転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

文字の大きさ
506 / 711
外伝 その王子と恋に落ちたら大変です  第四章 黄金竜の雛は愛しい番のためならば、全てを捧げる

第九話 夢

しおりを挟む
 夢を見た。
 そのぬかるんだ地面の上に立った瞬間、現実の世界では目を覚ます度に忘れてしまう夢の存在を思い出す。
 目の前に、立派な玉座に座る初代の王カルヴァン=ベルリガードがそこにいた。
 カルヴァンは、玉座に足を組んで座り、肘掛けに肘をついていた。顎に手をやり、非常に愉しそうな表情をしている。

 今日は、女王竜マルヴェリーナの姿は見えない。
 カルヴァンは碧い目を輝かせていた。

「まさか、番のそなたがウェイズリーを追い払うとはな!!」

 そう言うと、呵々大笑する。
 おかしくて楽しくて仕方ない様子だった。
 この様を見るのが嫌で、おそらくマルヴェリーナは姿を見せないのだろう。

 カルヴァンは目尻から滲んだ涙を拭いながら言った。

「ああ、おかしかったぞ。まさか、まさか黄金竜の求婚をあそこまで見事に退ける者がおるとは思わなんだ」

 ユーリスはカルヴァンの言葉を聞いて、渋面である。
 黄金竜の雛ウェイズリーを傷つけるつもりはなかったのだ。
 彼は泣いていた。

「見事であった。褒めて遣わす」

 なんとなしに、マルヴェリーナが時々このカルヴァンに怒る理由がわかった。
 デリカシーのない勝手な男である。
 そして、ウェイズリーとの間のことは、このカルヴァンには関係ないではないか。
 そもそもカルヴァンはウェイズリーの親でもない。全く余計な口出しである。

 しかし、そう思っているユーリスの心の裡を見透かしているようにカルヴァンは言った。

「そなたがあの黄金竜と関係を持つことについては、大いに問題があるのだぞ。黄泉に一度足を踏み入れた私が見守り続けなければならないと思うほどに」

「…………」

 カルヴァンの言葉がふと気になった。
 「黄泉に一度足を踏み入れた私」という言葉の意味がよく分からなかった。

「陛下は亡くなられておりますよね。今、私の前に現れているのは一体何なのでしょうか。夢の中の単なる登場人物には思えません」

 自分が夢の中で勝手に作り上げた人格にはとても思えなかった。
 あまりにも生き生きと、身勝手に動いている。

 カルヴァンは言った。

「今の私はすでに一度死んでいる。魂の残り香のようなものだな。マルヴェリーナも同じだ」

 やはり、初代の王とマルヴェリーナはすでに亡くなっている。
 それはそうだろう。初代の王はただの人間であり、二千年前に活躍した人物である。生きていたら大変なことである。

 だが、黄金竜マルヴェリーナが既に亡くなっているというのには驚かされた。なぜなら、竜は非常に長命である。百年、二百年と平気で生きるし、千年を越えて生きる者もいる。マルヴェリーナが死んでいるとは思っていなかった。どこぞで眠りについているのではないかと思っていた。

「マルヴェリーナはどうして亡くなったのでしょうか」

「言ったであろう。アレはウェイズリーを創ったのだ。材料は自分だ。何度も失敗して、何を材料に使えば良いのかようやく理解した。自分の血肉を使えば良いのだ」

 その言葉に、ユーリスはゾッとして顔を強張らせた。
 自分の血肉を使う。
 そのユーリスの表情の変化に、カルヴァンは言った。

「アレは少しおかしくなっていたから仕方がない。アレはウェイズリーを創った。狂った女王竜が作った黄金竜の雛だ。私がウェイズリーを外に出さないようにしていたのも理解できるだろう」

 死してなおも、初代の王と、女王竜の女の魂はあの地下遺跡に留まり、黄金竜ウェイズリーの卵と共にいたのだろうか。そしてウェイズリーの恋を見守り続けていた。
 あの小さな可愛い黄金竜の雛の恋を。

「私とウェイズリーが関係を持つことを、陛下が、大いに問題があると仰られる理由は何なのでしょうか」

 それはカルヴァンの話を聞いて、抱いたもう一つの疑問であった。
 北方地方の竜騎兵団では、竜が竜騎兵を番とすることはよくあることであった。それは昔からあることで、そのことが今まで問題になったことはない。
 ユーリスは、自分はシルヴェスター王子のものであることを自覚しており、ウェイズリーの番になることはない。それでも、ユーリスとウェイズリーが結ばれることを、カルヴァンが「問題がある」と言う理由が分からず気になった。

 カルヴァンが説明しようと口を開きかけたところで、非常に悲しそうな女の声が空間を震わせた。その想いの強さで空間が歪むほどである。
 慌ててカルヴァンが立ち上がる。

「どうしたのだ、マルヴェリーナ」

 そう言って、カルヴァンの姿もあっという間に消えてしまう。
 何かカルヴァンも予想しないことが起きたのではないかと、ユーリスは思った。それが何であるのか分からず、夢が醒めるまでユーリスは立ち尽くしていた。
しおりを挟む
感想 276

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生したらしいけど、何の悪役令息かわからないから好きにヤリチン生活ガンガンしよう!

ミクリ21 (新)
BL
ヤリチンの江住黒江は刺されて死んで、神を怒らせて悪役令息のクロエ・ユリアスに転生されてしまった………らしい。 らしいというのは、何の悪役令息かわからないからだ。 なので、クロエはヤリチン生活をガンガンいこうと決めたのだった。

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

王様お許しください

nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。 気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。 性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。 挿絵をchat gptに作成してもらいました(*'▽'*)

魔王に転生したら、イケメンたちから溺愛されてます

トモモト ヨシユキ
BL
気がつくと、なぜか、魔王になっていた俺。 魔王の手下たちと、俺の本体に入っている魔王を取り戻すべく旅立つが・・ なんで、俺の体に入った魔王様が、俺の幼馴染みの勇者とできちゃってるの⁉️ エブリスタにも、掲載しています。

処理中です...