転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です  第五章 その王子と竜に愛されたら大変です(上)

第二十四話 新興国へ渡る人々(下)

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 イスフェラ皇国に避難民向けのテントがズラリと立てられ、多くの避難民達がその場所に身を寄せたが、アレドリア王国からの避難民達をそのままずっと砂漠そばのテント地に留めるわけにはいかない。アレドリア王国とどこの国よりも親交が深かったハルヴェラ王国が、多くの避難民達を引き受けると手を挙げる。そしてまたユーリスが、ゴルティニア王国のダンカンやフィア達に問い合わせたところ、彼らもまた避難民の多くを引き受けると言ってくれた。

 また、身元の確かな、優秀な人材であれば、ゴルティニア王国では官吏として登用の道も開くと言うのだから、その話を聞きつけた者達が、ゲランの元に随分と集まっているという。
 ゴルティニア王国へ連れていく者達の人選についてはゲランに一任し、ユーリスとウェイズリーの二人は何度も“転移”を繰り返して、アレドリア王国から多くの者達を連れてきていた。

 しかし日に日に、連れて来る人数も減っていく。
 サトー王国はアレドリア王国の都を落とした後、地方への攻撃は散逸したものになっていた。頭さえ落とせばどうにかなるという乱暴な計算がある。ただ実際、国王を頂点とした中央集権国家であったそれは、王都を落とし、王族達を殺害した後は、挙兵する者達もまばらで、そしてその挙兵した者さえもさっさとサトー王国は叩いていたものだから、反撃の狼煙もろくに上がっていない状態だった。

 ユーリスは、親しかったアレドリア王国の人々が、魔の領域に連れ攫われ、その地で生きているのではないかと考えていた。イーサン=クレイラは、アレドリア王国で勝手に戦いを始めるなと言っていたが、魔の領域へ連れ攫われた者達を奪還することについては何も口にしていなかった。

「どうにか、魔の領域あちらに連れ攫われた人達を取り戻したい」

 カノッサ城の自室に戻ったところで、ユーリスは疲れた表情でそんなことを零した。
 自分達が空中城に居た三日の間のロスが痛かった。
 その間に、アレドリア王国の都は落ち、大勢の人間が死に、連れ攫われた。
 しかし、そのことでウェイズリーを責める気はない
 黄金竜ウェイズリーは、しっかりと自分の領土であるゴルティニア王国の国土は守っていたのだ。同盟国であるアレドリア王国までも手を伸ばして守ることなど、彼の仕事ではなかった。

 今、ウェイズリーは引っ込んでおり、シルヴェスター王子がユーリスの前の椅子に座っている。
 連日、ユーリスはウェイズリーと共に“転移”してアレドリア王国に飛び、人々の救出の作業を進めている。それと並行して、救出した人々の行く先についてハルヴェラ王国やゴルティニア王国の官吏達と話し合っているのだ。いくら時間があっても足りないような忙しさだった。

 それに加えて、ユーリスは魔の領域に連れ攫われた者達のことまで考え始めている。

「ユーリス、何もかも自分の手で解決しようとするな。私はお前の身の方が心配だ」

 そう、心配そうな表情でシルヴェスターは言う。だが、ユーリスは言葉を続けた。

「私の世話になった人達が、あちらに連れ攫われて、大変な目に遭っているかも知れない。放っておけない」

 ユーリスが強情であることを良く知るシルヴェスターは困った顔をしながらも、頷く。
 シルヴェスターの大切なものは、ユーリスと自分のクランの仲間達である。その彼らが、魔の領域に連れ攫われたのなら、シルヴェスターだってきっと、ユーリスと同じようにどんなに疲れていようとも、どうにかしたいと考えたことだろう。

 でも、見るからにユーリスは疲れ切っている。

「分かった。明日、ローエングリンに相談しよう。今は、難しいことを何も考えるな」

 ローエングリンは、シルヴェスターに従う魔族の騎士である。彼もまた公の地位を持つ高位魔族であった。きっと何か良いアドバイスをしてくれるだろう。
 シルヴェスターはユーリスの座る椅子のそばに近づくと、ユーリスの瞼の上にそっと手をのせた。温かな手の感触にユーリスは小さく微笑みを浮かべる。

「疲れると、頭も回らないぞ」

「…………そうですね」

「今から、風呂で髪を洗ってやる」

 そんなことを突然言われて、ユーリスが手の下で驚く顔をしていることが分かる。

「髪、ですか?」

「そうだ。私はなかなか上手いのだぞ」

 そう言って、戸惑うユーリスの手を引いて、部屋に備え付けられている浴室にユーリスを連れていく。
 浴槽にはすでに湯が張られている。疲れているユーリスのことを思って、事前にシルヴェスターが張っておいたものだった。

「殿下に髪を洗って頂くなど、恐れ多いことです」

 弱々しく抵抗するユーリスの服を、シルヴェスターは素早く脱がせていく。目にも留まらぬ速さで前のボタンが外され、ズボンが下着ごとずり落とされる。

「で、殿下!!!!」

 真っ赤な顔をして狼狽するユーリスを見て、シルヴェスターは笑い声を上げた。それからユーリスの身体をそっと浴槽の中に入れさせる。未だ戸惑った様子の彼を、温かな湯の中に肩までつからせ、それから桶に湯をくみ上げて、ユーリスの髪を濡らすと、石鹸を泡立て、ユーリスの髪を洗い始めたのだ。
 
「随分と埃を被っているぞ」

「………………砂漠にいましたから」

 イスフェラ皇国の砂漠への“転移”を繰り返していたものだから、砂が髪の間にも入っている。

「砂まみれということか。私のユーリスが、こんなに汚れてしまって」

「……殿下も汚れていると思います。後で洗って差し上げましょう」

「ウェイズリーも洗って欲しいと喚いているぞ」

「ウェイズリーも洗ってあげます」

「今思ったのだが、私とウェイズリーは同一体なのだから、私を洗えばウェイズリーを洗う必要はないのではないか」

 その言葉に、ユーリスはしばらくの間、無言だった。それからゆっくりと答える。

「そうかも知れません」

 その言葉に、シルヴェスターと同化している黄金竜の雛ウェイズリーが、絶叫するように喚いていた。

「キュイキュイキュッキュキューキュー!!!!(我も我も、洗ってたもう!!!!)」

 そう鳴き喚いてうるさい。
 ユーリスの胸の上にぺったりと張り付いて湯に入るのが大好きなウェイズリーにとって、シルヴェスターが事前に入浴したせいで、自分の入浴がカットされることなど、死活問題に近いほどの大問題だった。

「ウェイズリーとお風呂に入ることは、私も好きなので」

 少しだけ恥ずかしそうにユーリスがそう言うものだから、シルヴェスターの中のウェイズリーは身悶えしていた。
 
 なんて自分の番は可愛いことを言うのだと、「キュイキュイ」と囀り、飛び回っている。
 黄金竜の雛がうるさくてたまらない。

「お前はウェイズリーに甘いな」

 優しく両手で頭皮をマッサージするようにユーリスの頭を洗うと、ユーリスは気持ち良さそうに浴槽のへりに頭をのせ、上目遣いでジルヴェスターの顔を見上げた。

「だって、貴方とウェイズリーは一緒じゃないですか。殿下もウェイズリーも私は好きなのですよ」

 そういう彼の形の良い唇に、シルヴェスターはそっと唇を重ねた。
 ユーリスはシルヴェスターの首に両腕をかけ、目を伏せて彼の優しい口づけを受け入れていた。
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