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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です 第四章 黄金竜の雛は愛しい番のためならば、全てを捧げる
第十一話 拠点の城
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クラン“竜の牙”が拠点と定めたその城は、大きくもあったが大層古い時代の建物であった。
この旧カリン王国も、他のサトー王国に征服された国々と同じように、王達がいる城に“星弾”を落とされ、王族や貴族のほとんどが殺されている。よって、主だった城の多くが壊されている状態で、クランが拠点とするその城は、長らく使われることのなかった古い城を、再度手を入れて使えるようにしたものだった。
古い時代の城ということで、城の意匠もどこか古めかしいものである。造りも今の城のものよりもかなり大きい。跳ね橋を上げて、クランの馬車が次々と城の中に入って行く。
ユーリスは、この城に拠点を構えると聞いた時から、城のことを古い文献に目を通して自分なりに調べていた。勿論、城の見取り図も入手している。
「ヴィー、この城は今から七百年ほど前まで、実際に使われていた城なのだよ。大きくて立派なものだね」
馬車から降りたユーリスが、嬉々としてシルヴェスターに話しかける。
「使われなくなった理由は何なんだ」
「西の城に伯爵が移り住んだからだよ。その城はサトー王国に破壊されてしまったがね」
彼は勿体ないと呟いている。
「だが、そのおかげで再利用ということか」
シルヴェスターは木箱を担いで移動していく。ユーリスも木箱の一つを持とうとすると、シルヴェスターが首を振った。
「お前はいい。怪我をされても困る」
「……」
ユーリスが物凄く不満そうな顔をした。そんな表情を彼が見せることは滅多にない。
そしてそんな表情ですら、すっかりユーリスに惚れこんでいるシルヴェスターにとってはご褒美のようなもので、内心、(ああ、怒っているユーリスも綺麗だ)と馬鹿なことを思っているのだった。
「君は、私のことをかよわい女人のように扱うが、私だって男だ。こんな木箱の一つや二つくらい持てるんです!!」
そう言って、ユーリスは袖をまくり上げ、彼は木箱を四つ持ち上げた。
四つ。
シルヴェスターはその、あまりのユーリスの馬鹿力ぶりに、彼は口を開けて立ち尽くしていた。
同様に、クランの者達も、ユーリスが四つもの木箱を抱えて持っていることに、唖然としていた。
その四つとて、軽い木箱ではない。中にはギッシリと書類が入っている。
「ああ、でも、これでは前が見えませんね」
四つ木箱を持ち上げると、視界がさすがに塞がれてしまうことに気が付いたユーリスは、二つの木箱を置いて、二つの木箱を持ち上げた。それも、軽々とである。
「さぁ、行こう、ヴィー」
「あ、…………ああぁ」
促され、シルヴェスターは返事をするが、どこか生返事であった。
ユーリスが、こんな馬鹿力なんて知らなかった。
彼はまったく重いものを持つことが苦でもないようで、ひょいひょいと持ち上げている。ややもすれば片手で持ち上げているのだ。
(もしかして、ユーリスは私よりも力持ちなのか……)
こんな自分よりも遥かに細い体付きをしていながら、力持ちとは。
驚くしかなかった。
それからクランの者達は、皆、イスフェラ王国から運んできた荷物をどんどん城の中へと運び込み、更に事前に決めていた部屋へ、家具なども運んでいく。
そこでもユーリスの馬鹿力が発揮され、ユーリス一人で台所の大きな食器棚を移動させたり、重そうな寝台を動かしていることに、共にいたシルヴェスターは呆れるしかなかった。
「…………ユーリス、お前にそれほど力があるとは今の今まで、私は知らなかったぞ」
昼過ぎになり、ユーリスはシルヴェスターの横に座って、パンを口にしながら言った。
「私も自分がこんなに力持ちだなんて知らなかったのですが、役に立てて嬉しいです」
非力な非戦闘員扱いであった自分が、世話になっているクランの役に立つのだ。それは素直に嬉しかった。
「お前は、今ではクランの経理作業では、無くてはならない存在だと聞いている。いつも役に立っている」
それどころか、クランが入手した古文書の解析作業も一手に担っている。ユーリスは、クランの中の充分な戦力である。
「そう言ってもらえると嬉しいです」
「それに、私の大切な恋人だ」
傍らのシルヴェスターが真顔でユーリスを見つめてそう言うと、ユーリスの耳がサッと赤く染まった。
「あまり、外でそんなことを言わないで下さい」
「どうしてだ」
「…………嬉しいのですが、どうしていいのか分からなくなります」
耳だけではなく、首まで赤くなっている。照れているユーリスが、またもやシルヴェスターにとって可愛くてならなくて、シルヴェスターはユーリスの腰に手をやり抱き締めようとする。
「そんな時は、黙っていてくれていい。ただ、お前がこうして私を抱きしめてくれたら」
シルヴェスターが無茶な注文をする。
黙って外で抱きつくようにというのだ。更にハードルが上がっているだろう。
「それは、二人きりの時にすることでしょう」
ユーリスが当然のことを言うと、シルヴェスターは捨てられた仔犬のような目でユーリスを見つめた。
「…………もうクランの者達に、お前は私の恋人だと知れ渡っているのだ。別に抱きつくくらい、どうってことはないだろう」
