転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です  第四章 黄金竜の雛は愛しい番のためならば、全てを捧げる

第五話 副クラン長の警告

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 金色の芽

 黄金竜の雛、ウェイズリーが操る不思議な金色の芽。
 以前にも何度かその金色の芽を見たことがあった。

 出会ったばかりの頃で、ウェイズリーの足元から芽吹いていた金色の芽を初めて見た時、驚いてウェイズリーに「アレはいったい何なのか」「アレは君のせいなのか」と尋ねたことがあった。当時、まだウェイズリーの「キュルキュル」と鳴く竜の言葉が分からなくて、一生懸命にウェイズリーは説明してくれたが、ユーリスには理解出来なかった。
 ただその時、足元から芽吹いていた不思議な金色の芽が、黄金竜ウェイズリーが創ったものだと教えてくれた。

 それからウェイズリーは、金色の芽を使って街道を塞いでいた大きな岩を砕いてくれたり、護衛のゲランを殺そうとしたりした。

 あの金色の芽を、ウェイズリーは意のままに操ることが出来る。

 だからきっと、昼食を食べに入った店で、ユーリスの傍らから出てきた大量の金色の芽も、ウェイズリーがやったことなのだろう。店先で空間を歪ませながら現れた渦に向かって真っすぐに飛び出していった金色の芽は、あれ以来、出てくることはない。

 なんとなく、ウェイズリーは自分のために何かしてくれているようだとユーリスは感じていた。
 あの小さな黄金竜の雛は、ユーリスのことが大好きで、いつもそばにいたがり、甘く鳴いていた。決して彼は自分を傷つけることはしない。
 何故かそれだけは信じられた。



 街から戻ってしばらくして、ユーリスは副クラン長フィアにクラン長室へ呼び出された。
 クラン長ダンカンはシルヴェスターと共に、旧カリン王国へ戦いに行ったまま、まだ戻ってこない。だからフィアはクラン長室で一人仕事を続けていた。
 フィアは、昼間の出来事についてイルム達からの報告を受けていた。
 だから、ユーリスを呼び出したのだ。

「昼間に異変があったと報告を受けました」

「はい」

 団長室のデスク前のソファにユーリスは座っている。
 見れば見るほど、顔立ちの整った美しい青年だと、ユーリスを見つめて思う。黒髪を下ろしているせいで、若々しく見える。切れ長の瞳のこの青年は、父親そっくりであった。副クラン長フィアは何度かユーリスの父親と席を共にしたことがあったが、父親もまた美しい男性だった。服飾を扱うバンクール商会の長らしく、一部の隙のない身だしなみをしていた。
 そしてユーリスは、シルヴェスター王子の溺愛する恋人なのである。
 
 その恋人の身の回りで、異変が起きた。
 それも尋常ならざる異変であり、フィアが思いつくのは“魔”の手がとうとうユーリスに伸び始めたのではないかということであった。
 サトー王国と交戦中であるこのクラン“竜の牙”のシルヴェスターは、サトー王国にとって目の上のたんこぶのような存在であった。だから、敵国であるサトー王国や味方する“魔”の者達が、邪魔なシルヴェスターの恋人であるユーリスをどうにかしてやろうと考えるのは、当然のことだった。

「昼食を食べている時に、渦が現れました。その後、金色のものが渦に突っ込んで行き、渦もろとも消えました」
 
 ユーリスは昼間に遭遇した異変を報告した。

「おそらく渦は、“魔”の領域からの干渉によるものだ。何者かがそこから現れようとしたか、もしくは何者かがそこから送り込まれようとしていたか。そのどちらかだろうと思う。でも、金色のものがそこへ突っ込んでいって、それを中断させた」

 このクランの副クラン長であり、上位魔術師でもあるフィアは、“魔”や“召喚”にも詳しかった。そしてその説明で、ユーリスも理解した。

(なるほど。ウェイズリーの金色の芽は、あの場で召喚されている者の召喚を中断させた後、あちらへ渡ったということなのか)

 きっとあの時、召喚されようとしていた者は、ユーリスにとって良いものではなかったはずだ。だからウェイズリーはそれを阻止した。それどころか、あの金色の芽は追いかけていって消えたのだ。

 ユーリスは顎に手をやり、考えこんでいた。

「今回の現象はそれで終わっているが、どうやら“魔”の領域の者達は、ユーリス、君を狙っている。君はシルヴェスターの恋人だ。彼らにとって、格好の獲物だ。シルヴェスターはサトー王国や、サトー王国に味方をする“魔”の者達に睨まれているからな」

「……」

「このクランの建物には、私が結界を張っている。シルヴェスターが帰ってくるまで、このクランの建物からあまり外へは出ないことだ」

「分かりました」

 副クラン長フィアは警告してくれたのだ。
 そして、昼間現れた金色の芽で、ウェイズリーが自分の身を守っていることをユーリスは知った。あの小さな黄金竜の雛は、姿こそ見せないが、自分の危機に際して動いてくれている。
 だから、魔族に狙われていると聞いても、怖い気持ちにはならなかった。



 ユーリスは自室へ戻ると、いつも小さな花束が置かれる窓辺に立ち、街へ出た時に買い求めた紙袋に入った焼き立てのクッキーを、袋のままその窓辺に置いた。
 翌朝、そのクッキーの入った紙袋が消えて、小さな花束がまた置かれていることを見つけて、ユーリスはなんとなしに嬉しく思っていた。
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