転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です  第六章 その王子と竜に愛されたら大変です(下)

第七話 日々は過ぎていく

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 ゴルティニア王国が建国され、正式にシルヴェスター王子と婚姻を結び、伴侶の地位に就いたといっても、ユーリスの生活が大きく変わることはなかった。
 彼は相変わらず、今や財務大臣の地位に就いている元副クラン長フィアの片腕として、王宮の一室で働き続けていた。時折、彼が果たすべき外交上の仕事が入ってくる。その時には、今や騎士団の騎士の一人として働くシルヴェスターと共に、しっかりと果たしている。
 十五の年まで、王立学園に通う傍ら、父親であるバンクール商会商会長ジャクセンから、商会の仕事を教えられていたユーリスである。父親似の美貌と対外折衝の巧みさで、それらの新しい仕事も苦に思うことはなかった。
 クラン“竜の牙”は、冒険者のクランとしては解散し、その人員はそのままゴルティニア王国の騎士団や行政組織の官僚達の中に吸い込まれていった。
 長らく経理担当兼冒険者として働いていたイルムは、騎士団へ行くべきか、はたまた財務官僚の一人として働くべきかその将来の選択に悩んでいたようだったが、結局、騎士団の騎士の一人として働くことを選択していた。騎士団へイルムが行ったとしても、彼は頻繁に黄金竜ウェイズリーに会いに来て、ユーリスと共に小さな黄金竜の雛に給餌することを楽しんでいた。

 ゴルティニア王国の国王ダンカンは、北方の大国ラウデシア王国の貴族ではあったが元冒険者である。非常にざっくばらんな男であり、長々とした会議を嫌い、意味のない華美な式典も嫌っていた。彼は不要な儀式祭典のたぐいをさっさと廃止した。そうして業務のスリム化を進めていったが、それでも、新しく建てられたばかりの国であるからして、やるべきことは山積みである。特に、旧カリン王国の外の国、隣接する旧サトー王国の領土をも二、三か国分併合したために、それらの国の行政組織を再度構築し、税制などもゴルティニア王国側に合わせる作業も必要になる。また旧サトー王国であった際に破壊されたインフラなども再建築しなければならない。

 財務大臣のフィアなどはユーリスに「黄金竜ウェイズリーに頼んで、橋とか建物などを建設してもらえませんか」と頼んできたが、ユーリスはできるだけウェイスリーに力を振るわせることは最低限にしたいと考えていた。
 ウェイズリーが橋や建物を建てることは、一瞬である。
 しかし、ウェイズリーが力を振るえば、そこに本来生まれ出るはずの雇用が無くなる。橋や建物を建てるための土木作業をする人員が不要となる。その作業員達がとる食事や泊まる宿などの二次的に発生する経済的な効果も無くなってしまう。更に、作業に携わる人員達の経験が積み重なることも無くなってしまう。
 黄金竜ウェイズリーの能力は余りにも素晴らしすぎて、簡単に頼りたくなるが、本来そこに生じるはずの資金の流れや、人々の経験というものが無くなってしまうことが良いことかというと、決して良いことではない。

 ユーリスは、夜、黄金竜の雛ウェイズリーを膝の上にのせ、彼の開けた口に、ウェイズリーの大好きな果物を一つずつ指で入れてあげながら、切々と説いていた。

「君は本当に素晴らしい竜だと思う。でも、他の人がやるべき仕事を取ってしまうことは出来るだけ避けるべきだ」

 ウェイズリーは「キュルゥーキュルキュルルルルルゥ……(私はお前の役に立ちたいのに……)」と、少しばかり不満そうな様子を見せる。ユーリスは、パックリと口を開いて待つウェイズリーの口の中に、果汁タップリの果物を入れてあげながら言った。

「君は十分、役に立っている。いつも私達を守ってくれているし、それにいつも贈り物をしてくれるではないか」

 財務大臣のフィアが、それでもユーリスに強く「黄金竜ウェイズリーをもっと働かせて欲しい」と言わないのは、ウェイズリーが、愛しいユーリスのために莫大な金銀財宝をどこからともなく運んできて、そしてその金銀財宝を、ユーリスはゴルティニア王国のインフラ整備のために使用して欲しいと言って、惜しげもなく提供していたからだ。
 黄金竜ウェイズリーを直接働かせず、ウェイズリーの提供する金銀財宝を資金化して人々を働かせる。そうした資金と労働を国内で循環させる流れをユーリスは作っていく。気を付けなければならないのは、ウェイズリーの提供する財宝が市場に一気に流通することによる、金や銀、宝石などの市場価格の暴落を起こさせないようにすることだったが、そのことについてはユーリスをはじめとする王宮内の財務官僚達が、よくよく注視していた。

 その結果、ゴルティニア王国内では市場も非常に活況で、さらに働き口を求めて、他国からも多くの人々が押し寄せるようになっていた。

 シルヴェスター王子はユーリスの考えについてよく理解していたが、黄金竜ウェイズリーは、とんとそうした細かなことには疎くて、「……お前がそれでいいと言うのなら」と自分が単なる財宝の運び屋にいる状態を甘んじて受け入れていた。
 ユーリスとしては、黄金竜ウェイズリーが差し出してくれる莫大な金銀財宝が、このゴルティニア王国の経済を循環する血液といえるもので、今現在、急速に国全体を富ませてくれる必須なものだと考えていた。黄金竜無くしてはあり得ない方法だった。

 しかし、それも「本来あるはずのない大量の富を持ち込んでいる」状態には違いない。麻薬にも似て、黄金竜ウェイズリーの持つ富に依存していることは良いことではない。ゆくゆくは、ゴルティニア王国が独立独歩でやっていけるように安定したならば、ウェイズリーには金銀財宝を運んでもらうこともやめてもらうつもりだった。

 きっとその時には、この可愛い黄金竜の雛はちょっと怒ってしまうかも知れない。もっとユーリスのために働きたいという、無邪気で健気な竜だからだ。
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