転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

文字の大きさ
536 / 711
外伝 その王子と恋に落ちたら大変です  第五章 その王子と竜に愛されたら大変です(上)

第十話 傷心(下)

しおりを挟む
 それからの一週間、ユーリスのそばにいるのはパタパタと空を飛ぶ黄金竜の雛ウェイズリーの姿であって、シルヴェスターの姿は見えなかった。シルヴェスターの意識はずっと心の奥深くに沈み込んでいた。ウェイズリーはユーリスに言われ、何度もその沈み込んでいるシルヴェスターの意識に話しかけていた。
 どんなにユーリスが心配しているのか。
 どれほどユーリスがシルヴェスターを愛しているのか。
 彼がシルヴェスターの為に、一生懸命にダンカン達に働きかけていたことも。

 もはや同一体となり、魂も溶け合っているシルヴェスターに話しかけることは、自分に対して懸命に話しかけることと一緒のことだった。だから、なんとなしにおかしな気分である。ユーリス曰く、人間の精神は複雑なものなのだという話だった。同じ身体の中に、複数の精神が存在するケースもあるという話だ。
 さしずめ、ウェイズリーとシルヴェスターは一つの体に二つの精神が混じり合っている状態だ。元から違う人生を歩んでいた魂が、一つになったのだ。単純なものではないだろう。

 ダンカンが城へ帰還するまでの二週間、そしてそれからの一週間。合計三週間の間、シルヴェスターの心は沈み込んだままだったが、ようやく、彼の心は懸命なウェイズリーとユーリスの働きかけで、ゆっくりと浮上し始めた。

 ある朝、目を覚ますと、寝台の上に横になっていたのは黄金竜の雛ではなくシルヴェスターであった。
 若く逞しい黄金の髪を持つ男が自分の横にいることに、ユーリスは一瞬驚いた後、シルヴェスターの唇に優しく口づけた。

「おはよう、ヴィー」

「おはよう」

 目が醒めたシルヴェスターの身に、ユーリスは身をすり寄せる。そしてその碧い目をしっかりと見つめ、その手を掴み、握り締めながら言った。

「私の元に戻って来てくれてありがとう、ヴィー」

 それでシルヴェスターもユーリスの身体を抱きしめる。

「ユーリス、お前とウェイズリーの、呼ぶ声がずっと聞こえていた」

 深い深い、暗がりの底にうずくまるようにしていたシルヴェスターの心に根気よく話しかけ続けたのは黄金竜ウェイズリーとユーリスだった。多くの屍に囲まれ、心もまた疲れて朽ちていきそうな闇底に聞こえた声だった。

「そうです。ウェイズリーも私も貴方がいないことが寂しくて仕方なかったのです。ヴィー。貴方がたくさんのものを背負っていることを私は知っています」

「……殺し過ぎた」

「そうですね」

 そのことをユーリスは否定しなかった。
 事実として、黄金竜ウェイズリーの持つ力で、シルヴェスターは望むままに何千という人の屍を積み上げた。数えきれないほどの人間を殺した。
 戦場に出ている者には殺すことも、殺されることにも覚悟があるだろう。しかし、一人の人間が背負うには、あまりにも殺害の桁が違うのである。サトー王国のサトーもまた途轍もない数の人間を殺害してきたが、彼はそれをとらえていないことで、心の均衡を保っている。

 国を、仲間達を守るためにしたことだと、正当化する言葉はいくらでも言える。
 だけど、それだけじゃ足りないのだ。そんなことはとうに彼も理解しているはずだから。

 ユーリスはシルヴェスターの手を掴み、その手の甲に口づけを落とした。柔らかな唇の感触を手に覚えながら、シルヴェスターはユーリスを見つめる。

「貴方が私の元へ戻ってくるためにしたことは、全部、私も一緒に背負います」

「ユーリス」

「何度でも言いましょう。ヴィー、私の元へ戻ってきてくれてありがとう。これは私のエゴです。たとえ何千、何万という人が死んでも、私は貴方に無事に戻ってきてもらいたい。他の人間の命よりもずっと、ずっと貴方の命の方が大事なのです」