そう言って、なおもぎゅうとユーリスの身体を抱きしめるものだから、ユーリスは少し慌てた。
「他の者達に見られています!!」
「別にいい」
「ヴィー」
そう二人でイチャイチャとしている中、副クラン長フィアの声がそばで聞こえた。
「シルヴェスター、ユーリス、ちょっと来てくれないか」
その声にはどこか呆れが混じっていた。
この旧カリン王国も、他のサトー王国に征服された国々と同じように、王達がいる城に“星弾”を落とされ、王族や貴族のほとんどが殺されている。よって、主だった城の多くが壊されている状態で、クランが拠点とするその城は、長らく使われることのなかった古い城を、再度手を入れて使えるようにしたものだった。
古い時代の城ということで、城の意匠もどこか古めかしいものである。造りも今の城のものよりもかなり大きい。跳ね橋を上げて、クランの馬車が次々と城の中に入って行く。
ユーリスは、この城に拠点を構えると聞いた時から、城のことを古い文献に目を通して自分なりに調べていた。勿論、城の見取り図も入手している。
「ヴィー、この城は今から七百年ほど前まで、実際に使われていた城なのだよ。大きくて立派なものだね」
馬車から降りたユーリスが、嬉々としてシルヴェスターに話しかける。
「使われなくなった理由は何なんだ」
「西の城に伯爵が移り住んだからだよ。その城はサトー王国に破壊されてしまったがね」
彼は勿体ないと呟いている。
「だが、そのおかげで再利用ということか」
シルヴェスターは木箱を担いで移動していく。ユーリスも木箱の一つを持とうとすると、シルヴェスターが首を振った。
「お前はいい。怪我をされても困る」
「……」
ユーリスが物凄く不満そうな顔をした。そんな表情を彼が見せることは滅多にない。
そしてそんな表情ですら、すっかりユーリスに惚れこんでいるシルヴェスターにとってはご褒美のようなもので、内心、(ああ、怒っているユーリスも綺麗だ)と馬鹿なことを思っているのだった。
「君は、私のことをかよわい女人のように扱うが、私だって男だ。こんな木箱の一つや二つくらい持てるんです!!」
そう言って、ユーリスは袖をまくり上げ、彼は木箱を四つ持ち上げた。
四つ。
シルヴェスターはその、あまりのユーリスの馬鹿力ぶりに、彼は口を開けて立ち尽くしていた。
同様に、クランの者達も、ユーリスが四つもの木箱を抱えて持っていることに、唖然としていた。
その四つとて、軽い木箱ではない。中にはギッシリと書類が入っている。
「ああ、でも、これでは前が見えませんね」
四つ木箱を持ち上げると、視界がさすがに塞がれてしまうことに気が付いたユーリスは、二つの木箱を置いて、二つの木箱を持ち上げた。それも、軽々とである。
「さぁ、行こう、ヴィー」
「あ、…………ああぁ」
促され、シルヴェスターは返事をするが、どこか生返事であった。
ユーリスが、こんな馬鹿力なんて知らなかった。
彼はまったく重いものを持つことが苦でもないようで、ひょいひょいと持ち上げている。ややもすれば片手で持ち上げているのだ。
(もしかして、ユーリスは私よりも力持ちなのか……)
こんな自分よりも遥かに細い体付きをしていながら、力持ちとは。
驚くしかなかった。
それからクランの者達は、皆、イスフェラ王国から運んできた荷物をどんどん城の中へと運び込み、更に事前に決めていた部屋へ、家具なども運んでいく。
そこでもユーリスの馬鹿力が発揮され、ユーリス一人で台所の大きな食器棚を移動させたり、重そうな寝台を動かしていることに、共にいたシルヴェスターは呆れるしかなかった。
「…………ユーリス、お前にそれほど力があるとは今の今まで、私は知らなかったぞ」
昼過ぎになり、ユーリスはシルヴェスターの横に座って、パンを口にしながら言った。
「私も自分がこんなに力持ちだなんて知らなかったのですが、役に立てて嬉しいです」
非力な非戦闘員扱いであった自分が、世話になっているクランの役に立つのだ。それは素直に嬉しかった。
「お前は、今ではクランの経理作業では、無くてはならない存在だと聞いている。いつも役に立っている」
それどころか、クランが入手した古文書の解析作業も一手に担っている。ユーリスは、クランの中の充分な戦力である。
「そう言ってもらえると嬉しいです」
「それに、私の大切な恋人だ」
傍らのシルヴェスターが真顔でユーリスを見つめてそう言うと、ユーリスの耳がサッと赤く染まった。
「あまり、外でそんなことを言わないで下さい」
「どうしてだ」
「…………嬉しいのですが、どうしていいのか分からなくなります」
耳だけではなく、首まで赤くなっている。照れているユーリスが、またもやシルヴェスターにとって可愛くてならなくて、シルヴェスターはユーリスの腰に手をやり抱き締めようとする。
「そんな時は、黙っていてくれていい。ただ、お前がこうして私を抱きしめてくれたら」
シルヴェスターが無茶な注文をする。
黙って外で抱きつくようにというのだ。更にハードルが上がっているだろう。
「それは、二人きりの時にすることでしょう」
ユーリスが当然のことを言うと、シルヴェスターは捨てられた仔犬のような目でユーリスを見つめた。
「…………もうクランの者達に、お前は私の恋人だと知れ渡っているのだ。別に抱きつくくらい、どうってことはないだろう」
そう言って、なおもぎゅうとユーリスの身体を抱きしめるものだから、ユーリスは少し慌てた。
「他の者達に見られています!!」
「別にいい」
「ヴィー」
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