転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です  第四章 黄金竜の雛は愛しい番のためならば、全てを捧げる

第二十四話 彼の願い(上)

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 シルヴェスターが魔族の剣に倒れる少し前、旧カリン王国内のレイヴン城で、ユーリスは仕事に励んでいた。

 シルヴェスターが、クラン長ダンカンと、サトー王国軍との戦いのために出兵している期間は、一週間の予定であった。そろそろ彼らが戻って来る頃合いであろうと思いつつ、ユーリスはシルヴェスターの無事の帰還を願っていた。

 そして黄金竜の雛ウェイズリーは、ユーリスの恋人であるシルヴェスターがいない間、思う存分ユーリスに甘えていた。
 ユーリスが仕事から部屋へ戻ってくる時に合わせて、ウェイズリーも城のベランダに現れる。見るとウェイズリーはベランダのガラス戸に両手を挙げて張り付いている状態である。顔もそれに押し付けているのが可愛らしい。
 その正体が黄金竜の雛でありながらも、人の姿をとる時は、ユーリスよりも遥かに体格のよい男の姿に変わることも出来るウェイズリー。ユーリスは、小さな竜の雛の姿をとっている時は、ウェイズリーが、黄金の髪を靡かせた若い男の姿を取った時のことを思い出さないようにしていた。そしてウェイズリーもあれ以来、人の男の姿を取らない。
 二人して、まるで細いロープの上を綱渡りで渡るような、そんなギリギリの関係の中にいた。互いにそれに目を瞑っていた。

 ユーリスがガラス戸を開けると、ウェイズリーは「キュウゥゥ」と甘えるような声を上げて、ユーリスの胸元にしがみついて、頭をぐりぐりと押し付ける。その小さな頭をユーリスは撫でてやる。それからユーリスの膝の上に座ったウェイズリーは、ユーリスに今日あった出来事を尋ねるのだ。

 ユーリスも、過去の経験から、正直に自分の仕事の内容を話してはならないことを今はもう理解していた。ちょっとでも、黄金竜ウェイズリーが手伝うべき余地があれば、勝手にユーリスの仕事を手伝ってしまうからだ。今、ユーリスは税の台帳の整理をしている。王城が“星弾”で木っ端微塵に吹き飛んだせいで、王城の倉庫に納められていた租税台帳の全てが消失していた。その写しが各農村の下級官吏の手元にあったため、更にそれから写しを作ってもらい提出するように命じている。再度作られた写しを、城の官僚たちがチェックして誤魔化しがないか見ている。そして彼らを監督するのがユーリスの役目だった。
 根気のいる面倒な作業である。

 ただ幸いなことに、この作業についてはウェイズリーの介入する余地がない。

 ウェイズリーは「キュルキュルルルキュルキュルルル(またお前は税の台帳の整理をしているのか)」と少し不満そうな顔をしていた。ウェイズリーにしてみれば、「橋が壊れた、道が壊れた、建物が壊れた」となれば、自分の活躍する場があるのだが、税の台帳の複製の作成とか、まったく黄金竜の介入する余地が無い仕事で、ウェイズリーには不満であったのだ。
 そしてその作業は根気が必要であったから、仕事を終えたユーリスは少し疲れた顔をして戻ってくる。ウェイズリーは仕事に打ち込んでいるユーリスの身体が心配であった。

 椅子に座るユーリスの膝の上で、ウェイズリーは甘えて鳴きながら言った。

「キュルルルキュルキュルルル。ルルルキュウキュルルル(そんな面倒な仕事は他の奴に任せればいい。お前はそんな下々の仕事をするような人間ではないのに)」

「何を言っているんだい、ウェイズリー。大事な仕事なんだよ」

 苦笑しながら、ウェイズリーの頭を撫でている。

「キュルキュルルルルゥ。キュルキュルル(お前は私の頭を撫でる大事な仕事があるだろう。それは何よりも大事な仕事だ)」

 そんなことを真面目な表情で言う小さな黄金竜の雛ウェイズリーに、ユーリスは笑ってしまった。
 笑い声を上げているユーリスを、嬉しそうに黄金色の瞳で小さな竜は見つめ、それからなおも甘えるように鳴いていた。

「キュルルゥキュルゥ(もっと撫でておくれ)」

 そう言って、頭をユーリスの胸にすり寄せてくる。
 だからユーリスは笑いながらも、ウェイズリーが喜ぶように優しく頭を撫でていた。




 その時、ふいにウェイズリーはピンと尻尾を立て、黄金の瞳を天井の方へ向けた。
 それから鋭い牙を剥き出しにして、唸り声を上げた。

「キュルルキュルルルルルルゥゥゥゥゥ」

「……どうしたのかい、ウェイズリー」

「キュルゥキュルキュルルゥ」

 ユーリスの周りに、キラキラと輝く金色の芽が何百本と、床から、ユーリスの身を囲むようにヌッと生えてきた。そしてユーリスの身を取り囲むようにザワザワと伸びていく。

「ウェイズリー?」

 そう問いかけるユーリスの前で、ウェイズリーの姿が突然消えたのだった。

「ウェイズリー!!」



 それは、サトー王国の軍が魔族と共に、大規模侵攻を各地で始めたことと、時同じくした変化であった。
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