転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です  第三章 再びの出会い

第十七話 夢(上)

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 また夢を見た。
 白い靄の漂う中、ユーリスは自分が現れると同時に、再び夢を見ていることをすぐに自覚していた。夢から目を覚ました時には、その夢を見た事すら忘れているのに。

 ぬかるむ地面の上を歩いていくと、ユーリスを待ち構えるように、“始祖の王”カルヴァン=ベルリガードと名乗った美丈夫が、玉座のような立派な椅子に座っていた。
 カルヴァンは肘当てに肘をつき、そしてユーリスに気が付くと碧い瞳を楽しそうに煌めかせた。
 非常に楽しそうで、嬉しそうだ。
 今まで、深刻そうな表情ばかり見せていたカルヴァンである。そのように明るい表情を見せるのは初めてであった。
 彼は言った。

「そうか。そなたはアレのつがいでありながらも、恋人がいたのだな。真に愛する恋人が」

 カルヴァンが、黄金竜ウェイズリーとシルヴェスター王子のことを言っていることがすぐに分かった。

 つがい、黄金竜の雛ウェイズリーがいつも口にしていた言葉
 真に愛する恋人、五年ぶりに再会した王国の五番目の王子シルヴェスター

 ユーリスが黙り込んでいると、椅子に座ったカルヴァンは笑い声を上げていた。

「ああ、私の子孫と結ばれたユーリスのことを、アレは番に選んだのか。結局、黄金竜はいつも失敗する運命だな」

 その言葉に、ギリギリと歯を軋らせる音がした。
 見れば、カルヴァンの後ろから、黄金色の目を怒りに吊り上げ、皓歯こうしを軋らせながら、黄金色の瞳の美しい女人が現れたのだ。再び黄金色の美女と会って、ユーリスは、今はもう彼女の正体を理解していた。
 “始祖の王”と結ばれた黄金竜の雌。竜の女王である。
 人にはない黄金色の瞳が、それの証であった。
 黄金竜ウェイズリーと同じ、黄金を溶かしたかのような美しい双眸。
 それを怒りに吊り上げていた。

「黄金竜は、我が子孫には手を出すことは出来ぬ」

 カルヴァンはそう断じる。
 竜の女王は、ダンと片足でぬかるみを強く踏んだ。
 途端、グラグラと地面が地震のように大きく揺れる。
 ふらつくユーリスの身体を、立ち上がった“始祖の王”カルヴァンが支える。
 カルヴァンは顔をしかめ、竜の女王をたしなめた。

「何をする、マルヴェリーナ。止めよ」

「ウェイズリーの番、貴方は何故あれほどウェイズリーに愛されながらも、ウェイズリーを愛さないの」

「愛することを強制することは出来ぬ。分かっておろう、マルヴェリーナ」

 カルヴァンに諭され、マルヴェリーナと呼ばれた女は、ポロポロと大粒の涙を零して泣き始めていた。

「うっ、ううう、うう」

 涙を拭うこともせず、彼女は滂沱と涙を黄金色の両眼から流し続けている。
 その面を見て、カルヴァンは困ったような顔をしながら、マルヴェリーナの涙を拭うための布を取り出して、彼女に手渡していた。

「そのように泣くでない」

「ウェイズリーが可哀想ではないですか。わたくしと同じように、番から愛されることがない」

「マルヴェリーナ」

 “始祖の王”はいつの間にやら、竜の女王のそばに立っており、彼女を後ろから抱きしめていた。その耳元で優しく言っている。

「私はそなたを愛さなかったわけではない。分かっておるだろう」

「ううう、うううううっ」

 彼女は眉を寄せ、そばに立つ“始祖の王”をなじった。

「でも陛下は、わたくしには卵を産ませて下さらなかった」

 卵

 また卵の話である。
 前回の夢の時も、竜の女王はそのことを口にしていた。

『番に卵を生ませたいと望むのは当然のこと』
『貴方は決してそれを許さなかったけれど』

 人間であっただろう“始祖の王”カルヴァン=ベルリガードが、竜の女王マルヴェリーナに卵を産ませることは出来ない。竜と人間では種が違うからだ。どんなにか竜の女王がそれを望んでも、叶わない。

「あの王宮下の、地下の遺跡には陛下と女王の卵は無かったのですか?」

 それでも思わず、ユーリスはずっと心の中で抱いていた疑問を確認するように“始祖の王”達にぶつけていた。
 遺跡の中には、卵を迎えるための部屋があったからだ。
 “始祖の王”は答えた。

「無い。マルヴェリーナは随分と欲しがったがな。王宮下に“巣”を作ると言い張って、こやつは無理やり王宮を沈めたのだ。そうまでして作った“巣”であったが」

 無理やり沈めた王宮。
 だから、王宮の大きな窓もそのまま、地下へと沈んでそこから土が流れ込んでいた。
 ユーリスは、自分が足を踏み入れたあの地下遺跡の王宮の様子を思い出していた。

 産み落とした卵を載せる石の椅子まで用意していた。
 その椅子の幾つかは壊れていた。
 五つもの子供部屋が用意されていたが、その部屋はいずれも主を迎えることなく、空っぽであった。

 カルヴァンは、マルヴェリーナがカルヴァンの他の人間の妃達と競うようにして、生まれてくるはずの卵のための部屋や家具を懸命に揃えていたことを知っていた。カルヴァンの人間の妃達が次々と子を孕み、それも五人にも至った時、マルヴェリーナも五つの部屋を用意して、自分の卵が生まれることをずっと願っていた。

 生まれるはずがないのだ。
 竜と人間が幾ら愛し合っても、人間の男の卵を、マルヴェリーナが孕むことは出来ない。

 


 それで当然のようにユーリスは疑問を抱いた。そのことをそのまま口にする。

「ウェイズリーの親は、あなた方ではないのですか?」

 あの可愛らしい黄金色の小さな竜は、王宮の地下遺跡からやって来たと自分で告げたのだ。
 だからユーリスは、竜の女王と“始祖の王”が何らかの方法で、卵を産み出したのだと考えていた。しかし、竜の女王は「“始祖の王”は卵を産ませてくれなかった」とそれを否定した。
 では、ウェイズリーの親とは一体誰なのか?

 カルヴァンは頷いた。

「そうだ。アレはマルヴェリーナが

 その言葉に、ユーリスは驚き、目を見開いていた。
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