 どんな綺麗事を口にしようと、それだけが結局最後に望む真実だった。
 どれほどの血が流されようとも、彼だけが無事に戻ってくるなら。
 それでいいのだ。

 それはまさしく自分のエゴだった。それを認めるしかない。
 
 シルヴェスターはなんとも言えぬ表情をして、口元に弱々しい笑みを浮かべ、ユーリスを抱きしめたのだった。
 彼も理解しているはずだ。

 どんなことをしてでも、ユーリスの元へ帰ってきたかったことを。
しおりを挟む
感想 276

あなたにおすすめの小説

腐男子♥異世界転生

よしの と こひな
BL
ある日、腐男子で新卒サラリーマン・伊丹トキヤの自室にトラックが突っ込む。 目覚めたトキヤがそこで目にしたのは、彼が長年追い続けていたBL小説の世界――。しかも、なんとトキヤは彼が最推しするスパダリ攻め『黒の騎士』ことアルチュール・ド・シルエットの文武のライバルであり、恋のライバルでもあるサブキャラの「当て馬」セレスタン・ギレヌ・コルベールに転生してしまっていた。 トキヤは、「すぐそばで推しの2人を愛でられる!」と思っていたのに、次々と原作とは異なる展開が……。 ※なろうさん、カクヨムさん、Caitaさんでも掲載しています。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!

モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。 その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。 魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。 その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?! ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

「隠れ有能主人公が勇者パーティから追放される話」(作者:オレ)の無能勇者に転生しました

湖町はの
BL
バスの事故で亡くなった高校生、赤谷蓮。 蓮は自らの理想を詰め込んだ“追放もの“の自作小説『勇者パーティーから追放された俺はチートスキル【皇帝】で全てを手に入れる〜後悔してももう遅い〜』の世界に転生していた。 だが、蓮が転生したのは自分の名前を付けた“隠れチート主人公“グレンではなく、グレンを追放する“無能勇者“ベルンハルト。 しかもなぜかグレンがベルンハルトに執着していて……。 「好きです。命に変えても貴方を守ります。だから、これから先の未来も、ずっと貴方の傍にいさせて」 ――オレが書いてたのはBLじゃないんですけど⁈ __________ 追放ものチート主人公×当て馬勇者のラブコメ 一部暗いシーンがありますが基本的には頭ゆるゆる (主人公たちの倫理観もけっこうゆるゆるです) ※R成分薄めです __________ 小説家になろう(ムーンライトノベルズ)にも掲載中です o,+:。☆.*・+。 お気に入り、ハート、エール、コメントとても嬉しいです\( ´ω` )/ ありがとうございます!! BL大賞ありがとうございましたm(_ _)m

死に戻りした僕を待っていたのは兄たちによる溺愛モードでした

液体猫(299)
BL
*諸々の事情により第四章の十魔編以降は一旦非公開にします。十魔編の内容を諸々と変更いたします。 【主人公(クリス)に冷たかった兄たち。だけど巻き戻した世界では、なぜかクリスを取り合う溺愛モードに豹変してしまいました】  アルバディア王国の第五皇子クリスが目を覚ましたとき、十三年前へと戻っていた。  前世でクリスに罪を着せた者への復讐は『ついで。』二度目の人生の目的はただ一つ。前の世界で愛し合った四男、シュナイディルと幸せに暮らすこと。  けれど予想外なことに、待っていたのは過保護すぎる兄たちからの重たい溺愛で……  やり直し皇子、クリスが愛を掴みとって生きていくコミカル&ハッピーエンド確定物語。  第三章より成長後の🔞展開があります。 ※濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭、ちょっとだけ重い展開あり。 ※若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...