転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です  第五章 その王子と竜に愛されたら大変です(上)

第六話 黄金竜の我儘な帰城(上)

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 獅子面の騎士ローエングリンが魔族やサトー王国軍の元へ、クラン長ダンカンの言葉を届けた。三日の間に彼らは撤退の選択肢を選ぶかどうか決めることになる。
 そしてもし撤退の選択をしなければ、あまり考えたくはないが、黄金竜ウェイズリーが彼らに対し黄金竜の怒りを下すことになる。

 ウェイズリーはすぐにでも戦闘を終らせて、番のユーリスの元へ帰りたかったから、本当なら今すぐにでもサトー王国軍と魔族達を全滅させる気満々であった。
 ダンカンも「場合によっては力を見せつけ、恐怖させた方が、二度とこの国を攻めようという気にさせないためには良いかも知れない」と言っていた。とはいえ、自分の中の小さな黄金竜の雛の圧倒的な力で、何千、何万という命を一瞬で刈り取ることが、良い事なのかというと、シルヴェスターは良い事だとは思っていなかった。特にサトー王国軍の主力は人間の軍隊である。彼らには彼らの帰還を待つであろう父母や妻、子もいるだろう。その家族を壊すことになる。家族を壊されたという怒りと怨みと悲しみは、ずっと続いていくのだ。そうした数多の者達からぶつけられる恨みつらみの感情を背負うのが、上に立つ者の役割なのかも知れない。そうなる覚悟を、シルヴェスターも負わないといけないのだろう。すでにダンカンはその覚悟をしているようだ。

 シルヴェスターは、黄金竜の雛ウェイズリーとの約束通り、体の支配をウェイズリーに明け渡すと、ウェイズリーはすぐさま小さな竜の雛にその身を変え、瞬間、ユーリスの待つ城へ移動して戻った。

 城の中をパタパタパタと飛んで行き、ユーリスを見つけると彼の胸に向かって飛びついて、甘えるように鳴く。

「キュイキュイキュイキューキュー」

 仕事の最中、飛んで現れたウェイズリーの姿に、ユーリスは驚いていた。
 いつもは夜に現れるのに、今はまだ昼を過ぎたところである。
 そして城の多くの者達の前で、ウェイズリーは平然として現れている。この黄金竜の雛がユーリスを慕っていることは、城の者達もよく知っていた。それでも、突然の黄金色の竜の登場に、皆驚きの表情で眺めていた。

「ウェイズリー、こんな時間にどうしたんだ」

「キュルキュルキュルキュッキュッキュー(シルヴェスターが、ユーリスに会いに行ってもいいと言った)」

(お前が「会いたい、会いたい」とうるさく言ったのだろう!!)

 ウェイズリーの中のシルヴェスター王子が、渋面でそう言うのを、ウェイズリーは無視していた。

「そうか。殿下がいいと仰ったのか。少し戦いの状況も落ち着いたのかな」

 そうあって欲しい。
 そして早く、城へ戻ってきて欲しい。
 シルヴェスター恋しさに、ユーリスはそう願ってしまう。
 そしてユーリスの胸元にしがみついているウェイズリーは甘えて鳴いている。

「キュルキュルキュッキュッキューキュルキュルルルル(私が帰って来たのだ。ユーリスは仕事を終えて、私と一緒に部屋へ戻ろう)」

 ユーリスの仕事の都合などお構いなしに、ウェイズリーはそう言って黄金色の瞳で熱心に甘く番の青年を見つめるのだ。なんとなしにそのことを察したユーリスの同僚達は「ユーリス様、ここは私達でやります」「どうぞその竜を連れてお部屋に」と口々に言う。副クラン長フィアから、城の住人達は「絶対にあの黄金竜の雛を怒らせずに、機嫌を取るように」と命じられている。黄金竜の雛ウェイズリーのふるう“金色の芽”は魔物を一瞬で惨殺する恐ろしい力なのだ。怒りを買ったならば、味方であってもどうなるのか分からない。できるだけ黄金竜の願いは叶えられなければならない。

「済まない。では先に失礼させてもらう」

 ユーリスはそう言う。それでも彼の手には部屋へ戻ってからもこなす仕事の書類の束を持っていた。ユーリスは仕事の部屋を後にした。移動するユーリスの胸にウェイズリーはぺったりと張り付いて、「キュルキュルキュルルルルルルル」とご機嫌に鳴いていた。

 部屋へ戻ると、ユーリスはウェイズリーに「君の好きな果物を用意しておいたよ」と言う。
 ユーリスはウェイズリーの好きな食べ物をよく知っており、お菓子や果物をよく皿に入れて出してくれる。小さな保冷の魔道具の箱の中から、ユーリスは事前によく冷やしておいた瑞々しい果実を取り出した。椅子に座ると、小さなナイフを手にして器用にその実を剥いていく。
 ウェイズリーはテーブルの上に後ろ足で立って、フンフンフンと言いながら、ユーリスが果実の皮を綺麗に剥いて、おまけに食べやすいように切ってくれる様子を眺めている。それから剥かれたその果実を、口に入れてもらう。シャクシャクと美味しい果汁たっぷりの果物だった。

「キュルキュルキュルキュッキュッキュッキュッ!!」

 ウェイズリーは尻尾をピシピシピシピシとテーブルの上に打ち付け、非常にご機嫌だった。
 ユーリスはたっぷりの果実を全部、ナイフで綺麗に剥いて、ウェイズリーに差し出していた。ウェイズリーの口が果実の汁で汚れているのを見て、ユーリスは笑って、濡れたタオルを持ってきてウェイズリーの口を拭いてやる。

「べたべたじゃないか」

「キューキュー、キュッキュッ」

 小さな黄金竜の雛はユーリスに構われるのが嬉しくて仕方ないようで、ずっと甘えるような声を上げていた。

 そんな一人と一頭の様子を、ウェイズリーの中のシルヴェスターはじっと眺め、(ウェイズリーは、ユーリスに対する態度と他のものに対する態度が違い過ぎる…………)と愕然としていたのだった。

 そして恋人の、小さな黄金竜の雛を思い切り甘やかしている姿にも驚いていたのだった。
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