ねてくる。

「その子は、ジュースがいいかしら」

「ジュースでいいかい?」

 ユーリスが質問すると、ウェイズリーは頷く。
 彼はユーリスから注意を受けたことを忠実に守ろうとしていた。ボロが出ないように口を開くことは最低限にするつもりだった。
 ミアが用意してくれたジュースの入ったコップを両手で持って、飲んでいるウェイズリー。
 その様子をナウマン教授はじっと見つめ、やにわユーリスに聞いたのだ。

「その子が君が引き取ることになったと話していたけれど、君の子供なのかい?」

 その質問に、ブーーーーーッとウェイズリーは思わずジュースを口から激しく吹き出し、彼は大声で反論しようと口を開けた。

「違う!! 私はユーリスの」

 ウェイズリーの言いかけるその口を、隣の椅子に座っていたユーリスがさっと手で塞いだ。

「モググ」

「私の親戚の子です。事情があって預かることになったんです」

「そうなのかい」

 ナウマン教授の声に、ユーリスは頷いて、取り出したハンカチでどこか乱暴に、ゴシゴシとウェイズリーのジュースで汚れた口を拭いていた。

「もうこんなに吹き出してしまってダメじゃないか。ウェイズリー」

「…………ぐぅ」

 あの後、絶対にこのウェイズリーは「ユーリスは私の番だ!!」と叫ぼうとしたに違いないとユーリスは思っていた。そんなことをユーリス教授やミアの前で叫ばれてしまったら誤魔化すのも大変である。

「ウェイズリー」

 私の言いたいことは分かっているね、とそうユーリスの強い視線を受けて、ウェイズリーはコクコクと頷くばかりであった。
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